アルフォンスお兄様が現世に転生した場合。   作:皇ひびき

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8 (春原みこと視点2)

 海女の仕事を終え、シャワーを浴びてからお兄様とやっと届いた本を受け取りに行く事になっている。

髪はそのうち乾くかなぁ〜なんてうちを出た。

お兄様は「風邪をひかない?」そんな事を心配してくれるけど、いつもの事なのであまり気にしないようにした。

 

 本屋さんでお目当ての本を買ってお店を出ると、マクシミリアンみたいな人とぶつかった。

すごく格好良くて焦ってしまったけど、お兄様も心配してくれてるし、落ち着こう、私。

 

 けれどゲームの登場人物が、画面から出てきたって言われても納得出来るくらいの人だ。そう簡単に落ちつける訳もなく、買ったばかりの本を片手に、近くにあった低めのブロック塀に腰掛けて、お兄様に話してしまった。

 

「それでね。私の推しはこの人なんだけど、お兄様……。 さっきの人、似てると思わない??」

 

 お兄様は、推しの事を話すと笑顔だった顔を歪め、「みことは僕より彼みたいなタイプが好みなの? 身長はどうしようもないから…、日焼けすれば少しは好みに近づくのかな?」なんて聞いてきた。

 

お兄様はお兄様なのに。白く透けるような肌も緩くウェーブのかかった金色の髪も、初夏の新緑がかった瞳だって素敵で従兄妹じゃなければ、きっと好きになってた。

だけど、従兄妹じゃなかったら相手にして貰える訳ないけれど。

 

「お兄様はお兄様の素敵なところが沢山あるから、無理はしないで。昔も日に焼こうとして肌が赤くなるだけだったでしょう?」

 

ワタワタしながらもそう伝えた。お兄様が辛そうなお顔してるのは悲しいし。

 

「お兄様は充分素敵ですから!いつもモテてるのだし自信を持ってください!」

 

「………」

お兄様がぽそりとなにか呟いたけど上手く聞き取ることが出来なかった。

 

心配になって「大丈夫?」と声をかけるのが精一杯。

 

「みことは優しくて可愛くて…、本当に大好きだよ!!」

なのに、お兄様は感極まったみたいなお顔をしてそんなことを言う。

 

そして言葉だけでは足りないとでも言うように、だけどギュムギュムと抱きしめ、頬にチュッチュッとキスを落とす。

 

お兄様……、アールグレイの様な爽やかな香りがしますね。柑橘系の香りもほんのりしてるし。少しだけ香るホワイトムスクの甘い香りもお兄様に合ってる気がする。

 

安物だけど、前にお兄様にプレゼントをした、練り香水をつけてくれてるんだ……。

 

なんだか私があげた香りを纏っているお兄様、ドキドキします。抱きしめられてるからか彼のつけている香水が私にも移ってしまいそう。

 

島にいる数少ない人達はその光景を見慣れているからか、あまり気にしてないみたい。

 

「みことちゃんとアルフォンスくんは、いつも仲が良いねぇ〜」そんなことを言いながら知り合いのおばちゃんが通り過ぎる。

 

「お兄様ここになじみすぎじゃないかな?」

 

ぽそりと私が呟くけど、そのまま抱きしめられたまま…。

 

「みんな見慣れてるから気にしないよ、天使ちゃん可愛い!!」

 

まだ私のお城にはついてないけど、気にせず抱きしめる続けるお兄様だった。

 

 せめてお家についてからにしてくれないかな。でも二人きりだと、もっとドキドキしてしまいそうだし…。

悩んでも仕方ないって思いながら、ドキドキするのをとめられない私だった。


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