求、父親の自殺をやめさせる方法   作:麻寿津士

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続きました。


求、お嬢の謎行動の理由

俺様はクイーン! 若くしてカイドウさんの右腕となった期待のルーキー!

とは言ってもカイドウさん自身、所謂レジェンドたちに比べりゃ若い方だが、間違いなくあいつらなんてかき消しちまうイカした伝説(レジェンド)になる人だ。

 

そんな我らが船長には一人娘がいる。名前はヤマト。

父親に似ず顔は可愛いが、まだ10歳なのに随分と肝が据わってる。

 

ついこの間、何を思ったかカイドウさんは海軍の船団相手に単身つっこんでいった。

それだけでもやべぇのに、暴れまくって全員海の藻屑に変えちまったんだから、しびれるぜ。

俺達でもビビっちまうぐらい憧れる、そんな活躍を目の当たりにして、ヤマトお嬢は眉一つ動かさず動かさず出迎えたっていうんだから。

この父親にしてこの子ありとはよく言ったもんだ。

 

さて、そんないつも詰まんなそうな仏頂面でおなじみのヤマトお嬢だが、今日はどうにも様子が違った。

可愛げはないが聞き分けのいいあいつは、いつもカイドウさんに呼ばれるか用があるかしないと、側へ近寄ったりしない。

ガキにとって何か面白いことがあるわけでもないしな。

 

というのも、絶賛戦力拡大中の我らが百獣海賊団を、しっかり者のカイドウさんはきっちり書類で管理してる。

俺も勿論そのお手伝いをしてる。頭たいまつのどっかの誰かと違って、こういうデータ管理は慣れてた。昔取った杵柄ってやつだ。

そういうわけで、俺達は結構机仕事が多い。じっとしてるだけなんで子供には退屈極まりないはず、だが。

 

「ヤマト、何か用か」

「……別に」

 

今日何度目かのカイドウさんの質問にも、ぶっきらぼうにそういうだけ。

別に何かするわけでもない、カイドウさんのズボンの端をちょこんと握って見つめている。

これが一時の事なららしくない、不器用な可愛い甘え方ですむのかもしれないが、かれこれ2時間はこの状態だ。

 

なんなら朝一で目を覚ましてから、今日のヤマトお嬢はずっとカイドウさんにべったりだった。

飯や見回りぐらいならまだしも、便所もすぐ近くまでついて行こうとする。

そして座り仕事がはじまってからもこの調子だ。

 

別に、な奴はそんなことしない。にらみつけるような、厳しい眼差しからも何かしら目的があるのは確かだが。

あのカイドウさんの娘に、無理に口を割らそうなんてできるわけないし、仮にやったとしても喋るとは思えなかった。

しかし、四六時中子の調子じゃあカイドウさんも落ち着かないだろうということで、ここはクイーン様が一肌脱ぐことにする。

 

「そういや、お嬢にはまだ見せたことがなかったな」

「なにが?」

 

意識がカイドウさんからこっちへ向いた。

いいぞいいぞ、この調子だ。

子供という生き物は『ロマン』に弱い。

そんなのは男の子だけだって? 甘いな、誰の胸にも少年はいるもんだ。

 

「見てな!」

 

柱のように太く逞しい足!

ビル何階建て分にも相当する長く特徴的な首!

FUNKな胴体!

そしてそれらが作り出す、圧倒的で巨大な全身!

 

リュウリュウの実、古代種モデル:ブラキオサウルス!

 

さあ存分にエキサイトしなヤマトお嬢!

 

「でっけ」

 

可愛げがねぇ。

文字に起こしても三文字、つうか実質二文字。

表情一つ変えず俺を見上げると、お嬢はそれだけ言ってまた父親を見つめる作業に戻る。

どういうことだよ。カイドウさんが物凄くいたたまれねぇ顔してんじゃねぇか。

 

「待ちなお嬢、クイーン様はこれで終わりじゃねぇんだぜ!」

 

鉄の脛骨を得てさらに伸びる首!

光る口!

様々な工具武器に変化する手!

全身に仕込まれたギミック!

 

そうさ俺はサイボーグ!

 

恐竜×ロボ!

ロマン×ロマン!

エキサイト×エキサイト!

 

この姿にはさすがのヤマトお嬢も形無し間違いなし!

 

「痛そう」

 

クソほど可愛げがねぇ。

またもや三文字。全部ひらがなにしたって四文字っぽっち。

どうなってんだ、マジで人類(ひと)の子か? それでも赤い血流れてんのか?

親の顔が見てみたいぜ。いやいつも見てんだが。

 

俺もヤマトお嬢そっくりの仏頂面で人の姿に戻る。

仕事しよ。

 

「……」

「………あ、カイドウさんこれなんすけど」

「……」

「どれのことだ……ああ、それか、どうした」

「……」

「いやここの数とここの数がね……」

「……」

 

いや気まず。ってか居心地わっる。

 

おかしい、一切の可愛げを失っているとはいえ、お嬢はたった10歳のガキ。

それがどうして、無言で突っ立っているだけでこんなにも威圧感を与えるのか。

時計を見るとアレからさらに1時間たっている。

三時間も何もせず突っ立ってるなんて、下手な筋トレよりよっぽどきついだろうに。マジで何考えてんだこいつ。

 

「そういやカイドウさん、そろそろ次の予定が」

「ああ、そうだな」

 

椅子から立ち上ると、流石に手を離した。

それでも決して離れず足元にまとわりついているのは変わらない。

 

しかし、改めてみると身長差がえぐい。

ヤマトお嬢だって、同じ年齢の子供に比べれば2倍ぐらい身長があるんだが、カイドウさんはさらにそれの4倍ぐらいはある。

俺からしたって、近づかれすぎると腹の影に隠れちまう。ちょっと間違ったら踏んづけそうだ。

 

今から行くのはワノ国の工場見学。

オロチのやつが抑えてるとはいえ、何があるかわからない。

万一の事があった場合、守るどころか蹴り飛ばしかねないのはちょっと、いや大分困る。

そう思っていると。

 

「ヤマト」

「……何?」

「邪魔だ」

 

ひょいと掴んでぺいっと放られる。

丁度近くにいた女どもが見事にキャッチする。

なにあれうらやましい。

 

お嬢が追いかけてくる様子はない。

投げられた衝撃で目を回したのか、数人がかりで押さえつけられて、振り切れないのかもしれない。

それとも、流石にカイドウさんにビビったか。

 

「それにしても、ヤマトお嬢はなんであんな真似を?」

 

カイドウさんは知るか、という代わりに眉間にしわを寄せた。




短編日刊ランキング9位、ありがとうございます。
不定期ですが連載として続けようと思います。
お付き合いよろしくおねがいします。
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