「あの二人が例の?」
「ああ。お蝶さんと獣面の男だ」
お蝶は佐々木家による家庭内暴力のせいか弱弱しい印象。獣面の男は敵対する者には容赦しないがお蝶には優しく接している印象だ。実際、お蝶に「貴方を、【牢獄】から救い出す為に生れた」と優しく言っている。おそらく佐々木家惨殺は彼も絡んでいるようだ。佐々木家の者達の亡骸の状況が違うのは彼が原因のようだ。
「師匠。奴と相対する時はどうするんですか?」
薬売りは男の術のせいで顔が消された。対策があるのかを聞く常世。薬売りは教える。
「奴の術は煙が顔に当たらなければ大丈夫。なら鏡で防ぐまでだ」
手鏡を術で大きくし、防ぐようだ。
「常世。これを渡しておこう」
「幻覚香」
薬売りが調合した、嗅いだ者に幻を見せる幻覚香だった。薬売りは男とお蝶を見る。なんと男は「この俺と一緒になってくれないか」とお蝶に求婚していた。
「直球な求婚ですねぇ」
「奴の事だ。お蝶さんを楽しませるために何かをするだろう。気づかれない様に香をまいて、二人に幻を見せる。」
「分かりました」
話している内にお蝶は求婚を受け入れる。男は大喜びで術で屋敷を作る。お蝶も一瞬で花嫁姿になった。
「おい皆! 俺の嫁だぞ!」
「見ろよお蝶さんだ!」
「お~手柄だなぁ。お蝶さんを嫁にするとは……」
壁に飾られているたくさんのお面は男の友人の様に「羨ましや、羨ましや。めでたや、めでたや」と祝う。その様子が面白かったのかお蝶は笑い、男は煙管をふかしながら呆れる。常世は隣の部屋にいるがお面達のどんちゃん騒ぎと男の煙管の匂いのおかげで常世の存在も常世がまいている幻覚香の匂いも気づかれていなかった。
『高砂や、この浦船に帆を上げて…』
宴もたけなわ。周りのお面達が男とお蝶のために祝言の時に謳う“高砂”を謡い始める。男とお蝶は盃を交わしている
「これで契は結ばれた……これより我らは二人で一人だ!」
「はい」
ガラガラガラ…
「どこへ出しても恥ずかしくないように躾て参りました。末永く宜しくお願い奉ります……」
現れたのは中年女性。彼女は男に必死に頭を下げている。
「誰だ貴様……?」
「どうかどうか、お願い奉ります」
「……母上、様?」
男は疑問符を浮かべ、お蝶は女性を見て驚いていた。
「師匠。効いてきましたね」
「ああ。奴が煙管をふかしていたおかげでバレなかった」
常世と薬売りはバレない様に話す。
「これで我が家、梅沢家先祖代々の墓参りに、胸を張っていくことができます。ほれ、お前もよくお頼み!」
母は恐ろしい鬼の面を着けていた