今作では【ヘスティア・ファミリア】の結成や冒険者登録を済ませる時期がずれていますが、ほんの少しなので気にしなくてもいいです。
これは個人的な話ですが、アルゴノゥトを題材にした小説が増えてくれて嬉しい。
ベルが食い気味に眷属になりたいと言った女神――ヘスティアに連れられて辿り着いたのは忘れ去られた路地裏の奥、半ば廃墟と化した教会の地下に存在する『秘密の隠し部屋』、もとい【ヘスティア・ファミリア】の
「がっかりさせて本っ当にごめん! あ、でもさ、住めば都っていうしさ!」
「ヘスティアは眷属がいないと言っていただろう、阿呆め……どんな豪邸を想像してたんだ」
ここに来るまで気色悪いくらい緩んだ顔をしていたのに、今にも崩れそうな教会を見て唖然とするベルに、ヘスティアは誤魔化しか慰めかわからない言葉をかけ、レインはバッサリと切り捨てた。
ベルがショックを受けたのは野ざらしの教会そのものに住むと早とちりしただけであって、おんぼろとはいえ部屋としての機能を保つ隠し部屋に案内されれば、顔を羞恥に染めながら露骨に安堵の息を吐いて立ち直ったが。
「さぁ、君達。
「し、しつこいかもしれませんけど、本当に僕なんかを眷属にしてもいいんですか?」
「何言ってるんだい、ボクはむしろ君にこそ眷属になってほしいと思ったんだぜ? レイン君は強そうだけどさ、ベル君みたいに心から僕の眷属になりたーい! とか言ってくれなかったし」
「レインさんは誰にも敬意を払おうとしませんからね……」
「わかるわかる! 天上天下唯我独尊って言葉がぴったりな態度の子供、ボクは初めて見たぜ!」
解せない。レインはそう思った。『
出会って間もないのに深まっていくベルとヘスティアの仲とは裏腹に、レインの機嫌は少しずつ悪くなっていた。
「――はい、終わったよ。これでベル君はボクの眷属で、【ヘスティア・ファミリア】誕生の瞬間さ!」
「ありがとうございます! 神様の眷属として精一杯頑張ります!」
「ふっふーんっ、ボクは初めて眷属を創り、ベル君も初めて神の眷属になった。つまり……ボク等は互いの
「か、神様ぁ!?」
「テンションに任せて何を口走ろうとしている。処女神ではなかったのか、ヘスティア?」
とんでもないことを叫び出したヘスティアを、レインは鞘入りの魔剣でぶん殴った。ハジメテ云々の意味を理解できていないベルが不敬罪ですよと叫ぶが、レインに罪悪感はなかった。
「う、うごごごご……頭が割れるように痛いぃ!?」
「物理的な痛みで済んでよかっただろうが。派閥結成初日から主神が痴女だとベルに思わせたいのか?」
「神様、大丈夫ですか?」
「問題ナッシング! ちょーっと初めて眷属ができたから浮かれちゃってネ! 気を引き締め直すのにちょうど良かったよ、うん!!」
「そ、そうですか? そういえば、互いの初めてって――」
「おっとベル君、今からレイン君にも『恩恵』を授けるから君は外に出ていてくれ! 眷属同士とはいえ、【ステイタス】を見るのはマナー違反だからね」
「え、でも、レインさんはボクの時にはいたような……」
「お前は全アビリティが初期値で『スキル』も『魔法』もないが、俺には見られたくない『スキル』が発現している。だから外で待ってろ」
そういうことなら……と、ベルは後ろ髪を引かれるように隠し部屋から出ていった。ふぅー、とヘスティアは額を拭ってイイ笑顔を浮かべた。
「あ、危なかったぁ……。ベル君に痴女神なんて思われていたら、僕はしばらく立ち直れなかったよ」
「俺には痴女神と思われてもいいのか?」
「んー、勘だけど、君はそういうのを気にしない子供だろう?」
「……」
「ありきたりな言葉になっちゃうけど、君は魂そのものというか、心や内面を見て態度を決めている気がするんだよ」
レインは幾分かヘスティアを見直した。てちてちと音を立てて部屋の奥にあるベッドに向かう女神が善神であるのはわかっていたが、存外他者を見る目があったようだ。他人に甘えてぐーたら生活を満喫し、その結果ここにいるものだと思っていたのだが。
「なんかとんでもないことを考えなかったかい?」
「……?」
「何言ってんだコイツみたいな顔しないでくれよ! う~ん、ずっと隠しておきたかった黒歴史を前触れもなく暴かれたような気分になったんだけどなぁ……」
ヘスティアはしきりに首を傾げながらレインに服を脱いでベッドでうつ伏せになるよう促すと、レインの尻の辺りに座り込む。既に指から
滲み出る血をレインの背に滴り落とし、文字を書くようになぞり始める。ベルと違う鍛え抜かれた筋肉を堪能したのは内緒である。
「それにしても、恩恵持ちの子が僕の眷属になってくれるなんてねぇ。なんて名前の神か教えておくれよ」
「断る。そういう約束だ」
「えー、気になるじゃないか。
ビキッとヘスティアは硬直した。ギギギ、と錆びついた人形のように固まった笑顔で首を動かし、己の『恩恵』が刻まれた男の背中を凝視する。
そして――絶叫した。
「なっ、なんじゃこりゃああああああああああ!?」
レイン
Lv.8
力:EX 29541
耐久:EX 10087
器用:EX 78913
敏捷:EX 74359
魔力:EX 27118
狩人:A
耐異常:A
魔導:A
治力:B
精癒:B
覇気:B
剣士:B
《魔法》
【デストラクション・フロム・ヘブン】
・攻撃魔法。・詠唱連結。
・第一階位(ナパーム・バースト)。
・第二階位(アイスエッジ・ストライク)。
・第三階位(デストラクション・フロム・ヘブン)。
【ヒール・ブレッシング】
・回復魔法。
・使用後一定時間、回復効果持続。
・使用時、発展アビリティ『幸運』の一時発現。
【インフィニティ・ブラック】
・範囲攻撃魔法。
・範囲内の対象の耐久無視。
・範囲はLv.に比例
《スキル》
【
・成長速度の超高補正。
・ステイタス自動更新。スキルのみ主神による更新が必要。
・効果及び詠唱を完全把握した魔法の
・自身への憎悪が続く限り効果持続
「五月蠅い」
「ぐごぁ!?」
レインが起き上がったことで、跨っていたヘスティアは当然落ちる。運動神経皆無の女神に受け身を取れるはずがなく、床に頭部を打ち付けることになった。重力に逆らう巨乳にレインは目もくれず服を着る。
心配されなかったことの憤怒と異常な【ステイタス】への驚愕でヘスティアは即座に復活した。
「ちょ、ちょちょちょちょ、ちょうお……!」
「ちょうちょならいないぞ」
「違うよ! なんだいその【ステイタス】は!?」
「どうもこうも、見たままだろう?」
「それだけ!? 自慢したいとか思わなかったのかい!? ベル君の目指すハーレムだって夢じゃないぜ?」
――永久の神生で一番と言っていい衝撃だったとはいえ、この時の問いと第二の眷属の背に刻まれた『スキル』の詳細を見ようとしなかったことを、ヘスティアは激しく後悔することになる。
「どれだけ強くなっても空しいだけだ……この力で守りたかった人は、もうこの世にいないのだから」
レインがいつ出て行って、入れ替わりでベルが戻って来たのかヘスティアは覚えていない。しかし、一つだけ決めたことがある。
(まだ夢を見ているベル君がレイン君みたいにならないように、そしてレイン君が少しでも救われるように――ボクも、
♦♦♦
「ここがギルド……!」
勇敢な戦士を模った
依頼が綴られた羊皮紙がたくさん貼られた巨大な掲示板、笑顔で冒険者登録の対応や相談にのっている美人な受付嬢、使い込まれた装備に身を包んでダンジョンに向かう冒険者達……英雄譚や風の噂でしか知らなかった光景が目の前にある!
時間が正午よりも大分前だからか、受付窓口にほとんど人はいない。僕は意気揚々と優しそうな雰囲気のハーフエルフのお姉さんがいる窓口に駆け寄った――レインさんの「ベルはエルフが好みなのか……」という呟きは聞こえなかった。
「ぼ、僕っ、冒険者になりたいんです!」
ハーフエルフのお姉さんは瞬きを繰り返し、微苦笑しながら聞き返してきた。
「……か、確認しますが、新規の冒険者、登録の方でお間違いありませんね?」
「はいっ!」
熱意を漲らせて頷く僕に、お姉さんは苦笑を変えないまま登録申請書を差し出してきた。隣では薄い紫の長髪を揺らすちょっと冷たい美貌のエルフの受付嬢とレインさんが手続きをしている。……どちらも無表情で無言のまま作業をしているけど、きちんと意思疎通はできているのかな……?
書類の最後の欄にはアドバイザーがいるかどうかが書かれていた。エルフの女性職員に印を付けて提出する。
「ベル、終わったか」
「あ、はい。丁度終わりました」
いつの間にかレインさんがすぐ側に来ていた。終わったことを伝えるとレインさんは一つ頷き、
「ならギルドの支給品を買って、さっさとダンジョンに向かうぞ」
「はい!」
「ち、ちょっと待って!」
やっと僕も冒険者の仲間入りを果たせると装備が売られている
「貴方はこの子の保護者ですか?」
「それに近いかもしれん。同じ【ファミリア】だしな」
「この子の前職には農民と記入されていますが、貴方は武器を持っているので傭兵稼業でもしていたのかもしれません。しかし、ダンジョンには一度も潜ったことはありませんよね?」
「そうだな」
「都市の外でモンスターを倒したことがあるのかもしれませんけど、ダンジョンのモンスターは危険度が違うんです!
なるほど。このお姉さんは初心者の僕をダンジョンに連れて行こうとしたことに怒っているのか。レインさんにも事前情報の有無で生存確率は大きく左右されると聞いたことがあるし、この人はとても優しいのだろう。
でも……レインさんがそれを受け入れるかは別問題なんだよなぁ。
「問題ない。『上層』までしか進む予定はないし、そこなら俺は死ぬどころか怪我する可能性は億分の一もない」
あ、やっぱり。神様にレインさんが他派閥と喧嘩でもしたらどうしようと相談したら、『あー、うん、全力でレイン君を止めてくれ。死人が出るから。オラリオ全体に喧嘩を吹っ掛けようとする気配があったらボクに教えてくれ。迷宮都市が滅びるのは嫌だから、マジで』と真顔で言われたので、レインさんはとても強いということは知っていた。
なので断るだろうなと予想していた――ふてぶてしい断り方には驚いた――けど、断られたお姉さんの反応は予想外だった。
苦笑いで成り行きを見守っていた僕にも鋭い眼光が向けられた。すごく怖い。思わず悲鳴を零してしまうほど怖かった。どうやってレインさんはこの人と向き合ってたの?
「わかりました。二人とも、こちらの面談ボックスに来て下さい」
僕は一も二もなく従う。お姉さんには拒否するなら力尽くでぶち込むぞという迫力があった。レインさんも何も言わず部屋に入った。その様子を確認した後、お姉さんはどこかに消えた。
机と椅子しかない部屋で待つこと数分、お姉さんは戻って来た……極厚の本を三冊も抱えて。何故か僕の額から冷や汗が流れた。
「本日からベル君のアドバイザーを務めることになりました、エイナ・チュールです。今日からよろしくお願いします」
「は、はい」
「それからレイン君、これからするテストで合格点を取れなかったら君のアドバイザーにもなるから。そのつもりでいてね」
「……俺とベルで態度が違わないか?」
レインさんへの返事はドンッ! という本が置かれた音だった。なんなら机も若干衝撃で浮いていた。膨れていく嫌な予感に突き動かされて本のタイトルを見てみる……『ダンジョンの基礎知識・上層編』と書かれていた。
対面の椅子で笑うお姉さん、改めエイナさんを見て、僕は下心満載でアドバイザーに『エルフの女性職員』と記入した過去の自分を殴りたくなった。
この人は綺麗で優しそうな人じゃない。
「一時間でこの本を全部読んでね。そこからランダムで問題を出すから。間違ったらレイン君は最初からやり直し、ベル君は明日から
綺麗で優しいけど、教育にはとてつもなく厳しい人だ! 事実上の死刑宣告を受けて、僕は真っ青になりながら悟った。
その後、僕は明日から超スパルタなエイナさんの指導を受けることになった。
レインさんは一発で合格。適当にパラパラめくっていただけにしか見えなかったのに、あれで読めているなんてズルいと思う。真面目にやりなさいと怒っていたエイナさんも愕然としていた。肝心のレインさんは無表情のままだったけど。
突き付けられた頭の良さの違いに、苦手な座学が約束された未来のショックで意識が半分飛んでいた僕は、防具を買いに行く際にすれ違った冒険者達の会話を聞き取ることが出来なかった。
『聞いたか、【ロキ・ファミリア】に喧嘩を売った馬鹿の話』
『おいおい、どこの自殺志願者だよ』
『なんでも団員の一人の顔面を蹴り飛ばして逃げたらしい。蹴られた奴は上の歯と鼻の骨がほとんど折れていたみたいだぜ』
『死んだな、ソイツ。ロキが眷属を選ぶのって見た目の良さなんだろ?』
『ああ、絶対に落とし前を付けさせるって激怒しているみたいだし、近い内に
『特徴とかねーのか?』
『噂でしかないが……全身真っ黒の男らしいぜ。誰かと一緒にいたらしいが、黒男のインパクトが大きすぎて誰も覚えてないってさ』
♦♦♦
ダンジョン『上層』、1階層。
気分を切り替えて装備やバックパックを揃えたベルは、そこで短い手足と緑色のずんぐりとした体躯のモンスター、『ゴブリン』と相対していた。
『俺は何もしない。「ゴブリン」相手に負けるなら冒険者はやめておけ』
とだけ告げ、レインはベルの
(『恩恵』を授かった奴がどうすれば『ゴブリン』に殺されるのかは知らんがな)
ベルは脅しじみたことを言われたと思って《短刀》をきつく握っているが、『ゴブリン』には無抵抗で股間や頭部を蹴られ続けない限り死にはしない。幼い頃に『ゴブリン』の群れからタコ殴りにされたことのあるベルは絶対に無抵抗にはならないだろう。
(さて、ベルはどこまで戦いに向いているのか)
目の前で『ゴブリン』の攻撃を大仰に避けるベルを眺めながら思考する。
(長剣は間合いを詰められた時の対処が難しいと思ってナイフにさせたが失敗だったか? いや、殴る蹴るの経験がないベルには手足の延長として扱いやすいナイフで間違いない。敵の攻撃を大きく見積もり過ぎだ。あれでは何度も隙を見逃す……が、今臆病なのはいいことだ。無策で突っ込んで死んだりしないだろうからな。本当に立つべき場所で立つ勇気は早く持ってほしいが……あ、倒した)
目を閉じて身体ごと突撃したベルの《短刀》が『ゴブリン』の胸を貫き、モンスターの急所である『魔石』を砕いた。かつてのトラウマであるモンスターを倒したベルはとびきりの笑顔で振り返り、
「レインさん、やりました! 僕っ、初めてなのに、一人でモンスターを倒せましたよ!!」
「そうか……だが――」
「神様にも教えてきまーす!!」
「色々問題点が……は?」
初めてのダンジョンで『ゴブリン』を一匹だけ倒して帰還。英雄を目指す少年のまさかの行動に、レインは呆けたまま小さくなっていく後ろ姿を見送るしかなかった。
「まぁいい……戦いで目を閉じる、無駄な動きが多い、稼ぎになる『魔石』を潰すなと言いたいことは多いが、一番の課題だった『
きっとベルは命の重さを理解できていない。自分達に危害を加えてくる生物に対する正当防衛という理由で、
今はそれでいい。無知は罪だが、罪になるのは無知が害になった時だ。利になるなら無知のままでいい。
「……ベルの奴、『ゴブリン一匹で勝利の凱旋』が黒歴史になってダンジョンに行かないとか言い出さないよな?」
脳裏に浮かんでくる予感に不安を抱きながらレインはそこそこの『魔石』と『ドロップアイテム』をバックパックに放り込んでダンジョンを出た。……途中で真っ赤になってダンジョンへ走る白い少年とすれ違ったが、見なかったことにしてあげた。
♦♦♦
収入は七二○○ヴァリスだった。『上層』である1~4階層で三十分程度ならこんなものだろう、とレインは初心者にしては有り得ない額の収入が詰まった袋を持って北西のメインストリートを進んでいた。
昼飯時だからか休憩中の労働者や吟遊詩人、仲睦まじい獣人の家族などとすれ違いながら、光玉と薬草のエンブレムが飾られた白一色の建物、【ディアンケヒト・ファミリア】の
『いへぇっ、いへぇよぉ! 俺の歯が、俺の鼻がぁ……』
『鼻は治癒魔法で治せますが、歯は砕けて修復不可能だったため差し歯になります。型を取るのに時間がかかりますがよろしいですか?』
『大丈夫です。あ、お客さんが来たみたいですよ。コイツは私が見ておくのでアミッドさんは行っていいですよ』
『ありがとうございます。では、席を外します』
『ちふしょう、あの
底上げされた五感が治療院の奥から痛みと怨嗟が混じった声を拾う。何故だか知らないが、レインはこの声の主に『身の程を知ったらどうだ』と言いたくなった。やらないが。
「お待たせしました。本日の御用件は何でしょう……か……」
診察室・治療院と書かれたプレートがぶら下がった扉を開けて出てきた銀髪の美少女、アミッド・テアサナーレは無表情の男を見て硬直した。
「久しぶり、アミッド」
レインは三年ぶりに出会った友人に小さく微笑みながら手を上げる。アミッドが固まったのは三年前よりずっと背が伸びたことに驚いたのだろう、と思っていた。
「レインさん?」
「うん」
「本物ですか?」
「うん」
「どうしてここに?」
「オラリオに来たら顔を見せると約束しただろう」
「いつからオラリオに?」
「昨日から」
アミッドは小さく息を吐き、にっこりと笑った。しかし、その目は笑っていない。
「レインさん……【ロキ・ファミリア】に危害を加えましたか? 具体的には顔面を蹴り飛ばしたりとか」
「したな。身の程知らずとか田舎者とか馬鹿にされたから、蛆虫と言い返したら斬りかかられてな。反射的に蹴ってしまった」
「はぁ……特徴を聞いた時からもしかして、と思っていたんです。今は【ロキ・ファミリア】の方がいるので日を改めましょう。……とはいえ、約束を覚えていてくれてありがとうございます。お礼と言ってはなんですが、これを」
五〇万ヴァリスもする
「気持ちは嬉しいが、これは正当な対価を払わねばならない代物だろう。受け取れないよ」
「三年前もそう言って断りましたよね? 今度こそ、気持ちだけでなく感謝の品も受け取ってください」
今度はレインがため息を吐く番だった。心優しき頑固な友人は譲らないだろうな――と、アミッドが聞けばお互い様ですと言いそうなセリフを思い浮かべつつ、レインは虹色の液体が入った瓶をバックパックにしまう。
「またな、アミッド。会えて嬉しかったぞ」
「……私もです。いつでもいらして下さい」
深くお辞儀をするアミッドに手をひらひらと振って、レインは施設を出た。
――その後、
レインのステイタスの伸びについての(大雑把な)説明。
Lv.8になったのはおよそ一年半前です。
敏捷、器用は一日に150~200伸びる。
耐久はベルと出会った半年前から一切伸びていない。
力、魔力は約50ずつ伸びる(ベルと田舎にいる間は
こんな感じです。発展アビリティ『魔導』『治力』『精癒』『覇気』『剣士』は使えていたので上がりますが、『狩人』と『耐異常』は上げるに値するモンスターがいないので上げられませんでした。