みことを抱き上げ、家まで向かおうとしたら「流石に恥ずかしいからやめて! 重いと思うし怪我してる訳でもないんだし!」と真っ赤な顔で抗議された。
「天使ちゃんなら軽いし、抱き上げていたいけどな」
僕はそう言うと、みことのサラサラのショートカットに頬ずりする。
ふわりも香る石鹸の香りだろうか。シャンプーかもしれないその自然な香りに胸が満たされる。
『離したくないなぁ』
「外人はみんなスキンシップ過多なの?そうなの?」
そんなことを呟きながらみことは更に頬を赤らめるので仕方なく、可愛いみことを地面へおろした。
そんな事はない。君だけにしかしないのに。他の
僕の中にそんな思いが去来する。
「どうして君にだけ伝わらないんだろうなぁ」思わず小さくぼやいてしまった。
「お兄様、何か言った?」
みことには聞こえてなかったみたいで良かった…。
「うぅん、何にも。そろそろ家に向かおうか」
軽くみことの頭をポンポンと撫でてから足を進める僕に「変なお兄様…」とポツリと呟くとみことも、彼女の家へと歩き始めた。
帰り道に、ざっくりとしたゲームの世界の説明を聞けば聞くほど、なんだか記憶との一致がなんだか多い気がした。
まるて、ゲームの世界からでも転生したみたいじゃないか。馬鹿馬鹿しい。
そう思いながらも『まさかね…』、そんな思いは拭いきる事は出来なかった。
領地で騎士として生きていた、僕と同じアルフォンスの名を冠する男の記憶。今の僕が隠し持っている魔法のような力。
僕の記憶の中にある、言えなかったけど従姉妹で大切なビアンカの執事だったはずの男マクシミリアンが攻略対象?
ビアンカの婚約者だった、リーベッへ王国の王子フィリップ。偶然にして、夢とのも符号が合いすぎている。
ノエルというのはダウストレア家にいた様に記憶している。
一部の者だけが記憶を持ち転生しているのだとしたら?
マクシミリアンと名乗った彼を見てから、なんだろうか落ち着かない…。
記憶に関しては、気にしない様にしてきたけど有耶無耶なままにして良いのだろうか。
けれども、僕は僕だ。
従姉妹だけど、みことを愛してやまないのは紛れもなく今の僕のはず…。
楽しそうにゲームの話を語るみことをちらりと見やる。
いつもの事ながら、活き活きと楽しげだ。
今はそんな思いは横において、彼女の家にお邪魔させてもらう事に集中すべきだ。
身近な存在になれてるとは言っても、祖父の家だったみことの家に上がらせて貰えるのは初めてのことなのだから。
「魚を捌くのは得意だから家に着いたら、お父さんから貰ったお魚食べようか!」
『記憶と向き合わなくてはならないのでは?』そんな複雑な思いはあるけれど、料理が得意ではないというみことの手料理に、胸を躍らせる僕だった。