黒き馬、世紀末を駆ける 作:馬券童貞は東京優駿に捧げた男
すみません、残業大会と暑さのダブルパンチで死んでました。
これからまた少しずつ投稿頻度上げられたら、と思います。
今回は小鷹厩舎の動きと、国内の競馬の動きについてです。
―――2月に入った。
今月は特に予定もなく、割と平和―――と、言いたいのだけれど。
「テイル」
『はい』
「お前と、あとグラスファッション。2頭に試して貰いたい事があるんだが」
『何でしょう?その、テキの隣にあるドラム缶が関係あるんです?』
2月に入ってすぐのある日、自分とグラスファッションさん、あとテキと菊村さんが話をすることになった。
テキの横にはドラム缶だったり、何かしらの箱が積まれてたりする。
「ここにあるのは、金尾さんが購入してきた、イギリス遠征先で使われてる飲み水と飼料だ。暫くの間、これを食べて貰う」
『ほう、ほう……』
「ヨーロッパの水って言うのは、日本と全然違うんだ。軟水と硬水、って言ってな、栄養素の違いなんかがある。これが身体に合うか合わないか、っていうのを調べるのが理由だ」
『なるほど、事前に食べもの飲み物が身体に合うか調べるのね』
試したい事、その意図は良く分かった。
確かに大事な事だろう。
「とりあえず2、3日ってところだな。頼んだぞ」
『了解です』
ペコリ、と頭を下げて了承。
食べ物や飲み物が合うかどうか。前世でも聞いた事があるな。
特に水については影響が大きいと聞く。
確か、前世の父も海外に行った時に大変だったとか、何とか?
「それと……ブラックジーンズの新馬戦が決まった」
『ジーンズの!』
「2月20日、東京芝1600m。ここがジーンズの新馬戦になる……グラスファッションもこの日、アメジストステークスで今年の始動だ、こっちも芝1600m」
『おぉ、グラスファッションさんも!』
「……頼んだぞ、テイル。2頭どっちも、しっかり支えてやってくれ」
『はい!』
弟と、グラスファッションさん。
2頭のレースが決まった、それなら自分はそれを支えよう。
―――2月は2月で、忙しくなるみたいだ。
―――――――――――――――
『―――うぅん……なんか、ちょっと違和感……』
『大丈夫ですか、グラスファッションさん?』
『これが、貴方の言ってた【食べるもので起きる不調】って事、なのかな……』
『そうですね……でも、予想してたよりは酷くないので、そこは少し安心しました』
―――ブラックテイルさんから、話はされていた。
暫くの間、私と彼が食べたり飲んだりするものが、変わるという事。
彼と行く【カイガイ】という所の食べ物を食べて、体調の変化を調べる、とは聞いていた。
『1日でこれだから、大丈夫、なのかな……でもこれが約2ヶ月近くとなると、もっと大きな変化に繋がるのか、身体が慣れて大丈夫になるのか、そこまでは流石に分からないからな……』
『ブラックテイルさん?』
『かと言って海外からの輸入となるとオーナーの金銭的負担の都合上長期の調査は難しいだろうし、それにグラスファッションさんにはグラスファッションさんのレースもあるからそう言う事を考慮するとやっぱ数日だけしか調べられないだろうし……』
『あ、あのー……?』
『あと1日2日、そこでどれだけ変化が生じるか、焦点はやっぱりそこになるか……取りあえずは調査期間はグラスファッションさんの体調については自分で観察して、変化を見逃さないようにする。出来る事はやっぱこれしかないか』
……なんだか、難しい事を考えてる、のかな?
『テキからも任されてるし、グラスファッションさんの事は暫く重点的に見るようにしないとな』
『……ブラックテイル、さん?』
『あ、はい!どうかしました?』
『えっと、その……何を考えてるのか、って』
『あ、すみませんね。取りあえず、あと数日は同じものを食べる事になって、その間の体調変化を見ないといけません。なので、もしかしたら暫く具合が悪い状態が続くかもしれません』
『や、やっぱり、そうなんだ……』
ちょっと身体が重いような、そんな感じ。
これが、まだ続くみたいだ。
あまり好きじゃない……
『―――その間は、自分が一緒に居ます』
『えっ?』
『テキから任されてますからね。グラスファッションさんの体調については、自分が観察と報告をします』
『えっと、それって……』
『んー、何と言えば良いかな……とりあえず、そうですね。何かあったら、逐一自分に言ってくださいね、って事で』
優しい声色で、そう言われる。
―――きっと、もっと色んな言葉が、彼の中にはあって。
その中から、私に分かる言葉を選んでくれている。
『―――そ、それじゃあ、1つ、お願いがあるんだけれど』
『何ですか?……あ、もしかして具合悪いの、酷かったりします!?』
『そ、そうじゃなくって……その、色んな事を、教えて欲しいんだ』
『色んな事?』
『うん』
まだまだ、貴方の事を知って、そこまで長い時間を過ごした訳じゃ無いけれど。
貴方が優しいって、それだけは、良く分かってるから。
『―――貴方の言いたい事が、もっと分かりたいから』
―――気遣われてばっかりは、嫌だ。
もっと、ありのままの貴方を、知りたいな。
そんな事もあって、数日。
ちょっと具合が悪いのが続いたけれど、もうすぐ終わるって、そう言ってくれて。
ホッとした、そんなある時―――
『―――グラスファッション』
『貴方は……グラス、ワンダ―』
『うん、そう。君とは同じカンメイ、って繋がりがある馬かな』
1頭の馬が、話しかけてくる。
ブラックテイルさんが、いつも楽しそうに話をしている馬。
キュウシャのどの馬と比べても、1番ブラックテイルさんが気にしている馬。
そして、ブラックテイルさんが言うには、『今、日本で1番強い馬』―――グラスワンダー。
『……………』
『……えっと、なんですか?』
ジッと、私の事を見つめて来る。
その眼は、ブラックテイルさんが私を見る時にしている、優しい視線ではなくて。
なんというか……同じレースを走る相手と同じような、でも、もっと怖いような、そんな視線だ。
『―――――君は、テイルと、遠くに行くんだろう?』
『あ、は、はい……そう、ですね』
『【カイガイ】……エルが挑み、負けた舞台。遠く、遠く、僕が会いに行く事も出来ない場所……そこに、テイルと、2頭だけで……イイナァ……』
ゾクリ、と、なんだか寒気を感じる。
レースがもうすぐ始まるという場面、ゲート前の空気のような、とても怖い気持ち。
グラスワンダーさんからは、そんな雰囲気を感じてしまう。
『テイルと一緒に居られるなんて、羨ましい……出来る事なら、僕が行きたいくらいなのに……』
『えっと、その……』
『分かってるよ。僕には僕のレースがある。だから、テイルと一緒に行くことは出来ない……それは、分かってるんだ』
グラスワンダーさんは、色々分かっているんだ。
私とは違って、色んな事を分かっている。
そして―――それはきっと、ブラックテイルさんとずっと一緒に居たから、なんだと思う。
『分かってはいる―――だとしても、思うんだ。【ずっと隣に居た僕じゃないのか】、って』
『……』
『彼の隣は、僕だ。僕がテイルの隣に居るんだ、僕が、ずっと……!』
ずっと一緒に居て、それが当たり前みたいになっていて。
それが、今回は違う。それが納得できない……って事、なのかな?
……………いや、違う、のかも、しれない。
『あの、グラスワンダーさん』
『何?』
『―――ブラックテイルさんの事、大好きなんですね』
『―――――――――――』
―――そうだ、分かった。
グラスワンダーさんは、ブラックテイルさんが大好きで。
大好きだから、一緒に居たいんだ。出来る事なら、ずっと一緒に。
『一緒に居るのが楽しくて、他の馬に構っているとなんだか嫌で、ずっと傍に居て欲しい……そう思って居るんですね』
『……………分かる、の?』
『はい。だって、私もそうですから』
そう。
私も、ブラックテイルさんの事が好きだから。
ただ傍にいるだけで、満たされて。話しかけられたら、とても嬉しくて。
『スキ、スキ……うん、そう、なの、かな』
『きっとそうですよ』
『……………そっか』
フッ、と、自分に向けられていた怖い視線が、和らぐ。
『ずっと一緒に居るのが、僕にとって普通の事だったんだ』
『みたい、ですね』
『テイルがキューシャに来て、毎日が楽しくて……ずっと、本当にずっと一緒に居て、一杯話をして、それを嫌がりもしないでくれて、それが本当に嬉しくて……』
『分かります』
『うん………だから、君じゃなくて、僕が一緒に居たかった。カイガイに行くのは、僕が一緒に行きたかった』
どこか悲しそうに、寂しそうに、グラスワンダーさんが言う。
そして、少ししてから、改めて私の方を見た。
『……グラスファッション』
『はい』
『テイルの事、頼んだよ』
『……はい!』
そう、本来なら、彼を支える為に一緒にカイガイに行くのが、私の役割。
今は、教えて貰ってばかりで、むしろ支えて貰っている側だけれど……
役に立てるように、頑張らないと。
―――――――――――――――
『兄ちゃんと今日は走るの?』
『そう。併せ馬、って言ってな』
もうすぐ、自分がレースを走る事になる。
そう、兄ちゃんから聞いた。
それに向けて、どうやら今日は、兄ちゃんと走る……らしい。
『難しく考える事は無いよ。お前はただ、俺を全力で抜きに来い』
『兄ちゃんを追い抜けば良いの?』
『あぁ、それで良い。俺が前を走るから、お前は俺を抜けるように頑張れ』
なんというか、話を聞く限り、簡単な様に聞こえる。
兄ちゃんの後ろを走って、それを最後には追い抜いて前に行けばいい。
そんな事を思ったのが分かっているのか、違うのか。
兄ちゃんが、言葉を重ねる。
『ジーンズ』
『ん?』
『―――俺を簡単に抜けると思うなよ?』
『ッ!』
ゾクリ、と身体中を駆け抜ける寒気。
一瞬だけ見えた兄ちゃんの目は、始めて見る鋭さを持っていた。
『同じコースを走るその時は、俺たちは平等だ』
『それって……』
『―――勝つか、負けるか。年齢も、実績も、その時だけ意味を成さない。走った先に待つ結果だけが、全てだ』
走った先で、勝ったのか、負けたのか。
それだけが、絶対。
兄ちゃんの言う言葉は、なんとなく理解出来た。
『さぁ、走ろうかジーンズ。お前の全力で、俺に挑んで来い』
『……うん』
何時もの、優しい兄ちゃんじゃない。
これが……これが、レースを走る時の兄ちゃんなんだ。
レースを走る時の兄ちゃんは、いつもこれだけ違うんだ……なんだか、凄いな。
「よし、落ち着いて落ち着いて……逸るな、少し抑えて」
『ん、兄ちゃんと離れるのに……でも、ちょっと遅くして、っと』
走り出して、キシュさんのタヅナに合わせて速さを調整する。
兄ちゃんが走るのを、後ろで見る形。
兄ちゃんが言うには、自分の走りは『サシ』という走り方、らしい。
少し後ろ寄りを走り、後半で追い上げて、追い抜いて勝つ、そういう走り方。
一番後ろを走るやり方だと、上手くいかなかったけれど、これくらいの位置だと、なんか走りやすい。
そんな自分の前を、兄ちゃんが走る。
聞こえてくる足音はとても力強くて、自分とは全然違うと感じてしまう。
兄ちゃんの走りは『センコウ』という走りみたいで、自分よりも前より、だけど『ニゲ』という一番前を走る程では無い、そういう走りだって。
『引っ張られないくらいに、でも、頑張って前に……』
「よし、よし、その調子だ」
兄ちゃんの背中は、まだ遠い。
大体、えっと……4バシン、くらいかな。
馬が3頭か4頭くらいは入れそうな差がある。
今すぐ追い抜いてしまいたい気持ちはあるけれど、今回大事なのはキシュさんと合わせる事。
レースを走るのは、自分だけじゃない。
自分と、そして自分に乗ってくれるキシュさん。
兄ちゃんが言うには『ジンバイッタイ』で走るのが、レースなんだ。
だから、この人が『前に行くな』と紐を引っ張るなら、それに合わせよう。
カーブを曲がり始める。
確か、このトレーニングの終わりは、このカーブを超えて、直線を行ったとこ。
だから、仕掛けるタイミングは、そろそろ、かな。
そう思っていたら、キシュさんが前に行けという合図を、鞭で叩く事でする。
『叩かれたら、スパートの合図!』
「よし、反応は良いな……!」
兄ちゃんから教わったからね、これは!
脚に力を込めて、一歩、また一歩と踏み込み、前に進む。
『―――抜かせないさ、ジーンズ』
―――しかし、距離が中々縮まらない。
全力を出して、抜きに行っているつもりだ。
なのだけど、あまり差が縮まっていないようにしか感じない。
『俺はお前の兄だからな、そう簡単には負けないさ……!』
『ッ……!!!』
―――余裕そうに言いやがって!
苛立ちを踏み込む力に変え、更に加速する。
今度こそ抜いてやる、そう思って走る。
『良い走りだ……だけど、まだまだ!』
―――それでも、届かない。
兄ちゃんとの差が、少ししか縮まらない……!
必死になって脚を動かすけれど、それでも届かなくて。
結局、3バシン差、距離を離されたままゴールとなってしまった。
『負けた……!』
『言っただろ?簡単に抜けると思うな、って』
兄ちゃんと並んで歩く。
荒く息を吐く自分と違って、兄ちゃんはまだ余裕がありそうに見える。
『言っちゃあアレだけど、俺はお前よりも1年長くトレーニングをしてきてるからな。その差ってのは中々埋めにくい』
『……言いたい事は分かるけど』
『理解は出来ても納得出来ない……納得と言うよりは、許容か』
ナットク、キョヨウ?
言いたい事が分からなくて、少し首をかしげる。
兄ちゃんから色々教えて貰っているけれど、分からない事はまだまだ多い。
そんな自分の様子を見て、兄ちゃんが言葉を重ねる。
『差がある、って事は分かっている。けれど、だからと言ってお前は負ける事を良く思ってない、勝つつもりだった……そうだろ?』
『うん』
『良し、良いぞジーンズ。その気持ちを忘れるな』
兄ちゃんが頬をすり合わせて来る。
『に、兄ちゃん……?』
『年上だろうがなんだろうが関係なく、相手に勝つ気持ち、それをお前は持っている。それはとても大事なモノだ。諦めず、全力で挑む……良い事だ』
『ん……そう、かな』
『そうだ。勝負の世界でなによりも大事なモノ、それは【勝つ】って気持ちだ。それが無いヤツとあるヤツじゃ、レースで出せる実力は大きな差が出る、そういうモノなんだ』
ふぅん、そういうモノ、なんだ。
兄ちゃんに褒められて、なんだか嬉しくなる。
『その気持ちを大事にするんだぞ、ジーンズ。そうすれば、きっとお前は頑張れる』
『……分かった、兄ちゃん』
『うんうん、頑張れよジーンズ……4月からは暫く居なくなる。その時は、先輩を頼ってくれ。先輩は俺よりも何倍も何十倍も凄いから、きっとお前を助けてくれるさ』
『ん、分かった』
4月……あと2ヶ月したら、兄ちゃんはとても遠い所に行くらしい。
その間は、兄ちゃんを頼れない。
グラスセンパイはとても頼れる馬だっていうのは分かってる。
けれど、やっぱ1番頼れるのは兄ちゃんなんだよなぁ……
……寂しくなる。けれど、寂しさに負ける訳にはいかない。
―――兄ちゃんは、センパイの方が自分よりも凄い、そう何度も言ってるけれど。
センパイが言うには、兄ちゃんもまた、とても凄い馬なんだ。
ヒトの言葉を理解して、ヒトのやりたい事を理解して、全力で走る。
遠い遠い場所、今度兄ちゃんが行く『カイガイ』で有名なレースを勝った馬にも負けない、センパイも負けるかと思う程の走りを出来る……それが、兄ちゃんだって。
そして、自分はそんな兄ちゃんと、全く同じ血が流れている、数少ない存在、みたいだ。
父親も、母親も同じで、キューシャも同じ。
なら、兄ちゃんと同じ位、強くなれる可能性は、ある筈だ。
そうなれるかどうかは、自分の頑張り次第。
―――兄ちゃんに負けないくらい、出来るなら追い越せる位に、強く、なりたい。
―――――――――――――――
―――――2月20日、小鷹厩舎のレースについて、結果から話す。
グラスファッションさんの始動戦と、ジーンズの新馬戦が、同じ日、同じ競馬場で行われ―――どちらも、無事に勝利を収める事が出来た、そう聞く。
まず、ジーンズの新馬戦が先にあった。
芝1600m新馬戦、ジーンズは『俺の全弟』という事もあり、1番人気に押される。
レースとしては、やや後方くらいをキープし続けた後に最終コーナーに差し掛かる辺りで仕掛け、差し切っての1着だったそうな。
そして、グラスファッションさんの始動戦。
1600万以下戦、アメジストステークス、芝1800m。
好位を取ったグラスファッションさんは最終直線入った辺りで先頭を奪い、そのまま粘り勝ち。
自分が少し手伝った2頭が、それぞれ勝利した。
とても嬉しい事だ。
話を聞く限り、ジーンズは報知杯弥生賞―――リラやナリタトップロードが走った、皐月賞トライアルレースを目指せれば、という所らしい。
というのも、弥生賞があるのは3月5日……2週間後だ。
幾らなんでも周期が短くないか、という辺りも含めて、オーナーと相談してるらしい。
弥生賞を見送るなら、次の候補はスプリングステークス……俺が勝ったあのレースを目指すとの事。
グラスファッションさんについては、次走は3月19日、東風ステークスを目指すらしい。
4歳以上のオープン戦、中山1600m。
初のオープン戦だけど、今回のレースからして十分狙える、そう判断したらしい。
2頭共に初動を無事終えられた。
なら、同じ厩舎に居る者として、後に続きたいところだな。
自分の今年初戦は4月2日、産経大阪杯。
そして、その1週間前にはグラス先輩の初戦が待っている。
流れに乗って、勝ちたいところだけれど―――
『そういえば、美浦の他の皆は―――――』
ふと、仲の良い皆はどうしてるか、そんな事が気になった。
ここ最近はグラスファッションさんや、ジーンズに構ってばかりで、周りをそこまで気にする余裕が無かったからなぁ。
1月は各週ごとに3頭全員勝ったとは聞いたんだけれど。
そこから先、どうしてるだろうか……
―――――――――――――――
『―――これが、チホウジーワンじゃない、本当のジーワン、ってやつか……!』
「レバリー、よく頑張ったな。初の中央GⅠでここまでやった、大健闘だ」
『アンちゃん、褒めてくれるのはええんやけど、本当は勝ちたかったわぁ……勝たせてやれんでゴメンなぁ』
『―――第17回フェブラリーステークスを制したのは、ウイングアローとオレリアン・ペルネ!!2着にゴールドティアラで、3着から6着までは混戦となりましたが3着ファストフレンド、4着は地方馬メイセイオペラ、5着にオルラントレバリーで確定しました!』
―――この間、ジュウショウレースを勝った。
その勢いでジーワンも、って思ったけれど、中々上手く行かなかった。
一緒に後ろから差しに行った連中と競り合いになったけれども、その競り合いで負けた。
完全に実力負け……悔しいが、認めないとな。
『まだ強くならんと……テイルのヤツはジーワン勝ってるって話だし、ここはワイが続いてやる!』
「……目がギラギラしてやがるな、レバリー」
『次のレースは絶対勝つ!そんでもって、またジーワン出る時は今度こそ勝ってやるからな!!!』
待ってろテイル!
ワイは絶対ジーワン勝って、お前に報告してやるからな!!!
『ワイだってジーワン勝ったんやぞ!』って言ってやるからな!!!
『―――砂は流石に、目にも鼻にも入って駄目だな……こればっかりは気合でどうこう出来るモノじゃない……』
「キングヘイロー……すまない、また君を勝たせてやれなかった……」
『シューイチ……次、次こそは勝つぞ!俺とお前なら、勝てる……絶対に、勝てる!』
「………次のレースは、確か柴谷さんが乗って、高松宮記念、か」
『む、シューイチじゃなくてヨシオミと、か……正直、シューイチと勝ちたいんだがな』
「………頑張れよ、キングヘイロー。お前なら、きっと勝てるから」
『当然だ……お前たちの期待に、応えてみせるさ』
―――――――――――――――
「―――おいおい、随分と化けたじゃないか」
『オペラオー、って、あんな強かったっけ……?いや、キッカショウでも凄かったけどさぁ……』
「龍一君もそうだが、なによりテイエムオペラオー、馬の方が凄いな……今年の競馬は、もしかしたら、彼らを中心に回る事になるかもな?」
『むー……次は負けないもんね!次走る時の僕は、今日の僕より強い僕になってるからね!』
『―――京都記念を制しましたテイエムオペラ―倭田龍一!勝ちタイムは2分13秒4!!』
『2着にナリタトップロード、3着ノボグローリー、4着ステイゴールドで5着にステイアルシャンで確定しました!!』
「―――よし、まず1勝……!」
『フフッ、当然の結果だね。僕とリューイチが力を合わせれば、こんなものさ!!』
「次は阪神大賞典、そして次には天皇賞……負けられない、絶対に……!」
『そうだね、リューイチ―――僕らの道に立ちふさがる全てを、捻じ伏せよう』
『―――お~コワ……とんでもねぇ馬が居やがるなぁ』
『あいつ、有馬記念に出て……グラスワンダーとスペシャルウィークのすぐ後にゴールした馬だったな。あの化け物連中のすぐ後ろに来られるんだから、そりゃ化け物みたいにもなるか』
『アイツはアイツで、また面白い……上に乗る人間がそんなに大好きとはなぁ……叩いて来るヤツをそんなに好きになれるとは、変わってるな』
『人の要求に応えて走ったり、人と離れたくないから化け物見たく強くなったり……変わった連中って、案外居るんだな?』
『――――――――――なぁ、
―――――――――――――――
『ハンキュウハイ、1200m……その後に、タカマツノミヤキネン、1200m……ヒトの言葉が分かると、次のレースが分かるし、やりたい事も分かる。テイルには感謝しないとな』
『この間、ジュウショウレースにも勝てた。次に目指すのは、ジーワン……その1つが、タカマツノミヤキネン、だったな。頑張らないと……!』
「―――オグリキャップ産駒、初の重賞馬、かぁ……」
「感慨深いモノがありますね、テキ」
「あぁ。『名馬の子が名馬になるとは限らない』、とは良く言うが、オグリキャップ産駒はかなり厳しい成績が続いていた……イシノフォーチュンが、その流れを変える分岐点になってくれると良いな」
「ですね。このまま阪急杯、そして高松宮記念、って行ってくれれば」
「文句無し、だが……ブラックホークを初めとした強敵が出てくる。ここからが本番、そう言ってもいいかもしれないね」
「短距離からマイル、距離を絞ってからの本番……確かに、そうかもしれませんね」
「あぁ……こいつを、オグリキャップ産駒初のGⅠホースに」
「やりましょう、テキ」
「あぁ」
海外遠征に向けて少しずつ準備が始まる小鷹厩舎、そんな中でもブラックジーンズとグラスファッションの始動戦。
そして、遂に始まる『世紀末覇王』の進軍という話でした。
業務連絡となりますが、次回は恐らくウマ娘編となります。