ただの薬売りの弟子ですよ   作:WATAHUWA

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―翌朝―

 

一晩すやすやと良い子で寝ていた常世が起きる。薬売りは傍にいない。常世は布団を片付けると薬箱にしまっている櫛と手鏡で身なりを整える。髪紐と簪を髪につけた後、履物を履いた。

 

(師匠は金魚と羅針盤に興味なし。なら甲板)

 

 

するとあることに気づいた。

 

(外が暗い?)

 

そらりす丸は外の様子がよくわかる。だから外が暗いのもすぐに分かった。

 

(もう朝。日が射してもおかしくないのに……アヤカシかモノノ怪か)

 

常世はカランコロンと周りに異常を知らすためにワザと履物を鳴らしながら甲板へ向かう。

 

ー甲板ー

 

薬売りは常世が思っていた通りいた。

 

「師匠、おはようございます」

「おはよう。外は暗いな」

 

薬売りの言葉に常世は「はい」と言う。

 

「普通だったらもう日は射しています。様子からしてアヤカシかモノノ怪の可能性が高いです」

 

常世がそう言っていると

 

「なんだうるさいぞ」

 

眠たげに幻殃斉

 

「もう少し寝かせろ」

 

不満気に佐々木

 

「娘なら物静かに歩くものぞ」

 

不安げな菖源を連れてきた源慧

 

「あ、あの!何かあったのでしょうか!?」

 

慌てて三國屋が来た。常世と薬売りは教える。

 

「何かあった?周りを見れば一目瞭然」

「もう朝ですよ。なぜ 日が射してないのでしょう?」

 

その言葉にほとんどが外を見る。確かに曇りでも日があるので多少は明るい。今は日が射していない。なのにぼんやり明るい

 

「そ、そんな。もう朝なのに!」

「確かにもう朝!日射しがないのはおかしい!」

 

幻殃斉と三國屋の言葉に菖源は不安げになり、源慧と佐々木は落ち着いている。

 

「常世が鳴らしてくれたからこそ異常に気付いた。不満を言うのは筋違いですよ」

「…う」

 

そう話しているとやっと起きた加世が来た。

 

「なぁんだ! 皆ここにいたんですかぁ!」

 

呑気な加世に今起きている異常を説明する。

 

「今の時分では、石廊崎が見える頃ではないのか?」

「えぇえ? そんなの全然、見えないですけれど……」

 

加世の言う通り、陸の形も影も見当たりはしない。

 

「そ、そんなはずは……! 五浪丸ー!!」

 

三國屋は船長である五浪丸を呼ぶ。現在位置を確認するために地図を見るのだ。

 

 

地図は羅針盤がつけられた卓の傍にある。地図を見るために近づくとだ

 

「おやおや」

「師匠あれ」

 

薬売りと常世はあることに気づく。卓の下に鉄の棒が置いてあるのだ。薬売りはそれを拾おうと屈む

 

「何やってんですかぁ?」

 

加世は薬売りと常世が影になったので何を拾うか分かっていない。

 

「よいか。新島、野島崎と、この辺りにある南蛮の島の三点を結ぶ海域を……『龍の三角』と呼ぶのだと聞いたことがある」

「「龍の……!?」」

「三角!?」

 

幻殃斉の言葉に三國屋、五浪丸、加世が驚く一方、薬売りは常世に言う。

 

「これで面白い物を見せよう」

「おぉ!?」

 

その言葉に常世は興味津々だ。薬売りは棒を持った手を卓の下に隠す。幻殃斉に「ここは……【アヤカシの海】なのだ」と説明された三國屋は慌てて「そ、そんなはずは……!」と近づく。自慢の羅針盤が方角を間違えるなんて思っていないからだ。

 

「ほ、ほらご覧なさい! 針はしっかり、鬼門の方を示しているではありませんか!」

 

皆が羅針盤の針を見た瞬間だった。

 

 

ぐるん

 

方向が変わった。

 

『うわあああああ!!!』

 

突然のできごとに、皆が驚きと恐怖が混ざった悲鳴を上げた。ただし

 

「えーすごーい!師匠どうして動くんですか?」

 

常世は怯えず方角が変わったことに興味津々だ。

 

「と、常世ちゃん。図太い(汗)」

 

流石モノノ怪を斬る薬売りの弟子。そう簡単に怯えない。加世は(怖いのないのかなぁ)と思ってしまう。薬売りは常世の問いに答えた。

 

「この、鉄の棒は“磁石”だ」

 

言いながら、彼は磁石を羅針盤のそばに置いたまますっと動かす。すると、針はそれを追いかけるように動いた。

 

「おぉー」

 

薬売りに磁石を渡された常世は右に動かしたり、左に動かしたりする。その為方角を示す針はそれに合わせて動いた。

 

「これを羅針盤の近くに……仕込んで、おけば」

 

つまり方角を龍の三角へ向かせることが出来る。つまり磁石を仕込んだ犯人がいるという事だ。

 

ドォ・・・ン

 

太鼓の音が聞こえてきた。海のアヤカシ・虚空太鼓。太鼓の音が聞こえるだけで危害は無い。

 

「残念至極! “船幽霊”でも現れようものなら、身共が成敗して成仏させてやったものを!」

 

その様子に常世はシラーと冷たい目で見る。

 

「な、なんだその眼は!(汗)」

「……別に」

「薬売り!どういう教育してるのだ!?」

 

まだ子供なのに冷たい目をする常世。幻殃斉は慌てて薬売りに言う。

 

「私以外の者には基本的にこうです。」

「師匠の事馬鹿にしたからねお前嫌い。師匠に協力的な加世は好き」

「うぐ」

 

 

ドォ・・・ン

 

『!?』

 

海の上のはずなのに地震の様に揺れた。

 

 

ドォ・・・ン

 

 

ドォ・・・ン

 

さらに揺れる。外を見ると海面がおかしい。つまりだ

 

「何者かに閉じ込められたらしい」

 

佐々木の言う通り閉じ込められた。

 

 

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