転生したら魔王の次男だった件! しかも双子の片割れは悪友でした!   作:こんろんかずお

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1章 魔王転生
缶が投げられた、そして俺達もガケから投げられた


 深夜にスポーツカーのエンジン音が車内に静かに響き渡る。

 

 俺、立花守(たちばなまもる)は大学の親友達と車で深夜の山中をドライブの真っ最中だ。

 

「夜風が気持ちいい……。夜のドライブも悪くはないですね……」

「ですよねー!」

 

 俺の左隣りの助手席に座っている女性は万葉(まんば)スイさん。

 

 夜風にあたり、セミロングの銀色の髪が静かになびき、童顔を感じさせる二重の大きな瞳に、細長い眉、サファイアのように澄んだ青い瞳でほがらかに笑う横顔がとても魅力的だ……。

 

 彼女の小柄な体形と血色の良いもち肌、そしてふっくらとした丸みを帯びた顔と胸に合ったは小動物的な癒しを感じさせ、今日着ている紺色のギャザーワンピがまた似合っている。

 

 彼女は家の都合でアメリカから留学してきたハーフで、若くして理工系の博士号を持つ才色兼備(さいしょくけんび)な子だ。

 

 実はこのドライブには目的があって、スイさんへの告白をかねて親友にお膳立てしてもらったのだ。

 

 隣に座っている彼女の一挙一動に俺は幸せを感じていたし、心から親友に「ありがとう!」と感謝していた。

 

 いやーホント持つべきものは良い友……。

 

「風も気持ちいいけど、俺ともっと気持ちいいことしませんか? なーんつって⁈」

「……」

 

 こ、こいつっ⁈ まじかっ⁈

 

 俺の額に変な汗が滲み出てくるのが分る。

 

 車内に微妙な空気が流れ、代わりに静かなエンジン音のみが周囲を支配する。

 色々と、台無しだ。

 

 ……今、後部座席から訳の分からない言葉を発したのが、その悪友の御剣学(みつるぎまなぶ)

 

 聞いての通り学は剛速球な会話を得意とし、竹を割ったような性格をしており、パーソナルスペースというものは一切なく、両手を広げ土足でズカズカと人の心の領域に踏み込んでくるのだ。

 

 体の線は細いが馬鹿力を持っており、かつ武道の実力は相当なもので空手の師範代持ちだったりする。

 

 他人を思いやる優しい一面もあるのだが、さっきの会話ようなデリカシーの無さがね……。

 

 性格に反して顔と雰囲気は整った中性的であり、髪は薄い茶髪のオールバック、目は二重のアーモンド形の薄い茶色の瞳が特徴的だ。

 

 こいつの今日の服装は紺色のジーパンに灰色の長袖ポロシャツと脳みそと同じで非常にシンプルだ。 

 

「ごめんねスイ、こいつ馬鹿だから今の会話は軽いジョークと思って、軽く聞き流して?」

「ひ、ひどっ⁈」

 

 後部座席から馬鹿の声と歌手のような透き通った心地よいが聞こえてくる。

 

 今、フォローをしてくれたのが音羽雫(おとはしずく)さん。

 

 スイさんの親友である雫さんは、有名な音羽財閥の一人娘でいわゆるお嬢様で有名な音大に通えるほどの音感を持っており、ピアノが得意だそうな。

 

 お嬢様であることを鼻にかけず人柄が良くて、今の会話で分かる通り、頭の回転も速く機転が利く人だ。

 

 すらっとした細身の長身に、同じくすらっとした胸……。

 

ゴンっ!

 その時、俺の座っている座席の背中に軽い衝撃が走り、若干揺れる。

 

「あら、ごめんなさい⁈ ちょっと足が滑っちゃって。前座席を蹴っちゃった(笑)」

「おいおい、ホントか? 今意図的に蹴ったように俺は見えたぞ?」

 

 ……な、何やら後部座席組が騒がしいが……。

 

 あ、そうそう紹介の続き、雫様はきりっとした細長い眉毛に二重の大きな茶色の瞳、整った端正な可愛らしい小顔に茶髪のロングヘアーをしている。

 

 そして、現在あの学と付き合っていたりするし、その関係か今日の服装は学とペアルックだったりする。

 

 雫さんが学に惚れたのは、感性が高く学の魂の強さと優しさを感じ取れたからじゃないのかなと思っている。

 

「ふふっ……。二人とも仲がいいんですね? 羨ましい」

 

 スイさんは楽しそうに笑うと後部座席をチラリと見ながらそう言った。

 

「え? そう見える?」

 

 雫さんは照れながらも、まんざらでもない顔をしている。

 

「え? 俺らそんなんじゃねーからね? 痛っ……」

 

 学は雫さんから足を踏みつけられ悶絶(もんぜつ)している。

 

 ……いい気味だ。

 リア従はそのまま爆死してはぜろ……。

 

 と、その時後ろから車が急に迫ってきて、パッシングしてきたのだ。

 

「うわ…(まぶ)しいっ」

 

 その後ろの車を見るスイさん。

 

「……あの車、黒のクラウンでなんかやばそうなんで、先に行かせたほうが良いかと」

 

 同感だった俺は車を道路の端に寄せ、後ろの車やり過ごし、車の運転を再開させる。

 

「あ、ごめん、知り合いにメール打つからしばらく無言になるね?」

「あ、どうぞ」

 

 スイさんはそう言うと無言で携帯をいじる。

 うう、さ、寂しい……。

 

 暇になった俺はミラー越しにふと後部座席に目をやると、学と雫さんは缶ビールを飲んで楽しそうに騒いでいる。

 

 更によく見ると、雫さんは学に体を預け学の耳元で何やら呟いているご様子。

 その直後、今度は学が雫さんの耳元で何やら呟いている姿が見えた。

 

 ……こいつら人が真面目に運転している時に何イチャついてるんですかね?

 

 と、その時雫さんの大声が車に響き渡る。

 

()()()()()()()

 

 その声の大きさに雷に打たれたようにビクッとする俺。

 

 メールを打っていたスイさんも驚いて後部座席に目をやる。

 

 なんだ? 何なんだ?

 

 

 ……。

 

 暫く車内は静寂に包まれる。

 

 そして雫さんが投げたビールの缶が運転席まで飛んできたのだ。

 

「あ、あぶなっ?」

 

 その後、缶は不幸にもブレーキペダルの真下にスッポリはまってしまった?!

 

 お、おおおイイイイイイイイい!

 

「う、うわー⁈」

「キャー⁈」

 

 当然、阿鼻叫喚の車内一同。

 

「あっ、ああっ⁈ 前さっきのクラウンが止まってます! と、止まらないと……」

 

 不幸は重なって起きるもの。

 

 俺は衝突しないように咄嗟に左にハンドルを切った。

 

キキーッ……!

 そのまま左に勢いよくスピンする車。

 

「う、うおおおおおおおおおっ⁈」

「キャ―――――⁈」

 

 そして、恐怖で思わず絶叫する俺達。

 

 結果、俺達の車はそのまま道路から放り出され、勢いよく真っ黒な闇夜を空中にダイブする。

 

「ひ、ひえええええ――――――⁈」

「い、いや―――――⁈」

 

 直後、超高層ビルのエレベーターに乗った時に感じられる真下に落ちていくスーッとする感覚に包まれ、体中がぞわぞわする。

 

 本能的に体が危険信号を出しているんだろう。

 

 その時、今まであった過去の出来事が走馬灯のように蘇ってきた。

 そう、俺と学は捨て子として孤児院に拾われ、兄弟のように育ったんだったな。

 

 その孤児院も幼少期に謎の火事にあい、実の兄弟のように育った学とは離れ離れで引き取られることになって……。

 

 くそっ、両親の愛情を知らない不幸の連続だった俺達にもこうして青春を謳歌する時が来たってのに……。

 

 何よりもスイさんに告白もしてないのに……。

 

 こ、こうなったらこのさい……。

 

 俺は急いでスイさんを見る。

 

「す、スイさんっ聞いてくださいっ!」

「はわわっ? はいっ」

 

「俺っスイさんのことっ……」

 

「ば、馬鹿野郎っ、今そんなことしている場合じゃねーだろ?」

 

「ひやいっ?」

 

「みんなっ、俺の手に掴まれっ」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 何故そうしたか自分でも分からないけど、学に惹かれるように手を掴んだ。

 

 皆もだ。

 

 その瞬間、俺らは不思議な真っ白い光に包まれ意識を失った。

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