黒き馬、世紀末を駆ける   作:馬券童貞は東京優駿に捧げた男

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大変遅くなりました!!!(土下座
職場がどったんばったん大騒ぎ()しておりまして暫く書けず、年末年始になって漸く休みが取れたので頑張って書きました。
本当に、本当に申し訳ありません……


第17話 それぞれの次へと+第49回安田記念

勝利ジョッキーインタビュー。

今日、その場は異様な熱気に、それと同じくらいの困惑に包まれていた。

『東京優駿』と言う、クラシック戦線の大舞台。

そのインタビューの舞台に、『2人』のジョッキーが、並んでいた。

インタビュワーが、意を決して、口を開く。

 

「えー……それでは、ダービーの勝利ジョッキー、アドマイヤベガの騎手である峪騎手、そして、ブラックテイルの騎手である鳥場騎手に、インタビューをさせて頂きたいと思います」

「宜しくお願いします」

「宜しく、お願いします……峪さんから、どうぞ」

「え、あぁ、はい。それじゃあ、僕からで」

「すみません。それではまず、峪騎手からインタビューさせて頂きます」

 

まず、1着が同着、という事が稀である。

そのうえ、GⅠの大舞台で、というのはJRA史上初。

故に、どこかぎこちない雰囲気のままに、インタビューが続く。

 

「では、まず……ダービー連覇、達成となりましたね」

「えぇ、そう、ですね。ちょっと首を傾げちゃいますけど、1着ではあるので、連覇になる……のかな?」

「戸惑われるかと思いますが、連覇となります」

「そう、か。それは、嬉しいですね」

「どうでしたか、アドマイヤベガは」

「今日のアドマイヤベガは、完璧な仕上がりでした。道中折り合いもしっかり付けられましたし。間違いなく彼らしい走りを出来ました」

「峪騎手からして、ブラックテイルはどう思われてましたか?」

 

疑問に思っていた事を口にする。

瞬間、峪穣の表情が険しいモノになる。

 

「……僕から見て、寒気がするほどの仕上がりでした。間違いなく今日の最大の敵だと、そう認識してました」

「なるほど……」

「アドマイヤベガも気にしていたんですよね。彼の方をじっと見て……きっと、アドマイヤベガはアドマイヤベガで、脅威として認識してたんじゃないかな、なんて思っています」

「事実、今日は2頭同着となりましたが」

「いやぁ、まさか第3コーナー入った所で仕掛けるとは思わなかったなぁ……反応に遅れてたら、逃げ切られたかもって、今でも思ってます。本当に、一瞬でも油断したら、間違いなく負けていたでしょうね」

「ありがとうございます。では、一度鳥場騎手のインタビューに移らせて頂きます」

「えぇ、どうぞ」

 

話を一度切り上げて、インタビュワーが鳥場弘に話をする。

 

「鳥場騎手、ダービー初制覇、おめでとうございます」

「ありがとう、ございます……正直、夢なんじゃないかと、最初は思いましたが」

「間違いなく、現実です。おめでとうございます」

「……世間では色々と言われてますが、僕もジョッキーですから。ダービーを取りたい、そういう気持ちは、ずっとありました。漸く、漸く、それが叶った……とても、嬉しいですね」

 

心から嬉しそうな、そんな笑顔。

それを見て、インタビュワーも自然と笑顔になる。

 

「では鳥場さん、ブラックテイルについてお聞きしても?」

「今日のテイルは、調子が良かったですね。折り合いがとてもつけやすい馬なんですけど、それとはまた別に、今日はいつも以上にやる気に満ち溢れてました」

「なるほど……」

「恐らく、相手にアドマイヤベガが居たのが一因だと思っています」

「と、言いますと?」

「アドマイヤベガとブラックテイルは、父が同じ、かつ、同じ牧場で生まれ育ったと聞いています。そして、そこでとても仲が良かったとも。ライバル意識を持っているんじゃないかな、おそらく」

 

馬同士の仲が良い、というのは初めての情報であった。

 

「馬同士の仲が良い、ですか?」

「えぇ、はい。生産牧場でずっと一緒に居るほど仲が良かったみたいです」

「そうなんですね、それは初めて聞きましたよ鳥場さん」

「峪さんは聞いた事無かったですか?」

「そうですね、僕は全然」

「なるほど……鳥場騎手から見たアドマイヤベガについて、お聞きしても?」

 

この話は、深掘りすると時間がかかる。

そう判断し、インタビュワーが切り上げる。

質問をされた鳥場弘の目が、鋭くなる。

 

「そうですね……落ち着き具合、馬体の仕上がり、どれをとっても他馬と比べて桁違いの仕上がりだ、そう思っていました。峪さんも物凄く集中されてましたし、これは今日最大の敵になるな、そう思っていました」

「なるほど」

「テイルも強く意識してましたね。じっとアドマイヤベガを見てました……レースの方でも、今日は逃げ切れる、そう思ってたのに、結果並ばれましたしね」

「馬の方もライバル視している、そんな関係だと」

「えぇ、間違いなく」

「今日の反応を見ると、間違いないんじゃないかなぁ」

「なるほど、ありがとうございます……それでは、これで最後にしたいと思うのですが、お互いに相手に伝えたい事など、ありますか?」

 

インタビュワーの言葉に、峪穣と鳥場弘が顔を合わせる。

視線で峪穣が先を譲り、鳥場弘が口を開く。

 

「峪さん、ダービー2連覇、おめでとうございます」

「……ありがとう、ございます」

「―――次は、逃げ切りますよ」

「じゃあ、僕からも。ダービー制覇、おめでとうございます」

「ありがとうございます」

「―――次は、差し切ります」

 

鋭い視線が、交差する。

しかし、それも一瞬の事。

互いに緊張を緩め、手を差し出す。

 

「今日は、ありがとうございました」

「こちらこそ」

 

互いに握手をしたところで、カメラのフラッシュが焚かれる。

―――こうして、第66回東京優駿、その幕は閉じた。

 

 

 

「―――すみません、小鷹(おだか)さん」

「金尾さん?どうかされましたか?」

「少し、相談したい事がありまして」

「テイルの今後、ですかね」

「えぇ、はい」

 

1つしか優勝レイなどが無い事もあり、別々に行われた表彰式。

それを終えた後、調教師である小鷹と、馬主である金尾が顔を合わせる。

 

「ブラックテイルは、菊花賞に挑めますか?」

「……断言はできません。菊花賞は今まで以上に距離が長いですから」

「3000m、ですもんね」

「金尾さんの馬で、菊花賞に挑んだのは……」

「居ませんね。挑むとなると、ブラックテイルが初めてになります」

 

馬主としての活動を始め、まだ数年。

それでダービー馬の馬主になるというだけでも凄い事ではある。

しかし活動が短い故、分からない事も多い。

 

「夏明けに一戦叩いて、菊花賞に挑むか決断する。それで大丈夫だと思います」

「間に一戦挟む、ですか」

「そうですね。直近で言えばセイウンスカイ、彼は京都大賞典を挟んで菊花賞に挑み、世界レコードを飾りました。古馬混合を避けるなら京都新聞杯がメジャーでしょうかね」

「なるほど」

 

小鷹の話を聞きながら、金尾が考える。

間を挟むか、挟まず直接出すか。

古馬と戦わせるか、否か。

色々と考える中で、1つ、思った事を口にする。

 

「―――毎日王冠は、どうですか」

「毎日王冠、ですか?」

「昨年はエルコンドルパサーやグラスワンダーなどの有力な4歳馬が出走していましたから、気になりまして」

「……距離が些か短いとは思います。毎日王冠に4歳馬が挑むのは、マイル戦に挑戦する場合、という印象が強い。毎日王冠を挟んで菊花賞というのは、あまり聞かないですね」

 

少し考えてから、小鷹が応える。

毎日王冠は1800m、対して菊花賞は3000mと差が大きい。

毎日王冠から菊花賞のルートを辿った馬というのは、あまり記憶にない。

探せば居るかもしれないが……というのが、小鷹の感想であった。

 

「古馬に挑ませるなら京都大賞典の方が、前哨戦としては良いかもしれません」

「なるほど………1つ、聞いてみても良いですか?」

「何でしょうか?」

「―――グラスワンダーが秋の初戦に選ぶとしたら?」

「―――」

 

質問の意味を、小鷹が考える。

数秒、幾つかの選択肢が浮かび、そしてたどり着いたのは……

 

「―――テイルを、グラスと?」

 

―――同厩舎の馬を、同じレースに出す。

全く無い、という事は無いが……

小鷹の言葉に、金尾が頷く。

 

「間違いなく、グラスワンダーは今の日本競馬のトップクラスであると思っています。そこに挑ませてみたい、という気持ちは少しあります」

「……もしも、私がグラスワンダーの秋初戦に選ぶとしたら、毎日王冠です。去年のリベンジ、という側面もありますから。ですが……」

「?」

「……グラスワンダーも、ブラックテイルも、主戦は鳥場さんです。乗り換え、という事になりますよ?」

「それを経験させる、というのも選択肢と考えます。同じ騎手に乗り続けて貰う事が一番ですが、そうはいかない事も今後出て来るでしょう。この一戦さえ終われば、またブラックテイルには鳥場さんに乗って頂きたい、そう考えていますが」

 

金尾の言葉に、小鷹が真剣に考える。

金尾の言葉は、分からなくはない。

だがしかし、目指しているのが菊花賞となると、毎日王冠はやはり距離が短い。

古馬との経験を積ませるにしても、とは考えてしまう。

 

「……グラスの馬主さん、鳥場さんにも、確認を取ってみます」

「よろしく、お願いします」

 

しかし、グラスワンダーとブラックテイルの真剣勝負、そこに魅力を感じないわけでは無かった。

故に、関係者の声次第、という形に小鷹は持ち込むことにした。

 

 

 

「テイルと、グラスを、ですか」

「えぇ。金尾さんは、鳥場さんにはグラスに乗って貰うことも承知の上で、と」

「……自分としましては、『あり』だとは思います」

「そうですか?」

「えぇ」

 

小鷹の言葉に、鳥場は頷いた。

 

「小鷹さんも恐らくは感じているでしょうけれど、テイルは常識を超えた賢さの馬です」

「えぇ、はい」

「人の言葉を理解し、己の幼馴染とも言える相手を理解し、ライバルへの闘争心を覚えている。であれば、グラスという先輩の事も、正しく認識しているでしょう。グラスと走る事で、新たな事を覚える可能性は、十分にありえるかと」

「ふむ……」

 

顎に手を当て、小鷹が考える。

鳥場の言葉については、『ありえる』と言える。

ブラックテイルという馬は、自分が見てきた馬の中で、桁違いに賢い……もはや異質とも言える領域の馬である。

自分の中にある馬の常識には収まらない。

『ブラックテイル』という完全な別物として考えるべき存在。

そんな彼ならば、そういう事も十分に考えられる、というのが小鷹の考えだった。

 

「……乗り換え、という事になりますが、それは」

「出来れば、手放したくないです。主戦として、全てのレースを乗りたいとも思っています……ですが、僕も1人の人間ですからね。怪我なり病気なりで、乗れなくなってしまう事はありえます。それに備えて、他人の感覚を覚えて貰う、というのは……賢い彼なら、分かってくれると、思っています」

「……分かりました。ブラックテイルの代わりの騎手を、私の方で探してみます」

「僕の方からも、声をかけてみますが……毎日王冠の日に東京競馬場に来る騎手、ですか」

「そうですね。いろんなところに声をかけてみましょう」

「えぇ」

 

 

 

 

 

『先輩先輩!俺、1着になれました!!!』

『おめでとう、テイル!』

『これで俺も、先輩に次いでこの厩舎2頭目のGⅠ馬です!』

 

厩舎に帰って来たテイルが、とても嬉しそうに僕に話しかけてくる。

それを見るだけで、僕も嬉しくなる。

テイルが、僕の大事なコーハイが、僕と同じくジーワン馬になった。

それが、とても嬉しい。

 

『ダービーに勝った、じゃあ次は、キッカショウ、だったかな?』

『はい!芝3000m、とても長い距離です……有馬よりも長い、厳しいレースになります』

『アリマよりも長い、か』

『【最も強い馬が勝つ】とも言われる、クラシック3冠、最後のレースですね』

 

キッカショウ、というレースが今度あるらしい。

アリマよりも長いレース……きっと、体力勝負になるんだろうな。

2500mでも大変なのだ、それよりも長いなんて、ちょっと考えられないな。

 

『でもまぁ、今から大体4ヶ月か5ヶ月も先です。菊花賞の前に1戦出てから本番らしいですけど、その1戦も夏が明けてから……まぁ、3ヶ月くらいは空きが出来ますから、暫くは休みですね』

『そっか、そっか。ゆっくり休んでね』

『はい!先輩は、もう来週にレースがあるんですもんね』

『ヤスダキネン、だったかな』

『東京競馬場、芝1600m。感じとしては、毎日王冠よりもちょっと短い位ですね』

 

自分のレースが、来週に控えている。

アリマと比べると、大分短い距離のレース。

その分、体力よりも瞬発力が大事になるだろう。

 

『テキが気にしてたのは、キングヘイロー、シーキングザパール、エアジハード、だったかと』

『ふんふん』

『キングヘイローは先輩と同年代の馬で、クラシック路線を走って来た馬みたいです。両親共に実績ある馬で、クラシック戦でも決して走れない訳では無いみたいです』

『なるほど……シーキングザパールは?』

『……去年、世界の舞台で1位を取った馬、だそうです。モーリス・ド・ゲスト賞というレースで』

『世界の舞台で?』

『はい。距離こそ短めのレースだったそうですけど、確かに世界1位に輝いた馬。それが、シーキングザパール』

 

……世界1位の馬、か。

それは、楽しみだ。

 

『エアジハードも、先輩と同い年の馬だそうです。キングヘイローとは違ってクラシックレースは走っていないみたいですけど、それでも前走はGⅡ1着、実力者なのは間違いありません』

『なるほど』

『それと……どうも、エアジハードの鞍上が、エルコンドルパサーの鞍上を今勤めている海老名さんみたいです』

『エルの?』

『はい。つまり、相手は先輩の事を良く理解している人になります。ここはちょっと懸念点……警戒するポイント、ですね』

『なるほど、なるほど……』

 

テイルからレース前に話を聞く事で、色々と考える事が出来る。

本当に、いいコーハイを持ったな、自分は。

 

『グラス先輩として、気になるのはどの馬ですか?』

『そう、だな……気になるのは、シーキングザパールかな』

『やっぱり、世界1位の馬だから、ですかね?』

『そうだね。短い距離のレースとはいえ、実力者みたいだからね』

 

世界の舞台で頂点に立った馬……エルも海外に行く、って聞いたし、その舞台で活躍した馬は気になる。

 

『先輩』

『ん?』

『信じてますよ。先輩ならきっと勝てる、って。俺にとって最高最強は、先輩ですからね』

『……ありがとう、テイル』

 

―――あぁ、なんて真っ直ぐな視線だろう。

そんな眼で見られて、走らないなんて選択肢は、選べない。

勿論、全力をもって走ってくるさ。

僕は、決めたからね。

『最速』を追い越せる走りを、身につける、って。

テイルが思い描く『最高』に、なってみせる、って。

 

 

 

『ヘイ、そこの君!』

『僕、かな?』

『そう、君だ。私の名前はシーキングザパール!!君の名前を聞いても良いかな?』

『君が、そうか……僕は、グラスワンダー』

『グラスワンダー、オーケー、覚えたよ!』

 

タイキジョで、僕に声をかける馬が居た。

ちょうど、気にしていた相手、シーキングザパール。

 

『色々なレースを走ってきて、なんとなく強い馬っていうのは分かるの。君、強いわね』

『どう、だろうね。世界の頂点に勝った君と比べると、どうだろうか』

『あら、私を知ってるの?』

『色々と教えて貰ったよ。世界1位に輝いた、確かな実力者だってね』

『えぇ、そうよ!私は世界のトップに立った!!……でもね、油断はしないわ。だってちょっと長いものこのレース。全力でいかせてもらうわ』

『あぁ、僕もさ』

 

うんうん、良いね。

勝ちたい、ってギラギラした目だ。

……他にも何頭か、そういう目をしている馬が居る。

―――あぁ、楽しみだ。

 

 

 

『さぁ、各馬ゲートイン、体勢完了……スタートしました!』

『さぁ先頭争いですが、これはアグネスワールド、アグネスワールドがハナを奪いました!2番手争いは内からオリエンタルエクスプレス、外からキングヘイローが加わります!!』

 

 

……囲まれた、かな?

前の方には5頭、6頭くらいか。

左右も囲まれていて、動きにくいな。

 

 

『2番手争いからはやや離れてエガオヲミセテ、後ろにはグラスワンダーこの位置、外からムータティール、内からキョウエイマーチ!』

 

 

ちょっと短いレースだから何とか前に行きたいな。

だけど、どうしようか……

取りあえず、鳥場さんの動きを待って……

 

「グラス、外から仕掛ける」

『了解です』

 

言葉で、どう動けばいいかを理解する。

外から、という事は……右に少し寄っておこう。

コーナーを曲がる時、どうしても身体が外に出てしまう。

そうして前に隙間が出来たら、そこに突っ込む!

 

 

『さぁ3コーナーに入って先頭アグネスワールド、キングヘイローが2番手につけている!しかし外からムータティールが上がってきています!そしてさらに外エアジハード!その内にはグラスワンダー囲まれてる中懸命に……いや、間を縫っている!?間からグラスワンダーだ!グラスワンダーがキングヘイローの外ムータティールの内、間に来ているぞ!!!』

 

 

コーナーに差し掛かって、やや膨らんだ前の隙間。

そこに突っ込んで、前へと進む。

 

『何だお前は!?』

『悪いね、横、通るよ』

『チィッ!!このキングヘイローの横を素通りとは、良い度胸をしている!!待てェ!!』

 

 

『さぁ先頭アグネス、いやエガオヲミセテ!しかし内からアグネス、外からグラスワンダーキングヘイロー!さらに外からエアジハードだ!そしてシーキングザパールが追い上げてくる!!!』

 

 

1頭、いや2頭、かなり追い上げてきている馬が居る!

今抜かしたキングヘイローじゃない、別の馬だ!!

 

「グラス、差し切るぞ!!」

『はい!!』

 

鳥場さんからの鞭が入る。

とりあえず、まずは前に居る2頭からだ!!!

そこを抜いて、あとはひたすら走り続けろ!!!

 

 

『先頭ここでグラスワンダー!グラスワンダー先頭!!外からエアジハードが迫っている!!』

『グラスワンダーか!?エアジハードか!?激しい競り合い!!』

『1馬身!!半馬身!!!どうだ!?どうだ!?クビ差まできた!!!だがしかしグラスワンダー!!!』

『少しの差で、グラスワンダー1着!グラスワンダー1着!!』

『これがグランプリホースの実力!!あと一歩を譲らず、GⅠ3勝!!!』

 

 

『やっぱ強かったわね、君。グッドレース!!』

『ぐっどれーす?』

『良いレースでした、って意味らしいわ?うん、そんな事聞いたことあるの』

『そっか。じゃあえっと、ぐっどれーす。今度テイルに聞いてみるよ』

『テイル?』

『僕の大切なコーハイさ。人の言葉が分かるんだって』

『オゥ、すごいわね』

 

寄って来たシーキングザパールと話をする。

そうしていると、1頭、近づいて来る馬が。

緑色のモノ……メンコ、を顔に付けた馬。

 

『キングヘイロー、だったね』

『あぁそうだ。お前、あの時俺の横を素通りした馬だな?』

『グラスワンダー。こっちはシーキングザパール』

『ハァイ、シーキングザパールよ』

『お前は最後の方に追い抜いてきた馬か……チッ、なぜ、なぜ勝てないんだ俺は……なぜあの人たちの期待に応えられない!なぜだ!!』

 

……勝利に対して、貪欲なんだな。

なら、言える事は……

 

『勝ちたいなら、そうだな……君に乗ってくれる人を、信じて欲しい』

『俺に乗っている人を、信じる?』

『うん。教えてくれたんだ、この人たちは、僕たちを勝たせてくれようと頑張ってくれているんだ、って。だから、信じて走るのが、勝つためにはなによりも大切なんだ、ってね』

『……覚えておこう』

『あぁ、覚えくれるだけでいいんだ。あくまで、こういう考え方もある、ってだけで、それ以外の走り方も、もっとあるだろうから』

『……ふん』

 

 

 

 

 

『先輩先輩、次のレース、宝塚記念、ですって』

『タカラヅカ?』

『有馬記念みたいに、投票で選ばれた馬が集まるレースですよ。1ヶ月くらいしたらレースがあるみたいです。芝の2200mだそうです』

『ふんふん』

 

なるほど、僕の次のレースはタカラヅカキネン、というレースらしい。

距離は、アリマよりも少し短い、といった具合。

僕としては走りやすい距離かな。

 

『多分出て来るだろう馬は、スペシャルウィークは出て来るだろうって言ってました』

『スペシャルウィーク……君の前のダービー馬、だったね』

『そうですね。去年のダービー馬です』

 

テイルがこの間勝ったジーワン、ダービーを1年前に勝った馬、か。

僕と同じ歳のダービー馬……

 

『先行や差しの位置を取る事が多いみたいで、鞍上は峪穣さん……サイレンススズカの鞍上を務めていた人です』

『そう、か。あの人が……』

『はい。前走は春の天皇賞、芝3200mで1位になった実力馬ですよ』

『3200mも走り切ったの?それは凄いな』

 

テイルが走る予定のキッカショウよりも長い距離だ。

それを走り切るなんて……すごい馬だな。

 

『強敵、だね』

『はい、そうなりますね……でも、先輩なら大丈夫です!』

『あぁ、大丈夫。きっと、勝ってみせるよ』

『はい!』

 

 

 

『まだ言えないよな、先輩には大きなレースが待ってるんだし』

『……先輩と、レース、かぁ……』

『秋の初戦、毎日王冠……そこで、先輩と……鳥場さんじゃない人と走って……』

『……楽しみ半分、不安半分、だな……頑張らないと、な』




ダービーインタビュー、安田記念、そして次走。
テイルの次走についてですが、色々と考えた末に決めさせて頂きました。
同厩舎対決、格上挑戦など、読者の皆様からすると「それはどうか」と思われるかもしれません。
ただ、この展開につきましては変更するつもりはありません。
そこは明言させて頂きます。
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