ただの薬売りの弟子ですよ   作:WATAHUWA

34 / 41


老婆が去った後、常世はそ…と襖を少しだけ開けて廊下を見る。

 

「ど、どうでおじゃるか?」

 

大澤は恐る恐るとばかりに常世に聞く。

 

「うん。いないよ」

 

「「「はあぁ~~~~~~~…」」」

 

常世の言葉を聞き、瑠璃姫と実尊寺の死亡。自分たちの火事場泥棒(未遂)がバレずに済んだ婿候補三人は座り込む。

 

「心の蔵がもたぬでおじゃる……」

「大澤殿。如何なされるおつもりでござる? 本来なら、瑠璃姫殿の婿となり、笛小路流を継ぐことによってはじめて、【東大寺】が手に入れられたはず」

 

「【東大寺】とやらがこいつらの目的ですねェ」

「ああ。瑠璃姫様の亡骸に目をくれず探し出そうとする【東大寺】。気になるな」

 

すると三人はまた瑠璃姫の傍に行く。今度は火事場泥棒せず、組香の答えが描かれた紙を見るために。その間に薬売りと常世は退魔の剣を見る。

 

「退魔の剣鳴りませんでしたねぇ」

「ああ。彼女が【形】かと思ったのだが…」

 

退魔の剣は違うと薬売りと常世に伝えていた。

 

「全て違う香だったと……(ぎょく)はなかったという事か」

「薬屋はん、お嬢ちゃん。どないしはりました?」

 

二人の様子に半井が聞く。

 

「……いえ、てっきり彼女がそうかと思っていたのですが、“これ”が違うと言うものですから」

「違うモノが【形】かぁ」

 

「な、何を言っている……」

 

室町は二人を怪しそうに見る。不気味な姿の剣を見る派手な姿の薬売りと弟子。そう見るのは無理もない

 

「こちらのことですよ。……それより【東大寺】とは、一体なんのことですかね。もちろん、お寺のことじゃありませんよね」

「ここは大和(奈良県)ではないのにおかしいですよねぇ。あんた達【東大寺】ってなぁに?」

 

意味ありげに聞く薬売りと常世。しかし三人は怪しい二人に気にかけず、これからどうするかを話し合う。

 

瑠璃姫が亡くなってしまったのでもう一度組香をし、勝った者が【東大寺】を手に入れようとしているのだ。

 

「婿を決め今宵のうちに祝言を上げ、おひいはんが死なはったのはその後という事にすれば良いでおじゃる」

「そして笛小路流を継いだ婿が……【東大寺】を手にする」

 

「師匠。やっちゃいますか」

「ああ。」

 

薬売りは話し合う婿候補三人に言う。

 

「なるほど……香本をつとめましょう

その代わり!【東大寺】とは何か! 貴方達が瑠璃姫様よりも強く欲している【東大寺】とは……何か!

お聞かせ願いたく、候」

「素直に師匠に話すのが身のためだよ」

 

「す…素直に話さなかったらどうするのだ?」

 

室町が聞く。常世は意味ありげに言う。

 

「あんた達の大事な鼻を潰す

「「「ひい!!(泣)」」」

 

鼻を潰す。つまり香道が出来なくなるという事だ。怯える三人。そんな彼女に薬売りは「こらこら」と戒める。

 

「まあ常世の言う通り素直に話してほしいですね」

 

大澤、室町、半井は青ざめながらコクコクと頷くのだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。