黒き馬、世紀末を駆ける   作:馬券童貞は東京優駿に捧げた男

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お待たせしました、ウマ娘編学園案内です。
学園内のチーム紹介などをするお話になります。

※ナリタトップロードがウマ娘化した事により、そちらに合わせた内容に修正致しました。



ウマ娘編第4話 学園案内その1

「皆さん、おはようございます。本日、このグループの学園案内を担当させて頂きます、チーム『アルタイル』代表、ブラックテイルと申します。本日は、どうぞよろしくお願いします」

「『リギル』より、本来担当するはずであったヒシアマゾンさんの代わりを僭越ながら務めさせて頂きます、ディープインパクトと申します。よろしくお願いします」

 

―――視界の端で、深く、全てを飲み込んでしまうような漆黒が輝いているのが見える。

青毛の髪が、色白の肌故にとても印象深い。

切れ長の瞳は、知性を感じる、深い蒼。

左目の下にある泣き黒子もまた、色白の肌に映える。

そういうウマ娘、それが私の今日の相方、ブラックテイルさんだ。

 

「大まかな流れとしまして、私達のグループはトレーニングコース、プール、学園校舎の順番で見学して、お昼に食堂へ移動、その後寮の案内を行いまして、最後特別イベントをもって今日の案内を終了とさせて頂く予定になっています。分からない事、道中聞きたい事などありましたら、遠慮せず聞いてくださいね。可能な範囲でお答えいたします」

 

穏やかに微笑む、その姿。

見惚れている人が数人見える。

 

「それでは、トレーニングコースへと向かいましょうか」

 

それに対して、自分はどうだ。

優しく微笑む事など出来ない。

無愛想で、気の利いた言葉も出てこない。

……迷惑をかけないよう、頑張らないと。

 

 

「トレセン学園が誇るトレーニングコース。芝、ダートの他にも、『足』に負担をかけないようトレーニングをする為のウッドチップコース、スタミナや筋力トレーニングも行える坂路コースなど、様々なコースが用意されています」

「おっきー!ひろーい!!」

「今日も早速利用しているチームが居ますね。あれは……『ミモザ』のメンバーですね」

「ミモザの!?私、ミモザのファンなんです!!」

「では、折角なので声をかけてみましょうか」

 

チーム『ミモザ』……実力あるチームの1つですね。

トレセン学園でも数少ない、日本人では無いトレーナーが率いているチーム。

ざっと見渡して、トレーナーの姿は見当たらなかった。

席を外しているのだろうか?

そんな事を考えていたら、既にブラックテイルさんがミモザのメンバーに話しかけていた。

 

「Guten Morgen!」

「Guten Morgen……わざわざドイツ語で話しかけなくても大丈夫ですよ、ブラックテイルさん」

「いえ、何となくですよ、フラッシュさん。少しお時間頂いても?」

「4分23秒以内でしたら。少し休憩をとっていたところですので」

 

エイシンフラッシュさん。

ダービー、秋の天皇賞を勝っている実力者。

 

「学園案内で回っている所で、ミモザがここを使っているのが見えたからね。ファンだって子が居るんだ」

「ミモザのファンの方、ですか?」

「うん。ほら、前に出てきて」

「は、は、はい!!」

 

ブラックテイルさんの言葉で、先ほどの少女が前に出て来る。

 

「あ、あの、その……」

「……ミモザのファンの方、なんですね?」

「は、はい!私、その……ネオユニヴァースさんのレースが、大好きで……ミモザの他の人のレースも、大好きで!!だから、トレセン学園に、ミモザに入るのが、私の夢なんです!!」

「ありがとうございます。将来、一緒に走れる事、楽しみにしていますね……お名前を伺っても?」

 

エイシンフラッシュさんの言葉に、鹿毛の少女が元気に言う。

 

「私、ルヴァンスレーヴです!!」

「『風立ちぬ』、素敵な名前ですね……頑張ってくださいね」

「はい!!」

「ネオユニヴァースさんは残念ながらトレーナーさんと一緒に席を外していますが、他のミモザのメンバーは全員居ます。どなたか、話を聞きたい方など……ブラックテイルさん、時間は?」

「時間はまだありますよ。折角なので、ミモザの他の人からも話を伺ってみましょうか」

「でしたら……丁度、ヴィクトワールピサさんが休憩に入られたみたいですね」

「ヴィクトワールピサさん!!!ドバイワールドカップを日本のウマ娘で初めて勝った人!!!」

 

なんて、良い笑顔をするんでしょうか。

憧れに出会えた少女……ルヴァンスレーヴさんの笑顔が、眩しく見えます。

―――レースを見てくれた人が、あんな笑顔になってくれる、そんなウマ娘に。

私も、いつか。

 

 

 

 

 

「―――アヤベさん。もう大丈夫ですか?」

「えぇ、落ち着いたわ……御免なさいね、トップロードさん」

「大丈夫ですよ。御二人との付き合いは長いですし、対処法を一番知ってるのも、あの中じゃ私ですから」

 

クロと別れて、学園案内をしている。

相方に選ばれたのは、ナリタトップロードさん、私達のレースでの同期。

―――テイルとペアを組むつもりだったけど、分けられた。

そのショックと言うか、なんというか……そういうアレで、ちょっと取り乱した。

そのフォローにトップロードさんが選ばれた、という形になる。

因みに、他4人はキングさんとイクノさん、スカーレットさんとオルフェーヴルさんでペアになっている。

 

「それじゃあ、行きましょうか―――えっと、これからプールの案内になります。離れないよう気を付けてくださいね!」

「それでは、付いて来てください」

 

出来る限り、怖がらせないように。

声色と、表情を柔らかくして、対応していく。

ちょっと疲れるけれど、まぁ問題は無い。

 

「道中、学園のウマ娘に軽く話を聞くくらいはOKだったわね?」

「そうですね。見学者の方にとっていい経験になると思いますし、1人か2人か、声をかけてみましょう!」

「誰が良いかしら。折角なら、G1勝利経験のある人とかの方が……あっ、あそこ」

「あっち……あ、良いですね!声をかけてみましょう!」

 

プールの方へと歩きながらトップロードと会話し、目星をつける。

廊下でスマホを弄っている、1人のウマ娘。

丁度良い、見学の子にサービスをしてあげよう。

 

「カレン、おはよう」

「あ、アヤベさん!おはようございまーす!」

「「「 カレンチャンだぁ!!! 」」」

「あはっ♪」

 

見学者にウインクを欠かさない、私の寮での同室の子。

カレンチャン。それが、丁度見つけた子だ。

『Curren』という名前で圧倒的人気を誇っている、学園屈指のインフルエンサーでもある。

 

「案内してる時に見つけまして、折角だから子供たちにサービスでも、と」

「トップロードさんとアヤベさんの2人なんだね?」

「……テイルは、他の子のサポートに回されて……」

「えっと、その、アヤベさんさっきまですっごく落ち込んでましたので……あまり、触れないで頂けると助かります」

「はーい。それじゃあ、皆にサービス、しちゃうね!ほら、こっち集まってー!!」

 

子供たちと一緒に写真を撮っているカレンを見て、少し安堵。

こういうサービスについて、カレンの右に出るウマ娘はそうは居ない。

子供たちもファンばかりのようで、カレンを中心にした写真がウマッターやウマスタグラムに上がると直ぐに保存している。

 

「皆、トレセン学園に入りたいんだよね?カレンも楽しみに待ってるねー!」

「「「 はーい!! 」」」

「それじゃあアヤベさん、トップロードさん、頑張ってね♪」

 

とりあえず、サービスにはなったか。

少し安堵しながらも、プールの方へと向かう。

―――プールと言えば、クロの十八番なのよね。

幼馴染のやたらと上手い泳ぎを思い出しながら、プールへと移動する。

 

 

 

 

 

「ヴェックショイッ!!!」

「ど、どうしたんですかテイルさん?」

「いや、急に鼻がムズムズして……アヤかな?私の話でもしたのかな……」

「分かるんですか?」

「いや、勘。だけど間違ってない気がする」

「えぇ……」

 

そんな事を話しながら、ブラックテイルさんと学園内を歩く。

午前中最後の案内は、学園校舎。

多くのウマ娘達が活動する中、私達は見学者と共に歩き回る。

ありのままの光景を目にして貰う、という面目だ。

 

「今は授業の最中という事もあり廊下にはあまり人が居ませんが、移動教室なりなんなりでこうした時間でも廊下で誰かと会う事はあります。もしかしたら、この案内の最中で誰かと会えるかもしれませんね?」

「そう出会えるかは分かりませんが……皆さんは、会いたいウマ娘は、居ますか?」

「私、シンボリルドルフさん!」

「あたしはシービーさんに!」

「わ、私はその、エアグルーヴさんに……」

「なるほどなるほど」

 

ちょっとずつですが、見学者の人と話す事が、出来るようになってきた、かもしれません。

そんな事を考えながら学園内の色んな所を歩き回る。

すると、ブラックテイルさんがこんな事を言った。

 

「……何処かの教室に、突撃してみますか」

「い、良いんですか?授業中ですよ?」

「元々今日は学園案内だと通知されてますし、今の目的は『ありのままの光景を目にして貰う』ですから。授業中の姿だって、見て貰う事は大事ですよ」

「まぁ、そうですが……」

「どこの教室に行こうかな……それじゃあ、あそこの教室に行きましょう。皆さん、ついて来てください」

 

高等部のとある教室にノックするブラックテイルさん。

 

「あ、どうもすみません。学園案内の者ですが」

「あぁ、ブラックテイルさんが担当でしたか」

「すみません、お邪魔しても良いですか?」

「えぇ、どうぞ」

「お邪魔しますー……あ、皆さんもどうぞどうぞ」

 

案内されるままに、後ろの入口から教室へと入る。

中に居るのは、一体……

 

「―――なんだ、学園案内でわざわざ教室にまで来たのか、テイル?」

「あぁ、どうもどうも。折角なので授業風景もと思いましてね―――ナリタブライアンさん」

「フルネームで呼ぶなと何度も言ってるだろう……」

 

ナリタブライアン先輩。

リギル所属の、3冠ウマ娘。

彼女の居る教室だったんですね……

というか、チームの人では無いのに、結構親し気ですね、ブラックテイルさん。

 

「あー!ナリタブライアンさん!!」

「はい。3冠ウマ娘であっても、授業はしっかりと受けています。走りだけではなく、知識なども兼ね備えてこそ素晴らしいウマ娘です。皆さんも、走る事だけじゃなくて、勉強もしっかりしないとダメですよ?」

「……まぁ、なんだ。トレセン学園でもテストなんかはある。成績次第では補習でトレーニングの時間も減ったり、合宿への参加が認められなくなるデメリットもある。勉強もそれなりにはすると良い」

「はーい!!」

 

あぁ、こういう事を伝えたくてこの教室を……

色々と考えているんだな、この人は。

見学者の求めている物を、しっかりと考えている。

今まで接点の殆ど無い人でしたが……良い人、なんですね。

 

 

 

 

 

トレセン学園の食堂。

ここで、見学者の人に食堂の料理を楽しんで貰う為、一緒に昼食をとる事になっている。

の、です、が……………

 

「テイル、向こうの席、確保してるから」

「うん、分かったよ。ただ、今日は学園案内の日だからね。見学者の人達も一緒。そこは、分かってね?」

「えぇ、分かってる。それじゃ」

 

食堂に入った瞬間即座にブラックテイルさんに近寄り、話しかけ、また即座に去っていくアドマイヤベガさん。

 

「あの、今のは……」

「アヤと約束したからね。お昼は一緒に食べる、って話で」

「あぁ、なるほど……なる、ほど?」

「アヤのグループと私達のチームを隣にして、その上でアヤと自分を隣に。それ以外は自由で大丈夫だから。ディープインパクトさん、見学者の人達とお話してみてね?」

「え、あ、はい……」

 

―――大丈夫、かな。

不愛想で、気の利いた話も、全然できない。

そんな私で……

 

「―――大丈夫。君もまた、立派なウマ娘だから」

「えっ?」

「ウマ娘は、人の支えを受けて、レースを走り、人々を笑顔にする存在。大丈夫だよ、君も、誰かを笑顔にできる……私も、悩んだこと、あるからね」

「そう、なんですか?」

「うん。まぁこれは、その、『(わたし)』の問題もあったんだけどね……でも、大丈夫。私は私なりに全力を尽くして、今がある。アヤ、オペに、トップロード、ドトウ、他にもたくさんのウマ娘達が居て……色んなライバルと競い合った果てに、今の私が居るんだ」

 

そう私に言うブラックテイルさん。

その視線は、どこまでも優しかった。

 

「―――自信を持って、ディープインパクトさん。君は、リギルに選ばれた1人。最高の走りをして、見てくれた人達を笑顔に出来る存在だ。だから、大丈夫」

「そう、でしょう、か」

「大丈夫だって。ほら、行ってみて」

「は、はい」

 

軽く背中を押され、席に着く。

周りには、見学者の人達。

ブラックテイルさんは、アドマイヤベガさんとの会話を楽しんでいて、助け船は出してくれそうにない。

どうしよう、そう考えていると、1人のウマ娘が話しかけてくる。

 

「あ、あの、すみません」

「は、はい。何でしょうか?」

「ディ、ディープインパクトさん、って、リギルの人、なんですよね?」

「えぇ、そうです。デビューこそまだですが……」

「わ、私、リギルのファンで……いつか、リギルに入ってレースを走るのが夢なんです」

 

少女が、切れ長の瞳を大きく見開く。

 

「リギルの事、教えてください。どんな人が居て、どんな事をしてるのか……駄目、ですか?」

「……いえ、大丈夫ですよ。話せる範囲であれば、お話ししましょう」

「お願いします!」

「他の人も、食事をしながらで良いですから、聞いてください。リギルでは……」

 

私の会話に、興味津々といった具合で耳を傾ける少女達。

眼を輝かせ、時に質問をしてくる彼女達に対応しながら、お昼の時間は過ぎて行った。

 

 

 

 

 

「―――あぁ、そうだ。『(オレ)』が保障するよ。君は見てくれる人を笑顔に出来る存在だよ、『衝撃の七冠馬(ディープインパクト)』」

「テイル?」

「あ、ごめんごめん、アヤ。そういえば、こんな話があってさ―――」




チームミモザ:鞍上をM・D氏が勤めた競走馬達で構成。

学園案内編はあと1話やる予定です。
そこではこの世界線でのとあるレースにも触れる予定です。
それを書き終えたら競走馬編に戻ります。
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