みことは祖父が住んでいた家を譲り受け、一人暮らしを始めた。明日は最近はまっているゲーム関連の本が届く予定との事でみことはご機嫌様だ。
せっかくだから、「僕も付いて行っていいかい?」と確認すると、「いいよ」との二つ返事でそれだけの事で嬉しくなる。
僕はみこと海女の仕事を終える時間に、祖父の家まで向かい、みことと合流すると一緒に本屋に向かった。
早速本を購入したらしいみことが、僕に小さく「外で待ってるね!」と声をかけると、先に店を出ようとしていた。
本の中を見るの家まで我慢できないのかな?
そんな彼女がいつもの事ながら愛らしい。
そのあとを追う様にして店を出ると、買ったばかりの本を、大切そうに抱えていたはずのみことは、大柄な青年にぶつかった様だ。
青年は、彼女の背中に手を回し、みことの姿勢が安定したところで、本を拾って距離を置く。
「あぁ〜、ぶつかってしまってごめんなさい!欲しい本を買えて浮かれてました。それに助けていただいてありがとうございます!」
ペコリと勢いよく頭を下げ言い募るみこと。
見方によれば、男の子の様にみえるくらいに切りそろえたショートカットの黒髪。健康的に日焼けした小麦色の肌、惜しげもなくホットパンツからスラリと伸びる足。明るく元気のいい声。つい愛らしさに見とれてしまい反応が遅れてしまった。
「みこと!大丈夫だった? 怪我してない?」
「マクシミリアン!?私の…最推しっ!? はわわ〜……」
みことが青年の顔を見た次の瞬間、そう叫んだかと思うと顔を赤らめ男の顔をまともに見ていられないとでも言うかの様に、顔を下に向けた。
「お兄様……、大丈夫。怪我はしてないよ。この人が転ぶ前に助け起こしてくれたから…」
僕もつられる様にして青年の顔を見ると愕然とする。
記憶の中の妹の執事だった…、マクシミリアンにそっくりだったからだ。
「従兄妹を助けてくれて、本当にありがとうございます」
そう言い軽く会釈をすると、マクシミリアンにそっくりな彼も、なぜだかひどく驚いた顔をしていた。
それにマクシミリアン似の彼を見たみことの反応は、何なんだ?その辺りも理由を知りたいけれど、みことの様子を見るに彼とはあまり長く接触はさせたくないな。
彼が驚いていた理由も気になるけど、みことと引き離す方が先かな。
記憶の中の知り合いによく似た青年。
それに、みことは何故彼を見てマクシミリアンと言ったのか…。それにマクシミリアン似の彼を見て何故頬を染めるのか…。
僕の中にある記憶は、夢なんかじゃないのかもしれない。初めてそんな風に感じてしまい、身体に振るえが走った。