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薬売りと常世は港に居た。今度は江戸へ向かうために船に乗るのだ。
「わ――師匠、華やかですね!」
常世の言う通り、今から乗る船『そらりす丸』はただの船にしてはとても華やかだ。
「この船は南蛮から珍しい物を持ってくるために作られたそうだ。行くぞ」
「はい!」
薬売りと常世は船に乗った。
「わあ。中も華やか!」
下駄を船専用の履物に変えた常世は興味津々に見る。船は華やかな装飾で吹き抜けの構造になっており、襖には沖に出る船。海に出るお化け。漁村で遊ぶ兄妹の絵が描かれている。甲板には大きな生簀があり、下から上の階まである大きな絵もあった。
「師匠。あの絵変わってますよ?」
「なんだ?」
それは下から上の階まである大きな絵。男性と女性が愛し合う絵だ。
「女性の足が魚になっています」
「ああ。南蛮の人魚だ」
「え!?」
常世は固まる。人魚の肉は不老長寿の妙薬で有名で、その姿は鬼の顔を持つ魚なのだ。しかし絵に描かれている人魚は下半身は魚、上半身は美しい女性である。
「えー南蛮の人魚は美女なんだ」
「だが悲しい話もよくあるそうだ」
「美人薄命ってやつですか?」
南蛮の人魚の話をしているとだ。
「うわああ! おっきな金魚ぉ!」
「どうです! これほどの水槽は三國随一でしょう!」
物凄く聞き覚えのある声が聞こえた。
「師匠。聞き覚えある声ですねぇ」
「ああ。どうやら乗っているようだ」
すると下に居た男性が「もう二人、客人が居たようだな」と薬売りと常世について言う。なので
「あぁー!? 薬売りさんと常世ちゃんじゃないですかぁ!!」
坂井の化猫騒動で協力してくれた元下働き、加世が2人に気づいた。彼女は久々に会えて嬉しかったのか「あの二人が“坂井の化け猫騒動”を鎮めたんですよ!」と周りに説明する。
「あんたらも呪術者の類か?」
加世の言葉に興味を示したのか、薬売りと常世に気づいた先程の男性が聞いてきた
「ただの……薬売り、ですよ」
「ただの薬売りの弟子ですよ」
「常世ちゃん久しぶりー!元気だったー?」
「うん。元気。加世は?」
常世の問いに「元気元気!」と答える加世。
「実家に帰ってから何日かのんびりした後、今度は江戸で奉公先を探そうって思ったの!」
「あの後やっぱり心配された?」
「う―――ん。流石に信じて貰えないと思うから「坂井家は取り潰しになっちゃった」って説明した」
確かに本当の事を話しても信じて貰えないだろう。むしろ病気になったと心配される。加世の行動は正しい。そしてその後、江戸へ向かうためにこのそらりす丸に乗ったのだ。ちなみに乗っているのは薬売り、常世、加世の他に6人居る。
先ほど薬売りに呪術者の類かと聞いてきた
そらりす丸の持ち主で先ほど水槽について説明していた
そらりす丸の船長
若い侍の
徳を積んだ高僧の
源慧の弟子の