同級生に脅迫されてます 作:ドゥアイ
「ふっふっ、やっと見つけましたよ!」
「教室出た時からずっと付けてたくせに」
虹ヶ咲学園近くのファミレスに入り、僕はドリンクバーのコーラを啜りながら目の前の少女、中須かすみを睨む様に見つめた。
「どうしたんですかそんなかすみんを情熱的に見つめて……はっ!もしかしてかすみんの可愛さにやっと気づいちゃいましたか!もぅかすみんは皆のアイドルなのでお付き合いとかは無理なんですよ~、でも今までの恩もあるのですこーしくらいなら」
「はぁ……」
いつもの様に繰り返される彼女の自意識過剰で自尊心が肥大な言葉のマシンガンについ辟易してしまって、僕はため息を付いた。
「かすみんの前でため息を付くとは何事ですかー!切腹を要求します!!!」
お前は独裁者か。と僕は心の中で思わず突っ込む。
いくら聡明なる読者の方も何故僕はここまで彼女に敵意を向けているのか、分からないだろう。
それを説明する為には多少過去の話をしなければならない。その時にもう一人出てくるが、その時に詳しく説明しよう。
僕と彼女が出会った時の昔話、とはいってもたった一ヶ月前の事だが、僕の話に付き合ってくれれば幸いである。
***
話をする前に少し僕について語っておこう。
僕は、虹ヶ咲学園に通う一年生。
そして趣味程度に始めたネットでの音楽創作活動をしている。
大人気とも人気がないとも言えない微妙な人気の具合。中堅の様な立ち位置。
よく言われる例えを用いるのなら、知る人ぞ知ると言った感じだろうか。
だからといって別に音楽科にいる訳でもなくて、独学で自分のやりたい様にするのが僕は好きだった。
そんなある日、僕は道路に学生証が落ちているのを拾った。
裏面をひっくり返して見てみるとそれはうちの学校の校章で、個人のプライバシーが厳しい昨今だけど、届けようと僕は中身を開いた。
……どうやら僕と同じ一年生らしい。
***
その学生証にあった学科、顔写真を元に僕は落とした主を探し、届けた。
……それまでは良かった。
落としたのは、何とも背が小さくて制服を来ていなければ小学生とも中学生とも思われそうで、無表情なものだから感情が読めない不思議な人だったのだけれど。
「ありがとう、とても助かった。悪い大人に拾われてたらきっと何処かの裏路地に連れてかれてたと思う。そしてきっと今頃辱めを受けながらカメラに向けて嬌声を上げていたかもしれない」
「……君は初対面の人に対してえぐいくらい直球の下ネタを使うね!しかもそれを無表情でさ!!」
こいつはおかしい。
これ以上関わったら、面倒な事にこれから巻き込まれそうだ、と直感的に感じた僕は速やかに立ち去ろうとした。
「……ねぇ」
「なに?」
「何で僕の袖を掴んでいるの?」
「お礼をしていない、親切をされたらそれをちゃんと返す。とっても大事、小学校で習わなかったの?」
見た目小学生みたいな奴に言われると尚更説得力があるというか腹立つというかなんと言うか。習ったばかりの知識を使いたがりの子供みたいで。
僕は速やかにここを立ち去りたい。先程こいつが下ネタを言い放ったせいで周りの目がとても痛い。
見ないでください、僕は無実です、こいつが悪いんです。
「取り敢えず場所移動するか」
「人気のない所にでも連れていくの?」
「君が思っている目的とは違うけどね!」
あくまで人目を避ける目的である。他意も下心もない。
「きゃー、連れ込まれるー」
「せめて感情を持って言えよ……」
何とも変なやつである。
***
僕は校舎の後ろの方に彼女を連れて行った。
ここは人気も少ないし、こいつがまた下ネタを言い放っても聞かれることはまず無い。
「それで?どうかした?」
「お礼がしたい、拾ってくれたから」
じっと僕の目を見つめながら彼女は先程とは打って変わって真面目に言い放った。
「ちゃんと普通に言えんじゃねーか」
「人と話すのはとても恥ずかしい、緊張してついさっき見たいな事を言っちゃう」
「……緊張隠しにしては最悪の選択だな」
「だから、これから人といい感じにコミュニケーションを取れるように私に教えて欲しい」
「……おい、待てお礼の話は」
「お礼はあくまで相手からの気持ちであってそれをせがむのは厚かましいこと」
正論であるが故に何も言えねえ……
「分かった、そのくらいなら付き合う」
「ありがとう、お兄ちゃん」
「……は?」
僕は耳を疑った、そこまで聴力は悪くないと思うけれど、その耳を僕は疑った。
「最近の人は、お兄ちゃんと呼ばれると喜ぶって研究結果を知ってる、他にもドクター、トレーナー、プロデューサー、あなた、マスター沢山ある。どれにするお兄ちゃん?」
「今すぐその研究結果ドブに捨ててこい」
「わかった、ロリコン変態さんにする」
「話を聞け、というかロリコンじゃないし変態じゃないし、名前で呼べ」
こいつには耳という人体器官はついてないのかもしれない。うん、そうだ。話全く聞く気がないもんね。
「私は天王寺璃奈、一年生、これからよろしく」
「僕の事を名前で呼べって言っただけで自己紹介しろとはいってないんだよなぁ……」
「そう言えばお礼が欲しかったんだっけ、それなら……」
と彼女、天王寺璃奈は自分の制服に手を掛けた、そしてそれを半分程捲った所で僕は驚きから正気を取り戻しそれを制止させた。
───カシャ───
「……おい、何してる」
「お礼をしようと思って」
「誰が脱げって言ったよ」
───カシャ───
「何ださっきからこの音は」
手を離して僕は音の方へ目を向けた
そこには髪がシルバーアッシュ色のショートボブの女の子、リボンを見るに同学年だろうか、そいつがカメラを手に、にししと笑いながらこちらを見ていた。
「……そのカメラを寄越せ」
「なんでですか~、ここ星が綺麗に見えるので星を撮ってただけですよ~何を慌ててるんですかぁ~?」
「今は昼だ、星は見えない、慌ててもない、だからそのカメラを寄越せ」
「いやですよ~あ、写真見ます?かすみんの力作です!題して人気のいない所でロリを連れ込む高校生!」
今の格好は確かにこいつ、天王寺璃奈の服を脱がせようとしているのに見えなくもない。
しかも人気のないところで。
「私の取引に乗ってくれたら消してあげてもいいですけど~」
「僕は脅迫には屈しないぞ」
僕は脅迫なんかに屈しないぞ
「脅迫だなんて物騒ですね~、交渉ですよぉ、学校にバラしちゃいますよぉ」
僕は………脅迫なんかに………屈しない……ぞ
「ネットにもアップしちゃおうかな~なんて」
「すいません、何でもやらされていただきます何をすればよろしいですか靴でも舐めましょうか」
わーい、わーい、大好きー!仲良くしようよ!
「かすみん、スクールアイドルをやってるんですよ、曲を作って欲しいなぁって」
「僕は曲なんて作ったことがない、他の人に頼め」
「嘘つかなくてもちゃんとかすみんは知ってるんですよぉ~、貴方がネットに音楽を作って上げていることを!!」
ビシッ!と人差し指を僕に突きつける
僕は両手を上げて降参の意を示す。
「分かった、わかった、この代わり写真を消すことが条件だ」
「話のわかる人はかすみん、好きですよ」
チュッと投げキッスを飛ばしてくる。
無理やり脅したくせに
それが僕と中須かすみ、天王寺璃奈との出会いだった。
***
「いやぁ~、かすみんとの出会いはロマンティックでしたね~、まさか出会い頭に結婚してくれ!なんて言われると思ってませんでしたよ~」
「捏造をするな」
また僕は『はぁ』とため息をつく
「一目惚れさせるなんて流石立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花!花も恥じらうかすみんですね!はい復唱!」
「笑えばクロユリ、喋ればドリアン、暴れる姿はマンドラゴラ、端から恥ずかしすぎる中須かすみさん」
「何一つ恥ずかしくありませんが!?かすみんに対して配慮というか尊敬と羨望と恋心がないんですか!」
「軽蔑と哀れみと嫌悪はあるよ」
「それってかすみんが嫌いってことじゃないですか!!かすみんは抗議します~!」
年甲斐もなく小さい子供の様に四肢を思う存分振り回し暴れるかすみ。
本当にファミレスの店員さんには煩くして申し訳ない。僕は周りに頭を下げた。本当にうちの変なやつが申し訳ございません。
そんなこんなで僕と中須かすみ、天王寺璃奈とあともう一人のクソ悪魔達と僕は否応なしに関わらないといけないことになった。
璃奈ちゃんが下ネタキャラになったのは最近好きな作家とインスピレーションを受けた本の影響です、どうか石を投げないで!
自分でも死ぬ程後悔しているので多分この設定消えるか薄くなります