戦犯者たちの生き甲斐   作:サービス

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19話

失敗した…

 

全速力で走りながら商人は素直にそう思った。

 

 「ゴォォォォォォ!!!!!!」

 

背後から破壊音と共に叫び声が聞こえて来る、脚はそんなに速くはない様だが捕まれば間違いなく助からない…

 

それは普通ではなかった…複数の感染者達が一人の感染者によって吸収され丸みを帯びた存在に複数の手足がある。

 

しかもそれは一つの生命体ではなかった…よく見ると癒着している感染者達は動いている。

 

吸収と言うより共生に近いかも知れない

 

 「なんっっ!何なんだ!?あれは!!あんな物見た事ねぇぞ!!」

 

横を走っているマニーが何か言っているが商人達は取り合う余裕はなかった。

 

陸上選手もかくや無駄のないフォームで全力ダッシュを行う商人とアビー達…

 

距離が開いた所で振り返りながら銃弾を喰らわせているが効果はみえない…

 

 「クッッソ!!周りに張りついてる奴らのせいで中まで通らない!!」

 

 「まぁ明らかにストーカーやらクリッカーとかの厄介な個体ばかり張りついてるからな…生半可な武器じゃまず攻撃は通らんだろう。」

 

 「言ってる場合!?攻撃したなら早く逃げるよ!!」

 

有効な攻撃手段がないと解ると再び走り出す四人、仲間達の待つ上の階に行きたい所だが、奴は間違いなく自分達を追って来る…そうなればどうなるか。

 

見たこともない個体の出現→思考停止→捕食開始→大惨事

 

それだけは絶対に避けなければならない。

 

だからこそ大して効果のない攻撃を時折当てながらやつを引きつけ、出口から離れた場所に遠ざけようとしていた…

 

 「ウゥゥゥオォォォォ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ハァ…ハァ…ハァ…みんな無事?」

 

 「オェ…何とか…」

 

 「ハァ…no hay problema、問題ないぜ。」

 

 

走り続け出口からある程度離れた所まで来て全員の安否確認を行うアビー。

 

 「ったく!何々だよあのバケモンは!あんな奴見た事ねぇぞ!」

 

 「ああ、俺も初めて見る個体だ…」

 

 「私も…」

 

未知の感染個体の出現に動揺を隠せない三人。

 

だがいつまでもこうして休んでる訳にもいかない、またいつ奴が現れるか分からないのだ。

 

 

 「…とにかく一旦上に戻ろう、今の装備じゃアレはどうしようも出来ない…」

 

一先ず日を改めて装備を整えてから再度挑もう。そうオーウェンが提案すると2人も頷いた。

 

 

 「よし!取り敢えず入り口付近に奴が居ないか確認しよう。居たら銃を撃って引きつける、居なかったらそのまま脱出だ!」

 

 「了解…しかしアイツは何々だろうね?ひょっとしてアイツが最初の感染者なのかな?」

 

 「かもな…まぁ詳しいことは次の機会にでも調べれば良いだろ、なぁ商人、商人?」

 

マニーが商人に話しかけるが返事が返ってこない、おかしいと思い回りを見渡す…

 

商人の姿はどこにも無かった。

 

 

 「「「商人ンンンンン!!」」」

 

三人はどこかに感染者が居るにも関わらず大声で叫んでしまった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

バシャバシャと水の中を歩く音が聞こえる。

 

 「クソ…ついてないな…」

 

商人である。

 

彼はあの異常個体から逃げる際、床の崩落に巻き込まれ地下に落ちていたのだ。

 

幸い怪我はなかったが、アビー達とは逸れてしまった。

 

それにしてもまさかあんな化け物が出てくるとは思いもしなかったと商人は内心で愚痴をこぼす。

 

幾らこの世界の感染者が自分達の世界から見たら大したことは無いとはいえ、流石にもう少しマシな銃火器を用意すべきだった。

 

今あるのは除草剤の容器とハンドガンに捕獲用の麻酔銃のみだ、噴射機は地下に落下した時に壊れた。

 

 「ともかくあの三人組と合流しないとな…」

 

碌な装備もない自分一人じゃあっという間に殺されるだろう、そう思いさっきから地下を歩いているのだが一向に階段らしきものが見つからない…

 

 「やはりすべて瓦礫で塞がれているのか…?」

 

あの感染者が暴れたせいか、建物が古いからか、或いはその両方が原因か、あらゆる道が瓦礫で塞がれていて通れない。

 

これ以上歩き続けていても意味はないだろう、そう思い自分が落ちてきた場所に戻る為踵を返す、運が良ければ三人が探しに来てくれるかもしれない。

 

 

 「グォォォォォ!!」

 

 「…オイ嘘だろう…」

 

落ちた場所に戻ろうとした商人が後ろを向くとあのバケモノがいた…

 

いつまで経っても獲物が捕まえられず苛立っているのか周りにあるもの全てを破壊している。

 

すぐさま離れた場所にある物陰に隠れ奴に気づかれない様に息を潜める。

 

医療機器や病院の壁などが破壊されていくのを見ながら商人は考える。

 

 (どうする?階段は使えない穴の下で助けを待つ事も奴の所為で出来なくなった、他の出口を探すにしても見つかる前に殺される…)

 

なら…此処でやり合うしかない商人は覚悟を決めた。

 

幸いにも奴は自分に気づいていない、商人は音を立てない様にゆっくりと物陰から物陰へと移り感染者に近づく…

 

 「グゥゥゥゥゥ!!!」

 

 (まだだ…もう少し…)

 

感染者まで後2、3メートルといった所まできたが商人はまだ油断しない、この距離ではまだ遠い…

 

 (あそこだ、奴が破壊した壁の瓦礫で丁度死角になっている場所、あそこからなら届く…)

 

商人はゆっくりと懐から除草剤の容器を取り出し蓋を開け、拾った大きめの容器に中身を注ぐ。

 

そう、商人は除草剤の原液を直接ぶっかけるつもりである…

 

自分でも何やってんだと思うがもうこれしか無い…

 

そしてついに目的の瓦礫に到着する、感染者は自分に背を向けている。

 

そして…

 

 (よし…!今だ…!!)

 

商人は容器の中身を感染者にぶち撒けた。

 

 





商人達が使っている扉についての前日譚を書きました。
駄文ですがもしよろしければご覧ください。

タイトルは狂宴場の崩壊です。
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