黒き馬、世紀末を駆ける   作:馬券童貞は東京優駿に捧げた男

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お待たせしました。
今回は有馬記念と年越しの間の物語となります。


第25話 決断+『覚醒の時、来たれり』

「テイル」

『テキ、どうかしましたか』

「……大事な話がある」

『何でしょう?』

 

グラス先輩の有馬記念も終わり、年越しまでもうすぐ、という所。

軽いトレーニングで様子を見ながら、という感じで今日の調教は終わった、のだが。

馬房に戻るなり、真剣な表情でテキが話しかけてくる。

 

「なぁ、テイル……『海外遠征』って言って、理解出来るか?」

『ッ……それって、まさか』

「そう、か。分かっちまうんだな、お前は……海外GⅠに、お前を出さないかって話があってな」

 

―――海外GⅠ。

有名所といえば、やはり『凱旋門賞』か。

他にもきっと一杯あるのだろうけれど…

 

「欧州への遠征を予定している。最大の目標は10月に行われる世界最高峰のレース、凱旋門賞だ」

『エルコンドルパサーが挑み、敗れたレース……』

「3月か4月ころから欧州に渡り、6月か7月あたりのGⅠレースへ。一度日本に戻し、8月中頃に欧州に、そして10月の凱旋門賞に出る……こういう予定だ」

『あ、ずっと欧州じゃないんですね?』

「首を傾げたのは……うーん、この場合はどれに首を傾げた?」

 

テキが今度は首を傾げる。

すると、ちょうどこっちにやってきた菊村さんが会話に混ざる。

 

「テキ、きっと一度日本に戻るのが不思議に思ったんじゃ?」

「あぁ、なるほど……そこが疑問なのか?」

『はい』

「海外遠征に関する制度でな。2ヶ月以上海外に行った馬は暫くの間日本のレースに出れなくなる。凱旋門から帰って来たとなると、年内のレースには出れなくなるんだ。凱旋門から帰ってきて、ジャパンカップは無理でも、有馬辺りは出したい、って考えてな」

「確か、正確には60日以上海外に行ったら、でしたね」

「……菊村君、勉強した?」

「テイルの海外遠征の話、ジャパンカップ終わりから提案されてたじゃないですか。行くかも、って思ったら、つい」

 

あ、そんな前から話はあったのか…

 

「まぁ、そんな訳で……どうだ、テイル」

『うーん……海外、かぁ』

 

テキから話を振られ、悩む。

……正直、興味が無い、と言えば嘘になる。

自分の脚は、恐らく……素人判断だが、海外の重馬場に向いている可能性はある。

少なくともスプリングステークスでは不良馬場でも走り抜けている。

だからまぁ、走れない、という事は無い……筈、だ。うん。

 

『うーん……………』

「……悩んでる、みたいだな?」

「ですねぇ……」

 

ただ……先輩と並ぶ程の名馬、エルコンドルパサーが破れている。

その相手はジャパンカップで競い合った相手、モンジューだ。

アウェーでグラス先輩、スペシャルウィーク、自分に次いでの4着に喰い込める実力者。

……勝てる、だろうか。

 

「……テイル、何を悩んでいるんだ?」

 

相手のホームで、今度はこっちが挑む側だ。

遠征費だったりそういうのもかかるだろうし…そもそも住む場所は?厩舎とかはどうなるんだ?

フランスかどこかで場所を借りるのか?

あぁ分からないことだらけ不安しかない…!

 

「テイル」

『……テキ?』

「……賢すぎる、ってのも考え物だな、これは。何か、色々考えて、悩んでるんだろう?それくらいは分かる」

『うっ……』

「……よし、言い方を変えるか」

 

そんなに悩んでるの分かりやすいか?と首を傾げる。

そんな事をしてると、なにやらテキが呟いて、改めてこっちを見て来る。

 

「なぁ、テイル。勝てる勝てないは別にして、行ってみたいか?」

『え……』

「レースの事とか、きっとお前は考えちまうんだろうけどな、一旦忘れてくれ。フランスとか……もしかしたら、イギリスとかも行けるかもな。海外に行ってみたいかどうか、それだけで考えてくれ」

『……良いんですか?』

「テイル。本当なら馬にレース出るか聞くなんてしない。お前だけだよ、こんなことするのは。俺も軽い気持ちで聞いてみただけなんだ。軽い気持ちで考えてくれて良い」

『でも……』

 

……俺の走りが、テキの、馬主さんの評価に繋がる。

それなのに、軽い気持ちでなんて……

悩む自分に、今度は菊村さんが話しかける。

 

「テイル。じゃあ、別の聞き方をしてみるぞ」

『菊村さん?』

「多分お前には、軽い気持ちで、なんて言っても無理なんだろうな。だからさ、ちょっと、その……ずるい言い方になるんだけどさ」

『……?』

 

少し、悩むような。

そんな仕草の後に、菊村さんが、真剣な表情で口を開く。

 

「―――俺、お前が海外で走る姿が見たいよ、テイル」

『ッ!』

「ロンシャン、サンクルー……もしかしたら、アスコットやエプソム、サンダウンかもしれない。なんだったら、ナド・アルシバ、バーデンバーデン、沙田かもしれないけどさ……俺は、お前が海外に行って、走ってる姿が見てみたい」

『……菊村さん』

「順位なんかどうでも良いんだ。ただ、お前が走ってる姿が見てみたいんだ……勿論、それで勝ってくれたら最高だけどさ。無事に帰って来てくれれば、それで良いんだ。ただ、俺が見てみたい、それだけで」

 

少し笑いながら、菊村さんは言葉を続ける。

 

「どこに行くってなっても、絶対俺は付いて行く。お前の世話をするのも、手綱を引くのも、俺がやる、誰にも渡したくない。その為ならフランス語だろうとドイツ語だろうと、なんだって勉強する。なんだって、やってやる」

『……………』

「もちろん、国内に専念するなら、それでも良いんだ。馬がレースを選ぶなんて前代未聞だけど、お前だから出来る特別な決め方だからな……でも、テイル。お前が海外で走る姿を見てみたいって、そう思ってる人間は居るんだ」

『……そう、か。そう、なんだ』

 

―――勝ち負けを抜きに、走って欲しい。

そう、願われた。

その為ならば、なんだってやる。そこまで言ってくれる人が、居る。

 

「……惚れこんでるなぁ、ほんと」

「勿論です。最高の馬ですよ、俺にとってテイルは」

「……菊村君に全部言われてしまったな……テイル。僕も見てみたいんだ、お前が海外を走る姿を」

『テキ?』

「きっと、誰も見た事の無い景色が、見れそうだ。お前となら、きっとね」

「ですね。テイルと鳥場さんならきっと、見せてくれます」

 

笑顔で、俺なら、俺と鳥場さんなら出来る、そう言ってくれる人が居る。

―――これに応えないで、どうするんだ。

 

ガリッ、と、地面に蹄を突き立てる。

 

「―――テイル?」

 

ガリガリ、と、力強く脚を動かす。

 

「お前、脚に負担がかかるって!」

「―――いや、これ、は」

 

驚きの声を無視して、脚を動かす。

画数を少なく、しかし、伝えたい事が伝わる様に。

俺は、蹄で文字を描く。

 

『イキタイ』

 

蹄を使って、地面に4文字、刻み込み。

テキと菊村さんの事を、真っ直ぐ、見つめる。

 

「……テイル、お前……」

「……そこまで、賢いのか、お前は……………ハハッ、これは、驚いたな」

「……テキ」

「あぁ。ここに居るのが僕らだけで良かった……テイル」

 

ポン、と俺の頭に手を乗せて。

グシャグシャと、鬣をかき混ぜるように、力強く頭を撫でて来る。

 

『テキ?』

「ありがとう。そう言ってくれて、ありがとうな」

『いえいえ』

「……行こう、ヨーロッパへ。やってみよう……世界の壁を、壊そう」

『―――はい!』

 

 

 

「で、凱旋門前にフランスに行くのは分かるんですけど、夏前はどうするんですか?やっぱフランスで……それこそ、エルコンドルパサーと同じでイスパーン賞とサンクルー大賞ですかね?」

「うん、それも一つの選択肢ではあるんだけど……ちょっと別の選択肢も考えてて」

「それは?」

 

異例も異例の『競走馬と相談して海外遠征決定』の後。

菊村君と僕は、テイルの海外遠征についてすこし話し合っていた。

 

「まぁ、言い方が少し悪くなるが……全く同じ道筋を辿るのも、華が無い」

「うぅん、まぁ、その、言いたい事は分かりますけど……」

「十中八九、ヨーロッパへの遠征を行うのは自分たちだけだろう。エルコンドルパサーの敗北で、尻込みするだろうからね」

 

エルコンドルパサーの遠征には、それだけ期待があった。

実際、彼は海外GⅠ制覇を成し遂げているのだ。

それも、フランスの芝2400m、王道の距離を勝っている。

―――それでもなお、開かずの扉を開くことは叶わなかった。

 

「日本の海外遠征へと挑む志を、消すわけにはいかない。そう言うのも考えて、エルコンドルパサーとは違う道を選ぼう、そういう話を金尾さんとしたんだ」

「なる、ほど……話は分かりましたけど。それで、別の道って?」

「凱旋門前、8月からの遠征はフランスへ行くつもりだ。出るレースもエルコンドルパサーと同じになると思う。そこは仕方ないとして……夏前、ここを変えるつもりだ」

「どんなふうに?」

「―――――イギリス競馬に、挑む」

 

僕の言葉に、菊村君が目を見開く。

競馬文化の開祖、イギリスへの挑戦。

凱旋門賞への挑戦とは、また違う『重さ』があるだろう。

 

「最大目標は6月のロイヤルアスコットか、7月のキングジョージっていう話だけど、時期を考えるとロイヤルアスコットの……来年からGⅠになるって話のあるプリンスオブウェールズステークス、きっとこれになる。そうなると前走はコロネーションカップかな」

「えっと確か……あれ、そのレースだと間は2週間くらいしかないんじゃ?」

「よく勉強してるなぁホント……テイルの頑丈さなら大丈夫だろう、という判断だ。遠征してからじっくり仕上げて、レースを終わらせ、一度日本に戻す、この流れにしようと思ってね」

「あぁ、なるほど」

 

仕上げ切ってない早めの段階で1戦叩く案も考えたが、テイルの頑丈さを信じて、しっかり鍛えてから2戦挑む方針にした。

それらを考えて、挑むレースを決めた訳だ。

 

「滞在先とか、帯同馬はどうするんですか?」

「滞在先は金尾さんの方で絞り込んでる。そのうちどこかで、僕も同行して視察するつもりだ。ただ帯同馬がね、まだ決めきれてない」

「それって……」

「色んな人に相談してみたが、ちょっと出し渋られていてね。夏前の遠征はグラスの馬主さん、春沢さんから、行くなら1頭出して貰える、ってことになったんだけど……」

 

グラスファッション、彼女を帯同に出して貰えることになっている。

父リアルシャダイ、母サウンドとハギノリアルキングの6歳下の全妹にあたる。

去年未勝利を勝って、それから1戦した後からは足の調子があまり良くなくレースに出せていない。

その未勝利を勝った時の騎手は鳥場さんだ。

色んな縁があって、夏前の帯同に出して貰えた。

 

「まぁ、今は夏前の遠征に向けて、色々とやらないといけない時期になる。夏明けの遠征での帯同をどうするかは、今後考えていくよ」

「まぁ、そうですね。今はテイルの遠征に向けて、頑張らないとですね」

 

そう。これからは忙しくなる。

テイルの遠征に向けての調整だってそうだし、来年からのレースに向けての調教もある。

忙しくなる……だが、同時に燃えている自分が居るのを感じる。

 

調教師人生初の、海外挑戦。

間違いなく、困難が待ち受けているだろうけれど。

それでも、それでも……勝ちたい。勝たせてやりたい。

 

「菊村君、君も大変になるぞ」

「分かってますよ、テキ……でも、俺はやります。俺が、やります」

「よし、頼んだぞ」

 

菊村君と、力強く握手を交わす。

―――テイルを、海外へ。

僕と彼の気持ちは、1つだった。

 

「―――さて、それじゃあ早速1つ、君に任せたい事があるんだ」

「えっ?」

 

 

 

「なぁテイル」

『なんです?』

「実は、その……お前にずっと隠してた事があるんだ」

『菊村さんが?』

「ジャパンカップよりもずっと前から、隠してた事なんだ……聞いてくれるか?」

『は、はぁ』

 

テキと話をした翌日。

海外遠征に少しドキドキしながら過ごしていると、菊村さんがこっちに来た。

なんでしょう?と首を傾げると、どこか申し訳なさそうに、菊村さんが口を開く。

 

「―――アドマイヤベガは、分かるな?」

『リラ?……リラが、どうかしましたか?』

「縦に首を振った、って事は、分かるんだな?……実は、だな」

 

「………アドマイヤベガが、屈腱炎で休む事になったんだ」

 

―――目を、見開く。

アドマイヤベガ……今生の、最も大事な友達。

生まれてすぐの頃から、離ればなれになるまで、ずっとずっと一緒に居て。

競走馬として、レースで4度も対決してきた、ライバル。

 

菊花賞のあの時、リラの脚……きっと、あれだ。

あれが、そうだったのだろう。

屈腱炎、という事は……グローリーと、同じか。

 

「治るか、分からない。少なくとも、春は駄目だろう、って話だ……もしかしたら、その……」

『―――そう、ですか』

 

嫌な想像が、頭を過ぎってしまう。

屈腱炎が治らず……ターフを、去ってしまう。

そんな未来を、どうしても考えてしまう。

ブンブンと頭を振って、どうにか考えないようにとする。

―――それでも、不安がこびり付いて離れない。

 

「……賢いからな、お前は。だから、ジャパンカップの前に言わなかったし、今まで伝えようか、隠し通そうか悩んだんだ、テキは」

『……はい』

「……心配、なんだよな。アドマイヤベガと、仲良かったんだって?」

『はい……友達で、ライバルで……』

「やっぱりなぁ……仲良い奴が怪我した、ってなると、心配だよな」

 

ポンポンと頭を撫でられる。

 

「でもな、テイル……辛いけど、これが競馬だ。これが、お前が生きている世界なんだ……どんな馬にだって、怪我の可能性、病気の可能性がある。アドマイヤベガに、それが来てしまった……お前の前で言うのはアレだけどさ、『それだけ』なんだよ」

『分かります。分かりますけれど……』

 

そうだ。

誰にだって怪我の可能性はあるし、病気になる可能性はある。

それは分かる。人間だった頃だってそうだった。

だけど……

 

「復活の可能性はある。過去に屈腱炎から復帰した馬は何頭も居るんだ。去年、秋の天皇賞を勝ったオフサイドトラップなんか、3回も屈腱炎になって、全部乗り越えて、8歳で勝ったんだぞ」

『オフサイドトラップ……そう、なんですね』

「だから、信じてくれ。アドマイヤベガはきっと、ターフに戻ってくる、って……な?」

『……分かり、ました』

 

希望は、ある。

なら、それを信じるしかない。

自分に言い聞かせて、首を縦に振る。

 

「良い子だ……テイル、アドマイヤベガが走れない間は、お前が世代のダービー馬として、頑張るんだぞ。お前が頑張れば、それだけアドマイヤベガの評価も上がるからな」

『―――俺が、頑張れば』

 

―――2頭、居る筈の状況で、1頭が居ない状況。

それは、奇しくも、リラと【兄弟】の状況に、近いモノになっていた。

生まれる筈だった弟が居なくて、1頭だけ生まれたリラ。

そんなリラに対して、【居ない兄弟に会えるその日まで、胸を張って会えるように全力で走れ】と言ったのは、俺じゃないか。

 

『……頑張らないと、いけないな』

 

ならば。

2頭のダービー馬の片割れとして。リラと次に会えるその日まで、全力で走るしかないだろう。

リラがターフに帰って来た時、胸を張って会えるように。

もしも、もしもターフを去ったとしても、リラの評価を、俺が高めてあげられるように。

 

『……リラ、待ってるよ』

 

君がターフに帰ってくる事を、待っている。

―――――どうか、同じ競馬場の、同じレースで、会えますように。

目を閉じて、静かに祈った。

 

 

 

 

 

『―――リューイチ?どうして泣いているんだい?』

 

アリマキネンで、クラシックセンセンを争ったナリタトップロード、そして僕よりも年上の馬達と争った。

負けてしまったが、超えるべき壁を見る事が出来た!

ならば次に走る時は僕が勝つ!

そう思っていた、のだけれども。

僕のキシュ、リューイチが、レースから数日して、僕の前に来た。

涙を流して、泣きながら、だ。

 

『どこか怪我でもしたのかい?……リューイチ?』

「―――オペラオー。勝たせてあげられなくて、ごめんな……」

『む、謝る事は無いさ!リューイチも僕も頑張ったじゃないか!ほら、次のレースでは僕らが勝つよ!!』

 

どうやら、負けてしまった事を悔しがっているみたいだ。

……まぁ、確かに、サツキショウで勝ってから、もうちょっとで勝てそう!でも負けた!という感じのレースが続いているが。

だけど、それは相手が強かったのもある。悔しいけれどね!!

 

ダービーではブラックテイルとアドマイヤベガ。

キョウトダイショウテン?ではツルマルツヨシ。

キッカショウではナリタトップロード。

ステイヤーズステークスではペインテドブラック。

アリマキネンではグラスワンダー。

みんな強かった、それは本当だ。

 

だからこそ!

負けを踏み越えて、次は勝ってみせようじゃないか!

そうじゃないのかい、リューイチ―――――

 

「―――――次、レースに負けたら……お前にはもう、乗れない、かも、って」

 

―――――は?

 

「オペラオーは、もっと強い馬なんだ、って。負けるのは……乗ってる人間のせいだ、って、言われて、さ」

「一回、菊花賞の時にも、言われててさ……テキが庇ってくれたから、お前に乗れてるけれど」

「あの後、ステイヤーズも、有馬も、もうちょっとで勝てたのに、負けて……」

 

―――――フザケルナ。

 

「ダービーの時にも言われたんだ、『鞍上の差で負けた』、って……!」

 

フザケルナ、フザケルナ、フザケルナ―――――!!!!!

 

「―――俺、頑張るから」

「お前は、強い馬なんだ。間違いないよ、お前は強い」

「だから、俺、頑張るよ……お前は強い馬だって、証明出来るように」

 

―――涙を拭いて、リューイチが笑う。

その笑顔が、とても、悲しそうで―――リューイチが僕の前から居なくなっても、頭から、離れなかった。

 

『リューイチ……どうして、1人で背負うんだい……』

 

負けたのは、君だけの責任じゃないだろう。

僕が走って、君はそんな僕を導いてくれる。

僕と君、2人で一緒、そうじゃないのか?

 

『……リューイチ以外が、僕に、乗る?』

 

―――ソンナノ、イヤダ。

身も、心も、燃やし尽くしてしまいそうなほどの激情。

どうする、どうする、どうする――――――――――

 

『―――そうだ、負けなければ良い』

 

僕が負けたら、リューイチが僕の元を離れてしまうというのなら。

そうだ、簡単な事じゃないか!

僕が、負けなければ良い!僕が、1着であれば良い!

 

『―――僕の背中を任せるのは、リューイチ以外居ないんだよ』

 

全く、1人で頑張ろうだなんて、全くもう!

僕の為に頑張ろうとするその姿勢は良いけれども。

1人で背負い込もうとするなんて……駄目じゃないか、全く。

 

『僕と君で、一緒に頑張れば、最強さ!!!』

 

―――君以外を乗せるつもりなんて、一切無い。

だから、一緒に頑張ろう!

この先一度も負けない、最強のコンビになろうじゃないか!!!

 

 

 

 

 

『うぅんと、えぇっとぉ……なんか、最近、動きやすい、ような……?』

『うん、うん……なんだか、良い感じかもぉ!』

『よぉし、次から走る時は、もっと頑張るぞぉ!!!』

 

馬房の中で、なにやら元気そうに動き回る、自分の担当している馬を見る。

ついこの間、レースに出たばっかりだというのに、もうぴんぴんしている。

 

栗毛の馬、白い大流星が印象的なその馬を、優しく撫でる。

―――この間のレースは、11頭中11着、つまりビリだったけれど。

いつか、この馬が活躍してくれる、そう信じている。

 

『ワワッ、くすぐったいですよぉ』

「よしよし、元気そうでなによりだ……頑張れよ、『ドトウ』」

『えへへぇ、なんだか嬉しいなぁ……』

 

―――2000年、『世紀末』は、もうすぐだ。




ブラックテイル、海外遠征へ。
そして、『世紀末』がやってくる……という話。

海外遠征、実はかなり悩んでます。
調べて書いては居るのですが「本当にこれでいいのか?」と首を捻りながら書いております。
間違っている事とかありましたら教えて頂けると……(土下座

日本競馬の世紀末と言えば、という2頭。
今後どうなるのか、次回をお待ちください。

予告となりますが次回はウマ娘編を幾つか投稿してからとする予定です。
ウマ娘編日本ダービー、ウマ娘編ジャパンカップ、その他ウマ娘編の他ウマ娘とブラックテイルの絡みを書いてから競走馬編に戻ってくるつもりです。
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