ただの薬売りの弟子ですよ   作:WATAHUWA

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動いてくれたモノノ怪。後は【形】【真】【理】を示して斬るだけ。すると

 

「……おじゃあああ!!?Σ(・□・;)」

 

沢山の天秤たちを見て大澤は驚いた。

 

 

「何をしておじゃるか!」

「……しっ」

「静かにして」

 

慌てて聞く大澤に薬売りと常世は静かにさせる。ただし

 

 

「お、おじゃあああ!!?」

 

当然その声を聞いて来た室町、半井も驚いた。

 

「だから静かにして!」

 

不満を言う常世。

 

「いやいやお嬢ちゃん静かに出来へんって!」

「薬屋、これは一体!?」

「モノノ怪が、動き始めたんですよ」

「この子たちはただモノノ怪との距離を測ってるだけ。」

 

薬売りと常世の答えに「ま、またそのような……!」とやっぱり信じていない。

 

「先刻からモノノ怪モノノ怪と……貴殿! モノノ怪をその刀で――」

「斬りますよ」

 

室町の言葉を最後まで聞かず、薬売りは言葉のままにばっさりと切り捨てた。

 

「しかし、それには……【形】と【真】と【理】が、必要なんですけどね」

「【形】はすぐに分かるけど【真】と【理】がねぇ」

 

からからから、からからから。

 

突然、天秤たちが薬売りの左隣を示した。

 

ビュッ

 

薬売りは札を投げつける。襖一面に貼られた札、それにはみるみると模様が浮かび上がった。婿候補の三人は隠れるようにして常世の背後へと走る。薬売りは腕を交差させて、札を貼った襖を睨む。

 

「……もう、遅かったか」

 

彼が交差させた腕を広げると、それに合わせて襖が開く。

 

 

隣の部屋には血の海に沈む男の無惨な亡骸だった。

 

「じ、実尊寺はん!? 実尊寺はんや!!」

 

半井が声を荒げる。

 

「実尊寺?確か四人目の婿候補?」

 

常世は確認する。半井は「そうや!」と答えた。男は四人目の婿候補、実尊寺だったのだ。

 

「ま、まさか……こ、これがモノノ怪の仕業じゃと!?」

「可能性が高い」

「「「ひい!!」」」

 

常世の言葉に3人は声を上げる。そうしている内に天秤はある方向を示した。薬売りは札を使って襖を開ける。

 

「る、瑠璃姫殿!?」

「おひいはん!!」

 

そこに居たのは座椅子に座っている屋敷の主である瑠璃姫。しかし彼女は火箸で首を貫かれ、鬼の表情で死んでいた。自分の妻になるだろう女性が死んでいたことに婿候補三人は瑠璃姫に駆け寄る。やはりというか大人でもこの状況で取り乱していた。

 

「実尊寺はんっていつ殺されはったんでおじゃるか!?まさか、実は誰よりもはやくここに来ておじゃって、ずっとここで転がって――」

 

大澤の言葉に室町と半井は固まる。

 

「この屋敷には誰がいる! アンタ達と、瑠璃姫と、ばあさんと!!」

 

薬売りの言葉に常世は婿候補三人に言う。

 

「同じくらいの童男を見た!あんた達は!?」

 

常世の問いに室町は慌てて答える。

 

「お、お前と同じか下ぐらいの女子を見た!」

 

室町は女の子を見たそうだ。

 

「ちっさい女子が、大人を殺したっちゅうんかいな!!」

 

やはりツッコまれた。常世と同じか下ぐらいの女の子が大人、しかも二人も殺すのが出来ないのは当然だ。

 

「と、【東大寺】!!」

「「!!」」

 

大澤がそう言うと、室町と半井の表情が変わった。

 

「【東大寺】は無事でおじゃるか……!?」

「東大寺……!」

「東大寺!?」

「! 待て!!」

 

薬売りは三人に待ったをかけたが、彼らは「東大寺東大寺東大寺」と瑠璃姫の亡骸の周りを漁る。その様子に流石の薬売りもポカンとしていた。常世はすたすたと三人の下へ行く。そして…

 

「いい加減にしなさい!!!」

 

バキ!

 

「おじゃ!?」

 

ドゴ!!

 

「うぐ!?」

 

ゴス!!

 

「おご!?」

 

常世の拳によって床に倒れた。

 

「まったく大の大人が東大寺東大寺って「【東大寺】が、どうかしましたんか?」

 

お説教しようとした常世の言葉を遮るように老婆が現れた。

 

「あれなら、ここではない場所で、大事にされております故……」

 

三人が探している【東大寺】とやらは老婆も知っているようだ。

 

「なにか……ありましたんか? あては、目ぇが悪ぅおますよって……」

 

目が見えない為か瑠璃姫の亡骸とその周りについて気づいてないようだ

 

「そ、そうか……それは、難儀な……」

 

はははと乾いた笑いを浮かべた大澤。しかし、はっとした。すぐ隣の部屋に実尊寺の亡骸がある。近づけば何かがあったか分かってしまう。大澤は大急ぎで走ったが薬売りは札で閉めた。そのおかげで老母は気づいていない。

 

「なにかありますのんか?」

「あぁぁ開けてはならぬ! 開けてはならんでおじゃる!」

「この奥には、女集には見せられぬようなとーっても下品な物があるのだ!!」

「そ、そや! ほんまに破廉恥なんや!!」

 

 

老婆が入らないよう説得する三人。常世は老婆に近づく。

 

 

「このおじさん達ねぇ、お嬢ちゃんは見ちゃ駄目って言うんだよ。ホント男ってこんなの好きだねェ」

 

火事場泥棒をしようとした三人を意味ありげに見ながら言う常世。婿候補たちはぐうの音が出ない。

 

「……そうどすか。ほどほどに」

 

そう言って老婆は去ったのだった。

 

 

 

 

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