TSロリおにいちゃんといもうとちゃん   作:まるまるみー

3 / 4
おにいちゃんがいっぱい

 ──きさまなにやつ! あっ、ちょっ……いたいいたい! ぎえー! 

 

 そんな舌っ足らずな叫び声がおにいちゃんの部屋から響いたのは、ある日の朝のとっても早い時間のことでした。

 

 どんな夢を見ていたのやら、何やら幸せそうな顔ですやすや眠っていたいもうとちゃんが跳ね起きます。まとわりつく毛布を投げ飛ばし、足元のスリッパをけっ飛ばし、部屋のドアをばーんと勢いよく開いて廊下に飛び出しました。

 

 おにいちゃんの身に何があったのか、おにいちゃんはいったい誰と対峙しているのか。誘拐犯か泥棒か、どっちにしたって今のおにいちゃんは非力な幼女なのです。どんなひどい目にあわされてしまうのかわかりません。いもうとちゃん以外によるR-18な展開など、絶対に許されてはならないのです。

 

 いもうとちゃんがひとっとびでおにいちゃんの部屋の前にたどり着き、ドアノブに手を伸ばしている間にも、中からはおにいちゃんのくぐもった悲鳴が聞こえてきます。手からにじむ嫌な汗でつるつる滑るノブをようやくつかみ、いもうとちゃんはおにいちゃんの部屋に倒れこむように入りながら、喉も裂けよとばかりに叫びました。

 

「大丈夫ですか! 大丈夫ですかおにいちゃん!」

 

 飛び込んだ部屋でいもうとちゃんが目にしたものは、はたしておにいちゃんに、悲痛な叫び声を上げさせていたのは、

 

「こんにゃろ、こんにゃろ! おにいちゃんを騙ろうなどと、この不届きものがー!」

「お、おにいちゃんを騙っているのはそっちではないで……うっ、ぐえっ、いたいいたい!」

 

 ──なんと、もう一人のおにいちゃんだったのです。

 

 ◇

 

 部屋に飛び込んだいもうとちゃんの視界に映る光景は、実に不可解なものでした。

 

 おにいちゃんがおにいちゃんにアームロックを決め、こぶしでみぞおちをでばしばし殴っているのです。

 そしてどっちのおにいちゃんも、相手が「自分を騙っている」などと叫んでいるのです。

 

 なかなかに意味の分からない状況ですが、いもうとちゃんの優秀な脳みそは、これを一瞬でこう判断しました。

 

 ──まあ、かわいいしなんでもいっか。

 

 はなまるです。満点です。素晴らしい。この小説を完璧に理解しています。そう、別にこの状況に至った理由も意味もないのです。おにいちゃんが二人に増えてケンカをしていたらかわいいじゃないですか。それでいいのです。以上も以下もありません。いもうとちゃん以外のR-18でも、おにいちゃん同士のR-18ならば許されるのです。

 

 もみ合っていた二人のおにいちゃんは、いもうとちゃんが部屋に入ってきたことに気づきました。一瞬おにいちゃんのおにいちゃんを殴る手が止まり、その隙をついておにいちゃんはおにいちゃんの拘束から逃れます。そして二人のおにいちゃんはお互いを指さしながら、いもうとちゃんにうったえます。

 

「い、いもうとちゃん! こいつは姿かたちこそおにいちゃんですが真っ赤なニセモノ、真のおにいちゃんはこっちですよ!」

 

 おにいちゃんがそう叫べば、

 

「な、なにおう! それはこっちのセリフですよ! いもうとちゃん! こんな奴に騙されてはなりません! 」

 

 おにいちゃんはこう返します。

 

「はー!? 言うに事欠いてこんなやつですと!? おにいちゃんが『こんなやつ』なら、同じ見た目のあなただって『こんなやつ』ではありませんか!」

「ぐ、ぐぬぬぬ……。お、おにいちゃんのこの幼女ぼでぃを侮辱するかぁ!」

「そらそーですよ! おにいちゃんは好きでこんなんなったわけじゃねーですし!」

「こっちだってそーですよ! つーかなんなんじゃいこの体はー!」

 

 きいぃーっと鳴き声をあげて、お互いのほっぺを引っ張り合いながらごろんごろんともみくちゃになる二人のおにいちゃん。「こんにゃろ! こんにゃろ!」べしんべしん。「くぬやろ! くぬやろ!」ばしんばしん。「お前を倒して、おにいちゃんこそ真のおにいちゃんだと証明してやる!」どすどすどすどす。「それはこっちのセリフですよ! 今日ここで、おにいちゃんのTS以来揺らぎかけていた自意識を確立してやる!」ごすごすごすごす。

 

 あわわわ。なんと恐ろしい戦いでしょう。そっくり同じ二人の人間が、己の存在証明をかけて死闘を繰り広げているのです。手加減も何もあったものじゃありません。ひっかき噛みつき目潰し金的なんでもありです。まあおにいちゃんに金の的は無いのですが(笑)。そしてこれはスプラッタでグロテスクなおはなしでも無いので、特に怪我が残ったりすることも無いので安心です。核爆発でも、ちりちりアフロになるだけで済むタイプのおはなしなのです。じゃあ何が死闘なんだと言われればまあよくわかりませんが、おにいちゃんにとっては死闘なのです、きっと、ええ。

 

 ともかくこれを止められるのはいもうとちゃんしかいません。なんかこう、二人とも私の大事なおにいちゃんですよとか何とか言えば、丸く収まるはずです。いい感じの締めを持ってくるにはまだ2000字程度しか進んでいないのでいささか早すぎる気もしますが、別にいいではありませんか。

 

 おにいちゃんがおにいちゃんにマウントを取り、高笑いを上げながらぺぺぺぺぺ、と連続ビンタを決めている様子を見て、ほっとかれたいもうとちゃんはふわわとあくびをします。そして、ねぼけまなこをこすりながら、ぽつりと言いました。

 

「わたし、コーヒー淹れてきますね」

 

 ◇

 

 いもうとちゃんは殴り合う二人を放置して、本当にリビングへコーヒーを淹れにいきました。ふんふん鼻歌を歌いながら上機嫌で淹れました。コーヒーのおともに冷蔵庫から、とっときのプリンも取り出します。朝っぱらからおにいちゃんのけんかを眺めながらいただくつもりなのでしょう。なかなかいい性格をしています。

 

 右手にコーヒー、左手にプリン、口にスプーンをくわえて、るんるん気分でおにいちゃんのお部屋に戻ろうとするいもうとちゃん。が、その目が一点、リビングのソファに止まりました。

 

 ソファの上に置いてあるみず色のブランケットが、なにやら不自然に盛り上がっているのです。

 ふむ。一体何でしょう。今回のおはなしのサブタイトルと、何か関係があるのでしょうか。私にはさっぱりわかりません。ともかくいもうとちゃんは恐る恐るその膨らみに近づき、ばさりとブランケットをはぎ取りました。

 

「おー……? ……ふあ、おはようございます、いもうとちゃん。……どうやらおにいちゃん、テレビ見ながら寝落ちしちまってたみてーですなー……」

 

 やはりというべきかなんというか。

 なんとそこで眠っていたのは、3人目のおにいちゃんだったのです。

 

 いもうとちゃんは、思います。

 

 ──やったー。

 

 ◇

 

「おにいちゃんが、さらに増えた……ですと……」

「ぶっちゃけ自分がもう一人いるだけで、精いっぱいだったってーですのに……」

 

 いもうとちゃんに連れられて、殴り合っていた2人のおにいちゃんも一時休戦をし、3人目のおにいちゃんと対面しています。

 

 3人で輪になって見つめ合いながら、新たに現れた自分の存在にぶるぶる震えているおにいちゃん達。そんなガクブルしているおにいちゃん達を眺めていもうとちゃんはプリンをつつき、頬をゆるませます。

 

「あ、あなたたちは一人ずつ出会ったからまだいいではないですか! おにいちゃんはいきなり2人もおにいちゃんのニセモノが出てきたんですよ! おにいちゃんが受けた精神的ダメージは、あなたたちニセモノのとは比べるべくもねーですよ!」

 

 三人目のおにいちゃんがそう叫び、

 

「誰がニセモノですか誰が!」

「ニセモノはそっちじゃねーですか! 後から出てきておいて! おにいちゃんCの分際で!」

 

 二人のおにいちゃんがキレ散らかします。流石にだいぶ情緒が不安定ですね、ええ。

 

「お、おにいちゃんCですと!? なんですかそのザコ敵みたいな名称は!」

 

 三人目のおにいちゃんが異議を唱え、

 

「あなたが三番目に出てきたおにいちゃんだからに決まってるではありませんか!」

「そーだそーだ! 三番目のおにいちゃんなぞ、おにいちゃんCで十分……。いや、まってくだせえ」

 

 二人のおにいちゃんがそれに反論を……いえ、おにいちゃんがストップをかけました。

 Cではないおにいちゃんが、いぶかしげに眉をひそめながら言います。

 

「あの三番目のおにいちゃんが、おにいちゃんCってこたーつまり……」

「つまり?」

「なんですか?」

「我ら殴り合っていたおにいちゃんたちは、おにいちゃんAとおにいちゃんB……ってーことですよな?」

「それ以外に、他に何があろーというのですか。我らはAとBですが、それが何か?」

「……いやおにいちゃんはおにいちゃんCではねーで……むぐぐ!」

 

 口を挟もうとしたおにいちゃんC(暫定)、二人に押さえ付けられ黙らせられてしまいました。一人は二人には勝てないのです。南無。

 

「おにいちゃんAとおにいちゃんB……。その、やはりおにいちゃんAは……このおにいちゃん、ですよな?」

 

 寝っ転がされてもがくおにいちゃんC(仮称)の上にまたがりながら、おにいちゃんはおそるおそる親指で自分の顔を指して言います。

 

「はぁー?」おにいちゃんC(予定)の口をお尻で黙らせながら、おにいちゃんがこんな感じの顔╮(´•ω•)╭で言います。「おにいちゃんAは、このおにいちゃんに決まってるではありませんか」FランSSなので、文章中に顔文字を挟んでも許されるのです。「あなたはおにいちゃんBですよ」おにいちゃんのほっぺを指でぐにーっと突き刺しながら、「おにいちゃん、び・い」

 

「な、何をおっしゃる! おにいちゃんAの称号はおにいちゃんのものですよ!」

「はー、うるさいうるさい。Aはおにいちゃんに決まっとろーに」

「むぐぐぐー! むぐー!」

 

 まさに一触即発です。Aの座をかけて(なんの意味があるのかは知りませんが)、おにいちゃんC(内定)の上で第2ラウンドが始まろうとしています。これを止められるのは、そう、いもうとちゃんしかいません。こんな状況でやはり楽しそうにプリンをむさぼっているいもうとちゃんが、どのおにいちゃんもおにいちゃんでたった一人のおにいちゃんなんですよとかなんとか言えば、すべては丸く収まるはずなのです。もうすぐ4000字なので、そろそろいい感じにまとめてもいいはずなのです。前回はランキング乗りてぇ~~!と思って総文字数が10000字を超えるよう、6000字強書きましたが、今回はもうそんな小細工を弄する必要は無いのです。一度10000字を超えてしまえば、後はもう10評価を貰えば日間ランキングは一位を突き抜け、赤バーはブラウザの横幅をぶち抜き、ブックマークは青天井、感想欄はgoodとbadが吹き荒れる魔境となり、誤タップによる総ここすき数は各行三桁に到達、そしてゆくゆくは書籍/コミック/ドラマCD/アニメ/実写ドラマ/ハリウッドムービーが作られ、私の未来はバラ色の印税生活となるのです。さあ、なんかいい感じにまとめて下さい! お願いしますよいもうとちゃん! 

 

 いもうとちゃんはやれやれといった風に立ち上がり、ごくりとコーヒーを飲み干してから、ぱんぱんと手を叩きました。

 3人のおにいちゃんが争いをやめ、いもうとちゃんに注目。その3対のつぶらな瞳を一身に受けながら、いもうとちゃんは一度せき払いをして、

 

「ごほん。……おにいちゃんは、私のこと好きですか?」

 

 3人のおにいちゃんが口々に言います。

 

「そらもうそーよ」

「いもうとちゃんは、おにいちゃんのかわいいかわいいいもうとちゃんですよ」

「わがいもうとちゃんへの愛は、たとい幼女になろうとも不滅ですぜー」

「……ああん? おにいちゃんのいもうとちゃんに手ぇ出す気ですかてめーらは?」

「うん? あなたのいもうとちゃんではなく、おにいちゃんのいもうとちゃんですが?」

「はー……このお二方はわかっておられねーかー、いもうとちゃんのおにいちゃんは、このおにいちゃんに他ならねーということに……」

 

 バチバチと火花を散らすAとBとC。

 しかし今回はいもうとちゃんが割って入ります。

 

「そう、そこなのですよ、おにいちゃんがた」

「そことは?」

「どこです?」

「……おにいちゃんのセリフがねーが」

「つまりですね。おにいちゃんが何人いようとも、私は一人。よって私と対になる唯一のおにいちゃんこそが、真のおにいちゃんだと言うことです」

「ふむふむ?」

「なるほど? ……して、どのように真のおにいちゃんを決めればよいので?」

「……おにいちゃんのセリフ!」

「そりゃもう、決まっているではありませんか」

 

 いもうとちゃん、意味もなくその場でくるりと一回転して、ビシリと指を突きつけて言いました。なんかテンション高いですね。

 

「愛、愛ですよ。やはり素敵な兄妹愛こそ、私たちの絆なのです。もっとも私への愛を見せてくれたおにいちゃんこそ、真のおにいちゃん。よってここに、おにいちゃんコンテストの開催を宣言します」

 

 ああ、完全に自分の欲望を優先してますねこのアマは。

 

 ◇

 

「とっぷばったー! おにいちゃんA!」

「Aはおにいちゃんですが?」

「抜け駆けたぁ卑怯ですぜー!」

 

 ブーイングを受けながも、3人の中からひとりのおにいちゃんが、てててといもうとちゃんに駆け寄ります。いもうとちゃんの手をぐいぐい引っ張り、ソファに座るよう促しました。なんかもうあれですね、兄妹というより親子みたいな行動ですが、おにいちゃん的にはいいんでしょうか。やはりTSの際、脳に問題が起きたのでしょう。

 

「はいはい、なんですか、おにいちゃん」

 

 促されるままちょんと座ったいもうとちゃん。そしておにいちゃんは、そのいもうとちゃんの膝の上に飛び乗ると、にへへと笑顔を浮かべてから、そのままぎゅっと抱きつきました。いもうとちゃんの顔が若干ヤバイことになりかけます。このお話の媒体が小説で非常に助かりました。いもうとちゃんの名誉は保たれたのだ。

 

「やはり、ふれあいこそが愛ゆえに……」

 

 いもうとちゃんに顔をうずめたおにいちゃんが、もごもごとそんなことを言います。はわわわわ、となるいもうとちゃん。おにいちゃんの背中を優しく抱きしめ、

 

「……おにいちゃん、5ポイント」

 

 その言葉に、残りのおにいちゃんたちがにわかにざわめきます。

 

「ポイント制!?」

「もしかすると100点先取とか、そういう感じかもしれねーですな……」

「わ、我々も急いだ方がいいのでは……あっ、ずりーですよ!」

 

 C(多分)がまごまごしている間に、A(恐らく)はいもうとちゃんに向かって、てってこてってこ駆け出していました。Aは抱き合う二人の前に立つと、高らかに宣言します。

 

「愛とはやはり、言葉にして伝えねばならぬもの!」

 

 そうしてソファに登っていもうとちゃんの左隣に座ると、やはりにへへと笑顔を浮かべます。そのまま立ち上がり、きゅんきゅんしているいもうとちゃんの耳に顔を近づけ、

 

「おにいちゃんはー……いもうとちゃんがー……大好きですよー……」

 

 ぼしょぼしょと甘い声で、耳元にささやき始めました。

 

 ……これはあれです。最近流行りのASMRというやつです。別に卑猥なものという意味はないけれども、それはともかくなんとなく卑猥なイメージがあるあれです。しかしいもうとちゃんの顔が全国ネットに流せない感じになっている辺り、今のおにいちゃんのしているこれは多分中でも相当に卑猥なやつです。

 

「お、おにいちゃん……はち、8ポインてょ!」

 

 鼓膜を揺らし脳を揺さぶるおにいちゃんのウィスパーボイスに、完全に狂いかけているいもうとちゃん。しかし左耳だけに気をとられている場合ではありません。

 

 いつのまにかC(きっと)が、やはりというか当然というか、同じくにへへと笑顔を浮かべ、いもうとちゃんの右腕に抱き着いているではありませんか。

 

「ま、待って、待ってくださいおにいちゃ……!」いもうとちゃんのそんな懇願は、

 

「いもうとちゃんっ」「いもうとちゃん?」

 

 もちろんなんの意味も成しません。おにいちゃんたちも自らの存在証明が掛かっているので、必死なのです。ニセおにいちゃんの烙印を押されてしまえば、どんな目に合うか分かったものではありません。右と左からささやかれる、微妙に調子の違うおにいちゃんとおにいちゃんの幼い声。元気な声と、ダウナーな声。体温と共に伝わってくるそれに、いもうとちゃんはもうフットー直前です。

 

「~~~~~~っ!!」

 

 このままでは、いもうとちゃんの未来は死あるのみ。なんとかこの天国から逃れようともがくものの、しかし膝の上のおにいちゃんが、右腕と左腕に抱き着くおにいちゃんが、それを許しません。

 

「愛を示して欲しいんですよね?」「愛を示して欲しいんですかー……?」

 

 いもうとちゃんのくらくらする脳みそが、おにいちゃん二人の吐息で溶かされていきます。

 このままではいよいよ以って、いもうとちゃんの描写をするだけでR-18、もしくはR-18Gのタグを付けねばならなくなってしまいます。そんなわけにはいかないのです。いもうとちゃんは必死に耐えます。歯を食いしばり、血涙さえにじませながら、必死に耐えます。

 

「いいですよ、おにいちゃんの愛を、聞かせてあげようではないですか」「おにいちゃんの愛なら、いもうとちゃんに、いくらでも教えてあげますよー……」

 

 いもうとちゃんの、感情豊かな割には表情あんまり変わらない系なキャラが、揺らぎかけています。なんて自然な紹介でしょう。実はいもうとちゃんは、なんちゃって無表情系だったりしたのです。しかし揺らいでいるのはキャラだけではありません。いもうとちゃんの視界もぐわんぐわんです。幻覚だって見えています。だってほら、テーブルを挟んだ向こう側にあるテレビ台、その裏側からぴょこんと飛び出たアホ毛が、おにいちゃんのものとしか思えない一房のアホ毛が、いもうとちゃんの目に映ったのです。

 

 ──あ……。

 

「……へへへ、やっぱりちょっと照れちまいますな」「ほんのちょっぴり恥ずかしいけど、いもうとちゃんのためならなんとやらですぜー……」

 

 ふりふりと左右に揺れ動くアホ毛の下から、にゅっとおにいちゃんが顔を出します。にぱーと満面の笑みを浮かべ、ひょいとテレビ台を乗り越え、とことこいもうとちゃんに向かって歩いてくるおにいちゃん。途中でカーペットに出来ていた小さな山につまづきました。おにいちゃんがそれをぺろんとめくると、中にはまた、笑顔のおにいちゃんが。

 

「すー……はー……。……っよし! 行きますぜー」「すー……はー……。そいじゃあ、行きますねー……?」

 

 幻覚でしょうか。いいえ、幻覚ではありません。おにいちゃんが3人しかいないなど、そんなことは誰も言っていないのです。3人で終わりなはずなど無いのです。なぜなら、たくさんいたほうが可愛いから。

 

 いもうとちゃん、必死にもがきます。しかしおにいちゃんがいもうとちゃんに乱暴なことが出来無いように、いもうとちゃんも、おにいちゃんを無理やり引きはがすことは出来ないのです。せいぜいが腕と体をぶるぶる震わせて、何かの間違いでおにいちゃんが剥がれ落ちることを祈るだけです。たとえ自分がなんかもう色々と見せられない感じにぐちゃぐちゃになりそうであっても、やはり大好きなおにいちゃんを傷つけるような真似はいもうとちゃんには出来ないのです。

 

「おにいちゃんはー」「いもうとちゃんはー……」

 

 戸棚の陰から、ソファの裏側から、本棚の隙間から。無数のおにいちゃんがわらわらと現れては、いもうとちゃんの元に集まってきます。

 いもうとちゃんの頭をなで、ほっぺにほおずりをし、背中にもたれかかるおにいちゃん。

 

 ──こんな、こんなはずじゃあ……!

 

 いまさら後悔をしたところで、どうにもなりません。今までいもうとちゃんがおにいちゃんに勝ってきたのは、それが1v1のタイマンだったからなのです。ランチェスターも言っています。数が多いほうが、思ったよりも強い、と。

 

「いもうとちゃんがー」「おにいちゃんがー……」

 

 エアコンの通風孔からおにいちゃんが。玄関ののぞき穴からおにいちゃんが。テレビのモニターの向こう側からおにいちゃんが。

 台所の換気扇から、クローゼットの中から、リビングの大きな網戸の隙間から。ありとあらゆる箇所から現れた全てのおにいちゃんが、おにいちゃんまみれになったいもうとちゃんの元へと集まってきます。

 

 全身をおにいちゃんに囲まれたいもうとちゃんの目に映るのは、

 いもうとちゃんの耳に聞こえてくるのは、

 いもうとちゃんを包む匂いは、

 いもうとちゃんが、体中で感じているのは。

 

 ──おにいちゃんが、おにいちゃんが……!

 

 

 

   TSロリおにいちゃんといもうとちゃん

    -おにいちゃんがいっぱい-

 

 

 

 





続きは未だ定まらぬ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。