G1優勝馬として、最年長でご存命のレガシーワールド号。
色々資料を漁るうちに、競走馬それぞれにドラマが有るんだと実感します。
レガシーワールドがウマ娘化しないかなぁと思う今日この頃です。
狭く窓も無い部屋に閉じ込められたレガシーワールドは、憮然とした態度で答えるしかない。
「……で、つまりは試験が中止になった腹いせに暴れたという事ですね」
淡々とした様子で調書を取るのは、地元の警察官。
そう。ここはトレセン学園から最寄りの警察署の取調室。大立ち回りをした挙句、地元の警察にしょっ引かれる有様なのである。
「……なぁ、お巡りさん。腹減ったんだけどさぁ。かつ丼とかでないの?」
「お姉さんさ……ドラマじゃ無いんだから。出しても良いけど、お金は払って貰うよ?」
「……マジで? オレ……もう金無いんだけど……」
レガシーは呆然としてしまう。なんせ財布の中身は、十円玉と一円玉しかないのだ。
「……お姉さん、どうやって帰るつもりだったの? 家って北海道でしょ? いくらウマ娘でも、北海道までは走って帰れないでしょ……」
「どうって……試験に合格して、このままトレセン学園に入るつもりだったんだぜ?
そんな状況で、中止なんて言われりゃ暴れもするぜ」
レガシーの言動に、警察官は呆れかえるしかなかった。
その時だ。
「……失礼します。
先輩。今取り調べしているウマ娘なんですが、トレセン学園の関係者が身元引受人になりたいと連絡がありまして……」
「……!?」
レガシーは思わず椅子から立ち上がった。
ロビーに降りると、レガシーを待ち構えていたのは年配の男性であった。
「……君がレガシーワールドだね?」
「……そうっすけど。アンタは?」
男性はニヤリと笑いながら、懐から名刺を差し出した。
「俺はこういうモンだ」
受け取った名刺の記載は、レガシーの目にしっかりと飛び込んだ。
“日本トレーニングセンター学園 専属トレーナー 戸山”
「……おっさん、トレセン学園のトレーナーなのか?」
「そうだ。まぁ、詳しい話は飯でも食いながら話そうかね……」
戸山と言う男は、そう言いながらジェスチャーを出した。
二人は警察署から徒歩五分程度の位置にある、全国にチェーンを展開する食べ放題のレストランに来ている。値段は安いが、味は……と言う評価が一般的なのだが、長い時間空腹状態だったレガシーにしてみれば些細な問題にもならなかった。
「……そんで、金も無いから鈍行の電車を乗り継いで東京に来た訳。まぁ、帰りの電車賃も無いから、ここで選考会突破してトレセン学園に転がり込むつもりだったんだけどさぁ」
レガシーはそう言い放った後に、茶碗一杯の白米をペロリと平らげる。
「後先考えないにも程があるな……。それにしても、随分と腹が空いていたんだな」
戸山は呆れ半分に口を開く。
「まぁーな。昨日の朝から何にも食ってなくてよ……」
そう答えながら、レガシーは拳骨サイズの唐揚げを一気に口へ放り込んだ。
ウマ娘は普通の人間よりも遥かに強い力を持ち、かつ速い速度で走る事が可能で、長時間の運動に耐えるスタミナを誇る。
その反面、消費するカロリーも普通の人間とは比べ物にならない程多い。並みのウマ娘でも、一食の量は成人男性の倍以上は軽く食するのだ。
「こういう店じゃなきゃ、ウマ娘に飯を食わせられん。普通の飯屋じゃ、俺らの月給が軽く吹っ飛んじまう」
戸山は苦笑いしながら言った。
「……別に食わしてくれりゃ何も文句は言えねぇぜ」
そう答えるレガシーの箸は一向に止まる気配は無く、今度は大量の生姜焼きを掻っ込んだ。
大量の肉を咀嚼して、一気に飲み込んで水で流し込む。
一息付いて、レガシーは戸山に沸き上がっている疑問をぶつけた。
「なぁ、おっさん。何でオレの身元を引き取ろうと思ったんだ?」
「簡単な事だ。お前さんを、うちのチームにスカウトするって決めたからだ」
「……なぬ!?」
戸山が単なる身元引受人と思っていたレガシーにとって、予想外の答えだった。
「……これでも俺はトレーナーやってて長いんでね。昨日の選考会の様子は、しっかり見させてもらったよ」
「…………」
レガシーが少しバツの悪そうな表情を見せたが、戸山は構う事無く言葉を続ける。
「中止の腹いせに、他のウマ娘十何人を引きずり回すほどの大暴れ。普通に考えれば、牢屋にぶち込められても仕方の無い話だ。
だがな……。他のウマ娘を圧倒出来るパワーと、その負けん気の強さは並外れてる。
お前さんは、間違いなく速くなる。それだけは断言できる」
戸山はそう断言した。
「じゃあ……オレはトレセン学園に入れるのか?」
「俺は、入学させるつもりだ。明日にでも理事長に掛け合ってみる」
そう言われ、レガシーは思わず右手でガッツポーズをとっていた。
「ところで、お前さんは何処で寝るつもりだ?」
「……考えてなかった」
「…………じゃあ、俺の家に来い。でなきゃ野宿するしか無いだろう?
どうせ女房と二人しか住んでないし、着る物は嫁いだ娘の奴がタンスに眠ってる筈だ」
「……すんません。よろしくお願いします」
レガシーはテーブルに頭が引っ付く程に頭を下げた。
翌日。
改めて、トレセン学園の理事長室を訪れたレガシーと戸山。
「……話は聞いている」
二人の眼前に立つのは、トレセン学園理事長の秋川やよい。
そして、満面の笑みでソファーに腰を掛けるレガシーに、こう断言した。
「……拒否!! 戸山君の頼みと言え、簡単に認める訳にはいかーん!!」
「何だとこのチビー!!」
今度は鬼の形相でテーブルを持ち上げ、今にもぶん投げそうな勢いだ。
「落ち着かんか、レガシー……。最後まで話を聞くべきだ。
理事長、話を続けてください」
戸山は静かにレガシーを制止させる。
「……聞きしに勝る暴れん坊っぷり。ここまで血の気の多いウマ娘も中々珍しい……」
流石の理事長も少々呆れ気味のままだが、レガシーに向けて話を続けていく。
「今年度のトライアウト試験が中止と言うのは周知の事実。
その状況でトライアウト参加者からスカウトし、且つ入学を認めるという事。その行為は、他のトレーナーやウマ娘達に顔向けが出来ない。それは、このトレセン学園を預かる者として言わせてもらう。
しかし、君はこの戸山君自らがスカウトを申し込む程の逸材。それをみすみす見逃す事も、ウマ娘の未来を憂う者としても心が痛む……」
理事長の言葉に、レガシーはテーブルを持ち上げたまま耳を傾ける。
「そこで……提案!!」
「……提案?」
「翌日、君にはトライアウト試験と同様のテスト内容を受けてもらう。
まず、不合格だった場合だが……。
その時は、君をトレセン学園の職員として一年間働いてもらい、来年度の試験を再度受験してもらう。この場合、受験方法は問わないものとする。
そして……テストに合格した場合。
晴れてトレセン学園の生徒としての入学を許可する!!」
理事長の言葉を聞き入れ、レガシーはテーブルを元の位置へ置いた。
「その言葉……本当なんだな?」
「……無論!!」
ニヤリと笑みを見せて、レガシーは言い放った。
「……あんた達、一年後の今頃には“あの時何故レガシーワールドをテストしたんだろう?”って思い返す事になるだろうぜ」
その言葉には自信があふれ出ていた。
そして、翌日……レガシーのトライアウト試験当日。
生憎の雲行きの中、再び学園を訪れたレガシー。
「……レガシー。調子はどうだ?」
迎え入れる戸山だが、レガシーの異変にすぐさま気が付いた。
「…………」
戸山に声をかけられても、レガシーの反応は妙に薄く、何よりも口数が少ない。
よくよく見ると顔色も悪く、尋常ではない汗をかいている。その上、歩いてきただけにも関わらず肩で息をしている。
「……お前、もしかして」
そう言って、戸山はレガシーの額に手を当てる。
「……風邪引いちまったぜ」
レガシーの言葉は弱々しかった。
かくして、レガシーは最悪の状態でトライアウトに挑む事になった……。
キャラクターの紹介は必要なのか、若干迷う所です。
今のところは未定です。
ボチボチと更新をお待ちください。
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