黒き馬、世紀末を駆ける 作:馬券童貞は東京優駿に捧げた男
これもすべてポケモンが悪い(言い訳
今回はウマ娘編でのダービー後となります。
【今年は】クラシック戦線を追いかけようPart○○【どうなる】
1:名無しの後方彼氏面
スレ落ちそうだったから立てておく
2:名無しの後方彼氏面
感謝
3:名無しの後方彼氏面
先読み謝謝
4:名無しの後方彼氏面
ありがとナス!
5:名無しの後方彼氏面
出来る>>1だ、褒めてやる
6:名無しの後方彼氏面
いやぁ、スレの加速具合やばかったわ
7:名無しの後方彼氏面
そら(URA史上初のGⅠ1着同着判定なんて起きたら)そうよ
8:名無しの後方彼氏面
1ハロンに及ぶデッドヒート繰り広げられるじゃん?
片方倒れかけてもう片方がギュッと抱き留めるなんて光景が繰り広げられるじゃん?
1着同着なんて判定が出るじゃん?
互いにそっと手を握って空いてる手で観客席に手を振ってくれるじゃん?
興奮するなって言われても無理じゃん…
9:名無しの後方彼氏面
分かる
10:名無しの後方彼氏面
分かる
11:名無しの後方彼氏面
分かるマン
12:名無しの後方彼氏面
ワイトもそう思います
13:名無しの後方彼氏面
熱いレースへの興奮なのか百合への興奮なのかもうわっかんねぇなオイ
14:名無しの後方彼氏面
どっちもだゾ
15:名無しの後方彼氏面
正直に言うとレース3百合7くらいで興奮した
16:名無しの後方彼氏面
お前……お前……
17:名無しの後方彼氏面
否定しきれん
18:名無しの後方彼氏面
まぁ、ね
あの2人はお互いがお互いを特別視してるのはほぼ確でしょ
19:名無しの後方彼氏面
ただの同期、ただの友達の関係じゃなさそうなのはマジ
20:名無しの後方彼氏面
百合の波動を感じたよ
違ったら大欅の下に埋めてくれて構わんよ
21:名無しの後方彼氏面
一定以上の好意を抱いてるのは確実でしょ
22:名無しの後方彼氏面
>>20 言質取ったぞ
23:名無しの後方彼氏面
勝利インタビュー始まるぞお前ら
24:名無しの後方彼氏面
待ってた
25:名無しの後方彼氏面
オレハマッテタゼ
26:名無しの後方彼氏面
動画見れない仕事民の為に文字起こし頼む!!!!!!!
27:名無しの後方彼氏面
ワイに任せとけ
聞きながらメモ取ったり打ち込んだりはお手の物や
28:名無しの後方彼氏面
本職おったわ
29:名無しの後方彼氏面
頼むわ!
30:書き起こし担当
「勝利インタビューですが、本日のメインレース、日本ダービーを勝利しました、チーム『ベガ』のチームリーダーであるアドマイヤベガさん、そしてチーム『アルタイル』のチームリーダーであるブラックテイルさんにインタビューをさせて頂きたいと思います」
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします。先にアドマイヤベガさんの方へ、どうぞ」
「良いの?」
「うん、先にどうぞ」
31:名無しの後方彼氏面
うわタイピング早
32:名無しの後方彼氏面
数秒遅れで書き込まれてて芝
33:書き起こし担当
「それでは、アドマイヤベガさんにインタビューさせて頂きます。まず、本日はレース1着、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「本日のご自身の走りを振り返って、どう思われますか」
「そう、ですね。仕上がりは、万全であったと思っていますし…仕掛けるタイミングも、間違えてなかった、そう思っています。少し言い方はアレですが、最善の判断を出来た、そう思っています」
34:名無しの後方彼氏面
あそこから追い付けるの凄いよな
35:書き起こし担当
「本日、レースは同着との判定でした。アドマイヤベガさんから見て、ブラックテイルさんはどう思われていましたか?」
「……彼女の仕上がりは、素晴らしいモノだと感じていました。他の方には悪いとは思っていますが、今日の最大の敵は、彼女だと、そう思っていました」
「なるほど。事実、結果としてレースは1着同着でありました」
「はい。第3コーナーでの抜け出し、あそこでの反応に遅れていたら、追い付けなかったと思っています。一瞬でも油断していたら、負けていた……そう、思っています」
「ありがとうございます。それでは一度ブラックテイルさんへのインタビューに移らせて頂きます」
「はい」
36:名無しの後方彼氏面
やっぱ意識してたんだね
37:名無しの後方彼氏面
第3コーナーで仕掛けてそのまま逃げ切られる寸前だったしな…
38:書き起こし担当
「ブラックテイルさん。レース1着、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「ご自身の走りを振り返って、どう思われますか?」
「作戦自体は上手くいった……そう思っていたのですが、えぇ……逃げ切れず捕まってしまいました。そこが悔しいですね」
「なるほど。アドマイヤベガさんの事はどう思われていましたか?」
「そうですね。私から見て、彼女の仕上がりが一番凄いな、と、そう感じていました。末脚勝負になったら確実に来る、そう判断して早めに仕掛けて逃げ切るつもりだったんですが…うーん」
39:名無しの後方彼氏面
作戦は上手くいった(府中2400mを第3コーナーで先行ウマ娘が仕掛けて先頭奪って逃げ切り)
40:名無しの後方彼氏面
第3コーナーからゴールまでってどれくらい?
41:名無しの後方彼氏面
約1000m(白目
42:名無しの後方彼氏面
要約:1kmロングスパート仕掛けてハナ奪えば勝てると思った
43:名無しの後方彼氏面
それで逃げ切り寸前なのヤバイ
44:名無しの後方彼氏面
えっ!?
45:名無しの後方彼氏面
は!?
46:書き起こし担当
「互いに互いを意識していた、という事ですね」
「そうですね」
「え、えぇ、はい」
「そう言えば最後の直線で互いに……」
「あ、ソレなんですが……公然の秘密、という事でお願いします」
「と、言いますと」
「私とアヤ、2人だけで使っていたお互いの呼び名なんです。あの時はつい、こう、昂ってしまって出てしまいましたが……2人だけの、特別なんです」
「なる、ほど。仲がとても良いんですね」
「えぇ、幼馴染ですから」
47:名無しの後方彼氏面
幼馴染!?
48:名無しの後方彼氏面
なん……だと……?
49:名無しの後方彼氏面
50:名無しの後方彼氏面
51:名無しの後方彼氏面
空白書き込んでるヤツいて芝2400
52:書き起こし担当
「幼馴染、ですか?」
「あ、そう言えば一度もこうした場で言った事はありませんでしたね……アヤ、良いかな?」
「えぇ、大丈夫」
「ありがとう……彼女、アヤと私は誕生日が3日違いの同い年でして」
「なるほど」
「家は隣同士で、両親も仲が良くて、同じ病院で生まれまして」
「なる、ほど?」
「幼稚園からずっと一緒に過ごしてきた、そんな間柄なんです」
53:名無しの後方彼氏面
嘘でしょ…
54:名無しの後方彼氏面
もはや姉妹同然じゃん……
55:名無しの後方彼氏面
ほぼほぼ家族
56:書き起こし担当
「それで、昔から呼びあっていたのが、あの時うっかり出た呼び名、なんです」
「なる、ほど……」
「昔から言ってたんです。『一緒のレースを走れたらいいね』、って。ただ、ウマ娘の本格化は個人差がありますから」
「そうですよね……偶然、同じ時期に本格化が来た、と」
「はい。それでこうして同じ時期に、似た距離適性でデビュー出来て、それでダービーにお互い出走出来て、それで1着同着……正直、夢みたいで」
57:名無しの後方彼氏面
だからレース前に顔合わせたりする時間が多かったわけだ
58:名無しの後方彼氏面
1レース1レース、一緒に走れるのが嬉しかったんやな…
59:名無しの後方彼氏面
幼馴染とダービーで競り合いの末1着同着……アニメかなんか???
60:書き起こし担当
「今日、私は……世界一、幸福なウマ娘なのかもしれません」
「……私もよ、テイル」
「アヤ?」
「貴方と……大切な人と、栄誉あるダービーの冠を、一緒に手にする事が出来て……とても、嬉しいの」
「アヤ……」
「貴方は、私にとって、大切な……特別な人だから」
「……うん、そうだね。私にとっても、アヤは特別」
61:名無しの後方彼氏面
あら^~
62:名無しの後方彼氏面
あら^~
63:名無しの後方彼氏面
キマシタワー
64:名無しの後方彼氏面
上質な百合の波動を感じる……
65:書き起こし担当
「えっと、その……そう言う事で、私とアヤは、昔から仲の良い間柄、という訳です、はい」
「ッ!あ、あの、その……テイルとは、そういう間柄、です」
「なるほど……ありがとうございます」
66:名無しの後方彼氏面
ありがとうございます……ありがとうございます……
67:名無しの後方彼氏面
感謝しかない
68:名無しの後方彼氏面
画面の前で拝んでたわ
69:名無しの後方彼氏面
しゃーない
70:書き起こし担当
「それでは、最後にですが…相手に対して、何か一言を」
「相手に、ですか……アヤ」
「うん」
「今日は引き分けだったけど……次は、逃げきってみせるから」
「フフッ……テイル、今度は差し切ってみせるわ」
「楽しみに待ってるね」
「私もよ……次は、菊花賞で?それとも、それより前、かしら?」
「内緒」
「……ケチ」
「頬を膨らませても駄目」
71:名無しの後方彼氏面
はー……かわいい
72:名無しの後方彼氏面
天使か?
73:名無しの後方彼氏面
頬を膨らませるアドマイヤベガ、可愛すぎて死ぬ死んだ
74:名無しの後方彼氏面
幼馴染特有の軽いノリ、ってやつなのかね
75:名無しの後方彼氏面
インタビューはこれで終わりか
76:名無しの後方彼氏面
さてウィニングライブはどうなる
77:名無しの後方彼氏面
URA公式サイトだとウィニングライブ開始を遅らせるってアナウンス出てるが
78:名無しの後方彼氏面
まーしゃーない、1着同着のライブって初だしな
79:名無しの後方彼氏面
実際どうなるんだ?
80:名無しの後方彼氏面
こればっかりは分からねぇな…
81:名無しの後方彼氏面
期待不安入り混じってるわ
183:名無しの後方彼氏面
ライブすごかった(こなみ
184:名無しの後方彼氏面
良いモノ見れたわ……
185:名無しの後方彼氏面
何アレ
186:名無しの後方彼氏面
すごかったです(こなみ
187:名無しの後方彼氏面
いやほんと、なにあれ
188:名無しの後方彼氏面
中央トレセンってこういうの想定して練習させてるのかな
189:名無しの後方彼氏面
シンクロしてる、ってああいうのを言うんだろうな
190:名無しの後方彼氏面
>>188 元中央トレセンの生徒だけど、あんなの練習しない
断言出来るけど、あれはライブまでの時間で作ったアドリブ
191:名無しの後方彼氏面
>>190 元とはいえ中央の子がこう言ってるって事はマジでアドリブか…
192:名無しの後方彼氏面
レースからライブまで、延長して生まれた30分の時間でやったって事?
193:名無しの後方彼氏面
ウソ乙 てか中央のウマ娘がこんな場末のスレに居るわけないやろ
194:元トレセン生
>>193 いるんだなぁそれが
ちなみにこれは卒業する時に買い取った私の勝負服
[勝負服、名前等個人を特定される情報を隠した学生証の写真]
195:名無しの後方彼氏面
ガチ勝負服じゃん
196:名無しの後方彼氏面
そういう手作り衣装、って可能性は?
197:名無しの後方彼氏面
本当にウマ娘レースの勝負服なら、URA公認のタグかなんかが付いてる筈
ついてないとレースで着た場合それだけで出走取消にされるってヤツ
198:元トレセン生
正解
因みにこれ、許可なく付けると捕まるからね
[アップで映るURAのロゴ入りのタグ]
199:名無しの後方彼氏面
ってことはガチのトレセン生だったのね
疑ってすまん
200:元トレセン生
まぁ疑うのは分かるよ
中央離れても未練がましくレースを見続けてる、未勝利ウマ娘なんてごまんと居るんだけどね
201:名無しの後方彼氏面
なんか、その、すまん
202:名無しの後方彼氏面
GⅠウマ娘って上澄みも上澄みだし、なんなら1勝するだけでも凄い事なんだよな…
203:元トレセン生
そうなんだよね
未勝利戦、5回走って勝てなくてさ、心が折れちゃったの
でも、やっぱ華々しい舞台が羨ましくて、レースは何時も見ちゃうんだよね
204:名無しの後方彼氏面
流れ変えよう
やっぱセンター2人の特別ライブとか想定してないって事で良いんだよね
205:元トレセン生
うん
Make Debut!だけ、教官に見て貰っての練習だけだったけどさ、やったことないよ2人センターなんて
206:名無しの後方彼氏面
てことはやっぱアドリブなのか……30分で鏡写しのダンス覚えて合わせて、ってやったって事?
207:元トレセン生
間違いないと思う
控えめに言ってヤバいよあの2人
208:名無しの後方彼氏面
アドリブ30分であのシンクロ…
209:名無しの後方彼氏面
幼馴染ってすげー
【悲報】アドマイヤベガ、繋靭帯炎と判明
1:名無しの後方彼氏面
クラシック戦線追っかけスレより派生
URA及びチーム『ベガ』からの公式発表がありました
菊花賞後の精密検査の結果、アドマイヤベガさんは左足の繋靭帯炎が発覚
暫くは休養に当て、復帰を目指すとの事でした
2:名無しの後方彼氏面
あああああああああああああああああああああああああ
3:名無しの後方彼氏面
死
4:名無しの後方彼氏面
最推しがあああああああああ!!!!!
5:名無しの後方彼氏面
つら
6:名無しの後方彼氏面
いや待てお前ら
一番辛いのは誰か考えるんだ
7:名無しの後方彼氏面
>>6 ウッ
8:名無しの後方彼氏面
Q誰が一番辛いと思う?
Aブラックテイル
9:名無しの後方彼氏面
そうだねそうだよね……
10:名無しの後方彼氏面
菊花賞のゴール後がね、もうね……
11:名無しの後方彼氏面
菊花賞ゴール
明らかに距離適性の問題があるのが分かるアドマイヤベガ
心配するブラックテイル、大丈夫だと首を振るアドマイヤベガ
少し足を庇っているのを発見し、お姫様抱っこで急ぎ医務室へ向かうブラックテイル……
12:名無しの後方彼氏面
その時の表情がね、もうね…
13:名無しの後方彼氏面
絶望しきった表情って、俺初めて見たよ
14:名無しの後方彼氏面
公然の秘密にしてくれ、って言ってた名前を叫んで、涙を零しながら走っていく姿が頭から離れない
15:名無しの後方彼氏面
アドマイヤベガが心配なのは当然として、ブラックテイルも心配なんだよなぁ…
16:名無しの後方彼氏面
あそこまで取り乱すのは予想外だった
17:名無しの後方彼氏面
あの2人は本当に仲の良い幼馴染だからね
何かを察したんだろう
18:名無しの後方彼氏面
チーム『ベガ』の渓トレーナー、サブトレの名瀬トレーナーですら「確信は持てなかった」と言い切った繋靭帯炎を1人察して、足を動かさせない為に菊花賞3000m走った身体に鞭打って医務室まで運んだという…
19:名無しの後方彼氏面
医務室まで運んだあとぶっ倒れたけど、アドマイヤベガの手を握ったまま離すことはしなかった、って噂がある
20:名無しの後方彼氏面
本当にあっても可笑しくないんだよなぁあの2人だと
21:名無しの後方彼氏面
ダービーの勝利インタビューとかさ、もうほんと嬉しそうだったしさぁ…
この2人が一緒のレースを走るのをずっと見てたかったんだ…
22:名無しの後方彼氏面
諦めるな
復帰を目指して暫く休養に当てる、って事だからさ
23:名無しの後方彼氏面
俺たちに出来る事で応援するしかねぇだろ
24:名無しの後方彼氏面
取りあえず健康祈願とか?
25:名無しの後方彼氏面
贈り物とかは迷惑になるからNGな
基本贈り物とかしてもURAやトレセン学園の方で弾くけど、たまにすり抜けて本人に届く事もあるから注意
26:名無しの後方彼氏面
まぁ個人でお祈りしてきたり、そういう事は問題ないだろう
[健康祈願のお守りの山の写真]
27:名無しの後方彼氏面
買いすぎィ!!
28:名無しの後方彼氏面
草
29:名無しの後方彼氏面
芝
30:名無しの後方彼氏面
そうだよな、本人が復帰を目指してるんだから信じないとな
「―――先輩」
「グラス、さん」
「お隣、良いですか?」
「はい……」
美浦寮、屋上。
辺りは暗く、秋も終わる時期の、肌寒い風が吹き抜けている。
そんな所に1人、ボーっと座り込む人が1人。
夜の闇よりもなお暗い、漆黒の髪の人―――ブラックテイル先輩。
許可を貰って、隣に座る。
「先輩、風邪、ひいちゃいますよ?」
「……心配、かけてしまいましたね」
「……」
「すみません、グラスさん。なんだか―――夜空が、見たくなっちゃいまして」
「……」
「でももう、だいじょう、ぶ、ですから……へ、部屋に、戻ります、ね」
目元を腫らして、蒼の瞳に涙を浮かべて。
それでも、私の前では、無理やり作ったぎこちない笑みを浮かべ、それを隠そうと振る舞うブラックテイル先輩。
―――それを見て、ムッと、少し苛立ちを覚える。
「―――先輩」
慌てて立ち上がろうとする先輩の手を、力強く握る。
離れないように、指を絡め、しっかりと。
「少し、お話しを、しませんか?」
「グラス、さん」
「ね?」
「―――は、い」
心此処にあらず、とはこの事でしょう。
私の言葉にも、私が手を握った事にも、全く逆らわないで。
少し立ち上がろうとしたのを、止めてしまって。
「先輩」
「……はい」
「アドマイヤベガさん、心配なんですよね」
「ッ………」
「菊花賞から、ずっとですから。流石に、分かります」
「………」
―――アドマイヤベガさん。
先輩の幼馴染にして、同期のライバル。
クラシック戦線を共に駆け抜け、URA史上初のGⅠレース1着同着、2人のダービーウマ娘として栄冠を分かち合った人。
……羨ましい限りです。
菊花賞の後……正確に言うならば、菊花賞で走った事により、彼女は繋靭帯炎を発症。
暫くの間は療養に専念する、と発表された。
アドマイヤベガさんの繋靭帯炎に、一番最初に気が付いたのが先輩で。
菊花賞3000mを走り切って消耗した身体に鞭打って、医務室まで運んで。
ライブ寸前まで、アドマイヤベガさんを励まし続けて。
そして―――繋靭帯炎発症の報を聞いた時、誰よりも深く絶望された。
「……先輩」
「………」
「吐き出せる事、私に吐き出してくれませんか?」
「ッ……」
「口は堅い方であると思っています。先輩の事も、それなり以上に理解があると思っています……私に、甘えてくれませんか?」
少し、先輩に寄りかかって、呟く。
それなり以上に知っている自信はある。
先輩が『言うな』と言ったら、墓まで持っていくと言いきれる。
どうか、頼って欲しい、そう願っての言葉。
「―――い、え。だい、じょうぶ、です。だいじょうぶです、だいじょうぶ……」
「先輩……」
「すみません、ジャパンカップも近いというのに、こんな……気持ちは、切り替えられます。大丈夫です、から……」
しかし、先輩は私を、頼ってくれない。
見るからに、大丈夫じゃないと分かる顔で。
見ていて痛々しい、無理やり作った笑みを、貼り付けて。
―――それを見て、私の中の、『ナニカ』が、弾けた。
「―――『テイル』」
「グラス、さん?」
「頼って、ください……いえ、いや、違う、違う……頼って。頼ってよ!」
頭の中が、なんだかグチャグチャにかき混ぜられたような。
己の中で暴れる『ナニカ』に身を委ねて、言葉を吐き出す。
「助けられてばっかりで!頼って欲しいのに!甘えて欲しいのに!!『君』は、与えてくれてばかりで、何も受け取ってくれない!!」
「え、あ……」
「そんなに頼りないの……私は、『僕』は、そんなに、頼りないかなぁ……!」
「――――――せん、ぱ、い?」
気が付けば、私が先に泣いていて。
そんな私を、優しく抱きしめてくれる。
「あぁ、そうなんだ。グラスさん、貴方は確かに『
「テイ、ル」
「私―――『俺』は、今は先輩だから、頼りになる良い先輩にならないと、って……貴方に頼っちゃいけない、って、そう思ってて」
ギュウッ、と、抱きしめる手に込められた力が、強くなる。
「―――夢を、見たんです」
「……夢?」
「デビュー1着、コスモス賞1着、ホープフル2着、スプリングステークス1着、皐月4着―――ダービー、同着。全部、夢のままで」
「―――」
その言葉に、息をのむ。
「変えたかった。勝ちたかった。そう頑張って、努力して、足掻いて―――それでも、変わらなくて」
「それで、それで……せめて、1つだけ、他が変わらなくても良いから、1つだけ変えたい事が、あって」
「―――――でも、変わらなかった……変えられなかった!」
―――まさか、そんな。
「菊花賞2着―――アドマイヤベガ繋靭帯炎、変えたかった、ここだけは、どうしても変えたくて!夏からずっと気にして、時にはマッサージだってして、リラの、リラの怪我だけは、変えたかった……変えたかったのに……!」
「未来を変えられないなら……この先の全てが、あの通りに進むなら……どうすれば良いのか、もう、分からない……」
―――1人、誰にも悟られずに。
この人は、運命に、抗っていた。
抗って、抗って……それが、全て実を結ばない。
「どうすれば良いんだよ、俺は……未来を変えられない、あの時と同じままに進むなら……どうすれば……」
「……テイル」
力が抜けて、添えるだけになってた
そんな
「―――頑張ったんだね」
「あ……」
「そうだね、うん、君はそうだ……何時も、頑張ってる。偉い、偉い」
己の内から溢れて来る『ナニカ』が、そう伝えてくる。
ブラックテイルという存在が、どんな存在なのか。
頼れる存在で、自分にとって、大切な存在だと。
頭で分かっている以上に、心が……その更に奥、『魂』が、そう伝えてくる。
その衝動に、内なる声に身を委ね、言葉を重ねる。
「でも君は、1人で頑張っちゃう……そこは、悪い所だ。頼って良いんだよ……『僕』は、君に、頼って、甘えて欲しいんだ」
「グラス、せんぱ、い」
「フフフッ……変わらないなぁ、君は」
「どう、して」
あれ、意識が、とお、く―――
『すまないね、少しだけ借りるよ』
―――今の声、は、一体―――
「先輩……先輩、なんですね?」
「―――うん、うん。僕、僕だよ」
ペタペタと、まるで人の様になった前脚で、目の前の人の様な存在になってしまったテイルの頬を撫でる。
テイルの黒い馬体そっくりな、黒い毛。程よい大きさの耳。
人のような姿だけど、分かる、目の前の存在が、僕の大切なコーハイだって。
そして、胸の奥、この身体の『本来の持ち主』の気持ちが、伝わってくる。
目の前の存在―――ブラックテイルを、助けたい。その真っ直ぐな気持ちが。
―――さっきまで、なんだか、フワフワとした、夢を見ているかのような気持ちだった。
そんな中で、
そして、段々と意識がはっきりしてきて……そうだ、うん、そうなんだ。
はっきりして、分かったんだ。
テイル、君は―――
「―――1人で頑張り過ぎ」
「アイテッ」
ポコッ、と前脚で頭を軽く叩く。
なんでか、この姿だとこうすると良い、そんな気がした。
「君は賢すぎる。君は何でも出来過ぎる……周りを頼って、甘えて、良いんだよ」
「でも、でも……」
「―――夢の事は、信じて貰えない?」
「ッ……そうです。馬だった頃と違って、周りは……」
「―――だとしても、だよ」
「アタッ」
もう一回、頭を叩く。
「―――テイル。僕の2回目の有馬記念の時、覚えてるかな」
「先輩の有馬記念、ですか?勿論、覚えてますよ」
「じゃあ、その時、僕は君に何度も『ありがとう』って言った……覚えてる?」
「え、えぇ……」
「―――君に、感謝してる。何度感謝しても、し切れない程に。僕は、君に貰ってばかりだった」
「そんな事ッ」
「そんな事が、あるんだよ、テイル」
テイルの口に、前脚の先、
なんだろう、『身体の持ち主』の記憶かな?
こうすれば良い、そんな気がした。
実際、テイルが静かになったので、このまま話を続けよう。
「きっと、『身体の持ち主』も、同じだよ。君に貰ってばかりで、何も返せてない、そんな気持ちがあるはずだ」
「それは、その……どうして、そう思うんですか?」
「
―――何かを、君にしてあげたい。
その気持ちが、僕も、『身体の持ち主』も、一杯あった。
それが、きっと、この出会いを現実にした。
「君の事を思うだけで、温かな気持ちになる……それと一緒に、申し訳ない気持ちも、湧き上がるんだ。『あぁ、もっと君になにか出来たんじゃないかな』って」
「先輩……」
「―――今、こうして会えたのは、きっとそう思い続けて来たからなんだ」
テイルの頭を、撫でる。
「テイル、約束して。君だけで頑張らないで、周りを頼る事……良い?」
「……良いんですか?」
「大丈夫。きっと、『身体の持ち主』も、頼ってくれたら嬉しいから」
「……はい。約束、します」
「うん、約束だ」
―――あぁ、分かってしまう。
―――もう、『時間』だ。
「テイル、最後に1つだけ」
「は、はい」
「―――こうして、また会えて良かったよ。姿が変わっても、元気な君を見れて、良かった」
「先輩……」
「きっと、次に目を覚ましたら、『僕』じゃなくて『身体の持ち主』に戻っちゃうから……もう、会えないかもしれない、から……」
意識が、薄れる。
だから、言いたい事を―――
「―――大好きだよ、テイル。君は、僕にとって、ずっと特別な存在だ」
―――『あの日』、君を失って、伝えられなかった事。
あぁ、言えて、よかった―――――――――
「―――先輩」
「ありがとう、ございます」
どれ位、経っただろうか。
なんの偶然か、奇跡か。
グラスさんを通して、先輩に会えて、言葉を交わして。
「……そう、ですよね」
「何も、1人で悩む必要なんて、無かったんですよね」
「信じて貰えないのが怖かった……けれど、だからって、周りから拒まれるのを恐れて、1人で悩み続ける方が、周りに迷惑、でしたね」
スゥ、と穏やかな寝息が聞こえる。
……きっと、目を覚ましたら、そこにいるのは『先輩』じゃないけれど。
「グラスさん……ありがとう、ございます。そして、ごめんなさい」
「今度からは、少し、頼らせてください」
「頼れる先輩じゃないと、って思ってましたけれど……少し、甘えさせてください」
「『俺』は、やっぱ、誰かの上に立ち続けるなんて、無理みたいです」
そっと髪を指で梳き、呟く。
『頼れる先輩』で居たかった。
そう、俺にとっての、グラス先輩の様に。
でも、どうやら、俺には難しかったらしい。
1人で何でも出来る、なんて領域には、たどり着けないようだ。
「……あー……なんか、スッキリした」
身体をグッと伸ばす。
気が付いたら、辺り一面真っ暗だ。
どれだけ屋上で悩んでいたのやら……そろそろ部屋に戻らないと。
さて、グラスさんは……グッスリ眠っている様子。
世界を超えて身体を乗っ取られた反動だろうか……起こさないように、そっと運ぼう。
お姫様抱っこで抱えて、そーっと歩き始める。
屋上のドアを開けて、階段を下りる。
さて、グラスさんの部屋へまずは―――
「―――悩みは、晴れたか」
「ッ……ビックリしたぁ……何時からそこに?」
「少し前さ。ハッピーミーク君から連絡があって、君を探していたが……取り込み中だったようだから、ここで待っていた」
「あー……手間かけてゴメンね?」
「いや、良いんだ。ここ数日は、見ていられない程に憔悴していたからな……今の君の顔を見れば、もう大丈夫だと思える。だから、それで良い」
壁に寄りかかって、手帳を開いていた人物。
私の姿を確認すると、手帳を閉じ、こっちに歩いて来る。
「取りあえず、明日以降、君の事を心配していた人たちに謝る事を勧めるよ」
「え、そんなに……?」
「自覚が無かったのか?同期やチームアルタイルの面々を筆頭に……エアグルーヴも、心配していた」
「え、あー……エアグルーヴさんも、かぁ……」
「……相変わらず、エアグルーヴの事が、苦手なのか?」
「い、いやその、苦手、と言うかその、あの……」
図星なので慌ててしまう。
そんな自分の事を見て、目の前の人物が、クスリと笑う。
「すまない、少し意地悪な質問だったな」
「今のはちょっとズルいよ―――ルドルフ」
現生徒会長にして、『元』ルームメイト。
無敗三冠、合計七冠。
『皇帝』シンボリルドルフその人が、自分の前に立つ。
「だが、事実だ。明日、謝る様に……ブライアンも、彼女なりに心配してくれていたぞ」
「え」
「―――君が思っている以上に、君は頼られているし、君に頼って欲しいと願われている、という事さ」
ポンポン、と肩を軽く叩かれる。
「勿論、私もその1人だ」
「……買いかぶり過ぎじゃない?」
「そんな事はない。君にはとても助けられている―――だが、君は中々頼ってくれない。恩を返そうにも、君は自分で何でも解決してしまうからな」
「そんな事―――」
「無い、とは言わせない」
スッと、目を細めて。
ルドルフの、『皇帝』の眼光が、自分を射ぬく。
―――が、それも一瞬の事で。
「―――まぁ、今後は少しずつで良いから、周りを頼って欲しい。それが私だと、嬉しいけれどね」
「んー……善処します」
「今はそれで良しとしよう……さぁ、まずは君の腕の中に居る彼女を送り届けよう」
「あ、付いて来るの」
「……心配していたのは、私もなんだよ」
ごく自然に隣に並んで来たルドルフが、少しだけ悲しそうな表情を見せる。
「『友達』が、あぁも憔悴していたら……誰だって、心配するさ」
「……ごめん」
「ッ、すまない。責めるつもりは無かったんだ……何度も言うが、今後は少し、周りを頼って欲しい。それだけだ」
普段見せるキリッとした『生徒会長』としての顔ではなく。
1人の少女としての……『友達』に見せる、柔らかな笑みを浮かべるルドルフ。
「……頑張るよ」
「……フフッ。君と同室だった頃とは逆になってしまったみたいだな」
「最初の頃は凄かったよね、ルドルフ。飢えたライオンと同じ檻の中に居る気分、って評判に違わないんだからさ」
「―――待て待て、あの頃の私はそんな風に言われていたのか?」
「あれ、言ってなかったっけ?」
「ちょ、ちょっと詳しくだな……!」
後日、謝罪行脚は休日丸一日をかけて行われる事になるのを、この時の私は知らなかった。
世界線が違うとはいえ、未来を知っていた。
変えたかった。けれど変えられなかった。
そんなブラックテイルの話でした。
チラチラ映る皇帝との関係も何時か書く予定です。
ですが次回はウマ娘編ジャパンカップ廻りを書きます。
モンジューの出番増し増しにする予定です。