麋竺の下僕 〜ああ!曹操が後ろに!〜   作:カシオミル

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第二話 名前を覚えてもらえない曹なんとか君vs一般農民 ファイッ!

 劉玄徳の脅威には勝てなかったよ・・・

 

 使者ですら一部の農民しか知らない抜け道や、熊や猪の出没場所まで把握しきっているとか本当におかしい。山賊まがいというのは伊達じゃなかった。

 前回徴兵された時、そうした抜け道や危険地帯を利用して逃げ帰って来れたが、それもままならなくなるとは。その時戦った、当時は知らなかったが曹なんとか相手にも有効なのに。

 

 というか、暗に「逆らったら逃がしもしないし、何なら曹軍の側に付いて蹂躙するぞ」と言っていないか、これは。

 攻めこんだから曹なんとかに恨みも買っているだろうし、征服されたら重税を課されるのは目に見えている。そんな中で鬼強軍隊の曹勢力と裏に精通する劉玄徳が合体したら、正に鬼に金棒の地獄だ。

 主人の糜子仲様もそれを察したのか、万が一の毒がどうこう言っている場合じゃないと急遽参戦が正式に決まってしまった。

 

 ただ、この一件で劉玄徳側は最初から敵方に服従する気はない、というのが分かったのは朗報だろう。劉勢力と曹勢力を潰し合わせる好機にできる。劉玄徳側に、戦えると思わせる何かを用意してみせることができれば、まともに戦い合ってこの集落に手を伸ばそうとしてくる両勢力を弱らせられるはずだ。

 あとは、その何かが間違いなく徴兵される我々を守る武具なら、我々農民が死んで元も子もないという結末を回避できるに違いない。

 そう考え、早速準備と孫公祐様との相談にとりかかった。

 

 そして、必死に頭を捻り、試行錯誤を続けるがあっという間に時が過ぎ、その内に開戦の時となってしまった。有利な場所をとろうと河川の流れる丘陵地帯に向かうも、相手も同じことを考えていたようで互いに視認できる距離で遭遇してしまい、そのまま干戈を交えようかという状態だ。

 時間が無かったため万全とは言い難いが、事前に準備を整えられなかったら危なかった。

 

 まず前回の戦いでも使った、アレの用意が全員分間に合って良かった。アレとは、横から見ればクワと同じ鉤状の、先端を尖らせた竹の背負い籠のことだ。柿葉茶を入れた竹の水筒や、粟の干飯などの食料を運搬できる用具として使える。アレのおかげで、照りつける日の下で行軍し、疲弊した状態で戦闘が勃発したこの状況でも、すぐさま喉を潤し、体力をある程度回復させてから戦えるようになる。

 曹軍はさすがの練度で隊列を乱しはしていないが、快晴の中での重い鎧や武器を装備した行軍の疲労が動きに出ており、こちらより戦闘準備が遅い。

 

 その隙に、我々は荷を下ろした背負い籠を横に並べ、籠の竹を互いの穴に入れて縦に伸ばして簡易な城壁を作る。これで開戦の矢や投石の脅威を下げることが可能だ。

 それと同時に、壁の後ろで足元の石を拾いつつ、残りの竹籠を大地に伏せさせて三角形になるようにし、その角に竹槍を縛り付けて即興の投石機とする。竹槍の尖った片方に小石を入れ、もう片方を勢いよく踏みしめれば豪速で石が飛んでいくという寸法だ。

 

 前回の戦いで学んだが、戦場において矢や投石で死ぬ者は意外なほど多いため、その対処は結構大事になる。遠距離戦でどれだけ一方的に削れるかがどれほど勝敗に大きく関わるかは身に染みて覚えた。即興の壁と投石機で相手の出鼻を挫くこの作戦の成否は、きっとこの戦いの分水嶺となる。

 

 孫家の血を引き、遠距離戦に造詣の深い孫公祐様の鬨の声のもと、準備の整わない曹軍に向かって地上の流星群が降り注ぎ始めた。

 

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