黒き馬、世紀末を駆ける   作:馬券童貞は東京優駿に捧げた男

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お待たせしました、長らく更新出来ず申し訳ありませんでした。
今回は小鷹厩舎の動き、そして…という話。


第27話 小鷹厩舎の動き+ある『男』の話

―――自分、酒々井(ささい)は、此処『小鷹厩舎』に今年から務める事になった新参者である。

厩務員としての経験も豊富と言える物では無い。

が、ここの人達はそんな自分を受け入れてくれ、時に厳しく、時に優しく指導して貰っている。

 

そんな自分が担当する事になったのは、今やその名を知らない競馬ファンなど居ない程の名馬。

『栗毛の怪物』とまで呼ばれる程の、絶対的強者―――グラスワンダー。

 

前任の方、小西さんという方が居た。

グラスワンダーの事をデビューからずっと支え続けて来た大ベテラン。

そんな方だが、『定年』というモノには抗えない。

この度、定年退職する事になり、入れ替わりで入って来たのが自分であった。

 

「グラスワンダー……ご飯、残してるのか」

 

ブルル、と、首を横に振りながら唸るグラスワンダー。

彼の朝食は、少し、という言葉では片付けられない程度の量が残されていた。

―――ここ数日、ずっとこうだ。

これくらいなら食べきれるだろうと思って用意しているのだが……

 

「うーん……体調不良、とか……可能性を、考えないといけないかな」

 

何日も続くと、不安になる。

テキに相談しようか、と考えていると、グラスワンダーが隣の馬房に視線を向けるのが見えた。

 

グラスワンダーの隣の馬房。

そこに居るのは―――『漆黒』の馬。

この小鷹厩舎に存在する、2頭のGⅠホース、そのもう1頭。

1着同着という世にも珍しい決着を、ダービーの舞台で起こした、『奇跡のダービー馬』―――ブラックテイル。

 

『グラスさん、最近ご飯残してますよね?』

『うーん……新しいキュームインさんの出してくれるご飯、ちょっと多くてね』

『なるほど』

『ちょっと困らせてるのは分かるんだけど……無理して食べるのは、どうかな、って』

『そうですね。無理に食べて、太め残り……体重増加とかしたら、その方が問題ですからね。ぽっちゃりグラス先輩なんて見たくないですよ、自分』

『ん……そうだよね。勿体ないけれど、残しちゃうよ』

 

互いに見つめ合い、何かを話すような、そんな仕草を見せる2頭。

とても仲が良い、とは聞いているけれど……

 

「―――酒々井さん、どうかしましたか?」

「あぁ、菊村さん……」

 

2頭を眺めてたら、隣に1人、若い男性がやってくる。

ブラックテイルの事を担当する、菊村さん。

年も近い事もあり、それなりに仲良くして貰っている。

―――うん、少し相談してみるか。

 

「実は、グラスワンダーが最近食事を残し気味でして」

「グラスが、ですか」

「えぇ……」

「あー、確かに残ってますね……うーん……」

 

首を傾げる菊村さん。

少しすると、ポン、と手のひらを叩く。

 

「じゃ、聞いてみますか」

「―――えっ?」

 

―――聞く?

一体誰に?

そう思っていると、おもむろに菊村さんがある方向を見た。

視線の先には、漆黒の馬。

 

「―――テイル。グラスの食事量なんだけど、多かったりする?」

「いや菊村さん、一体何を―――」

『あー、ちょっと多いらしいですよ菊村さん』

「首を縦に振った……多いんだな?』

『そうですよ。ね、先輩』

『うん』

「……………!?」

 

―――首を、縦に振った?

明らかに、菊村さんの声に反応し、話を聞いて……それに合わせ、首を振った、のか?

目の前で繰り広げられる光景に、理解が追いつかない。

 

「やっぱ残してる量は無理、って事か」

『そうみたいですねー……先輩、無理して食べようとしたり、してます?』

『んー……ちょっと頑張って食べてる、かな』

『やっぱり……余裕をもって、これくらい減らした方が良いかな、っと』

「寝床の藁を足した……で、首を横に振ってる……これくらい減らせ、って事?」

『そうですそうです』

「成程な。じゃあ、酒々井さんにもそう言ってみるよ。ありがとうなテイル。グラスも」

『いえいえ』

『お願いします』

 

ポンポン、と2頭の首を軽く叩き、菊村さんがこっちを見る。

 

「やっぱ多いみたいですね。この量だと……全体の1割ちょっと、って感じですかね。なので、今後は今まで出してた量の9割くらい、いやもうちょっと少ないくらいで出すと多分良い具合になるかと」

「―――今の、って」

「あっ……あー……………」

 

『やっちまった』という顔をする菊村さん。

そんな彼が、少し悩んだ末、口を開く。

 

「―――テイル、もしかしたら人の言葉を分かってるかもしれないんですよね」

「え?」

「これ、テキと自分だけの秘密なんですけどね……いやー、やっちまったなぁ……」

「いや、いやいや、そんな……そんな、事……」

 

『無いでしょう』、という一言。

それが、喉の辺りで止まってしまう。言葉として吐き出せない。

それを口にするには、目の前で繰り広げられた光景が、どうしても引っかかってしまう。

 

「思えば、入厩当時からそういう所あったんですけどね。気付いたのはジャパンカップの前でして」

「は、はぁ……」

「今じゃ、軽い質問くらいなら答えてくれる、そういうのが普通になっちゃいまして、それでさっきもつい……」

 

人間の言葉を理解し、意志疎通すら可能とする。

なんと馬鹿げた話か。

だが、実際にこうして、目の前に居る―――

 

「菊村さん。『コレ』、何処かけんきゅ―――」

「―――酒々井さん。それ以上は言わないでください」

「っ」

 

『研究所とかに言った方が』、そう言おうとして。

しかし、何時もより数段低い声で、遮られる。

 

「テキとも話して、そう言うのは一切しない、そう決めてるんですよ」

「でも」

「―――テイルは、一流のサラブレッドです。それ以上でも、それ以下でもない。競走馬として走り、種牡馬として未来に繋げ、功労馬として余生を送る……それしか、俺たちは望んでないんですよ」

「……じゃあせめて、もっと色んなことに活かした方が良いんじゃないですか?例えば、それこそさっきみたいに、馬の調子だったりを調べたりとか」

 

冷たい視線から逃れたい一心で、少し話を変える。

仮に研究所とかに突き出さないとして、この唯一性を活かさないのは惜しい。

そう思い、口にする。

しかし、菊村さんは首を横に振るう。

 

「それも、テキと話はしてあります。『テイル自身と、特別仲の良いグラス、兄弟のジーンズ、今度帯同させることになったグラスファッションについて』、それだけしかテイルに質問しない……それが、俺とテキの決め事です」

「どうして!」

「テイルは、特別です。恐らく、こんな事出来るのは、コイツだけです……テイルだけしか出来ない事に頼りきりになったら、居なくなった後、どうなります?」

「ッ……」

「テイルが居なくなった後、小鷹厩舎が駄目になったら、申し訳ないじゃないですか……こいつは、小鷹厩舎に、鳥場騎手に、馬主の金尾さんに、初めてダービーのレイを持って来てくれた存在なんですよ?胸張って、『うちはブラックテイルを育てた小鷹厩舎だぞ』、って、言い続けたいじゃないですか」

 

そう語る菊村さんの目は、どこまでも優しい。

 

「俺は、テイルが走る所が見たい。叶うなら、ずっと見ていたいんです。テイルは―――俺の夢なんです」

 

―――あぁ、そうか。

この人は、どこまでも、心の底から、ブラックテイルに惚れこんでいるのだ。

声色が、表情が、何よりも雄弁にそう伝えてきた。

 

 

 

『―――菊村さん、貴方は、俺を【夢】だって、言ってくれるんですね』

『テイル?』

『あ、いえ、何でも無いですよ、先輩』

『……そう?なら、良いんだけど……』

 

 

 

 

 

『―――グラスファッションさん、頑張りましょうね!』

『う、うん……よろしくね、ブラックテイルさん』

『はい!』

 

―――綺麗な、真っ黒な馬。

雄の馬で、だけど目つきはギラギラとしてなくて、とっても優しい。

そんな馬―――ブラックテイルさんと、今日は一緒に走る。

 

彼と話すようになったのは、つい最近の事。

『カイガイ』という、とっても遠い所に、一緒に行くことになったのだという彼と、仲良くなって欲しいという事で、バボウを移動したのがきっかけ。

お世話をしてくれるヒトの言葉が分かるという彼は、とても物知りで、彼の知っている事を色々と教えてくれる。

おかげで、私もヒトの言葉がちょっとだけ分かる様になってきた。

 

それで、今日は私のトレーニングに、彼が付き合ってくれるという。

なんでも、数日後にある私のレース前に、『あわせうま』?というのをやるんだって。

 

『俺が前を走りますから、追い抜けるように頑張ってくださいね』

『うん、頑張ってみる』

『騎手さんの事を信じて、指示に従う事。あと、全力で走る事。とりあえず、まずはこの2つから……良いですね?』

『うん!』

『頑張ってくださいね―――まぁ、簡単に抜かせませんからね』

 

『抜かせない』、そういう彼の目はとても真剣で。

―――ちょっと、ドキドキしてしまう。

 

『う、うん!』

『じゃあ、後はお互い、走りで語り合いましょう!』

 

クルリと背を向けて、位置に付く彼を見て、慌てて私も位置に付く。

 

「っと……さて、行こうか」

『はいっ』

 

走り出せば、そんな私の少し前に、彼が来る。

『逃げ』の位置を走る彼を、私が『先行』の位置で走る。

大体、馬2頭分……2バシン?くらい先を彼が走っている。

大きく離されないように走って、コーナーを曲がって―――最後の直線。

 

『痛ッ、痛い、けれど―――!』

 

上に乗る人。キシュさんが私を叩く。

痛いから、あんまり好きじゃないけれど。

彼が言うには、これは『ここから全力で走って欲しい』という合図。

 

『彼を、追い抜く―――!?』

 

脚に力を込めて、出せる全力で走る。

走る、けれど―――差が、縮まらない。

むしろ、少しずつ、開いてるような、そんな気が―――

 

『もっと、もっと頑張って……!』

 

頑張って走るけれど、やっぱり差が少しずつ開いて。

―――結局、追い付く事は出来ないで、そのまま彼がゴールにたどり着く。

 

『ハァッ、ハァッ……追い付け、なかった……』

『―――言ったでしょう?【簡単には抜かせない】、って』

『ッ……ブラックテイル、さん』

 

息を荒げる私に、彼が近寄る。

―――息をのんでしまうほどの、鋭い視線だったのは一瞬。

瞬きする間に、いつもの優しい視線に戻っていて。

 

『でも、よく頑張りましたね。鳥場さんの鞭にしっかり応えてましたし』

『う、うん……でも、その』

『どうかしました?』

『叩かれるの、やっぱ、好きじゃない、かな……』

『んー……成程、成程』

『ブラックテイルさん?』

 

私の言葉に、少し首を傾げて。

何かを思いついたらしい彼が、目を細める。

 

『あぁ、大丈夫ですよ。厩舎に戻ったら、ちょっとやってみたい事が思いついただけで』

『……?』

 

なんだか、良く分からないけれど……

まぁ、彼が大丈夫、というなら、大丈夫だと思う。

―――そう思いたいくらいには、私は彼を、信じてるから。

 

 

厩舎に戻って、ちょっとして。

ブラックテイルさんが『テキ』と呼んでるヒトと、私に乗ってたヒトが、やってくる。

 

「さて、と……グラスファッションについて、ですけど」

「ちょっとテイルに聞いてみる、でしたね……馬に馬の事を聞くって、なんかむず痒いですねホント」

「それは言わないでくださいよ、自分もテイル含めて4頭限定にしたとはいえ、今でも悩んでるんですから……」

「ですよねぇ……テイルが特別、テイルが特別だから出来る事……忘れないようにしないとなぁ」

「ですね……さてテイル。グラスファッションの併せで分かった事とか、あるか?」

 

テキの言葉に、ブラックテイルさんが、首を縦に振る。

 

『さーて、これで伝われば良いんだけどなー……よいひょっほ』

「口に藁を加えましたね?」

『こーひて、こうっ!』

「藁で、馬房の壁を叩いてる……のか?」

 

―――なんか、可愛いかも。

そんな事を思いながら、ブラックテイルさんの事を見守る。

 

「んー……鞭の代わり?」

『そうそう』

「あ、首を縦に振りましたね。鞭を振るのが、何かあるのか?」

『これが嫌だそうです』

「………………藁を並べて、これは、『×』マーク?」

「なんて芸の細かいヤツ……鞭が嫌いなのか、グラスファッションは?」

『そうそう!』

「首を縦に振りましたね」

「鞭が嫌、か。そういう馬は確かに居ますからね」

 

ヒトに、話が伝わってる、のかな?

 

「鞭が嫌、となると……視界に入る様に振る、ですかね」

「まぁそうなりますかね。その辺り、上手く教え込めば……」

「今日も走り自体は悪くなかったですからね。良い感じになるかと」

「ですねぇ……じゃあ、教え込むのをテイルにやって貰ってみますか」

「そう、ですね……任せて良いか?」

『任されました!』

 

ブラックテイルさんが首を振ったのを見て、ヒトの表情が、なんだか優しいモノに変わる。

 

「すまないが、頼んだぞテイル」

「グラスファッションには帯同してもらうからね、その恩返しと思って、しっかりやってくれ」

『分かってますよ』

「……お前に頼り切りになるつもりはない。前も話したけれど、お前を含めて4頭だけ、力を借りる」

『もっと頼っても……って言っても、そうなったら、自分が居なくなった後が大変ですもんねぇ』

「何を思って、首を傾げてるのやら……」

 

ポンポン、とブラックテイルさんの首を叩いて、ヒトが離れていく。

それを見送って、ブラックテイルさんがこっちを見る。

 

『グラスファッションさん、鳥場さんには話が伝わったみたいなので、次からは大丈夫ですよ』

『そう、なの?』

『はい!次からは、グラスファッションさんを叩かないで、見える場所で鞭を振る様にするみたいです。鳥場さんが鞭を振ったら、思いっきり走る合図ですからね』

『……もう、痛くない?』

『はい、もう大丈夫ですから』

 

そう言ってくれるブラックテイルさんの目は、とても優しくて。

―――心の底から、『あぁ、もう大丈夫なんだ』、って。

そう、思えた。

 

 

 

 

『さて、と。グラスファッションさんはこれでなんとか、っと……あとやるべきは』

『?』

『お前だな、ジーンズ』

 

グラスファッションさんの走りに関して、自分で手を加えられる部分はなんとかやった。

後はグラスファッションさんの努力次第……なので、そこは一度考えないようにする。

 

自分が任されている仕事、もう1つは弟の件だ。

弟がこれからデビューするにあたり、色々と話を聞いておかないといけない。

 

『ジーンズ』

『兄ちゃん?』

『お前はこれから、鳥場さんを乗せてレースを走る……ここまでは良いな?』

『うん、それは分かってる』

『じゃあ、お前はどう走りたいか、それを聞いておこうと思ってな』

『どう、って?』

 

ジーンズが首を傾げるのを見て、言葉を続ける。

 

『例えば、だけど……お前は、【他の馬の前に立って、誰にも抜かれることなく先頭を走りたい】か?それとも、【他の馬の後ろを走って、最後全員抜き去って勝ちたい】?』

『んー……他の馬を、抜いて勝ちたい、かな』

『どうしてだ?』

『なんか、その方が【こいつらに勝った!】って感じがしそう。楽しそうだから、かな』

『よし、少なくとも逃げは無し、と』

 

記憶に留めておく。

……全弟という事もあり、ジーンズの脚も、末脚に劣る可能性はある。

その場合、全員抜き去る走り、つまり差しや追込みの走りは厳しいかもしれないが。

まぁちょっと後ろ目の先行、前目の差し、くらいなら出来るかもしれないからな。

 

『じゃあ次。鞭、分かるな?』

『うん』

『あれで叩かれるのは?』

『えっと……兄ちゃんが言うには、あれって、【ここから全力で走れ】って合図なんだよね?』

『うん、そうだ』

『そう言うの分かりやすいから、俺は叩かれてもあんまり気にしないよ』

『そっかそっか。グラスファッションさんは叩かれるのあんまり好きじゃない馬だったからな、確認しておきたくて』

 

なるほど、叩かれる事は許容できる、っと。

 

『後は……芝とダート、違いは分かるな?』

『草の上と、砂の上?』

『そうそう。どっちが走りやすい?』

『草の上かなぁ』

『よし。とりあえず聞きたいところはこんなところかな』

 

統括すると、『脚質は後方希望、鞭で叩かれるのはOK、芝路線』、っと。

あとは走りながら距離適性を把握すれば、って所かな。

そこについてはテキ達に任せよう。

自分の方で確認出来る事は、確認した……筈かな?

頭の中で他に確認する事が無いかと思い返していると、ジーンズが話しかけてくる。

 

『兄ちゃんはさ、えっと、何だっけ……クラシックロセン、って言うのを走ったんだよね』

『ん?あぁ、そうだな』

『で、その時は……兄ちゃんの友達と一緒だったんだよね?』

『ん。リラが居たよ。ダービーからはローズ君も居た』

『そっか……僕はさ、その、兄ちゃんみたいに、仲の良い馬って、あんまり居なかったから……』

 

なんというか、話しにくそうにしているジーンズ。

その様子から、なんとなく言いたい事を察する。

 

『―――不安か?』

『……………』

『知らない馬と走るのが、不安なのか?』

『……うん。僕は、兄ちゃんみたいに、【こうしたい】って言うのが無いし』

『【こうしたい】、か』

 

ジーンズの言葉に、少しだけ考える。

……まぁ、話しても、良いか。せっかくの機会だし。

 

『―――なぁ、ジーンズ』

『ん?』

『実はな、俺も最初は【こうしたい】って言うのが無かったんだ』

『そう、なの?』

『あぁ、そうだ』

 

―――かつて、1人の『男』が居た。

 

『人の言葉が分かる、って言っても、逆に言うとそれだけ。特にやりたい事とか最初はなんもなくてな』

『へー……』

 

ごく普通の、なんの取り柄も無い、普通の『男』が居た。

『男』は、平凡な日本人だった。

和を乱すのを恐れ、なぁなぁで済ます事を覚え、周りに流されるままに生きてきた。

 

『リラと出会って、彼の生い立ちを知り、それをリラに教えて……』

 

『男』に、夢は無かった。志も無かった。

ただ、和を乱さず、程々に、平凡な日々を過ごしてきた。

どこまでも、普通の人間だった。

 

『―――リラが【弟の為に、弟に胸を張って会えるようになる】って決めた、あの時に、初めて【あぁなりたい】って思えたんだ』

 

―――だからこそ。

【誰かの為に、誰かに胸を張れるように生きたい】という存在が、何よりも眩しく見えた。

灰色の世界が色づいて見えたような、そんな感覚に陥った。

 

『だからまぁ、なんだ……これからレースを走る中で、【こいつみたいになりたい】とか、【こいつには負けたくない】って思える存在に出会えるかもしれない。そうしたら、お前が言う【こうしたい】になるだろうな』

『誰かと走る中で、そう言うのを見つける、って事?』

『そうだな。俺はたまたま、そういうのを走る前に見つけられた。けど、なにも俺と同じじゃなくても良いじゃないか』

『兄ちゃんと、違っても良い……』

『そう。俺は俺、お前はお前だ、ジーンズ』

 

あの日、静かに涙を流しながら、誓いを立てたリラの姿を、『俺』は忘れないだろう。

君に憧れた。【君の様になりたい】、そう思ったんだ。

 

『だから、頑張って走ってみて。俺にとってのリラの様な、そんな馬に出会えると良いな』

『……うん。頑張ってみる』

 

―――リラ。

最も大切な、今生の友。

君が、また走れるようになって、また会えるその日まで。

俺は、走り続けて、待ってるよ。

―――『世代のダービー馬』。

その名を背負って、君の分も、走って、待っている。




グラスファッションと併走&改善。
ブラックジーンズの意識調査。
そして、ブラックテイルとなる前、『男』の話、でした。

ウマ娘編の話でちょくちょく見られていた、アドマイヤベガへのブラックテイル側の矢印の大きさは、こういう所が影響していますよ、という話。
ブラックテイルにとって……『男』にとって、アドマイヤベガの存在は、存外大きいモノ、という話でした。


あとすみません、ここで業務報告をいくつか。

まず、ウマ娘編で以前登場したオリジナルウマ娘、もとい未来のブラックテイル産駒『メジロハウンド』について。
こちら、活動時期などを明確に定めましたので、メジロの命名法則に則った名前に今後変更する予定です。
次、メジロハウンドが登場するところを書くタイミングで名前を変え、同時に過去投稿した話の方も名前を変更します。

そして、次から暫くですが、折角なので『アニメウマ娘プリティーダービー ROAD TO
THE TOP』にブラックテイルを差し込んだらどうなるか、というのを書いてみたいと考えております。
暫く競走馬編の更新が停滞するかもしれません…申し訳ございません。
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