モノノ怪を斬る。それを聞いて声を上げたのは当然小田島だ。
「……はっ。ぶ、無礼者!この期に及んでまだそんなことを……何が物の怪だ、不吉な!」
「うわ石頭だ」
常世の言葉に「当然の反応だ!!」と小田島は怒鳴る。すると短刀を持っていた伊國が「なんの細工だ?」と聞く。力を入れても短刀が抜けないのだ。試しに小田島もやってみるが
「ぬおおおおおお」
抜けない
「お前物を大事にしないでしょ」
「いや大事にするぞオレは!」
「じゃあ今すぐ放してよ。不機嫌になってるよその子」
師匠である薬売りの物を壊されるのが嫌なのか「今すぐ放してよ。」と言う常世。その一方、伊國が薬売りに抜く方法を聞く。
「斬るモノノ怪の
薬売りが持つ短刀は『退魔の剣』。モノノ怪を斬る。それだけに使う武器だ。しかし退魔の剣を抜くための三つの条件。
形、真、理
一体どういうことか
「もう勘弁ならん、番所に突き出してやる!」
怒った小田島が持っている退魔の剣を薬売りに向ける。飾りとして付けている鈴がリンと鳴った。
(大事にしてくれないね)
常世の考えているのが分かるのか退魔の剣はカタカタと小田島達にバレない様に鳴る。まるで「そうだな」と同意しているようだ。そうしていると
「水江様、水江様……!」
水江が倒れてしまった。自分の娘が殺された。精神的に無理がたたったのだろう。弥平が医者を連れてくることになったが
「弥平さんとやら、外にはでない方がいい。結界が完全じゃない」
「今出たら嫁さんのように血まみれだよ」
薬売りと常世が待ったをかけた。しかし
「黙れ、黙れ! 揃いも揃って戯言を!」
「いいか、くれぐれも余計なことは言うな。水江様がご不調とだけ伝えろ」
「へ、へい!」
自分よりえらい人の命令により出て行ってしまった。
(死ぬな。あの人)
変態とはいえ気の毒そうに思う常世。そう思っている内に勝山と三人目の家臣・笹岡による塩野に伝えるか伝えないかの言い争いになった。
「嫁さんが気の毒ですねホントに」
「常世の言う通り。気の毒だ」
小声で言う常世と薬売り。二人の言い合いが続く中、突然襖が開く音がした。
「あの、明かりを……」
加世が灯りを持ってきた。
「あ、確かに時間だ」
常世の言う通り、もう暗い時間だ。
「加世、真央様の所にも明かりをつけておいで」
「え」
さとの言葉に加世は固まる。亡骸があるのだから無理もない。
「だったら何! まさか嫌なんて言うんじゃないでしょうね!?」
すると小田島が加世の前に立った。
「私が一緒に行こう」
「………はい」
家臣の中で信頼できる小田島の言葉に安心したのか加世は頷いた。
「あの人いい人ですね」
「ああ。頭が固すぎなだけで良い奴だ」
「おじさんに昇格かな」
その様子に常世の評価が上がった。
「にしても調べられないのが痛いですよね」
「ああ。協力的な人だったらともかくな」
形、真、理を調べないと退魔の剣が抜けられない。モノノ怪を斬ることが出来ない。常世は「ふぅ」と思わずため息をつく。
「幸せが逃げるぞ」
「それは嫌です」
そう話していると
ヴアアァアァァアアアア……。
(………猫?)
常世は疑問符を浮かべる。加世から猫が嫌いな人がいると聞いた。なのでいないはずなのに猫の声が聞こえた。なので勝山達も疑問符を浮かべる。そうしていると小田島と加世が戻ってきた。なんか小田島の様子がおかしい。薬売りが立ち上がり小田島の前に行く。
ドゴ!!
小田島の腹に見事な蹴りを入れた瞬間だった。
ドシャ
小田島が立っていた場所に弥平の亡骸が落ちてきた