僕達が会釈をして別れたあと、恐らく泊まっているだろう数少ない旅館に、思考の中で当たりをつけつつ、僕はみことの肩を抱く様にして、家路へと進む。
何故かお気に入りの本を抱えたみことは興奮気味。一体何が……。
「みこと、何かあったのかい?」
そう聞くと、みことは興奮気味に口を開いた。
「お兄様…、私最近『胡蝶の恋』ってゲームにハマっているのだけど、さっきの人悪役令嬢の執事のマクシミリアンにそっくりなの。大好きなキャラが2次元から飛び出し出来たみたいで、ドキドキしちゃったな」
まさかな。みことがいない時に、彼褐色の肌で黒髪黒目の彼が、僕を見て驚いた理由を聞いてみる必要があるかも知れない。
「みこと、僕もそのゲーム気になるな、やっているの見たらだめかな?」
祖父の家だったみことの家に上げてもらうのは初めてで、心做しかドキドキするけれど。
「お兄様とゲームの話が出来たら、私も嬉しい!」
飛び跳ねるように喜びを顕にして、気軽に抱きついて来るみこと。可愛いけれど、他の男にも異性として見られてないという、謎の自信があるから誰にでもこうなんだろうな…。そう思うと苦笑するしかない。
なんとなくだけれど、マクシミリアン似の彼ももう少しみことといたら、危なかったかもしれない。
一人の時に会わなくて良かった。
敵になったとしても、追い落として見せる自信はあるけれど、これ以上敵をわざわざ増やしたくないしな。
天真爛漫で優しいみこと。美人という括りではないかも知れないけれど、くるくる変わる黒目がちな瞳も、彼女の人間性に惹かれてやまない、僕のような存在がいる。
ユウくんとやらも恐らくその
心做しか彼を懐かしむような気持ちが、あったのは否めない。記憶の中だけの存在であり、幼馴染というわけではないけれど。近くで育ちこの世界でいうのならスパダリ系の有能さの為だろうか、記憶の中の父が費用を出してくれた。その為に、僕と同じ様に学園で学び、有能さに磨きをかけていいった彼。
そんな時代を共に生きた同志に、とても似ているからか…。彼を傍に置きたい気持ちは何故かある。
この記憶も厄介なものだな。
そう思いながら、ため息を漏らす僕だった。