複雑な気持ちを含んだ記憶に悩まされる様になったのはいつ頃だっただろうか。
記憶の中の僕が持っていた魔法も、風と土の魔法もこの頃から僕の中に芽生えていた。もし周りに伝えれば異端として扱われてしまうだろう。
周りには伝えるべきではない、何故かそう思えて魔法が使える事は、隠しつづけている。
コントロールの仕方なら記憶の中にあったしね…。
僕が7歳位になった頃、その記憶と同じ様に母を病で亡くした。そして父は僕を見ると母を思い出すのか…、僕を避けるようになっていった。
まだ幼い僕は父の気持ちなど上手く理解できず、きっと勝手に傷ついていたんだ。
そんな時に父の故郷である、日本の父の実家らしき場所にしばらく預けられた。恐らく母に似た容姿の僕を目にしたく無かったんだと思う。
簡単な挨拶くらいしか日本語を上手く喋れなかった僕に、従従兄妹である春原みことは幼いながらに僕の淋しさを埋めてくれた。
言葉は理解出来なかったけれど、「みことがいるから淋しくないよ」そう体いっぱいに表現している様で、僕はここにいても良いんだ…。
愛してくれる人はいたんだと、母を亡くしてから初めて信じられた。
母を喪ってしまった事も悲しかったけど…、不安な時悲しい時に、父親に遠ざけられた事。そんな自覚していなかった傷で、人知れず僕はショックを受けていたのだろう。
頬を熱い水滴が流れ落ちる。
母を亡くしてから初めて泣いた。
母が居なくなって、とても悲しかった。泣きたかったけど涙は流れず、『人として何かが欠落しているのかなぁ』と漠然と僕は感じていた。
そんな自分自身への不信感まで、洗い流していくようだった。
黒髪に黒目がちな瞳が、上目遣いに僕を見つめている。小麦色に焼けた肌を持つ小さな女の子に、僕は救われた気がした。
彼女が居てくれるなら、人でいられる。
大切にしたいと感じられる。愛したいと感じられる。
まるで記憶の中のビアンカがいた時みたいに。
それから、少し父の悲しみを理解できた様な気がした。
もしもビアンカの様に、みことを失ってしまったなら、僕は正気ではいられないかもしれないから。
そんな事を父に伝えたら、涙ながらに「済まなかった…」と謝られた。
父との関係はその後良好で、僕も父の力になって行ければとそう思える様になった。
そして、春原みことという少女は、僕にとってのかけがえのない人になった。
記憶の中の僕みたいに、今度は絶対に間違えない。間違えたりするものか……。
幼いながらも、そう深く心に刻みながら。