離れて近づいて ~infinite world~ 作:月島柊
言い出さずに戻ってきたのはいくら何でも悪かっただろうか。
俺はまだ昼間なのに、自分の部屋にいた。それは全て自分のせいなんだけど。
ただ教えたくないだけなのに。
俺は気分転換に外に出てみた。
「眩しっ」
強烈な紫外線が俺を痛めつける。なんで俺はこんなにも紫外線に弱いのだろう。
冬になっても気温は中々下がらず、まだ25℃あった。11月に入ったのに25℃なんてどうかしている。その分、1月や2月は途轍もなく寒い。下がったときだと最高が2℃の日があった。
おっと、こんなことより気分転換だ。
「お兄ちゃん!何してるの?」
「ちょっと有希に悪いことしちゃってな。気分転換だ」
「え?お姉ちゃんいるよ?」
咲希に会ったと思ったら有希もいたのか?だったら、今すぐにでも謝ろうかな。
「蒼くんっ」
「あ、有希。ごめん、急に帰ったりして」
「もう気にしてないよ。なんかあったんでしょ?相談してもいいのに」
有希は俺にぎゅっと抱きついたまま言った。
「あ、有希……じゃあ、いいかな」
「うにゅ」
俺は有希に相談した。
「俺、いつの間にか『双剣』ってスキル手に入れてるんだけど、これ、攻略組の1人が持ってるらしいんだ」
「攻略組って、ゲームに沿わない行動をしてもダンジョンに登るっていう?」
有希も存在は知っているらしい。
「そう。それで、その人の顔は誰も見たことがない。だから、俺が使ってると疑われるかもしれない。だけど、有希たちを守るには必要なスキルだ」
「だから悩んでるの?」
「そういうこと」
有希は俺の目を見つめて言った。
「今、2つの武器使えるじゃん。それでいいよ。守るのは。それに、気付かれて、疑われても蒼くんを味方だと思ってる人はたくさんいるよ。サーバー1位なんだから」
有希は俺の頭を撫でて言った。有希っていつから俺を守れるようになったんだろう。救われた気がした。
「……ありがとう、自信が持てたよ」
「いいよ。蒼くん」
有希は胸に俺の顔を埋める。安心できる環境だ。
「お姉ちゃん、色仕掛け?」
「違うっ!安心させてるの!」
「じゃあ私もっ」
咲希が反対側から胸を押しつける。柔らかい…じゃなくて、なんだこの状態は。
「絶対咲希は色仕掛けでしょ」
「違うもーん、安心させてるもーん」
いや、咲希は色仕掛けだ。絶対。
というか、いつまで俺を胸で挟んでいるんだ。
「有希、咲希、離して……」
「あっ、ごめん!」
有希と咲希はさっと離れた。俺は有希の手を掴み、手を揉んだ。
「揉んでる?」
「あぁ、さっきくっついてて思い出したんだが、有希って手強くないんだな」
「ゲーム内では指が怪我しないように保護してるし、力は入れてないし」
なんか心配性みたいになっちゃったけど。
「そうなんだ…」
「いつまで触ってるの」
有希が笑いながら言った。
「あ」
「無意識?ちゃんと愛してよ?」
ああ、無意識だった。
って、ん?最後なんて言った?「ちゃんと愛してよ」って言ったか?いや、もしかしたら「ちゃんとしてよ」かもしれない。
「愛してくれないと泣いちゃうからね」
聞き間違いじゃないらしい。
「愛しますよ。そこまでいわれたら」
俺は有希に微笑んだ。