黒き馬、世紀末を駆ける   作:馬券童貞は東京優駿に捧げた男

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恥ずかしながら、帰って参りました。
いやホント申し訳ない、仕事で死んでました……ツライ。
何時か、早く書きたい、早く投稿したいと頭で思っても疲れで平日どころか休みも死んでおりました。
―――RTTT映画館上映、その報で気合を充填した帰ってきました。
また少しずつ投稿していきたいと思っています。

今回はブラックテイルの大阪杯、そしてブラックジーンズの皐月賞です。


第29話 産経大阪杯+第60回皐月賞

『先輩、日経賞お疲れ様です』

『ただいま、テイル。テンノウショウに向けて、良い走りが出来たかな』

『1着取れましたもんね、この調子で春の天皇賞も……と、言えたら良いんですけどね』

『流石に距離が、ね』

『ですよねぇ……』

 

―――小鷹厩舎は、今良い流れが来ている、と言い切って良い状態だ。

新馬戦を勝ちきったブラックジーンズは、次走に選んだスプリングステークスでダイタクリーヴァのハナ差2着となり、次走は皐月賞、クラシック戦線の初戦へと駒を進める事に成功。

初のオープン戦へ挑戦したグラスファッションについては、今回も好位先出を決め、最後は半馬身差をつけての勝利。

そして、日経賞で今年初のレースとなったグラスワンダーは、その豪脚を以て他馬を捻じ伏せ、現役最強の威光を示した。

間違いなく、良い傾向だ。

 

『3200m、か』

『正直、自信はどうですか?』

『んー……正直、不安の方が大きい、かな。2500mが一番長いレースだった僕からすれば、そこに700mも足すとなると厳しいレースになると思う』

『自分も菊花賞大変でしたからねぇ……あそこから更に200mか……』

 

そして、その流れに続こうとしているのが、ブラックテイル。

海外遠征も公表されて、競馬界の注目を集めている、去年のダービー馬にして最優秀4歳牡馬。

来週の産経大阪杯を走った後、彼はグラスファッションを連れてイギリスへと旅立つ。

ここで勝ちきって、弾みをつけたいところだ。

 

『テイルはオオサカハイ、だったね』

『阪神2000m、去年先輩が走ったレースですね』

『そうだね、あの時はサイレントハンターには申し訳ない事をしたなぁ……』

『大阪杯じゃ、1992年産まれのホッカイルソーって馬が走るんですよ!凄いですよね!』

『僕が1995年産まれだっけ、だから…3歳年上?凄いなぁ』

 

―――まぁ、正直な所、馬の心配はあまりしていないのだけれど。

目の前で、相も変わらずグラスワンダーと仲良く顔を合わせているブラックテイルを見れば、不安など一切湧かない。

この馬は、こと体調や精神面での安定感という観点で言えば、自分の知る限り随一の安定感の持ち主だ。

 

『沢山楽しんできてね、テイル』

『はい!』

 

だからこそ、自分に出来る事は、この馬が万全の状態でレースに出られるよう、精一杯手伝う事。

彼が出来ない事といえば、『人にしか出来ない事』だ。

どう頑張っても、馬の身では出来ない事は沢山あるから、そこを補ってあげるのだ。

―――そうすれば、彼は最強だ。

 

 

 

『20世紀も最後の年、産経大阪杯、阪神芝2000mがもうすぐ始まります』

『やはり注目を集めているのは、単勝1.5倍の1番人気、海外遠征も発表されている昨年のダービー馬ブラックテイル。鳥場弘騎手の同一重賞二連覇もかかっています』

『2番人気はメイショウオウドウ、いくつもの重賞で好走した戦績を持つこの馬が、今日こそ重賞初制覇を飾れるか』

『3番人気はここまで重賞2連勝の実力馬、ジョービックバン。勢いのままに重賞3連勝目を飾りたいところ』

『4番人気は………』

 

 

 

「さぁテイル、見せつけようじゃないか。これから海外へ旅立つ、君の背中を」

『―――えぇ、鳥場さん。見せましょう、俺たちの全力を』

「作戦は、覚えているね?」

『勿論です』

「よし……行こう」

 

 

『さぁスタートしました!さぁ先頭争いはタマモヒビキにカネトシガバナー、そしてブラックテイルが先頭に躍り出た!ブラックテイル好スタートから先頭を奪い取って、二番手にタマモヒビキという展開!』

 

―――今日は逃げて、一度も先頭を譲らない。

―――エルコンドルパサーの後に続く存在として、確かな実力を示そう。

今日の作戦は、ある種のパフォーマンスも兼ねている。

 

『さぁ最初のコーナー入って依然先頭を保つのはブラックテイル!ブラックテイルの後方1馬身離れてタマモヒビキ、左後方半馬身離れてカネトシガバナーこの3頭がレースを引っ張る。メイショウバチカンとロードプラチナムがそこから更に1、2馬身後方―――』

 

先輩やスペシャルウィークさんと同じ位に強く、期待されていたエルコンドルパサーさん。

彼ですら、凱旋門に手をかけられはしても、開ける事は叶わなかった。

そんな彼に続く者として、期待出来る存在であることを、此処に示す。

その為に、自分がするべきは―――

 

『すみませんね、今日は独壇場にさせて貰う―――!!!』

「さぁ、やるか!!!」

 

『―――第3コーナー手前、ブラックテイル加速する加速する!!これがこの馬の怖い所、ロングスパートだ!この阪神でもロングスパートを仕掛けて来た!!』

『後続慌てて速度を上げる!後続仕掛けるが、前を行くのはロングスパートでダービーを取った馬だ、ダービーを取った男だ!!』

 

強い勝ち方、つまり、文句なしの完封試合を見せつける。

では、自分が出来る強い勝ち方とは。

そう考えた時、真っ先に思いついたのは、ロングスパートで相手を寄せ付けない事。

自分の強みを見せつけ、それで勝ちきる事だ。

 

『最終コーナー回って直線入って、未だ先頭は変わらずブラックテイル!!後続との差は3、4馬身はある!!そして、そしてその差が縮まらない!!!恐ろしい事に縮まらない!!!』

 

「さぁこのまま押し切ろうか!」

『えぇ、このまま!!』

 

『メイショウオウドウ追い込んでくる!ロードプラチナムも懸命に追いあげるが、しかしブラックテイルだブラックテイルだ!!これがダービー馬!!GⅠホースは格が違った!!!』

『1着ブラックテイル、2着は追い込んだメイショウオウドウ、3着ロードプラチナム!しかし1着と2着の差は

3馬身!!これは1頭格が違ったブラックテイル、圧勝で古馬となっての初戦を、海外遠征前のレースを終えました!!!』

 

 

 

「―――文句無し、ですね」

「えぇ、不安は何も無い。大手を振って、イギリスに行けます」

「ありがとうございます、小鷹さん。僕の我儘を聞いて頂いて」

「いえいえ、そんな事は……私自身、ブラックテイルには、夢を見ている人間ですから」

「そう、でしたか」

「えぇ、そうです……内国産馬による、海外GⅠ制覇。それも、ダービー馬による制覇となれば、日本競馬界の歩みが正しかったことの、なによりの証になる」

「ですね……夢を、ブラックテイルに託しましょう」

「託しましょう、我々の、自慢の馬に」

 

 

 

『―――テイル、お疲れ様』

『先輩!勝ってきました!!』

『みたいだね、僕と合わせて、トバさんが二連勝か』

『はい!』

 

厩舎に戻って、先輩に報告する。

これで鳥場さん、そして小鷹さんに同一重賞2連勝をプレゼント出来たわけだ。

 

『テイルはこれで、問題なくカイガイに行けるのかな』

『ですね……遂に海外遠征かぁ……』

『結構大変なんだよね?』

『そう、ですね……遠征期間が60日、で帰りは10日検疫厩舎に入るから、6月21日、いや翌日22日検疫厩舎に入って10日後に日本に帰ってくる事になるから7月2日にイギリスを出る。で、7月2日から60日前だと……5月3日に日本を出るから、その5日前の……4月28日には、日本の検疫厩舎に入る事になりますね』

『ん、そっか……君と走りたい、って気持ちはあるんだけどね』

『流石に、天皇賞走ってからじゃ厳しいかなぁ……』

『だよね…』

 

天皇賞春、芝3200mの超長距離GⅠ。

噂によれば、オペラオーやトップロード達が出走予定らしい。

彼らとは3冠を分け合った関係、戦績だけ見ればほぼ互角。

雌雄を決したい、という気持ちはあるし、先輩と走りたいという気持ちもある。

だが、自分の目標はイギリス遠征、6月21日のプリンスオブウェールズステークスだ。

それを考えるなら、天皇賞に出る余裕はないだろう。

 

『天皇賞よりも前には、自分はグラスファッションさんと検疫厩舎に行くことになります。頑張ってくださいね、先輩』

『うん、頑張るよ、テイル』

『―――兄ちゃんは、サツキショウまでは居るんだよね?』

『あぁ、その予定だよ、ジーンズ』

『そっか』

『君は今度、サツキショウの2000mだったね』

『そうですね……サツキショウ、クラシックサンカンの1つ目』

 

ジーンズの言葉に、少し感慨深いものを感じる。

兄弟揃って、クラシック路線に挑む事が出来た……喜ばしいものだ。

自分の指導が、ほんのわずかでもそれに貢献出来たのなら良いのだけれど。

 

『皐月賞は、お前にスプリングステークスで勝ったダイタクリーヴァ、そして弥生賞2着エアシャカール―――そして、昨年のダービー馬ブラックテイルの全弟にして、スプリングステークス2着であるお前、ブラックジーンズ。3頭が注目を集めてる』

『テイル、弥生賞1着の馬はどうしたの?』

『フサイチゼノン、って馬らしいんですけど、どうも騎手さんと馬主さんでなにかトラブルがあったみたいで、皐月賞は回避してるみたいですね』

『そっか……で、問題はそのダイタクリーヴァとエアシャカール、か。エアって言うとエアジハードやエアグルーヴのバヌシさんか』

『多分そうですね。エアシャカールは後ろの方から追い上げて来る差し追込型の脚質の馬で、鞍上は峪さん』

 

もはやお馴染みとすら思える存在、峪穣さん。

クラシック戦線に連続で出走できるのだから、やはり才能溢れるジョッキーと言う事だろう。

 

『ダイタクリーヴァは……逃げだったり差しだったりちょっと脚質が読みにくい相手ですね。読めないというか、定まってない、のかな?自分の走りを見つけられていないのかも』

『自分の走り、かぁ……』

『まぁ、こればっかりは走って見つけるしかないし……でもまぁ、相手はスプリングステークス含めて5戦4勝、2着1回の実力馬。間違いなく強敵になる』

 

実績を考えるなら、恐らく1番人気を確保するであろう存在。

主に警戒するとしたら、やはりこの2頭になるだろうか。

 

『―――今言った2頭以外も、クラシックに挑む事を許された優駿ばかり。油断は一切出来ない相手だ』

『それは……』

『俺が去年、皐月賞で負けたテイエムオペラオーは7番人気。正直そこまで注目されていなかった中、驚異的な末脚を発揮して皐月賞を勝ち取った……そういう相手が居るかもしれない、って事さ』

『ジーンズ、君が走るのは強い馬が集まるレースだ。人気じゃない馬でも、そのレースを走れるだけの強さがあるんだよ』

『そっか……うん、気を付ける』

 

そう、勘違いしては行けないのは、人気が低くても、油断してはならないという事。

オペラオーには驚かされたものだ、あの皐月賞では……同じ土俵に立てる実力者であることを忘れてはいけないのだ。

 

『いいか、ジーンズ。油断せず、全力で走るんだ。鳥場さんを信じて、最後まで、出せる全てを出し切って走れ』

『……うん、分かったよ、兄ちゃん』

『あとは、そうだなぁ……あ、1つだけ』

『?』

 

色々言ってしまったけれど、1つ、伝えないといけない事を思い出す。

 

『―――楽しんでこいよ、ジーンズ。変に気負わずに、レースを楽しめ!』

『そうだね、それは大事だ……ライバルと走ると、とても楽しいからね』

『楽しむ……うん、ありがとう、兄ちゃん、センパイ』

 

―――そうだ、楽しんでもらわないと。

リラと走った時……特に、あのダービーのような、素晴らしいレースを、ジーンズにも経験して欲しい。

ライバルだと胸を張って言える相手と出会い、競い合って、高めあって欲しい。

そして、その先で勝利を掴んで欲しい。

心から、そう思った。

 

 

 

『えっと……あ、君、そこの君』

『―――アァン?なんだァ、テメェ』

『エアシャカールで、合ってる?』

『……そうだけど』

『僕、ブラックジーンズって言うんだ。よろしく』

『……よろしく』

 

兄ちゃんから教えて貰った通り、というのもあるけれど。

ただ単純に、一緒に走る馬が気になって、片っ端から声をかけていく。

その中でも、今回のレースでも実力者だって言われてる馬、エアシャカール。

声をかけたら、ちょっと睨まれちゃった。

 

『同じレースを走るんだ。君、強いって聞いたから楽しみ』

『ほー、同じレースを、ねェ……何で分かるんだ?』

『兄ちゃんから聞いたんだ。僕らはこれから、1回限りのレースを走るんだ、って』

『へー……ま、走る時はよろしく頼むわ』

『うん』

 

えっと、後は……ダイタクリーヴァはさっき声をかけたし、あの馬とあの馬も……

あ、彼には声をかけてないな。

 

『ねぇ、君』

『わわっ、え、えっと、僕?』

『そうそう、君。名前は?』

『え、えっと……ラガー、レグルス』

『ラガーレグルス……うん、覚えた。僕、ブラックジーンズ、って言うんだ』

 

僕と似たような色の馬に、声をかける。

するとビックリさせてしまったようで……というか、なんだろう?

 

『何か、怖いの?』

『え?』

『怖がってるように、見えたから』

 

ビクビクと、周りを気にしているように見えた。

だから、ちょっと理由を聞いてみる事にする。

 

『……むしろ、怖くないの?』

『?』

『上の人、叩いて来て痛いし……周りの人、すごくうるさいし……怖いよ、僕は……』

『……怖い、か。うーん……………そうは、思わないかな』

『どうして?』

 

どうして、と言われても、なぁ……

 

『兄ちゃんに教えて貰ったんだけど……この人達はね、僕らが走って競い合うのを見るのが、大好きなんだって』

『?』

『僕らが走るのを見るのが好きで、頑張って勝って欲しい、そう思ってる。けれど、僕らの言葉は彼らには伝わらないし、彼らの言葉も、基本的には僕らに伝わらない。だから、大きな声をあげたり、叩いたりすることで【頑張れ】、って伝えようとしてるんだ、って』

 

兄ちゃんに教えて貰ったからこそ、僕はトバさんや他の人の言葉もなんとなく分かるけれど。

普通の馬は、人の言葉が分からない。

だから、ムチで叩いて痛くする怖い人だと思っているんだろう。

周りの人が、どうして大きな声を出しているかが分からないから、うるさいとしか思えないんだろう。

 

『レグルス君。彼らの声を、ムチで叩いて来ることを、怖がらないで。彼らなりに、君に勝って欲しいって気持ちなんだ』

『………物知りだね、君』

『兄ちゃんに教えて貰っただけだよ。兄ちゃんが居なかったら、何も分からなかった』

 

僕の、大好きな兄ちゃん。

物知りで、優しくて、それでいてとても強い、そんなキョウダイ。

僕は兄ちゃんに教えて貰ったから、知っているだけだ。

 

『……怖がらない、か』

『うん。君が頑張って走るのを、きっと楽しみにしてるからさ』

『……頑張ってみるよ』

『一緒に頑張ろうね』

『うん』

 

頷いてくれた、今はそれだけで十分。

―――後は、レースで、全力で競い合うだけだ。

 

 

 

『―――20世紀、最後のクラシック3冠レース、その第1レースが間もなく始まろうとしています。第60回皐月賞、18頭によって争われます』

『1枠1番はラガーレグルス、鞍上は佐藤哲郎(てつぞう)。ラジオたんぱ1着、弥生賞3着という好成績。父サクラチトセオーのGⅠ勝鞍と同じ芝2000mの舞台で、産駒初のGⅠ勝利を狙います』

『1枠2番に入ったのはブラックジーンズ。兄は昨年のダービーホースの1頭、ブラックテイル。欧州の地へと飛び立つ兄を、GⅠホースになって見送る事は出来るのか。鞍上は兄の主戦を務める鳥場弘』

『―――外8枠、16番にはエアシャカールと峪穣。新馬戦から常に掲示板を外さない実力者、峪穣と共にクラシックの頂点へと駆け上がれるのか』

 

 

 

『―――レグルス君、怖くないよ、ほら』

『う、うん……怖くない、怖くない……応援してるだけ、だから……大丈夫……』

『そう、大丈夫。彼らは君を応援してくれてるだけ』

『大丈夫……大丈夫……ありがとう、ジーンズ君』

 

隣のゲート、ラガーレグルスの事を見ながらブラックジーンズがゲートに収まる。

どうやら、兄と同じように、この馬もさっそく仲の良い競争相手が生まれたようだ。

 

「もうすぐ始まる、落ち着くんだ」

『―――分かったよ、キシュさん』

「よし、いい子だ」

 

 

『さぁ最後、大外18番マイネルコンドルが……今、収まりました。各馬ゲートイン、体勢完了!』

『―――第60回皐月賞、スタートしました!!!』

 

 

悪くない、むしろ良い部類のスタートダッシュを決めてくれる。

―――隣、ラガーレグルスがやや出遅れ気味、といった具合か。

 

『わわっ、で、出遅れちゃった……!』

「ッ……いや、これくらいならまだ……!」

『お、遅れちゃった分頑張らないと……!』

 

『レグルス君!?……いや、今は走る事に集中しないと!』

「中団、いや、中団少し後ろを取ろうか」

『っと、少し抑えれば良いんだね、キシュさん』

 

 

『先頭はパープルエビス、少し離れてマイネルコンドルタイムリートピック、最内ラガーレグルスがやや出遅れています。アタラクシアが外から上がって来て内からダイタクリーヴァ、ブラックジーンズは少し後ろに下がって様子見といった具合』

 

 

先行策も考えたが、どうやらラガーレグルスが気になっている様に感じる。

なので少し後ろ寄りに位置取りを決め、周りを窺う。

見える範囲、どうやらパープルエビスが逃げ、少し離れて先行策の馬が続いている状態。

ダイタクリーヴァは先行策組、そしてエアシャカールは自分たちより後ろ、追込の位置、か。

ラガーレグルスがどの位置に来るかは分からないが、過去の傾向からして差しの位置、つまり自分たちの位置まで上げるか、追込の位置に収まるだろう。

 

 

『1コーナーから2コーナーに入って先頭はパープルエビス、2馬身くらい離れてマイネルコンドル単独の2番手、3番手にタイムリートピック4番手は内からダイタクリーヴァ先頭から5馬身くらい、外からアタラクシアが並びかけます。中団はジョウテンブレーヴ、トップコマンダー、ピサノガルボ。ニシノアラウンドカネツフル―ヴ、そしてここにブラックジーンズ陣取って、後ろ1馬身にリバードフォコン、マイネルチャージ上がって来た、ヤマニンリスペクト内からエリモブライアン、外からラガーレグルス上がって来て、やや後ろにエアシャカール、最後方にチタニックオー!ここで1000m通過しました!』

 

 

ブラックジーンズの脚は、先行・差しと言った具合。

馬の気質などを考慮するなら、一番合うのはやや前よりの差し、だろうか。

今の位置は、悪くない位置取りだが……少し、前が塞がれている形になっている。

 

「―――少し横に出ようか」

『っと、一気に行かないように、ちょっとずつ外に……!』

「よし、よし、焦るなよ……!」

 

―――比べてはいけないと、頭で分かっていても。

どうしてもこの馬の兄と比べてしまうのは、両方の主戦をしているからか。

無論、『あっち(テイル)が異質である』というのが分かっている。

ジーンズだって操作性ではかなり良好な部類だ。そうなんだが、やはりテイルとのレースの感覚というのは、忘れがたい。

あの、僕のやりたい事に100%応えてくれる感覚というのは―――一度経験したら、忘れられない。

 

「―――コーナーで仕掛けようか」

『もう少し先で、か』

 

考えていた事を意図的に忘れて、今のレースに集中する。

仕掛けのタイミングは、定めた。

最終コーナーに差しかかる、その段階。

そこで仕掛け、最終直線に入るタイミングで前の方に一気に出る―――

頭の中でレース展開を組み立てる。

ならば、後はその通りに動くだけだ。

 

 

『さぁ先頭パープルエビス、リードは1馬身くらい!追ってマイネルコンドル単独の2番手、3番手にタイムリートピック、相変わらず内にはダイタクリーヴァ、外にはアタラクシアがマークしています!ジョウテンブレーヴ6番手外を回ってトップコマンダー、ピサノガルボが内―――外に持ち出したブラックジーンズ!ブラックジーンズがジワリジワリと外に出てきているぞ!カネツフル―ヴニシノアラウンドに並びかける!ここで600m通過!』

 

 

上手く外に持ち出せた!

ここまでは順調だが―――後ろから、一気に迫る足音が聞こえて来る。

 

 

『―――ここで一気に動いた!一気に動いたエアシャカール!!ヤマニンリスペクトと並んで上がってきました!!ラガーレグルスもその前に居る!一気にレースが動いた動いた4コーナー!!!』

 

 

後方勢が上がって来たな!

だが、それも想定内―――ここからが本番だ!

 

 

「さぁ行くぞ!」

『あぁ、行こう!!』

 

 

『パープルエビス先頭で直線入りました!ここで外から先頭に並びかけるブラックジーンズ!!内からダイタク、外からレグルス!さらに後方からはエアシャカールエアシャカール!!!』

 

いち早く先頭に襲い掛かったジーンズが、勢いのままに先頭を奪う。

しかし内からも外からも後続が迫ってくるのが分かる。

鞭を振るい、ジーンズに『ここが踏ん張りどころだ』と、『全力を振り絞れ』と伝える。

 

『先頭変わってブラックジーンズ!外からエアシャカール内からダイタクリーヴァ!ブラックジーンズ粘る!!ブラックジーンズ粘る―――』

 

―――外から、1頭僅かに抜けたのが、見えてしまった。

 

『―――粘るがエアシャカールだ!!エアシャカールが抜けてゴールインッ!!!2着にブラックジーンズか、ダイタクリーヴァか!!そこから掲示板争いにジョウテンブレーヴチタニックオー、ヤマニンリスペクトにラガーレグルスと大混戦!!!』

『混戦の皐月賞、1冠目を取りましたエアシャカール峪穣!!!』

 

 

「―――エアシャカールにクビ差の2着、か」

『―――負けた、か。チェッ、勝ちたかったな……』

「よく頑張ったな……相手が一枚上手だったか」

『んー……次は勝ちたい』

 

峪さんとエアシャカール、最後の最後にやられてしまったな。

ブラックジーンズも十分に頑張ってくれたし、実際勝ちも見えていた―――しかし、向こうがこちらの想定を上回った、か。

決してブラックジーンズは悪くない、むしろ世代の実力者が集まるクラシックレースで2着なのだから、そこは評価されるべき所だろう。

 

「―――次だ。次は勝つぞ、ジーンズ」

『ん、次は勝つ。エアシャカールに、次は!』

「よし、気合は十分だな」

 

ポンと叩けば、ブルルッと勢いのある返事が返ってくる。

馬自身のやる気は問題ない、ならばあとは鍛え上げ、挑むのみだ。

 

「次はダービー……お前の兄が勝った場所だ。一緒に勝とう、一緒に獲ろう」

『兄ちゃんが勝ったレース……!うん、俺も勝ちたい!!』

「よしよし、頑張ろう」

 

 




気力、体力十全なブラックテイルは勢いのまま海外へ。
そして、ブラックジーンズと世代の猛者達が出会い、本作競馬史の流れは更に変化していきます。

次回はウマ娘編を挟んでグラスワンダーの春天、そしてブラックテイル海外生活編へと進む予定。
ウマ娘編では、世代設定等を決めたブラックテイル産駒達をお披露目したいと思います。
どの世代にブラックテイル産駒が現れ、どんな変化をもたらしたのか、それを
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