作:『?』

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廃材群

罪狩りの神話・序

 

 古き蛇は大地を操る権能で以って、悪食の獣を生き埋めにした。

 雲より果ての果て。幽世まで届くであろう高遠たる岩塊と、その中に埋もれた遺骨の群れは未だに呻きをあげるという。

 

 精霊たちは蒼き光の魔法を操り、死の時でさえも美しく怨嗟を撒き散らした。

 彼らの古戦場は未だに触れたものを喰う蒼が燻り、また実体のない肉団子が苦悩している。

 

 清き龍は熱量を持つ咆哮を放ち、羽ばたくたびに凍てつく風を巻き起こした。

 森の一角には溶けない氷に包まれた世界と、その中央にガラス質の壁を持った底のない穴が空いているだろう。

 

 恐ろしい女王より産まれたる子蜘蛛は大地を黒く染め上げて、糸編みの天蓋と這い寄る恐怖で森を覆った。

 今もなお地面を掘ればややもせず、苛まれる蜘蛛の潜む地下世界が広がっている。

 

 そして獣。

 彼らは数多の先達を屠るのみならず、未だに台頭し世界を蹂躙する中立的敵対者。

 不死なり。黄泉還りなり。法則より外れたり理外の怪物。

 奇跡は死に絶え、神秘は失われ、今はまだ貪食に甘んじるようだ。

 

 あぁ、恐ろしきは罪なのか。

 どうして恨むか、飢えたものども。記憶もとうに擦りきれたのに。

 蛇は語らず、巨人は怯え、腐れた魂魄を磨り潰す。

 

 祖なるものたちの尊属殺か。

 別たれた魂は、何を想って喰らうのか。

 

 彼らの愚か。

 我らの罪よ。

 

 仇討ちに意味は無く、報復は報われない。

 哀れなる犠牲が遍く滅ぼす日も遠くはないと、賢者の亀は言を結んだ。

 

 世界は勇者を待っている。

 

 

浄化に非ず

 

 透き通る満月が水彩画のように滲んで、垂れて、雫となって落ちてくる。

 そうして目に入った液がすうっと沁みて、また緩やかに頬を伝う。

 気付けば黒く濁ったそれが、沢山の夢と沢山の未熟を連れていくようだ。

 あぁ、これがきっと浄化。

 かつては尊くて、美しくて、素晴らしく見えたのに…

 

 しかし、それでも、

 

 白い闇で塗りつぶされた画用紙。

 もう欲と汚れだけになってしまった胸の奥。

 何もかもを諸共に流していく穏やかな夢はきっと僕らを救ってくれる。

 これこそが、最も相応しいものだ。

 

 残酷だけれど。

 

 

急募・幕引き

 

 三十次元より高くて昏い冗談みたいな宇宙の湖を、今も意味なく彷徨う幽霊烏賊の警笛を聞け。

 幾何学形質は滑らかながら角張って、形而上の抽象性を漠然と…けれども確かに称えているのさ。

 

 子守唄は君の心。怒声は夢中。鯨は何処へ?

 

 わらって、わらって。

 それがいちばん、きれいだからね。

 

 

不可能性の提示

 

 君の心は何色か。

 燻んだ色だったら、遥か過多な眠剤をあげる。…甘く厭魅な安楽が、きっと全てを許すから。

 清々しい色だったら、白く滑らかな翼をあげる。…駆けゆく意思を持つならば、いつか聳える壁を見るから。

 

 そんなものは、要らないと?…ならば何をも映さぬ瞳孔は、どこを見るのだ?

 

 その水底のように綺麗な深みで、僕を溺れさせることはしなかった。

 迫る針を見つめ笑う、眠る、遊ぶ、走り去る。

 空の来たるは夢の跡。残骸に残るは理想だけ。

 

 愛しい君。知らぬ糸を手繰って、どこへ行くのか。

 どこへ行くのか。




今や太陽や月にさえ忘れ去られた埋没都市を覚えているでしょうか?
それは私たちの故郷なのです。

もう帰ることはありませんが、きっと見れば懐かしいと思うでしょう。
…でも仮に。貴方が忘れてしまったのならば、知るものは誰もいなくなってしまう。

もちろん知っていますとも。
誰しもが、何であろうと、永遠などあろうはずがないのです。
それでも滅亡とは悲しいことだと思いませんか?
そうなってほしくないと願うことに貴賎や是非はないでしょう?
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