黒き馬、世紀末を駆ける 作:馬券童貞は東京優駿に捧げた男
今回はブラックテイルのとあるレースを掲示板視点、そしてもう1つの視点で。
ウマ娘編でのナリタトップロードの描写を各話修正致しました。
君も早く育成実装されてね……天井してでもお迎えしますので……
【今年は】クラシック戦線を追いかけようPart○○【どうなる】
1:名無しの後方彼氏面
前スレが埋まったから新しく立てておいた
今日の注目レースはスプリングステークスだったか
2:名無しの後方彼氏面
立て乙
そうそう、芝1800m、皐月賞の優先出走権もかかったGⅡレース
3:名無しの後方彼氏面
ちょっと前にやった弥生賞の方は大盛り上がりだったな
4:名無しの後方彼氏面
あっちはナリタトップロードとアドマイヤベガの2人がぶつかり合ったからな
5:名無しの後方彼氏面
今年のクラシック路線で注目の2人だからな、そりゃ盛り上がる
6:名無しの後方彼氏面
スプリングステークスは誰が注目なんだ?俺はオースミブライト期待してるんだが
7:名無しの後方彼氏面
芝もダートも走れてるモンテカルロって子が1番人気だよ
今日の天気が酷過ぎるから、不良バ場になるだろうからね
8:名無しの後方彼氏面
あー……雨酷いもんな
9:名無しの後方彼氏面
こういう雨の中も走るって、ウマ娘って凄いよな
10:名無しの後方彼氏面
雨の中と言えばタイキシャトルしか思い出せん
11:名無しの後方彼氏面
安田記念か……アレは凄かった
12:名無しの後方彼氏面
1人だけ芝走ってるような走りしてたもんな
13:名無しの後方彼氏面
うんアレは凄いよ
バルンバルンしてた
14:名無しの後方彼氏面
おい おい
15:名無しの後方彼氏面
タイキシャトルのアレは……どうしても目に入るからさ……
16:名無しの後方彼氏面
しゃーないんや、許してくれ
17:名無しの後方彼氏面
許すよ 俺もあのレース生で見てたから
18:名無しの後方彼氏面
それはさておき、この雨の中どんなレースになるかな
19:名無しの後方彼氏面
いやーどうなるかね
158:名無しの後方彼氏面
メインレース、スプリングステークスのお時間だ!
159:名無しの後方彼氏面
1番人気のモンテカルロちゃん推しワイ、流石にこの大雨に不安を隠せない
160:名無しの後方彼氏面
バ場状態は不良、ドロッドロやね
161:名無しの後方彼氏面
これはひでぇな
162:名無しの後方彼氏面
パドック始まったけど、最初の子不安そうだったな
163:名無しの後方彼氏面
そらそうだろ、この雨と不良バ場だぞ?
どれだけ体力持ってかれるのやら
164:名無しの後方彼氏面
でも、今パドック出てる子は自信ありそうだな
165:名無しの後方彼氏面
お、モンテカルロちゃんだ!
自信ありそうで嬉しい
166:名無しの後方彼氏面
ダートで2回勝ってて、芝も3着、なるほど確かに
167:名無しの後方彼氏面
こりゃ決まったか?
168:名無しの後方彼氏面
いや、モンテカルロの次の子、凄い落ち着いてる
この子もいけるんじゃない?
169:名無しの後方彼氏面
ホープフルでアドマイヤベガとハナ差の接戦してた子じゃん
170:名無しの後方彼氏面
ブラックテイル、チームアルタイルのリーダーか
171:名無しの後方彼氏面
ここまで落ち着いてると逆に怖いな
172:名無しの後方彼氏面
そうか?俺は頼もしいって感じるが
173:名無しの後方彼氏面
すっげぇ集中してるのがテレビの画面越しで分かるって凄いな
174:名無しの後方彼氏面
推しは違う子だが、この子のレースは気になるな
175:名無しの後方彼氏面
逃げも先行も出来て、いつも落ち着いてレースに挑んでる
なんていうか、シニアどころかドリームトロフィーの子達を見てるような安心感すら感じるわ
176:名無しの後方彼氏面
安心して見る事が出来るっていうのは同意
177:名無しの後方彼氏面
でも、この雨、このバ場だからなぁ……
178:名無しの後方彼氏面
さてさて、どうなるかな
179:名無しの後方彼氏面
さぁスタート!!
180:名無しの後方彼氏面
青毛の子がスッと前に出たな
181:名無しの後方彼氏面
ブラックテイル先頭、後ろに2人付いて行ってるな
182:名無しの後方彼氏面
うわ、加速して直ぐに離されてる
183:名無しの後方彼氏面
飛ばすなぁ、掛かってるのか?
184:名無しの後方彼氏面
掛かってるのかもしれない
いくらなんでもこの天気でそのペースは自殺行為じゃね?
185:名無しの後方彼氏面
とりあえず2バ身離して先頭ブラックテイル、あとは割と縦長
186:名無しの後方彼氏面
黒い髪が濡れて綺麗だなぁ
187:名無しの後方彼氏面
3コーナー入ったけど、なんか更に離れてない?
188:名無しの後方彼氏面
やっぱ掛かってる?
189:名無しの後方彼氏面
これ最後まで持たないだろ
190:名無しの後方彼氏面
え
191:名無しの後方彼氏面
は?
192:名無しの後方彼氏面
おいおいおいおいおい
193:名無しの後方彼氏面
待て待てそこからさらに加速はおかしい
194:名無しの後方彼氏面
1人旅ってレベルじゃねーぞ!?
195:名無しの後方彼氏面
196:名無しの後方彼氏面
197:名無しの後方彼氏面
198:名無しの後方彼氏面
7バ身ってなんだよ
「あぁ、アヤベさん!貴方もやっぱり来たんですね!」
「トップロードさん……目的は、一緒よね」
「えぇ、きっと。ご一緒しても良いですか?」
「良いわよ」
雨降る中山レース場の、とある一角。
パドックを眺めていたら、見知ったウマ娘から、声をかけられた。
つい先日、弥生賞で鎬を削った相手。
しかし、今この場では、私達はライバルではなく、共通の目的をもったクラスメイトでしかない。
「にしても、酷い雨ですね。レースも大変になりそうです」
「そうね」
「パドックに現れる子、みんな不安そうですね……あ、今出てる子は、問題なさそうですね」
「テイルが警戒してたのは、あの子みたい。ダート1着、芝でも3着と好成績だって」
「なるほど、それは凄いですね!」
モンテカルロ、というウマ娘のパドックを見ながら、2人で話す。
芝、ダート、どちらでも好成績を収めているというその子は、自信満々、といった表情でパドックに現れた。
観客の期待も高まり、競争成績も合わせ、スプリングステークスの1番人気だという。
「テイルさんは、次ですか?」
「えぇ」
「……アヤベさんは、不安だったりしますか?今日のこのバ場、この天気ですから……」
「―――不安も、心配も、何も無いわ」
トップロードさんの言葉を、否定する。
彼女の言葉の真意は、1つ。
【クロが負ける可能性】、それについて。
「レースを見れば、分かるわ。今日の1着は、間違いなくテイルよ」
「私もそう信じたいですけれど……」
「―――嗚呼、そこに居るのは僕の
―――面倒なのに見つかった。
心の中で悪態を吐き、しかし実際に口には出さず。
それでも、面倒な事に変わらないので、溜息を吐きながらそっちを見る。
予想通りの人物と、もう1人、これも予想通りの人がそこには居た。
「こ、こんばんはですぅ……アヤベさん達も、やっぱこのレースを見に?」
「えぇ、そうなんです!……と言っても、アヤベさんと合流出来たのは偶然ですが」
「否!!こうして同じ時期にデビュー出来た僕たちにとって、ここに集まったのは偶然などでは無いさ!必然、いわば運命!!!」
「周りの迷惑になるから静かにしなさい……」
オペラオーを嗜めつつ、パドックを見る。
視線の先、漆黒の髪を靡かせたウマ娘が歩いて来るのを見る。
何処までも落ち着いていて、穏やかな笑みを浮かべるその人。
彼女の走りを見届ける。それが、今日の目的だ。
「堂々たる佇まい、流石は僕達の好敵手、ブラックテイルだね」
「まぁ、当然でしょうね。テイルにとっては、このバ場は好都合だもの」
「そ、それってどういう事ですかぁ……?」
「そう言えば、貴方達は初めて見るのね、テイルの重バ場や不良バ場での走りは……見れば、分かるわ」
「それはとても楽しみですね!」
これ以上語る事はない。
百聞は一見に如かず。全ては、見て貰った方が早い。
そう判断し、パドックに背を向けて移動する。
観客席の最前列に移動したいからだ。
3人が付いて来るので、特に何も言わずそのままにさせる。
私が一緒に居るのを承諾したのは、トップロードさんだけなのだけど……指摘するのも面倒なので、取りあえず気にしない事にする。
変にうるさく無ければ、それで良い。
「今日みたいなバ場が好都合……どういう事なんでしょう……?」
「恐らくこうであろう、と言うのは予想出来るけどね」
「そうですね。テイルさんとは何度も併走させて貰いましたから、なんとなくは」
「私、あんまり走った事はなくって……」
「まぁ、そうね。トップロードさんとオペラオーの2人は、何度かテイルと併走してるものね……」
話しながらたどり着いたのは、観客席最前列。
クラシック戦線、皐月賞のトライアルレースという事もあり、それなり以上に人は居る。
ただ、ウマ娘が観客席に居ると、敵情視察だったり友人の応援だったりするのだろうと思ってくれるのか、そっと最前列を空けてくれる人はそれなりにいる。
今回もそう言う人たちに恵まれたので、最前列に問題なく入る事が出来た。
「もうすぐ出走ですね!」
「テイルさんの走り……今日は先行か逃げか、どっちなんでしょうね」
「どちらも一級品、故にまずそこから相手に読み合いを強要出来る……テイルの強みよね」
クロの脚質は、先行と逃げ。
どちらも同じ位に得意としていて、だからこそどっちで来るかで読み合いを押し付けられる。
……でもまぁ、今日のこの天気、そしてクロの考え方なんかから考えれば、たぶん……
「逃げ、だと思うわ」
「アヤベさんの予想は、逃げ、と」
「えぇ……何度も言うけれど、今日のバ場はテイルにとって好都合だもの。それを考えれば、きっと逃げの作戦を取るはずよ」
クロの今日の走りについて、たぶんこうだろうと考える。
彼女の脚、その特性を考えれば、きっと今日は逃げる。
コースの方を見れば、相も変わらず、レースを走る相手と穏やかに会話するクロの姿が見える。
……私自身もそうだけど、クロとレース前に話をするととても落ち着く、という同期は多い。
きっと、今クロと話をしている子達も、そうだろう。
ゲートインのほんの少し前まで、数人のウマ娘達と会話をして。
でも、自分の番が来ると、すんなりとゲートに入っていく。
ゲートの中でも、彼女は落ち着いたまま、ただ静かにゲートが開くのを待つ。
『雨降る中山レース場、バ場状態は不良、との発表です。これより本日のメインレース、スプリングステークスが始まります』
『1番人気はモンテカルロ。芝、ダート問わない走りが持ち味です』
『2番人気にはホープフルステークス2着のブラックテイル。今日の走りは逃げか、先行か?』
『3番人気はオースミブライト。芝2000mで1着を取っている実力者です』
『勝利を、クラシック戦線への切符を手にするのは、どのウマ娘になるか!各ウマ娘、ゲートイン、体勢完了―――スタートです!!!』
ゲートが開くと同時、スルリと抜け出していく1人のウマ娘。
濡羽色、とでも言うべきか。
漆黒の髪が、雨で艶めいて、より綺麗に目立つ。
そんな彼女が、予想通りに先頭に立つ。
スタートの良さ、それがクロの強みの1つ。
『さぁ先頭に立ったのはブラックテイル!ブラックテイルがまず先頭を奪いました!!今日は逃げを打つようです!!後方にはワンダーファング、ゴルデンコークと続いてこの3人が先頭を形成しています!!』
後ろに2人、続いている。
そんな2人を一瞥もせず、クロが加速する。
クロの脚に付いて行けず、2バ身程差をつけられていく。
「テイルさん、本当に逃げを打ちましたね」
「あ、あのぉ、テイルさんの強み、って……」
「―――踏み込みの強さ、そうだろう、アヤベさん?」
「……えぇ、そう」
「ふ、踏み込みの、強さ……」
オペラオーに話を振られたので、答える。
「テイルは、末脚ではなくて、踏み込みの強さとしての脚力がとても強い。荒れたバ場だろうと、ぬかるんだバ場だろうと、しっかりと地面を捉え、確実に前に進む事が出来る……その気になれば、多分ダートでも」
「テイルさんは重バ場、不良バ場であっても脚が殆ど遅くならないんです。私達が走りにくく思っていても、彼女にとっては良バ場とそこまで変わらない」
「僕達にとって悪影響でも、彼女には影響が無いのさ。つまり、その分勝手に差が生じる……重バ場、不良バ場が好都合というのは、そういう事なのさ、ドトウ」
「な、なるほどぉ……」
そう、クロの脚は……彼女の言葉を借りるなら、『走破力』に長けている。
その力強い踏み込みは、バ場状態を無視して走る事が出来る。
バ場の不利を受け付けない、それが彼女の強み。
『第3コーナー入って、ブラックテイル先頭は変わらず、後続はタイクラッシャーが近づいて来ているが、2番手ワンダーファングとブラックテイルの差がおよそ3バ身!!先ほどから恐ろしい事に、差が縮まらないどころか段々と開き始めています!!!』
「周りがどんどん疲れていく中で、1人だけ良バ場と変わらない走りが出来るとなると、どうなるか。その答えがコレだよ、ドトウ」
「す、凄い……周りが沈んでいく中で、どんどんテイルさんだけ……!」
「―――いえ、まだよ」
「アヤベさん?」
クロは、この程度で終わるウマ娘では無い。
それを、私は知っている。
視線の先、クロの雰囲気が、変わった。
―――地面が、爆ぜた。
『―――加速した!?ブラックテイル加速!!ブラックテイル加速!!このバ場で、この雨で!!あれだけ走ってまだ余力があるのかブラックテイル!?今単独で最終直線に入りました!!!』
観客が、どよめく。
このバ場で、周りと3バ身離す程に飛ばしていて。
そこから更に、加速したのだから。
「えっ……えぇっ!?」
「これは、凄い……凄く凄いですよ、これは!!」
「これが、僕達の競い合う相手の、全力―――嗚呼、なんて素晴らしいッ!!!」
まさしく1人旅。
誰も、彼女に付いて行けない。
競り合いすらなく、余計な消耗は一切無くて。
ぬかるむ地面も、雨で重くなった芝も、彼女の走りの妨げになり得ない。
『4バ身!!5バ身!!まだ広がる!!まだ広がる!!!』
―――嗚呼、なんて楽しそうな顔をするのだろう。
私の前を走っていく、その時に見えた獰猛な笑みに、ゾクリと震える。
そのまま単独で、クロがゴール板の前を駆け抜けた。
『今、独走でゴールイン!!!なんと7バ身!!7バ身という圧倒的な差をつけての圧勝です!!我々に、信じられないような光景を見せつけてくれましたブラックテイル!!!』
「―――貴方を、必ず捉えてみせるわ」
掲示板に見える、2着との差を示す『7』の表示。
圧倒的な実力差を、見せつけてくれた、私の大切な人。
それを見ながら言った私の呟きは、割れるような歓声の中に消えていった。
大雨、不良バ場で7バ身差の圧勝を叩き出したスプリングステークスでした。
アプリウマ娘にてとてつもないイベントが来てしまい、心の中のデジたんが何度も昇天しておりました。
ちょっと書きたい事も出来てしまったので、本編よりも先にそちらを書こうと思っております。