ただの薬売りの弟子ですよ   作:WATAHUWA

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(どのような場所にいる?)

 

その問いに常世は周りを見る

 

(装飾は違いますが部屋の構造はあの部屋と同じです。卓があった場所には異臭がする液体がある穴。その真ん中に何かを拘束するような台があります。隣の部屋から男女の楽しそうな声が聞こえました)

(声?)

(お姉さんが行っちゃ駄目よと言ったので見ていません)

 

常世は素直に答える。すると

 

「あ、あああ!! いやああ!!」

「!!」

 

女性が悲鳴を上げた。例の達磨があったのだ。

 

 

 

「お姉さん!」

「だ、達磨が!」

 

しかし次の瞬間居なくなっていた。

 

「ど、どういうことなの?」

 

疑問符を浮かべる女性。常世は先程の事を退魔の剣を通じて伝える。

 

(師匠。お姉さんが狙われているかもしれません)

(なら彼女の腹に札を貼り、移動をしろ。後は俺が女将さんたちから聞く)

「(わかりました)お姉さん。お腹にこの札を貼って。それで移動しよ?」

「そ、そうね」

 

常世は女性の体を気遣って手をつなぎながら移動をした。

 

「ねえ お嬢ちゃん。……確か常世ちゃんって呼ばれていたわよね」

「うん。お姉さんは?」

「私は志乃よ」

 

女性、志乃は常世に聞いてきた。

 

「ねえ常世ちゃん。もののけって何?真…とか理とか」

 

モノノ怪を知らない者からすればよくわからないのは当然だ。

 

「人の因果と縁。人の情念や怨念にあやかしが取りついたとき、それはモノノ怪となるの」

「モノノ怪って怖いの?」

「師匠はモノノ怪は斬らないといけないっていつも言っている。でも斬るには条件がある。」

「あなた達が言っていた真と…理?」

 

常世は頷き、説明する。

 

「何かがあり、何者かが何ゆえに行動を起こしている。だからモノノ怪の姿である「形」、モノノ怪を成した何かである「真」、モノノ怪の感情である「理」を示さないといけない。今回の場合、宿で子供に関することがあった。だから子供である私ややや子を宿した志乃が師匠たちと離れちゃったの」

「そ、そうだったの。常世ちゃん怖くない?」

 

志乃は保護者である薬売りと離れてしまった常世の事を心配してしまう。

 

「大丈夫。私は強いし、師匠が必ず真と理を示すから」

 

自信満々に言う常世。薬売りの事を信頼しているからこそ言えることだ。その様子に志乃はなんだか羨ましそうだった。

 

「あ。師匠たちと一緒の部屋」

「本当ね」

 

薬売り達と一緒にいた部屋についた。でも薬売り達はいない。

 

「ねえ常世ちゃん。さっきもあったわよね」

 

そこには倒れている天秤があった。

 

「天秤!」

「てんびん?」

「師匠の道具の一つ。ここにあるってことは入れ違いになったかぁ」

 

頭を悩ます常世。すると

 

「志乃…志乃…」

 

志乃を優しく呼ぶ男性の声が聞こえた。隣の部屋からだ。

 

「………」

 

常世はそっと障子を少しだけ開ける。そこに居たのは

 

「若旦那? ……私?」

 

志乃と例の若旦那が居た。すると志乃の様子がおかしい

 

(暗示?)

 

志乃は目の前に若旦那がいる様な行動をする。お腹にやや子がいると言った瞬間、

 

「いやあああああああああ!!!」

 

悲鳴を上げた

 

「志乃!?志乃!!!」

 

常世は悲鳴を上げ涙を流す志乃に言う。でも志乃は涙を流すだけ。すると

 

「おっかぁ」

 

子供はある女性に言った。

 

「決めた、この人達にする」

 

男女を見守る子供がそう言うと、他の子供達はまるで自分の事のように喜んだ。

 

(腹に宿ったやや子?)

 

子供達の正体は女性に宿ったやや子だとわかった。

 

「全く、しょうがないねぇ」

 

そう言ったのは

 

「女将!?」

 

現れたのは若い女将だった。しかも

 

「女郎?」

 

衣服が女郎。つまりだ

 

(そっか ここは女郎屋。ここではやや子がいる女は邪魔になる!あの台はやや子を宿した女郎を拘束するためだったんだ)

 

実際、堕胎される夢を見ているのか志乃が必死に叫んでいる。

 

「やめて!  もう……殺さないでぇえええ!!」

   

   

彼女がそう叫んだ瞬間、辺りの光景ががらりと変わった

 

「常世」

「師匠!?」

 

いつの間にか常世と志乃は薬売り達の下へ帰っていたのだ。

 

「え?座敷童子たちによる幻?」

「常世。来るぞ」

 

そう言った瞬間だった。

 

部屋の両側の襖が勢いよく開き、大量の“赤い帯”が雪崩込む様に押し寄せた。襖の傍にいた女将と徳次はそれに巻き込まれ、呑まれる。赤い帯の集合体は、やがて丸い形を成して、巨大な目玉がいくつもついた球になった。

 

 

 

「座敷に繋ぎとめられた【モノ】。遊郭の時代に始末された、赤子の思い――」

 

カチン

 

「あとは【理】。あと一つ、理が分かれば剣は抜ける。お前の願いは、なんだ?」

 

座敷童子の願い。それは常世は分かった。

 

「やめて!!斬らないで! ややこ達になんの罪があるの!?」

 

 

志乃は叫ぶ。座敷童子の願いはこの世に生まれたかった。しかしこれだと志乃の体を利用して出てくるという事。薬売りが説得しているがやはり聞いてくれない

 

「――おいで。一緒に、産んであげる」

「「!!」」

 

志乃は優しい笑顔で言った。

 

「私の腹に宿ったものは、皆私の“ややこ”です」

 

彼女の決意は固かった

 

「志乃!!」

「やめるんだ……取り込まれるぞ」

「私は、私のややこを産む。――それだけ」

 

 

彼女は勢いよく、腹の札を剥がした。その瞬間、彼女の足元に赤い雫がぼたぼたと垂れ始め……卓を真っ赤に染めた。

 

「え、あ……どうして……!?」

 

真っ白の場所に居た。座敷童子はやや子の想いを志乃に伝える。それを聞いた志乃は言った

 

「私の方こそ……選んでくれて、私のところに来てくれて、【ありがとう】」

 

カチン

 

座敷童子の本当の願い。生まれた時、母からのありがとうが聞きたかった。

 

「真と、理によって……剣を、解き放つ。」

 

薬売りは退魔の剣を抜いた。薬売りに斬られる瞬間

 

「ごめんなさい。私、貴方達の“おっかあ”にはなれない……一緒に、なれないって」

「ふふ」

 

志乃の言葉で座敷童は満足そうに笑った。

 

 

ボト

 

「人形?」

 

座敷童子が消えた時、小さな黄色の人形が落ちてきた。

 

「さるぼぼか」

「さる?」

 

元の姿に戻った薬売りは常世に教える。

 

「安産のお守りだ。彼女の物だろう」

「……そっか」

 

安産のお守りと聞いて常世は穏やかに寝ている志乃に近づく。

 

「志乃のやや子守ってね」

 

さるぼぼに言った常世は志乃のお腹に置いた。その一方、薬売りは優しく壁を撫でていた。

 

「どうして撫でてるんですか?」

「壁一面がややの墓だそうだ」

 

薬売りは母の代わりに撫でているように見えた。常世も薬売りに見習って壁を優しく撫でる。

 

「師匠」

「なんだ?」

「この子たち、生まれ変わってると思いますか?」

 

転生してほしいと思っているようだ。

 

「女将が若かったころの話だ。とっくに生まれ変わってるさ」

 

そう言って薬売りは常世の頭を優しく撫でた。それを聞いて常世は嬉しそうだ。

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