転生したら魔王の次男だった件! しかも双子の片割れは悪友でした! 作:こんろんかずお
それから数週間後、ここは『ファイラス』の城内王の間。
王の間には立派な赤い絨毯が引かれ、整列した重曹騎士団が見守る中、一部の権力者達が会合を行っている最中であった。
『ファイラス』では現在、第一王子レッツ、第二王子ゴウ、そして第一王女の
そう、
「お兄様方、私は他国と争うことは反対です!」
「黙れっ! 王女であるお前に決定権はないし、俺達は方針を変えるつもりはないっ!」
城内に王女となった雫と王子達の口論が静かに響き渡る。
激情型である第一王子レッツは雫の態度に激昂し、頭上の王冠を激しく床に叩きつけ、怒りをあらわにする。
その様子を見て、周囲の大臣や宰相などはたじろぐばかり。
「……兄上のおっしゃる通りだ。もう確定事項なんだよこれは……。お前は頭を冷やしに城外に散歩に行ってきなさい……いい子だから、な?」
温和で優しい第二王子ゴウは素早い動きで王冠を拾うと第一王子にそれを手渡し、そのまま雫の前に立ちふさがる。
「分かりました……。失礼します……」
雫は王子達に一礼すると、言われるがまま静かに城外に出て行った……。
城外からかなり離れた川岸に出た雫は周囲をキョロキョロと見回し誰もいないことを確認すると大きく深呼吸する。
「レッツ王子のバッカヤロー! イノシシ武者――――――――――――っ!」
そして、今のその気持ちを表すように助走をつけ大きく腕を振り絞り、小石を川に投げつける。
「えいっ!」
ドポンという鈍い音とともに、川に緩やかに波紋が広がる。
「あ―――――――すっきりした!」
そのまま、川と真逆の方向に目をやる。
そこには立派な赤レンガで建てられたゴシック様式の美しい城塞が眼下を覆いつくしていた。
「いつ見ても壮大なお城よね。東京ドームの5個分くらいの大きさってとこかしら?」
城塞の素晴らしい眺めと、ストレス解消が済み、気持ちが落ち着いた雫は草むらに静かに腰を下ろす。
天気がいいためか、緑の何とも言えない香が立ち込める。
「……あーあ、せめて前王と王妃が生きていたならなあ……」
雫は座ったまま、再び小石を適当に川に投げ考え事をする。
雫がぼやくのには訳があった。
「……だいたいさ、この国は第一王子の発言権が強すぎるのよね……」
というのは、雫は王女としてそれなりの発言権はもっているものの、
なお、前王と王妃などの権力を持った前世代は先の大戦で軒並み戦死している。
「転生物のお決まりのスキルだけど、私の能力は地味だしな……」
雫はこの世界に転生した時に特殊能力を授かっており、『転生者を把握する』という、とても地味な能力を授かったのだった。
「スイだけ感知できないけど、こちらに来てないのかな」
雫は大きくため息を着き、川を見つめる。
川には雫の姿が鏡のように映っていた。
雫は紫色のゴシック式衣装のスカートを優雅に持ち上げ、草むらから静かに立ち上がると、そのまま青空をゆっくりと見渡す。
大きな雲がゆったりと流れ、聞こえるのは小鳥がさえずる小声と静かに流れる川のせせらぎだけ……。
雫は元々財閥のお嬢様であるが故に、人を使うことと情報収集能力には秀でていた。なので、『ザイアード』に二人がいることも、『ファイラス』の王子二人の思惑によって大戦が始まることも把握しているのである。
そして、最近『エルシード』の使者から提供された『国宝級マジックアイテム』いわゆる切り札が大戦のきっかけになっていることも。
残念ながらこの切り札の効果まではまだ把握できていない、王子達の情報のガードが堅いのである。
色んなことを把握はしつつあるが、如何せん王子達の監視が厳しく、自由に動けないのが辛い現状であった。
しかし、雫の涙ぐましい情報収集の成果により、この城から抜け出せる可能性を見つけたのである。
「あ……」
ゆったりと流れる雲は何となくだけど学達の顔によく似ていた……。
「大戦が始まる前に、二人に会えればね。まずはそこからかな……」
雫は決意を胸に静かに呟き、城内に戻るのだった……。