黒き馬、世紀末を駆ける 作:馬券童貞は東京優駿に捧げた男
色々ゲームをやっていたら遅くなってしまいました……
今回はウマ娘編、遂に現れる競走馬編未来からの刺客です。
―――それは、『私』がトレセン学園に入学して、少し経ったある日の事。
今でも鮮明に、鮮烈に、脳裏に刻まれた、出会いの記憶。
『ごめんなさい、電車の中で寝過ごしてしまいました』
【迎えに行くから動かないで】
《どれくらい遅れそうかな?》
『2駅ほど過ぎてしまいましたわ』
【往復で20分くらいかな、それじゃあ】
【ごめんね、どこかで時間潰してて】
《うん、分かったよ》
LANEで送られたメッセージを、今でも覚えている。
あの子の性格からして、納得してしまう所はあるけれど。
……でも、待ち合わせ5分前になって漸く来たメッセージがコレ、と言うのは、どうかと思った。
「ハァッ……時間潰してて、って言われても……」
今日一緒に街を散策しようと誘ってきたあの子は、何と言うかその……些か……些か以上に、『ズブい』。
だから予想はしてたけど、本当にやらなくても良いじゃない、とは思う。
さて、どうしたものか、と考えて……
「なぁ、あの子、めっちゃ可愛くないね?」
「流石ウマ娘、レベル高いわ……」
視線が突き刺さる。
見られている。自惚れとかでは無く、私を見て、私の話をしている―――
「声かけてみるか?」
「……行ってみるか」
来ないで、来ないで、来ないで―――
そう思っていても、足音が段々と近づいて……
「―――お待たせ。ゴメンね、待たせて」
「えっ……?」
「遅れちゃってゴメンね」
知らない声。でも、男性の声では無くて。
声の方に視線を向けると―――『黒』が、そこに。
「そこの喫茶店で良いかな?」
「え、あの、その―――」
「クーポン貰っててね、ちょっと値引きも入るんだ。だから、ね?」
スッと、紙を1枚差し出される。
そこには、『今は話を合わせて』と1文が。
紙の下には、見覚えのあるモノ―――トレセン学園の学生証。
紙から視線を目の前の『黒』……青毛のウマ娘さんに向ければ、優しい微笑みを向けてくれていて。
「どう、かな?」
「―――じゃあ、それ、で」
「うん。行こう」
そっと差し出された手を取り、歩き始める。
すると、目の前のウマ娘さんとは違う方向から向けられた視線が、逸れたのが分かって。
「チッ、もうちょっと早く動けばよかったか」
「いや、今からでも……」
「少し、早く歩きましょう。お店に入れば、大丈夫だと思いますから」
「あ、は、はい」
「申し訳ありません。もう少しだけ、お付き合い下さいね」
「い、いえ、その……助けて頂いたのは、私ですから」
さっきまでの少し気さくな雰囲気から一変して、とても落ち着いた雰囲気で。
あの男性達の視線を遮る様に歩いてくれるウマ娘さん。
そのまま、喫茶店に入って、向かい合う位置で座る。
改めて、ウマ娘さんの事を見る。
『漆黒』、という言葉が似合う綺麗な青毛の髪。
見ているだけで吸い込まれてしまいそうな、深海の様な深い蒼の瞳。
色白の肌に、左目の下には泣き黒子。
そんな人。
「えっと、その…助けて頂いて、ありがとうございます」
「いえ、お気になさらず。私達ウマ娘って、やっぱ世間的には容姿に優れているって事で男性に声をかけられることも多いですからね。トレセン学園のある府中市内だと結構あるんですよ、ああいうの」
「そう、なんですね……」
「えぇ、そうなんです」
『困ったものです』と、少し面倒くさそうに溜息を吐くウマ娘さん。
「こうした事は初めてですか?」
「え、えぇ。その、お恥ずかしい事に、私用で1人外を出歩く事があまり無くて……今日は待ち合わせをしていたからここに来ましたけど、向こうが所用で送れる事になりまして」
「そう、でしたか……偶然とはいえ、助けられて良かった」
優しく微笑むウマ娘さん。
その微笑みに見惚れてしまう。
「待ち合わせまで、1人で過ごされる予定で?」
「いえ、その……本当はもう待ち合わせの時間だったんですが、少しトラブルがありまして、15分位時間が遅れる、と連絡が」
「そうでしたか……偶然とはいえこうして喫茶店に入ったのですし、少しだけご一緒させて頂いても?私も友人と遊ぶ予定でして、少し早くここに来たんです」
「あ、は、はい!私もその、ここに来るのは初めてで、どう時間を潰そうかと考えていた所だったので……よ、よろしく、お願いします」
「そう畏まらなくても……あ、すみません、注文を」
気が付けば、一緒に時間を潰す事に。
話せば話す程、この人に流れの主導権を握られているような……それでいて、不快感なんて全く無い、不思議な人だ。
お互いに飲み物を頼んで、改めて向き合う。
「えっと、その……」
「もしかして、入学されたばかりの方ですか?」
「え?」
「お察しの事かと思いますが、私はトレセン学園の生徒です……貴女は?」
「あ、そ、そう、です。でも、どうして…」
「ここはトレセン学園から近い場所ですから、待ち合わせ場所として利用する事は多々ありますし、単純に個人で外出する場合でも目的地とする事も多くなります。そこで時間を潰す場所を知らない……この場所を利用した回数が少ない、そう考えましたもので」
「なるほど…」
そっか、ここ、トレセン学園に近いから、そういう考え方も出来るんだ。
「ここは良い所ですよ。いろんなものが揃ってますから、私も私用でよく利用するんです」
「そうなんですか?」
「はい。やっぱり中央トレセン学園の近く、つまりウマ娘レース発展の中心地ですからね。人が集まる、故にこの辺りはよく発展してます。特に此処がいい例ですね……前世じゃ府中は田舎よりだった気がするけど」
最後の方はよく聞き取れなかったけれど、前半は納得できる内容だった。
国民的娯楽発展の地となれば、その街自体も発展して可笑しくはない。
……世間知らずだな、私。
「―――何も恥じる事はありませんよ」
「え?」
「私も最初は何も知らず此処に来ましたから、何となく分かりますよ」
香りを楽しみながらコーヒーを飲むウマ娘さん。
カップを置くと、穏やかな視線をこちらに向ける。
「今から少しずつ知れば大丈夫です。きっと、今日貴方と此処に集まる人たちも、同じことを思っているんじゃないでしょうか」
「そう、でしょうか……」
「今日行動を共にする人は、どんな人ですか?友人だったり、ルームメイトだったり」
「えっと……トレセン学園に居る親戚、です」
「親戚の方でしたか。ならきっと、貴方に今後過ごすことになる街の、特に利用しやすい場所を案内したかったんじゃないでしょうか」
「……だと、良いですけど」
「きっとそうですよ」
何故だろう。
初めて会う人なのに。
初めて話すのに。
―――まるで、『家族』と話すかのように、穏やかな気分で話をしてしまっている、私が居て。
―――ピコン、という音がしたのは、彼女のスマホからだった。
「おっと……友人からですね。どうも、向こうが集合場所に来たみたいで」
「あっ……そ、そう、ですか」
「私が居ない事を不思議に思ってるみたいです。私も『人』だから遅刻する可能性もあるのに……」
ポチポチとスマホを弄り、トークアプリでやり取りをしているのだろう。
少しやり取りをすると、グイッとコーヒーを飲み、立ち上がる。
「失礼、友人からの催促があったので、先に出させて頂きます。会計はこっちで済ませておきますので、時間までゆっくりと」
「え、あの、お代くらい払わせてください!あの時助けて貰ったのに」
「いえいえ、お気になさらず。それではこれで」
「ま、待ってください!」
レシートを持って立ち去ろうとするその人に、声をかける。
「せめて、名前だけでも―――」
「―――名乗る程のモノではありませんよ。『今』は、まだ」
そう言うと、『黒い尻尾』を軽く1つ振って、彼女は会計へと進んでしまう。
その自然で、堂々としていて、綺麗な仕草に、私も、他のお客さんも、店員さんでさえ見惚れてしまって。
ふと気づいた時には、彼女はお店の外に出て行ってしまった後だった。
金髪のとても綺麗なウマ娘さんと、いかにも『ギャル』って感じの、ネイルが派手なウマ娘さん。
そんな2人と一緒にどこかへと言ってしまうウマ娘さんの背中を、私は見ている事しか出来なかった。
「ゴメンね、待たせちゃって」
「ごめんなさい―――あら、何かありました?なんだか、悲しそうな……」
「あ、『お姉さま』……」
「今は『お姉ちゃん』で良いわよ……それで、何かあったの」
「う、うん、その……」
少しして、私は『お姉さま』……『お姉ちゃん』達と合流した。
そこで、私は『青毛のウマ娘さん』の話をした。
トレセン学園の生徒であること、助けてもらった事、喫茶店に一緒に入った事―――名前を教えて貰う事も出来なかった事。
全部話して、話し終えた所……何故か、頭を抱える『お姉ちゃん』が居た。
「あの人?あの人だよね絶対?なんで『この子』も私と同じ状況で助けられて同じ状況に陥ってるの?なんの偶然???」
「あらあら、もしかして『黒き君』でしょうか~」
「……『黒き君』?」
「ちょ、ちょっとそれは内緒でって言ったでしょ!?」
『お姉ちゃん』達の言葉に、首を傾げる。
『青毛のウマ娘さん』の事なのだろうけれど……
「あら、良いじゃないですか。貴方も学園内で1人探しているんでしょう?共通の探し人が出来たみたいですし、情報の共有をしても良いんじゃないですか、『ドーベル』」
「『ブライト』……いやまぁ確かに探し続けても中々たどり着けてないけれども……」
「なんでか私も、ライアンお姉さまも頼らず1人で探し続けて、でも見つけられていないんですよね?」
「……そう、だけれども」
お姉ちゃん―――メジロドーベルの事を、穏やかな表情で見るメジロブライト。
やがて、観念したのか、お姉ちゃんが腕を組みながらこっちを見る。
「……今度、一緒に学園を探しましょう。『青毛で、左目の下に黒子があって、蒼い瞳の、物凄く優しいウマ娘さん』」
「うん、そうしよう……因みに、お姉ちゃんはどうして探してるの?」
「……貴方と同じよ。その時はマックイーンとの待ち合わせ場所に先に来てて、ナンパされそうになった所を助けられたの」
「青毛の優しいウマ娘さんとしか分からないから、ドーベルの漫画に出て来る黒髪のキャラクターの通称をとって『黒き君』と―――」
「ブライト!!!」
「えっと、もう一回聞くね?『青毛で、左目の下に黒子があって、蒼い瞳の、物凄く優しいウマ娘さん』を探してるんだよね?」
「う、うん、そうなの。何か知ってるかな―――ライアン」
「いや、知ってるも何も……該当するウマ娘に1人、心当たりがあるんだけど」
「本当!?」
「うん。寧ろ、それだけ情報があって『あの人』にたどり着かないってのもびっくりなんだけどなぁ……」
翌日。
ブライトが『お姉さま』と慕うメジロのウマ娘―――ライアンの所に、お姉ちゃんと一緒に行った。
隠す必要も無くなったので誰かに聞いてみよう、という事で頼ってみたのだけれど、まさかの反応だった。
「そ、そんなに有名なウマ娘さんなの?」
「十中八九間違いはないかなぁ……ちょっと待ってね」
ポチポチとスマホを弄って……電話をかけたらしい。
『もしもし』
「あ、もしもし。メジロライアンです」
『これはどうも。あ、この間教えて貰ったトレーニングメニューありがとうございます』
「いえこちらこそ、この間教えて貰ったはちみつレモン美味しかったです!……っと、それはそれとして、今って予定空いてますか?」
『特に予定はありませんが』
「それじゃあ、今から会う事は出来ますか?場所を教えて貰えれば、こっちから行きます」
『良いですよ。【アルタイル】のチームルームに居ますので』
「分かりました!それじゃあ今から行きます!」
『分かりました』
……聞いた限り、結構親しい関係、なのかな?
「予定空いてるって話だから、行ってみよう!」
「えっと、『アルタイル』のチームルームだっけ……」
「チーム『アルタイル』の人なんですね」
「うん、次期リーダー筆頭候補!」
「「えっ」」
『アルタイル』というのは、歴史あるチームだと聞いている。
そんなチームの、次期リーダー候補?しかも筆頭?
そんな人と、ライアンが?
いや、決してライアンのコミュニケーション能力を疑っている訳では無い。
私の知る限り、彼女はコミュニケーション能力に長けている方だと思う。
ただ……どこで、接点を持ったのだろうか?
「ライアン、えっと、その、どこで知り合ったの?」
「ライアンのチームって、確か……」
「チーム『アケルナル』!こっちのトレーナーとあっちのトレーナーで結構やり取りしてるみたいで、チーム間の付き合いもそれなりにあってね。そこで知り合ったんだ」
「へぇー……」
「すっごく優しくて良い人でね、もう会ったその時に意気投合しちゃって!今じゃお互いに筋トレメニューとかいろんな意見交換する間柄、って感じだね」
歩きながら、話を聞く。
ライアンの居るチーム『アケルナル』もまた、かなり長い歴史を持つチームだ。
確か、『横屋』という歴史あるトレーナーの有名な家が代々継いでいるチームだったはず。
メジロの家にもこのチームに所属し、GⅠレースを勝ったウマ娘も居ると聞く。
「それどころか、多分だけど……あの人と『仲の悪い』人って居ない気がするんだよね」
「……それって、どういう事?」
「自分の知る限り、だけどね?誰とでも仲が良いし、誰からも慕われている。彼女『が』嫌っている人を知らないし、彼女『を』嫌っている人を知らない」
「えぇ……それって、本当?」
「何度も言うけど、自分の知る限り、だからね?……ただまぁ、実際に体験してるから分かるでしょ?あの人と話をするのは、なんていうか……心地いいんだよね」
「「あぁ……」」
お姉ちゃんと共に納得する。
『家族』と会話をしているかのような安心感を、初対面の人から感じていた。
恐らく、お姉ちゃんも。
「……凄く、自然に会話を合わせてくれたり、こっちが何か話そうとしたらどれだけ時間がかかっても待ってくれて、それでも会話が続かなかったら会話しやすい内容に自然に誘導してくれたり……」
「うん、凄く、楽しかった……5分とか10分とかそれ位だけだったけど、凄く」
「あーやっぱり……放課後どころか授業と授業の合間だけでも人気凄いんだよ?周りに人が居ない事が無いんだ」
「えぇ……」
……なんだか、想像出来ちゃうな。
自分の席に座っているウマ娘さんと、それを囲んで、笑顔で話しかける他のウマ娘の姿が。
そんなことを思いながら歩いていると、ライアンが1つの部屋の前で止まる。
ノックをして、ライアンが声をかけた。
「ライアンです」
『どうぞ』
「失礼します」
―――フワリと、コーヒーの香りが漂ってくる。
扉の向こうに、『黒』が居た。
此方を見て、少し目を見開いて。
しかし、直ぐに優しい視線に戻して。
「―――こんにちは、メジロライアンさん。そちらの方々は……?」
「えっと、先日助けてくれたウマ娘を探してる、って事で相談を受けまして……心当たりは?」
「あるには、ありますけれど……わざわざお礼をされる程の事は何もしてませんが」
「まぁまぁ、そこは助けられた本人がしたいって言っているんですから……ほら、2人共」
ポン、と叩かれて、慌ててお姉ちゃんと一緒に近寄る。
蒼の瞳に、吸い寄せられるかのように。
「え、えっと、その……あ、あの時は助けて頂いて、ありがとうございました」
「ありがとうございました。お礼を言いたくて、学園を探して……ようやく、言う事が出来て、よかったです」
「……どういたしまして」
「あの、お名前を教えて頂きたいのですが」
「名前、ですか?」
「はい。恩人の名前を、私は知りたいです」
「そこまで恩義を感じる事はしたつもりはないですけれども……分かりました」
私の言葉、そしてお姉ちゃんが無意識に距離を詰めた事もあるのだろう。
一歩下がって、私達の事をウマ娘さんが見る。
「―――では、名乗らせて頂きます。チーム『アルタイル』所属、【ブラックテイル】と申します。デビュー前の身としてチームの末席を汚させて頂いております」
「……謙遜し過ぎるのはどうかと思うよ、テイルさん」
「事実を述べただけですよメジロライアンさん……あの、もしかしてこちらの2人もメジロの……」
「はい、そうなんです……あ、畏まる必要は無いですからね!私やアルダンと同じで!」
「正直『あの』メジロの方にこうもフランクに接して良いのかという葛藤は変わらずあるのですけれど」
「もっとフランクにして良いって言ってるじゃないですか……」
「小市民なんですよ、私は」
青毛のウマ娘さん……ブラックテイルさん。
その名前を、初めて聞いた筈。
なのに、どうしてだろう。
どうして―――心がこんなにも、温かく。
「お姉ちゃ……………お、お姉ちゃん?」
「―――――」
「お姉ちゃん?おーい、お姉ちゃーん?」
「―――ハッ!」
……お姉ちゃんの様子が、何か、可笑しいような?
どうしたんだろうか、と首を傾げるけれど、分からないモノは分からない。
今は考えないでおこう。
「お名前を伺っても宜しいでしょうか?」
「え、あ、わ、私ッ、メジロ、ドーベルですッ!!」
「―――メジロ、ドーベルさん。そっか……………そっかぁ」
お姉ちゃんの名前を知って、ブラックテイルさんが少し視線を逸らす。
その頬は、僅かに赤くなっているような……え、何この空気。
場の空気に耐えられなかったのか、ブラックテイルさんが、私を見た。
「え、えっと、貴方の名前を伺っても?」
「あ、はい!」
漸く、私の名前を伝えられる。
その事実が、嬉しくて―――
「私、『メジロラスぺルバ』です!」
「――――――――――メ、メジロ、ラスぺルバ、サン」
「はい!あの、何か?」
「イ、イエ、ナニモ」
「ほ、本当に大丈夫ですか?」
「ホントウデス、ダイジョウブ、デス」
なぜか、私の名前を聞いてからこんな調子のブラックテイルさん。
何か、私に、私の名前に、思う所でもあったのだろうか?
「あ、あの、ブラックテイルさん……?」
「は、はいっ!?な、何でしょうメジロドーベルさん!」
「いえ、その……だ、大丈夫、です、か?」
「は、はいっ、大丈夫、です!」
お姉ちゃんへの反応もなんか凄い事になっているし……
え、私達、何かした?
「テイルさん、本当に大丈夫?」
「だ、大丈夫です、大丈夫なので……そ、その、お礼以外に、何か用があるとか、では?」
「い、いえ……あの時のお礼を言えたら、それで……それだけで、良かったんです」
「だってさ。そういえば、テイルさんはここで何を?」
「し、資料を纏めていたんです。新入生のデータを纏めて、トレーナーが見やすいように、と」
「あー……もしかして、邪魔しちゃいました、よね?ごめんなさい」
「い、いえ、大丈夫、ですから!」
……本当に、大丈夫、なのかな?
不安に感じてしまう。
けれど、ここまで言われてしまうと、ほぼ赤の他人である私からは何も言えない。
「……今日はお礼を言うのが目的だったし、これで帰りますね。もし今後学園内で会った時は、よろしくお願いしますね!大切なメジロの仲間ですから!」
「あ、その……私からも、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします!」
「あ、は、はい……こちらこそ、よろしくお願いします」
どこか疲れているような、そんな雰囲気を漂わせながら。
ブラックテイルさんは、それでも笑顔を絶やさなかった。
「思い出すな思い出すな前世を思い出すな忘れろ忘れ……やっぱ忘れられないよなぁ……メジロドーベルさん……それにメジロラスぺルバって……ウマ娘になると『あぁなる』のか……どう接したらいいんだ……」
「……前世の『娘』と接する方法なんて分からないよなぁ……」
「それに、ラスペルバのお母さん……………ドーベル、さん―――――駄目だ駄目だ思い出すな思い出すな脳内でウマ娘のドーベルさんと前前世の自分に置き換えるな考えるな考えるなよしそうだこういう時は走ってこよううんそうしよう何も考えられない位に自分を追い込むしかないなさぁ走ろう!!!!!」
―――その日、学園の外を延々と走り続ける漆黒のウマ娘の姿が目撃される事となった。
メジロドーベルの秘密(本作限定その1)
自作漫画の『黒き君』を描くとき、不思議と脳裏に浮かぶ謎の生き物が居る。
ブラックテイルの秘密1
左耳に耳飾りをしているウマ娘の内、何人かを見ると前世を思い出し、そのまま前前世の自分と目の前のウマ娘の姿で記憶を置き換えてしまう時がある。
メジロラスぺルバ
前世:メジロドーベルの20○○(牝)(父ブラックテイル)
主な勝鞍:――――――――――――――――――
という訳で、競走馬編の未来で、ブラックテイルとメジロドーベルの間に生まれる馬、メジロラスぺルバでした。
戦績とかも色々考えてはあるのですが、そこを公開するかは未定です。
戦績含めて考えてあるブラックテイル産駒はあと1頭居るのですが、出すかどうかは未定です。