離れて近づいて ~infinite world~ 作:月島柊
仮想世界で出会った、武器屋のテグリス、パーティーメンバーの美菜、サキ。この人たちは現実世界であったことがない。仮想世界でしか会ったことがないのだ。
有希の来ているところは同じだから分かるが、他のプレイヤーがどこからログインしているかなんて分からない。というか、もっといえば美菜とサキが現実世界で女性なのかすら分からない。テグリスは多分男性だろうけど。
そこで、俺は近くの居酒屋で、「第一回、infinite worldオフ会」を開催することにした。
参加メンバーはさっき挙げた3人と俺と有希。5人だけだが、十分だろう。
そして、俺は早速会場に向かった。最寄り駅は横浜線成瀬駅で、俺は東海道線で横浜まで行き、横浜線で成瀬なで。有希は用事で小岩に行っていたため、新宿まで総武線で移動し、小田急で町田、町田から横浜線で成瀬まで来ていた。
20時頃、全員が集まり、オフ会は始まった。全員社会人で、特に驚いたのは……
サキが妹の咲希であったことだ。
「咲希、お前だったのかよ」
「ごめーん。お兄ちゃん」
「来るとき会ってなかっただろう」
「だって相模線と小田急、横浜線で来たんだもん」
会わないためか。
「あ、私は多分この中だと遠いかも。上大岡で、ここまでブルーラインと横浜線で来てるので」
美菜だ。
「まず、本名知りたくないか。俺は影山蒼。こっちが影山有希、それで影山咲希」
「私二野美波。よく『にの』って呼ばれてる」
「俺は高橋健二だ。仮想世界の名前はなんとなくだ」
みんな優しそうな人だった。
「おう、俺は流山市に住んでてな、ここまでは流鉄流山線の流山から馬橋までいって、そっからずーっと小田急まで来て、町田で横浜線だ」
「私と代々木上原から一緒だったよ」
有希が言った。
「そうだったな!」
健二は相変わらず大きく強い声だ。
「健二、筋トレかなんかしてるのか」
「俺はジムのトレーナーだからな!当然さ!」
ジムのトレーナーなのかよ。だからその筋肉。
「美波ちゃんは何の仕事してるの?」
「デザイナー。多くはお店のロゴとかなんだけどね」
「すごいじゃん。どんな店なんだ」
俺は美波に聞いた。
「ペットショップとか。今は確か町田と飯田橋にあるんだけど、店舗によってロゴが違うから楽しかったよ」
「いいなぁ、絵心がないからなぁ」
有希が羨ましそうに言う。
「有希ちゃんは何の仕事?」
「電車の情報処理。機械は苦手だから、たまに蒼くんに教えて貰ってる」
「情報処理かぁ。すごいなぁ」
初めて言われた。
あ、帰る時間決めないと。
「みんな何時に帰らなきゃいけないんだ」
「最終でいいから、22時半だ」
健二は遠いからそんなもんだろう。
「23時半くらい。東神奈川から歩き」
「私たちも同じ電車かな」
「そうだな。23:44の東神奈川行き」
咲希と俺、美波は同じ電車だった。
「今日は小岩のお友達の家に泊まるから、23:32の電車」
みんな帰る時間はバラバラだな。
「あ、待った。もうちょっと長くいれそうだ」
「なんで」
「流山じゃなくて南流山から歩くんだ!運動にもなるしな!」
相変わらず運動なんだな。
「すみません、唐揚げ5人分」
「いいの?お金とか」
「山分けか?」
そうすると1人4000円前後になるが。
「えっと……」
「冗談だよ。俺が払う。月に100万とか無駄に貰ってるからな」
「太っ腹だな!蒼!」
健二が俺の背中をたたく。
「強い!」
「大丈夫?蒼くん」
美波が俺の背中をさする。
「健二、強いよ」
「あっはっは、すまんな」
反省してるのか?別にいいけど。
「あっ、そういえば、次いつみんな行ける?仮想世界」
「俺と咲希は次の土曜と日曜」
「私も土日」
健二はカレンダーをバックから取り出して、指でなぞりながら言った。
「しばらくは行けるな。武器屋をやってるのもあるが」
「私は土日」
みんなが集まれるのは土日ってことか。
「あっ、グレープ酒2つ!」
有希は店員さんに言った。2つって、咲希もかな。
「俺レモン酒でいいや。健二たちは」
「俺はビールだな!」
「私、グレープソーダ」
「お酒嫌いなの?」
子どもっぽい身長だけど、絶対言ったら怒られる。
「うん。小柄なのもあると思うけど」
自分から言っちゃうのな。
「小柄でかわいいじゃんっ!小動物みたい」
「え、そう?」
嬉しそう。美波は有希に頭を撫でられながら照れている。
「はっはっは、美波たちは仲がいいんだな!」
「あ、俺たち仲良くない?」
「そんなわけないだろう!相棒!」
相棒なんて、俺は言った覚えがないんだが。
「あー、はいはい」
「そうだ!明日、店に来れるか」
「ん?行けるが」
「少し手伝って貰いたいことがあってな、明日午後手伝ってほしいんだ」
なんか武器の関係でもやるんかな。
「いいぜ。明日な」
「そうだ。待ってるからな」
俺は健二と唐揚げをつまんだ。