バババババババババ
薬売りと常世は二手に分かれて、札を貼る。人通りが多い場所にはバレない様に一枚だけ貼り、人がほとんど来ない場所には大量に貼っている。
「これでよし」
常世は薬売りと合流するために部屋に戻ろうとする
「アハハハハ」
パタパタ
「きゃ―――!」
楽しそうに走り回る子供の声が聞こえた。
「ずいぶん夜更かしな子」
そう思いながら常世は部屋へ向かった。
ー真夜中ー
薬売りと常世は大量の札が貼られている階段にいる。すると札の黒い目が、赤へと変わった。
「「来た」」
薬売りと常世は階段を登っていく。
「上の階には何があるんでしょう」
「女将さんはあの女性を連れて行ったが物置だと言っていた。だが女将さんの様子じゃあ違うようだ。」
すると
「ぎゃああああああああ」
男の悲鳴が聞こえてきた。モノノ怪の行動に巻き込まれてしまったのだろう。こうして最上階に到着した二人。
パァン!
一気に障子を開けるとそこは物置ではなく、どこから見ても上客が泊まりそうな華やかな部屋だった。
「これはこれは」
「華やかですねぇ。全然物置じゃない」
そしてあの女性が倒れており、天井には男の死体がぐるぐるに巻かれて埋まっており、何かの雫が落ちてきた。薬売りはわざわざ卓の上に立って興味深く男に死体を見上げ、常世は倒れている女性の下へ行く。
「なんの騒ぎだよぉ、全く」
女将の声が聞こえたのか「う…」と小さく声をあげた。女将と番頭が死体で驚いている中、常世は女性に触れる
「もし…もしお姐さん」
「う…君は?」
常世の声が聞こえたのか起きてくれた。彼女はここに女の子が現れたことに疑問符を浮かべる。
「徳次! ちょいと番所へ走ってきとくれ!」
女将は徳次と呼ばれた番頭に的確な指示をする。当然
「その必要は、ありませんぜ」
薬売りが待ったをかけた。
「必要ない訳無いだろう! 呼ばれて困るのは下手人だけ」
「この人じゃないです!私、見ました……下手人は、この人じゃないです」
死体の男になにが起こったのか目撃したようだ。
「何を、見た?」
「……巻かれて、浮き上がって、でも巻き付いていなくて……ぐる、ぐる、ぐる、ぐる……」
「ほぅ……ぐる、ぐる、ぐる、ぐる」
「そうか…ぐる、ぐる、ぐる、ぐるかぁ」
男の胴体は巻かれ、そのまま浮き上がったのだが縄が巻き付いていなかった。天井に埋められた後は更にぐるぐるとされたようだ。
「薬売り。嬢ちゃん…アンタ達何者だい!そもそも、どうして【この部屋】にいるんだい!」
こんな奇々怪々な死体を見ても驚かない。しかも立ち入り禁止の部屋に普通に来ている。そんな薬売りと常世に女将は聞く。
「下手人は、人じゃあありませんぜ」
薬売りの言葉に女性は傍にいる常世を見る。
「人じゃ……ないってどういうことなの?」
すると退魔の剣を入れていた箱がひとりでに開く。
「ひとりでに開いた……!?」
「こりゃあ……!?」
「な、なんで薬売りがこんな気色の悪い剣を……」
女性と徳次、女将は退魔の剣を見て驚く。
「気色が悪いなんて失礼な。あの剣は退魔の剣」
「……斬りに、来たんですよ」
その言葉に、この場にいる人たちの空気が凍りついた。
「な、何を……?」
「ふっ……」
常世と薬売りは笑みを浮かべて言う。
「「モノノ怪を、ね。」」