黒き馬、世紀末を駆ける   作:馬券童貞は東京優駿に捧げた男

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お待たせいたしました、第16話です。
今回の内容はタイトル通り、ダービーです。


第16話 第66回東京優駿

1999年、6月6日。東京競馬場。

数多くの観客が集まり、競馬関係者の注目もまた、この地に向けられていた。

『東京優駿』。

4歳牡馬の頂点を決める戦い、クラシック3冠の1つにして、最も名誉ある冠を求め戦うレース。

『そのレースに勝てば、騎手を辞めても良い』、そうまで言う程の気持ちで挑む騎手が現れるほど、日本中のホースマン達が求めてやまない、憧れの冠。

 

―――などと言う話は、頭の片隅に押しやる。

 

『リラ』

『クロスケ……今日は、とても調子が良いんだ。君と、本気で、走れるよ』

『みたいだね』

 

目の前に居る、自分の友達を見る。

以前と比べしっかりとした身体つき、力強い視線。

間違いない、リラの体調は万全だ。

 

『今日が、楽しみだった。ずっと待ってたんだ』

『……』

『今度こそ、僕は君を追い抜く。あの日とは違って、確実に』

『それは、させないさ。今日こそ、お前から逃げきってみせる……勝つのは、俺だ』

 

逃げ、先行の位置を得意とする自分と、差し、追込みの位置を得意とするリラ。

自分とリラの戦いは、自分が逃げ切るか、リラが差し切るか、その2つだけだ。

 

『……全力で、競い合おう、リラ』

『うん』

 

他の馬も、今だけは気にならない。する余裕など無い。

―――この東京優駿、最大の敵は、リラだ。

本能のようなモノで、そう感じている。

皐月賞の時のテイエムオペラオーのような、ゾクリと背筋を駆け巡るような、そんな感覚。

これを、『恐怖』ではなく、『歓喜』だと感じてしまうのは、自分がすっかりサラブレッドとして走る事に慣れてしまった証か。

 

 

 

―――最高の舞台が、間もなく始まる。

 

 

 

 

 

「テイル。いよいよだ」

『ですね、鳥場さん』

「……勝とう。僕と、君で」

『はい!』

 

力強い頷きを見て、僕は確信する。

今までの中で、テイルは1番の仕上がりだ、と。

そして、もう1つ、確かに感じている事もある。

―――今日のレース、1頭だけ、他の馬と比べて仕上がり具合が別格の競走馬が居る、と。

 

「アドマイヤベガだ。今日の最大の敵は、きっと彼になる」

『はい』

 

僕と同じく何かを感じているのか、テイルの視線もまた、アドマイヤベガへと向けられていた。

馬体の仕上がり、落ち着き具合、どれもとっても、他馬と違う。

他の馬、他の騎手には申し訳ないが、最大の敵はアドマイヤベガになるだろうという確信を持つ。

 

「峪さんの気合も凄いな。張り詰めた、まるで触れたら斬れる日本刀の様だ」

 

アドマイヤベガの鞍上、峪さんの様子もまた、このレースに対し極限まで集中しているのが分かる。

……日本競馬史上初、ダービー2連覇の大偉業。

僕の前に立ちふさがるのは、完璧な仕上がりのアドマイヤベガ、レースに集中している天才騎手、そして、偉業。

 

「―――あぁ、大丈夫だ」

 

しかし、それらを前にしても、僕の心は何処までも落ち着いていた。

偉業を前にする事に、恐れなど無い。

なにせ、僕は『レコードブレイカー』の片割れ、『ヒットマン』なのだ。

あまり好きな呼ばれ方ではない。しかし、事実、偉業を阻んできた者である。

今回もまた、そういう事というだけだ。

 

「行こうか、テイル」

『はい!』

 

恐れる事は、何も無い。

僕はただ、自分の出来る精一杯で、レースに挑むだけだ。

力強く頷く相棒の首を撫で、前へと進める。

 

「勝とう、僕と、君で」

『勝ちましょう、俺と、貴方で』

 

 

 

 

 

『天気に恵まれ、馬場状態も良との発表です。全国の競馬ファンの皆様、間もなく第66回東京優駿、日本ダービーが始まります。4歳牡馬の頂点を決めるクラシック路線、最も名誉ある冠を勝ち取る競走馬は、騎手は、一体誰なのでしょうか?』

『パドックを見ていきましょう。1番人気はナリタトップロード、渡邉国廣とのコンビであります。皐月賞では2着馬オースミブライトとハナ差の3着、実力は十分にあります』

『僅かな差での2番人気、アドマイヤベガと峪穣。皐月賞では体調を崩し実力を発揮出来ずに終わりましたが、12キロ落としていた馬体重を完全に戻し、完全復活しての出走です。この馬の真の実力に期待が寄せられております』

『3番人気は皐月賞馬テイエムオペラオー、倭田龍一のコンビ。前走の恐ろしき末脚が記憶に新しいかと思われます。鞍上倭田騎手、これが2度目のダービーとなりますが、最年少ダービー制覇の偉業は叶うのか?』

『4番人気はブラックテイル、鳥場弘。美浦の馬としては1番人気、鳥場弘騎手にとっては初のダービー制覇がかかっています。数々の偉業を前に、この男はどう動くのか』

『5番人気にオースミブライト、海老名正利。皐月賞ではテイエムオペラオーに差し切られての2着。実力は確かなモノがあります、リベンジはなるか?』

『6番人気にイシノフォーチュン、尾西直人とのコンビ。プリンシパルステークスでは8頭抜きで勝利を飾りました。父の出走出来なかったクラシックレース、2つに実力で出走している所に期待が寄せられていますね』

『7番人気は……』

 

 

 

『クロスケ、だよな?』

『……ローズ?』

『あぁ、そうだよ。ローザネイの子、ローズだ』

『久しぶり……って程でもないか。スプリングステークス、出てたよね?』

『おう。気付いてはいたんだな』

 

1頭、鹿毛の馬と会話をする。

俺やリラと同じ牧場で生まれ、育った、同じ父を持つ友達。

ローザネイという母を持つ、仮名『ローズ』君。

実はスプリングステークスで一緒に走っては居たのだが……あの日は皐月賞の出走権を賭けたレースと言うのもあってレースに集中してたから、話しかけるような事はしなかった。

だから、こうして話をするのは、厩舎入りする前以来となる。

 

『今の名前は、ロサード、って言うんだ。覚えておいてくれ』

『分かったよ、ロサード。俺の名前は、ブラックテイルって言うよ』

『ブラックテイル、な……やっぱ、俺らだけの時くらいは昔のままで良いか?なんか変な感じする』

『そうしよう。リラともそうしてるんだ』

『リラも?』

『今日も来てるよ。ロサード……ローズは、ダービーってレースに出る?』

『あぁ、そうだよ』

『じゃあ、俺やリラと一緒だ』

 

ローズ、リラ、そして自分。

生産牧場の友人達、その中の牡馬組が揃ったわけだ。

ここにドールちゃん、スズちゃんが揃うと全員集合になるんだけど…

 

『いつか、皆で走ってみたいな』

『それはそれで楽しそうだ……けど、今は目の前のレースに集中しよう』

『ダービー、だったな』

『そう。俺達が走るレースの中でも、特に注目を集めるレース……凄く多くの人達が、俺達の走りを見に来ているんだ』

『ふぅん……ま、お互い頑張ろうぜ』

『あぁ』

 

 

 

 

 

『最後、大外18番イシノフォーチュン入りました。さぁ、第66回東京優駿日本ダービー、スタートしました!!』

 

 

遂に、ダービーが始まった。

皐月賞からすっかり体調を回復させ、万全な状態でこのレースに挑むアドマイヤベガの背で、スタート直後の周囲を確認する。

1頭、大きく出遅れたようだが、それ以外は好調なスタート。

 

 

『さぁ先頭はワンダーファング、ワンダーファングが逃げて行きます!皐月賞に出走できなかった無念を晴らさんとばかり、先頭を奪いました!マイネルタンゴ、ヤマニンアクロが続いて行きます!その後ろ、漆黒の馬体!ブラックテイルが2頭の後ろを進んでいきます!』

 

 

―――ブラックテイル、パッと見で分かる程の、漆黒の馬。

どうやら今日も、先行策で進む様だ。

 

パドックで、返し馬で、彼の状態はしっかりと見た。

恐ろしい程の仕上がり。

今日のアドマイヤベガの仕上がりは完璧だと、テキと頷き合っていた。

それに並ぶほどの、見ていて寒気を感じるほどの存在感を放っていた。

故に、今回最も警戒している馬だ。

 

 

『注目のナリタトップロード、テイエムオペラオーが中団、アドマイヤベガは思い切って大きく後ろといった具合であります!!』

 

 

ナリタトップロード、テイエムオペラオーもまた、警戒している馬である。

2頭共に、アドマイヤベガよりも前に居る。

先行、と言うよりは差しの位置か。

オースミブライトもまた、2頭の近くに居る。

それと、気になるのは……イシノフォーチュン、『あの』オグリキャップの産駒。

プリンシパルステークスでのごぼう抜きは、オーディーウィンの背に乗っていた僕の記憶に新しい。

 

 

『さぁ先頭から見て行きましょう。先頭は依然変わらずワンダーファング。その後ろマイネルタンゴが2番手といった形。2馬身程離れてヤマニンアクロ、その後ろピッタリと、マークしていますのはブラックテイル。後ろにはマルツブオペラ、チョウカイリョウガ横並び、13番タイクラッシャーその後ろ、斜め後ろにイシノフォーチュン、ペインテッドブラックが続きます!』

 

 

仕掛け時が重要になるな、と頭の中で冷静に考える。

何処で、誰が、何時仕掛けてくるか。

周囲の観察を、欠かさない。

 

 

『さぁ向こう流しに入りました縦長の展開!ワンダーファング先頭、マイネルタンゴが続くぞ鞍上岡部はクラシック100回目の騎乗!その後ろ3馬身ほどかヤマニンアクロ、その後ろ、変わらずピッタリと不気味な走りブラックテイル!少し離れてマルツブオペラ、並んでチョウカイリョウガです!!』

 

 

もうすぐで先頭が第3コーナーに差し掛かる。

アドマイヤベガの持ち味はその末脚にある。

一気に抜き去る為に、良いコース取りを……!?

 

 

『また少し離れてタイクラッシャー、その後ろペインテッドブラックそして皐月賞馬テイエムオペラオーこの位置……おっとここで?ここで仕掛けて来たぞ鳥場弘ブラックテイル!?』

 

 

第3コーナー入ったばかり、という位置。

先行策を取るブラックテイルが仕掛けるには、少し早いような。

なのに、ここで仕掛ける?

掛かったか、ブラフか、それとも……本当に、この距離を走り切らせるのか。

 

 

『ヤマニンアクロ抜き去って、グングン前に行きますブラックテイル!仕掛けるには早くないか!?これはどうなんだ!?府中の坂を一気に駆け抜けていく!!!』

 

 

先行策から、早めに抜け出して、駆け抜けていく漆黒の馬体。

その姿に、ブラックテイル号ではない、1頭のサラブレッドの姿が被って見えた。

―――そうだ、あの人は、鳥場弘という騎手は、この走らせ方をした事が、ある。

 

 

「ライス、シャワー……!」

 

 

走らせるつもりだ。走り切らせるつもりだ。そして、走り切る自信があるんだ。

先行策から、早めに先頭を取って、走り切らせる。

4年前の天皇賞、それをしたのは、あの人なのだから。

気が付いたら、アドマイヤベガに、前に行かせる為に動いていた。

『此処で仕掛けなければ、追いつけない』

今までの経験が、そう叫んでいた。

 

 

 

 

 

『さぁ第4コーナー入ったこの位置で、先頭遂に変わったブラックテイル!!ブラックテイル先頭、ブラックテイル先頭だ!!!』

 

 

コーナリングは完璧だ。

荒れた馬場だって俺には走り切れる。

前には誰も居ない。

―――鳥場さんの作戦は、完璧に決まった!!!

 

 

『最内進むブラックテイル!後ろワンダーファングマイネルタンゴ、後続も迫ってきている!!』

 

 

最内、最も短い距離を意識して、コーナーを曲がっていく。

ほんのわずかでも、体力の消費を抑えて、最後まで走り切れるように。

ここでどれだけ消費を抑えられるか、ここに最後の挑戦での勝負がかかっている。

 

 

『さぁ先頭はブラックテイル!しかしナリタトップロード、テイエムオペラオー外に持ち出している!そして大外、大外アドマイヤベガ!!』

 

 

背後から迫る音、抜き去ったワンダーファングやマイネルタンゴじゃない、後方の馬達が近づいて来ているのが分かる。

―――ここからが、本当の勝負だ。

こっちの根性と体力が持つか、向こうの末脚が勝つか。

 

「―――行くぞ、テイル!」

『はい!!!』

 

ここから考える事は、ただ1つ。

―――ゴール板の前まで、全力で、走るだけ!!!

 

 

『さぁ最後の直線だ!ブラックテイル単独の先頭、追いかける後方勢!!ナリタトップロードテイエムオペラオー!!2頭のやや内からこれはイシノフォーチュンだ!そしてアドマイヤベガ!アドマイヤベガが外から一気に上がって来た!!!』

 

 

全力で、地面に蹄鉄の形を刻み込むように、力強く踏み込んで前へと進む。

だんだんと、ゆっくりと迫ってくる足音達。

誰が迫っているのか、気にする余裕も無い。

ただひたすらに、前へ、前へ―――

 

『―――クロスケ!!!』

 

―――そうか、お前か。

お前が、ここで来るか―――

 

『君を、今日こそ!!』

『―――抜かせないぞ、リラ!!!』

 

今生最初の友達よ。

今日この日、この場所で、競い合うと誓ったライバルよ。

負けたくない、お前には、負けたくない!!

 

「抜かせるな、テイル!!」

「差し切れ、アドマイヤベガ!!」

 

鳥場さんが、鞭を振るう。

僅かに後ろの方からも、鞭を振るう音が聞こえてくる。

徐々に、徐々に真横に近づく足音。

だけど、ここで抜かせるわけにはいかない!

振り絞れ、この後の事は一切考えるな!!

全力を出し切れ!!!

 

 

『ブラックテイル僅かに先頭!喰らいつくアドマイヤベガ!間からナリタトップロードだ!テイエムオペラオーだ!!しかし2頭譲らない!2頭のデットヒートが止まらない!!』

 

 

『リラ、お前には―――』

『クロスケ、君には―――』

『『負けたくない!!』』

 

 

『西か!?東か!?偉業か!?悲願か!?激しい先頭争いだ!!並んだ!!並んだ!!!並んだままゴールイン!!!』

『完全に、完全に並びました!!西と東のサンデー産駒決戦は、天才の偉業達成となるのか、悲願のダービー制覇となるのか!!!写真判定となります!!!』

 

 

 

 

 

『並ばれた……駄目だ、また分からない……』

 

全力を、出し切った。

もう1歩も走れない、それくらい、走った。

 

「テイル、お疲れ様」

『鳥場、さん……』

「最高の走りだった。ありがとう、テイル」

 

労わるような、優しい手つき。

それが、嬉しくて……確実な勝利を贈れなかったのが、悔しい。

 

作戦は完璧だった。

道中はスリップストリームで、早めに先頭を取った後は経済コースで体力の消費を抑え、最後まで走り切る。

俺の脚と合致した作戦を鳥場さんは考えてくれて、そしてそれを遂行した筈だ。

 

「お前の走りは最高だったよ、テイル……相手も、最高の走りをした、それだけだ」

『……すみません、鳥場さん』

「結果を、待とう。僕たちは最高の走りをした、ならば後は結果を待つだけだ」

『は、はい……』

 

心が落ち着かない。

モヤモヤとした気持ちのまま、荒い息を整えようとする。

すると、ゆっくりと、ゆっくりと近づいて来る足音。

 

『クロスケ……』

『リラ……』

『また、だね』

『あぁ、また、だ』

 

リラが、俺の横に並ぶ。

ラジオたんぱ杯に次いで、またも写真判定レベルの接戦となった。

 

『……全力を、出したはずだ。でも、並びはしたけど、追い抜けなかった』

『それを言うならこっちもだ。逃げ切れると思ってたのに、並ばれたんだ』

『ははっ……前は、僕が勝ったけど、今回は、どうかな』

『どうかな……』

 

こればかりは、分からない。

並ばれた、それだけは分かる。

だけど、そこまでだ。あとは写真判定に委ねるしかない。

 

「鳥場さん」

「峪さん……また、ですね」

「ですね。今度こそ追い抜く、そう思ってたんですが」

「僕もですよ。今日は、逃げ切る。そう思ってたんですけど」

「だとしても、驚きましたよ。第3コーナー入ってすぐのスパートだなんて」

「意外性もそうですけど……テイルなら、走り切れる。そう信じましたから、ね」

 

鳥場さんと峪さんの会話を聞きながら、結果を待つ。

……にしても、長いな。もう5分は経ってると思うけど。

だいぶ息も落ち着いて来たからこそ、違和感を感じる。

前回、ラジオたんぱ杯の時は、数分待ったくらいで終わったけれど……今回は、まだ結果が出てない。

どうしたんだろ、などと思いながら更に数分、リラと並びながら待つ。

 

「……長い、ですね」

「えぇ、そうですね」

 

鳥場さん達も長いと感じるらしい。

観客もどこか不安そうな、そんな雰囲気を感じる。

―――ゴールしてから、15分ほどだろうか。

 

「―――えっ?」

「―――これ、は」

 

鳥場さんと峪さんが、電光掲示板を見て、固まっている。

顔をそっちに向けて―――思わず、固まってしまった。

 

『クロスケ?』

『これ、え、本当に?』

『ねぇ、クロスケ?どうかしたの?』

『リラ……えっと、その……レースの結果、なんだけどさ』

『うん』

 

 

 

同着  2:25:2

 

 

 

『―――なんと、なんと!同着!!同着です!!日本競馬史上初!!GⅠ競争での同着判定―――!!!』

 

 

瞬間、爆発するような歓声が沸き上がった。

 

 

『な、何?何が起きたの?』

『えっと、その……リラ、落ち着いて聞いて』

『う、うん』

『―――俺たち、2頭揃って1位、だって』

『―――えっ?』

 

 

『しかも、この記録はアイネスフウジンが記録した2:25:3を0.1秒更新するレコード!!西と東のサンデー産駒が、競い合って生まれたレースレコード!!』

『峪穣、ダービー2連覇!!そして、鳥場弘は初のダービー制覇!!記録、偉業、悲願!!全てが、全てが達成されました!!!まさに奇跡!!!奇跡の一戦ですッ!!!』

 

 

『揃って1位、って……』

『どっちが前、どっちが後ろ、そうじゃない。完全に、全く同じタイミングでゴールした。俺とお前、2頭が1位……俺とお前が、他の馬達を抑えて1位だ』

『……クロスケと、僕が、他の馬よりも……』

『そう、そうだ。俺達2頭で、1位だ!』

『そう、なんだ……僕たちが、1番……!』

『あぁ!!!』

 

「―――ハハッ」

「鳥場さん?」

「夢じゃない……夢じゃ、ないんですね、峪さん」

「―――えぇ、夢じゃありません。同着、です」

「そう、か……僕も、ダービージョッキーに……!」

 

ポタリ、と、首筋に何かが零れ落ちてくる。

上から聞こえてくる、くぐもった嗚咽。

俺の上で起きている事を、察する。

 

『―――おめでとうございます。そして、ありがとうございます、鳥場さん』

「―――おめでとう。そして、ありがとう、ブラックテイル……!」

 

心からの祝福と、感謝を、伝わらないだろうけれど、呟く。

―――最高の名誉を、貴方に贈れて、良かった。

最高の舞台は、こうして幕を閉じた。




この結果を見て、色々と思うところはあるかと思います。
私自身、悩みました。
ですが、元馬を初めとした様々な事を調べ、考え、今回の物語を書きました。
そこだけは後書きとして書かせて頂きます。

次回、ウマ娘回を予定しております。
2話くらいウマ娘回をやって、馬回へと戻る予定です。
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