黒き馬、世紀末を駆ける   作:馬券童貞は東京優駿に捧げた男

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大変お待たせいたしました、申し訳ございません……(土下座
割と洒落にならない社内事故やミスが頻発しておりまして、その対応や後始末に残業が続き体力と時間を持っていかれました……申し訳ない……



特別番外編 『つどい歌えよ、星々よ!』その3

「やぁやぁテイルさん、劇の練習は……うん、やはり君は問題なさそうだね」

「劇に関して造詣の深い君からそう言って貰えると、少し安心出来るね」

「ボクの演劇鑑賞に付き合ってくれたことも何度かあるし、そういう経験が活きているのかもしれないね」

「確かに、そういう所はあるかもしれないね」

 

―――ブラックテイルというウマ娘の抱える深淵の一端に触れたあの日から、数日。

全員が劇の役を決めたこともあり、デジタル君の脚本は完成。

演者達はそれぞれが練習し、デジタル君は衣装などの準備を行う、という状況だ。

元々こうした行事にあまり乗り気ではないアヤベさんに、台詞を覚え、噛まずに言うというのが苦手なドトウ。

練習に前向きだし飲み込みも早いが、周りを気にしがちなトップロードさん、と、僕らの劇に向けての改善点が見えてきた。

 

そんな中で1人、ボク以外で『このまま劇に出られる』というレベルに到達している人が居る。

それが彼女、ブラックテイル。

元々物覚えが抜群に良い彼女だが、ボクと何度か劇の鑑賞をした事があるからか、劇での役の演じ方について下地が出来ていたのかもしれない。

堂々とした立ち振る舞いで、役の練習をする彼女を見て、ボクは確信する。

『先日の件で彼女自身の問題は現状出来る範囲で解決した。少なくとも、僕たちの劇を演じる事については心配することは1つもない』、と。

 

「さっきの練習、ボクから見てもかなりの完成度だと思ったよ。このままいけば、君については問題なさそうだ」

「『私については』、ね……アヤはまぁ、言ってしまえば『私自身』を餌にすれば問題無いと思うけど、ドトウはひたすら練習して慣れてもらうしか……それに、デジタルちゃんの進捗も少し不安だね。彼女、私たちの劇もそうだけど、冬の即売会に出すモノの制作もあるらしいから……」

「そうか、冬の同人即売会……!」

「もう少し完成度を上げたら、私はデジタルちゃんの手伝いをしようと思ってるけど……」

「うーむ、それも1つの手ではあるか……しかし、君が裏方の手伝いに移行すると、アヤベさんのやる気に影響が出そうという問題もある。悩ましい所だね」

 

デジタル君の作業量はかなりのモノだから、テイルさんが手伝いに回るというのは良い案だと思う。

が、先ほど言った通り、アヤベさんのやる気への影響が確実に出る。

テイルさんも言っていたが、『テイルさんと一緒のイベントをやれる』という事実が、彼女を今回の劇に誘い込めた要因の1つ……『餌』の役割なのは確実だからだ。

さてどうしたものか、と悩むボク達の耳に、聞き覚えのある声が飛び込んでくる。

 

「テイルさんにオペラオーちゃん、一緒に居たんですね!」

「やぁトップロードさん、見回りかい?一緒に居たというよりは、ボクがテイルさんの進捗を少し確認しに来た所でね」

「そうなんですね……実は、ドトウちゃんの練習について相談したいことがあって探していたんです」

「ふむ、ドトウの……やっぱ、噛む?」

「そうみたいで……」

 

ふーむ、ドトウが台詞を噛むことについての相談、か。

と言われても、出来る事と言えば台詞を覚え、自然と口に出来るよう身に染み込ませる事だろうが……ふむ、ふむ。

 

「―――テイルさん。少しばかり君の成果を披露してもらえないかな?」

「まぁ、良いけれど……さっき練習していたシーンで良いかな?」

「それでいいとも。じゃあ、台本は一度預かるよ」

「オーケー」

「え……」

 

テイルさんが持っていた台本をヒョイと取り上げて、トップロードさんの隣まで移動する。

目を丸くするトップロードさんに、指で示す。

『彼女の事をしっかり見るように』、と。

 

「―――『久しいね、太陽の王。息災かな?』」

「―――『月の王。我が威光、我が光輝を見たまえ!それが答えだ!』」

「『森羅万象を照らさんばかりの輝き、元気そうで何よりだ』」

「『月の王よ、なぜ私を訪ねたか、聞いても良いだろうか?』」

「『時期が時期だから、さ。多忙な王達がこの1年、無事に過ごせたか……気になってしまったのさ。氷の王は先に会ってきて、その次にここを訪れたという訳さ』」

 

テイルさんの台詞に合わせ、ボクも役を演じる。

台詞に合わせて繰り出される、やや大袈裟ながらも不快ではない身振り手振り。

普段の彼女とは違う、少し含みのある口調。

トップロードさんも、今のやり取りで分かっただろう。

今のテイルさんは―――『月の王』という役に、入り込んでいる。

 

「『先ほど、サンタの王を見かけたよ。相も変わらず、多忙そうであったが……彼の王らしい、と言うべきかね』」

「『ふぅむ、美徳ではあるのだが、ね』」

「『違いない……ま、元気そうでなによりだ。それが確認出来たし、よしとしよう』」

「『おや、帰ってしまうのかい?』」

「『君たちが元気ならば、それでいいのさ―――私は月の王。夜闇にささやかな光を灯し、皆を静かに見守る者なれば。これ以上は、出しゃばり過ぎというものさ』」

「『―――行ってしまった、か。相も変わらず、とは君のこともじゃないか、月の王よ……』」

 

区切りの良い所まで演じきる。

そんなボク達を見て、トップロードさんは目を丸くして見るばかり。

 

「―――これで良かった?」

「うん、満足さ。表情や仕草、どれも君の役―――『月の王』らしさが出ていたよ」

「『遍く全てを見守る、心優しき王。しかし、見守り支える事を信条としている為か、周りとの関わりを極力少なくしようとする傾向にある』……やりやすい役にしてくれたデジタルちゃんには感謝しないとね」

 

テイルさんの要望を受けてデジタル君が決めた役は、普段のテイルさんをやや『見守る者』という側面を強く出したような役となった。

そのためテイルさんにとってはとてもやりやすい役だったのだろうね。

 

「――す、凄いですねテイルさん!オペラオーちゃんに引けを取らないくらいに、堂々とした演技でした!!」

「そう、かな?そう言って貰えると嬉しいよ、トップロード」

「やっぱ物覚えの早さ、なんですかね?テイルさんって、そんなにがっつり練習しているわけではないと思いますし……」

「いや、それは違うよ、トップロードさん」

「?」

「そうだな、今までオペと話してきたことの纏めに近い言い方になるんだけど……『身に染みている』、とでも言えばいいかな?デジタルちゃんのおかげで、親和性の高い役になっているのもあるけどね」

 

『身に染みている』、か。

ボクと、ボクの演じる『太陽の王』もそうだが、普段の立ち振る舞いと大きく変わらない役を演じるのなら、普段の自分をベースに出来る分、やりやすいというのは確かにある。

 

「―――そうだね。やはり大事なのは、『自分が演じる役に慣れる事』、さ」

「オペラオーちゃん?」

「テイルさんは『身に染みている』と表現したけれど、ようはそう言える程に役に慣れた、という事さ。『役を演じる』『台詞を覚えて、その通りに言う』というレベルから1歩先に踏み込んでいるのさ、テイルさんは」

「私がやっていることの、1歩先……あの、私に、私たちにも教えてください!」

 

教える、と来たか。

ボクのは言わば、歌劇への造詣の深さがあってのモノでもあるし、教えるというのは……

―――いや、出来ることはある、か。テイルさんにも協力して貰えば、短期間で叩き込む事も可能じゃないか?

 

「―――そうだね、出来る範囲で教えようじゃないか!ではトップロードさん、他の皆の予定が合う日を調整して貰ってもいいかな?ボクはテイルさんと詳細を詰める事にするよ!」

「はい!すぐ確認してきます!!」

「行ってらっしゃーい」

 

 

 

「―――という訳で、合宿です!」

「うーんこの行動力」

「流石、と言うしか無いね!提案から実施まで即行だ!」

「劇は団結力も大事じゃないですか!練習も作業もみんなでやれば捗りますし、良いことずくめです!!」

 

―――トップロードさんから教えを請われたあの日から少しして。

まさか週末に合宿をしよう、と提案してくるとは!

流石に予想外だった、が……好都合!

 

「という事で、オペラオーちゃん。私たちに演技指導をお願いします!」

「もちろん、やらせてもらうとも……とりあえず、皆の実力を確認させてもらえるかな?1人ずつ順に、ボクが指定した場面を軽く演じてもらうとしよう」

 

まず、全体の確認をする。

テイルさんは以前確認した通り。今からでも劇に出られそうなほどの完成度、文句なしだね。

強いて言うなら後は仕草や表情といった細かな部分のブラッシュアップ、だろう。

 

トップロードさんは中々のモノだが、所々に台詞や仕草などを覚えきれていないのか迷いが見受けられる。

あと、素が出やすいようにも感じるね。

そこらへんの改善がトップロードさんは必要、と。

 

アヤベさんは……うん、台詞とかは問題ないかな。

ただ、どうしても本人のやる気等、言ってしまえば『劇に対する姿勢』が、他の人と比べると……といった具合かな?

 

ドトウは……聞いていた通り、台詞を覚える事と、噛まずに言う事、だね……

うろ覚えだったり、台詞を噛んでしまい、テンパってミスが連続してしまう……あれ、いつものドトウなのでは?

 

全員の実力を確認し、一度みんなで集まる。

 

「オーケーオーケー、皆の実力は理解したよ。そのうえで、やるべき事は事前にテイルさんと擦り合わせしていた通りだ、という確信も持った。そのためには……デジタル君、衣装はもう出来ているんだったかな?」

「えっと、太陽の王の衣装はまだですが、他の王の衣装は、もう着用出来ます!」

「よし、じゃあ合宿所へ行こう!」

 

ボクの演じる『太陽の王』の衣装については、ボクのこだわりを詰め込んだ衣装になっている為、作製に時間を要しているらしい。残念だ……

そんなことを思いながらも、合宿所へと向かう。

そして、皆には衣装に着替えてもらう。

 

「わぁ……アヤベさんのドレス、パークの衣装と同じですね!」

「本当、すごい再現度ね……あ、ウエストの飾り……お揃い、なのね」

「それはですね、氷の王がサンタの王への感謝の印として贈った、という設定なんです!月の王と共に作成して贈ったという設定でしてぇ……グフ、グフフ……」

「そんな設定が……!アヤベさんとテイルさんが作ってくれた……あ、氷の王と月の王、でしたね!」

 

アヤベさんの衣装は、パークで着たあのドレスそっくりのモノに、ウエストの飾りを追加したものだ。

青、黄、桃色の三色の飾りが目立つ、その周りに黒い飾り紐が付いた、そういう飾りだ。

デジタル君のセンスが際立つね!

 

トップロードさんは『サンタの王』、サンタらしく暖かそうな、それでいて『王』らしさがある衣装だ。

デジタル君の設定のとおり、アヤベさんの付けている飾りとお揃いのモノが付いている。

 

ドトウは……ハロウィンで見た衣装だろうか、似合っているじゃないか。

黒を基調とした『闇の王』らしさのある衣装で、カボチャを被っている。

 

うんうん、と頷きながら、ポケットの中で携帯を弄り、メッセージを送る。

『入って』、それだけのメッセージだ。

この場に居ない『彼女』へ向けてのメッセージ。

 

「―――遅くなって申し訳ない、麗しき王達よ」

 

そんな台詞と共に、テイルさんが入ってくる。

―――テイルさんの勝負服は、キッチリとした燕尾服。

だが、今回の衣装は全く違う。

『退廃的』、と言えばいいのだろうか……少しボロボロな、黒を基調としたゴシックドレスだ。

ゴスロリではなく、ゴシックスタイルというあたり、テイルさんの最後の抵抗が成功したようだね。

テイルさん、なんとか制服もスカートじゃなくパンツスタイルに出来ないか直訴するレベルでスカートに抵抗があるみたいだからね……

アヤベさんの『絶対に似合うから、こっちのゴシックロリータ風のを』という強烈な押しを跳ねのけて、ゴシックドレスを選択出来たみたいだ。

 

「―――――綺麗」

「お褒めの言葉ありがとう、氷の王……サンタの王も、実に『らしい』衣装を得たと見える」

「え、あ、はい!」

「闇の王、君は―――カボチャの王、だったのかな?」

「や、闇の王であってますぅ!」

「これは失敬、非礼を詫びよう……太陽の王、待たせてしまって済まないね」

「いや、良いとも」

 

何処か、いつもと違う。きっと、皆がそう感じただろう。

それは、正しい。

今の彼女は―――『月の王』だ。

 

「―――皆には、今のテイルさんを目指して貰うよ」

「今のテイルさん?」

「今の台詞も、仕草も、全てが台本も無いアドリブだが……実に、『月の王らしさ』があるだろう?」

「……役を完全に理解し、自分のモノにする。そういう事ね」

「言ってしまえば、そういう事だね!」

 

そう、テイルさんが『らしさ』を出せるのは、役を完璧に身に着けているからだ。

だからこそ、『月の王ならこういう台詞を言う、こういう仕草をする』というのが分かっている。

そうなるまでに役を理解してしまえば、台詞を噛んだりすることもなくなるだろう。

 

「今回の劇は、ボク達が演じ、1つの作品を作り上げる事にこそ意味がある……ボク達が、『劇中の王』となり、心を込めて演じるんだ。そのためにも、役に馴染み、自分のモノにする必要がある」

「そのためにも、今日は1日、自分の演じる『王』になり切ってもらおう、って事なんだ。オペはそこらへんしっかり出来るし、私もそれなりに出来るつもりだから、全体の手伝いに回るよ」

 

ボクとテイルさんが手伝いに回る、というのを先に周知しておく。

デジタル君の手伝いに回る可能性もある、と先に伝えておかないと、アヤベさんのやる気にかかわるからね。

―――こうして、ボク達の合宿が始まった、訳だが……

 

「アヤベさ―――あ、こ、氷の王!」

「オペラオーさん、あの……あ、えっと、その、たたた太陽の王!」

 

まず、『なり切る』という段階。

ここで躓きがちなのがトップロードさんとドトウ。

どうしても『素』が出てきてしまうことがアヤベさんよりも多い印象だ。

 

「テイルは今はデジタルさんの手伝い中、ね……」

「おやおやアヤベさん?『氷の王』が剝がれているよ?」

「ッ……太陽の王、何か?」

「うん、それで良し!」

 

アヤベさんについては、やはりモチベーションをテイルさんに依存している部分が大きいかな?

テイルさんが居ない場面では、居る場面と比べちょっとやる気に欠ける印象。

そんなテイルさんは、というと……

 

「作家様、こちらを確認頂きたく」

「拝見致します……ふむ、ふむ……ここと、ここ。この2か所だけ手直しして頂けますか?」

「畏まりました。どのような手直しを?」

「台詞については問題無いんですけれど、ここの描写がですね……」

 

どうやら、デジタル君の手伝いをうまくやっているようだね。

……会話の内容からして、同人誌の作画をしているのかい?いくら多芸とはいえ、そこまでとは……

 

「では、ここは……こうで、どうでしょう?」

「あ、良いですね!あまり詳細に描写しすぎても『くどい』と感じられるかもしれませんから、ちょっと崩した方が良いと思います!!」

「畏まりました、今後もその方針で書きますね」

「いやぁ本当に助かります、会場に来て下さった同志の為に作る特典小説を担当してくださるとは……これでオペラオーさんの衣装作成の方に集中して取り組めます!」

「いえいえ、むしろ貴重な体験をさせて頂ける事、感謝致します」

 

な、なるほど、特典小説を作ることまでデジタル君は考えていたのか。

それで、文章の打ち込みなら問題なく出来るテイルさんがそっちを担当している、と……

……いや、作画よりはまだ、というだけで充分凄い事には変わりないんだけどね?

 

そんな具合に、概ね予想通りに合宿は進んでいく。

時にはボクがデジタル君の方を手伝い、テイルさんが劇の練習を手伝う場面もある。

が、その際にボクはテイルさんの心配は一切していない。

流石にボクの方が『劇』というモノに対する理解が深い自信があるし、事実そうだろうとは思う。

けれど、テイルさんにはテイルさんの長所というものもある。

 

「サンタの王、今のシーンですが……」

「テイ―――つ、月の王っ!何か問題があったでしょうか?」

「概ね問題はありませんが、少しだけ振る舞いがぎこちない様に見えましたので」

「実は、まだ『王』らしい振る舞いが思い浮かばなくて……」

「難しい問題ではありますが……少しばかり大袈裟な仕草の方が、『らしさ』は出るかと。例えばこう……」

「ふむ、ふむ」

 

相手に分かりやすく伝える力、という点ではボクより優れている。

ボクが劇に関する考え方などを教え、その実践をテイルさんがする、そういった流れが出来ていた。

分かりやすい例をテイルさんが見せてくれるからだろう、皆、段々と演技力が磨かれているのが分かる。

テイルさんがデジタル君の同人活動に協力している分、デジタル君の憂いが無くなり衣装作成も急ピッチで進められていく……午後には完成しそうだね!一安心!!

 

そうして、昼休憩を挟みながら午後の練習も進み……ボクの衣装も、無事完成した。

これで全員の衣装も揃い、ある程度の改善点も克服出来た。

となれば……個々人の練習ではなく、複数人でのシーン練習に入るとしよう。

 

 

 

 

 

お昼を食べて、午後からは複数人でのシーン練習、という事に。

オペラオーちゃんの衣装も出来ましたし、私たち『改善点あり組』も少しずつ良くなってきているので、演じる中で学んでいこう、という話になりました。

元々堂々とした立ち振る舞いに慣れているオペラオーちゃんに、演じる役の理解度が高くて『らしい』振る舞いが出来ているテイルさん、この2人の演技から学びながら、私たちも練習を繰り返す。

そうして、劇の序盤のシーンから始まった練習も、クライマックスへと近づいていく。

 

今から演じるのは、オペラオーちゃんと私がキーとなる。

オペラオーちゃん……『太陽の王』と、私が演じる『サンタの王』。

サンタの王がそれぞれの王の手紙とプレゼントを預かり、太陽の王へと渡すシーンだ。

 

「―――こんにちは、ご機嫌いかがですか?太陽の王。各国の王から、手紙の返事と……こちらを、どうぞ」

「おぉ、来たか!心待ちにしていたぞ!……む?これらの品は……?」

「以前、太陽の王が他国の名産に興味を示されていたでしょう?王達と選びました―――私たちからあなたへ、プレゼントです!」

「プレゼント……!贈り物に心躍らせたのは、いつぶりだろうか……あぁ、例え中身が石ころであろうと、我が心は歓喜に満ちている!!」

 

よし、ここまでは大丈夫。台詞もばっちり、振る舞いも問題ないと思います!

ここからは確か―――

 

「―――偉大なる王となり、名誉も繁栄も手に入れたが……同時に、人を遠ざけた。長き時を、1人、この王宮で過ごしてきた……孤独と共に」

 

―――あれ?

オペラオーちゃんの台詞が、台本とは違う……!?

 

「だが今は、同じく孤高なる王達と繋がっている!信念は相容れずとも、国境で分かれようとも……繋がっているのだ!―――サンタの王よ、君のおかげで我々は繋がり、無二の絆を築くことがで出来た。我が威光に怯むことなく、常に対等に向き合い続けてくれた」

「この王の、最も長き、朋友―――――永遠の友よ!!」

 

『今回の劇は、ボク達が演じ、1つの作品を作り上げる事にこそ意味がある……ボク達が、『劇中の王』となり、心を込めて演じるんだ』

 

―――そう、今回の劇は、私たちが、私たち自身が『王』となり、演じる。

今のオペラオーちゃんは……目の前の、『太陽の王』の言葉は。

台本には存在しない、アドリブの、今の言葉は―――

 

「ぁ……」

 

『太陽の王』の、心からの言葉に、応えたいのに……上手く、言葉に出来ない!

伝えたいことはたくさんあるのに……!

そう悩んでいると、近づく足音が聞こえてくる。

 

「―――ゆっくり、そのまま、伝えればいいわ」

「あ、アヤベ、さん……」

「きっと……届くから」

 

『氷の王』―――アヤベさんの言葉に、後押しされて。

私は、『太陽の王』に向き合う。

 

「―――私こそ。気高き王としてではなく、出会った頃のまま、そのままのあなたで居てくれて……私が雪に捕らわれ、身動き出来なくなっても……行くのが、遅れても……その威光を曇らせることなく、立ち続けてくれて……待っていてくれて。私を迎える不敵な笑顔は、私にとって、至福の喜び!!」

「―――太陽の王よ。これからも、末永く、友でいてください!!」

「―――あぁ!」

 

―――伝えられた。

『サンタの王』としても、『ナリタトップロード』としても、どちらと捉えられても良い。

いや、『どちらでもある』。

今の私は確信している。

今の言葉は、私の中で、私と『サンタの王』がぴったりと嚙み合った、そういう言葉だった、って!

 

私の言葉に、満足してくれたのだろうか。

笑顔の『太陽の王』が、視線をスッと私の隣、アヤベさん……じゃなくって、『氷の王』に向ける。

 

「……ところで、氷の王。どうしてあなたが、ここに居るのだろう?」

「っ!?……それは………太陽の王を、見に来た。手紙を寄越した王の、人となりが気になって……あなたも、そうでしょう?」

「えっ!?あっ、はい!私は、闇のものの国から来た!」

 

アヤベさんの言葉で、ドトウちゃんも現れて。

残すは―――あと、1人。

 

「―――あぁ、数多の国の王たちが、こうして揃う日が来るとは」

「……月の王。貴方にも来ていただけるなんて、ね」

「……太陽の王。貴方の言葉が、貴方の威光が、私を照らし、表舞台に上がる決意をさせてくれたのです」

 

スッと、静かに私たちの隣をすり抜けるようにして。

太陽の王の前へと進み、片膝をつく。

そして、太陽の王の手を取った。

 

「―――感謝を、太陽の王」

 

『月の王』が、『太陽の王』の指先に、口づけをする。

―――練習している部屋の隅から声にならない悲鳴が聞こえたのは、意図的に無視する。

―――どこか遠くを見ながら、満足げな笑みを浮かべているオペラオーちゃんも、意図的に無視する。

 

 

「―――――――――クロ?」

 

 

―――何故なら。

私のすぐ隣で、『役』が完全に剥がれ落ちたアヤベさんが、その背に般若の顔がうっすら見えるような怒気を発しているから―――!!!

 

「あ、アヤベ、さん……ど、どうか冷静に、冷静に!」

「お、おおお落ち着いてくださぁい……!」

「これが、冷静で居られるわけがないじゃない……!」

「……あれぇ?」

「フフッ、フフフッ……!あぁ、最高だよ、我が愛しき王達―――我が愛しき、【『友』達】よ……!!!」

 

 

 

 

その後、なんとかラストシーンまで無事に練習を終えて、合宿は終わって。

そして迎えた、クリスマス当日。

 

「いよいよですね……アヤベさん、手を!」

「もう……あなた、こういうの、好きよね……テイル、貴方もほら」

「じゃあ、お言葉に甘えて。オペ、手を繋いでも?」

「もちろん!!!ほらドトウ、こっちにおいで!」

「で、ではお隣失礼しますぅ……」

「ほ、ほあぁぁぁぁ……!!ど、どど、同期で手つなぎ、エモ過ぎか……!」

「デジタルちゃんもほら、そんな隅っこに居ないで!みんなで輪になりましょう!」

 

私の右にアヤベさん、その右にテイルさん、オペラオーちゃん、ドトウちゃん、そしてデジタルちゃん。

みんなで手を繋いで、輪になる。

 

「うぅ、あうぅ……き、ききき、緊張しますぅ……し、失敗したら、すみません~……」

「はっはっはっ!予期せぬトラブル、良いじゃないか!!それで展開が変わるのも、生の舞台の醍醐味というモノさ!!」

「ちょっと、嫌な予感がするのだけれど……合宿の練習みたいなアドリブは勘弁して。あれは正式に脚本として採用されたけれども、これ以上はご免よ」

「大丈夫ですよ、アヤベさん。練習では、どんなアドリブにもみんなで対応出来たじゃないですか!」

「みんながみんな、役に馴染んだ今なら大丈夫だよ、きっとね」

「どんなアドリブ展開が来ようとも、このアグネスデジタル、完璧に対応してみせます……!」

「こ、心強いですぅ……!」

 

皆が皆、それぞれ『らしい』笑顔で。

 

「そもそもボクらが交わる事が、悲劇と喜劇をぶつけるようなもの……予定調和は、ボクたちらしくない!!」

「―――さぁ!アリアドネとツェルビネッタのように!!ボクらの大団円を、見せようじゃないか!!!」

 

―――幕が、上がった。




次回からは競走馬編に戻ります。
書きたいネタは無限に思いつくのに時間と気力と体力が追い付かない……!
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