戦犯者たちの生き甲斐 作:サービス
「良く来たなストレンジャーズ」
「初めまして私がアビゲイル。後ろに居るのが右からオーウェン、マニー、ノラ、メル、ジョーダン、リア、ニックよ」
「ああよろしく」
アビーを始めとする、元ファイヤフライ組に挨拶をする商人。お互いに挨拶を終えると……タイミングを見計らって、マニーが話しかけてくる。
『しかし……見た目じゃ全く判断出来ないくらい、兄弟とそっくりな恰好だな?』
『……兄弟? 兄弟って、シアトルのあいつか? まぁ……この格好は、個人を特定されにくい様にわざと同じにしてる訳だからな。判別できたら意味がないだろう?』
互いに母国語であるスペイン語で話しながら道を進む……。
『しかし…』
商人は後ろのメンツを一瞥する……正確には、その中の一人に……。
『……あのガキんちょは誰だ?』
子供がいた。先程の紹介時、説明されなかったスキンヘッドのチビっ子を視線に捉えて……。
『……なんだ? 聞いてないのか? シアトルの支店の見習い雑用係だそうだ。確か名前は……レブだったか?』
『聞いとらん…』
周りを不思議そうに見ながらアビーの手を握っている、見習いなんてできたのか? ……とか思いながら森を抜けて行く。
しばらくして……ジャクソンの街に着く。すると、前から二人の男女が現れた。
「いらっしゃい。話は聞いてるわ、シアトルから態々ご苦労様……。この街の代表の一人、マリアよ」
「夫のトミーだ、よろしくな」
二人の登場に、アビー達は体を硬直させる。商人の肩を掴み……後ろに引きずってき、小声で怒鳴りつける。
(ちょっと!? どう言うことよ!!)
(何がだ?)
(……何が? じゃないでしょ!! 何で、街の人間に話が通ってるのよ!!)
(……イヤ、一応俺の商売相手だから……話を通さんと筋が合わないだろう? 其れに誰を探してるか知らんが……探してる奴が居るなら街の住人に直接話を聞いた方が早いだろう?)
当たり前の事を聞くなと言う様な商人の態度に……アビーが拳を振り上げそうになるも、男達がそれを止める。
(……ちょっと待て、兄弟から聞いてないのか!?)
(復讐したい奴がその街に潜んでるらしいから頼むとは言われたが……それ以上の事は何も知らんぞ?)
ウソである
「まあまあ君たち……待ってくれ。商人を離してやってやれ……」
トミーが彼らに声を掛け、宥めるも彼らの表情は不満げだった……だが?
「……俺も元ファイヤフライだ。なぁ? 良ければ、事情を話してくれないか? ……何か、協力出来るかもしれない」
〜アビー達が来る数週間前〜
「……ファイヤフライの奴らが、ジョエルを殺しにくる!?」
「元、ファイヤフライな? 今は、ワシントン解放戦線……通称”WLF”だ」
シアトルから連絡を受けた商人は……事の経緯を、ジャクソンの街の連中に伝えていた。
「何でも……ワクチンの開発責任者の娘がいるらしくてな? その他にも仲間を殺された仇だとかで……何人か、その娘に同行して来るらしい」
商人の言葉を聞いたマリア、トミー、エリー、そしてジョエルは黙り込む。
しばしの沈黙の後……ジョエルは口を開いた。
「……俺が名乗り出る」
「ジョエル!?」
その場にいた全員が目を見開き、ジョエルの方を見る。
「何バカ言ってんだ!! エリーを残して死ぬつもりか!?」
「そうよ、早まらないで…何か別の方法を考えましょう」
「そうだよ!! 一旦街から避難して、そいつらがいなくなったら戻ってくるとか!」
「……そりゃ無理だ、嬢ちゃん」
商人が、エリーの案に待ったをかける。
「何でよ!?」
「そりゃあ……俺たちが居るからだ」
「えっ?」
呆気に取られた表情の彼女を無視して、商人は話しを続ける。
「WLFの連中は、唯の得意先ってだけじゃない……ワクチン開発の協力者でもある。ジャクソンシティも得意先ではあるが……そいつらが、そこの
「ッ!? アンタ!!」
「……今な? こうして情報を話すだけでも……最大限の譲歩なんだ。分かってくれ……嬢ちゃん」
その言葉にエリーは我慢できず……商人に向かって飛び掛かる。
「譲歩ってなに!? 人殺しに協力しておいて、譲歩もクソもないでしょ!」
「それはごもっとも……人殺しはクソだ。……どんな理由があろうとな……」
商人はジョエルを見る……その態度に対して、エリーは言い返す。
「ジョエルは……ジョエルは、私が殺される所を助ける為にやっただけ! ファイヤフライの奴らをやらなきゃ、私は殺されてた!!」
「それなら、ファイヤフライは人類を救う為に嬢ちゃんを殺そうとしただけだ……。規模や被害で言えば、向こうの方がでかい」
エリーは商人を殴り飛ばす。
更に追撃を行う為、倒れた商人に向かって飛び掛かろうとするが……ジョエル達の、三人に止められる。
「エリーもうやめて!」「エリー!!」「やめろ!!」
「離せ! 離してよ!!」
涙を流しながら……必死にもがいて走り出そうとしながら……エリーは懇願する。最も……こんな事をしても、何も解決しない。
しかし……この無神経な奴の態度は許せない。そんな思いも知らずに、商人は話す。
「……フゥ、まあそんな訳だ嬢ちゃん? 連れて逃げるもよし、最後の時を一緒に過ごすも良し……好きにしろ」
ひとしきり暴れたエリーは、ジョエルの家を出て行く……。その後ろ姿を見送り見えなくなったあたりで、再び商人は大人達に向き合う。
「さてと…」
三人の商人を見る目は冷たい。商人を庇ったとは言え……気持ち的にはエリーに、トミー達は同意してるし……エリーを泣かせた事から、ジョエルからも冷たい目で見られている。
「……じゃあ、ストレンジャー達? 商売を始めようか……」
『感情よりも商売』……それを物語るかのように、商人はジョエル達の眼差しを無視しては話を続けるのだった……。