ただの薬売りの弟子ですよ   作:WATAHUWA

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死んだため肌色の悪い森谷。しかし次の瞬間、元の様子に戻った。

 

「皆は?…ほかに乗っていた客はどうした!?」

 

これまでのことは覚えていないようだ。

 

「降りましたよ」

「とっくの前にね」

 

薬売りと常世の言葉に森谷は驚く。確かに覚えていない彼からすれば駅はまだまだ先だ。

 

「貴方の番だ。皆待っている」

「だから聞屋。早く節子さんについて教えてよ」

 

その瞬間、「さっさと喋れ」とばかりに車両が揺れた。

 

 

「と、停めろ!停めてくれ!!」

 

森谷は窓をドンドン叩く。当然停まらない。

 

「そ、そんな」

 

椅子に座り込んでしまう森谷。薬売りは「停まりませんよ」と言ったが「知らん!!」と怒鳴る。

 

「ではずっと「嫌だ!!ごめんだ!!」

 

更には「あんた達ならできるだろ!?」と他力本願だ。

 

「師匠こいつ強情っ張りですよ。ちょっと痛い目に遭わせます?」

「こらこら」

 

 

常世と薬売りが言っていると森谷曰く節子の仇を討つために乗っただけと言う。

 

(嘘臭い)

 

常世はそんな森谷を嘘臭そうに見る。

 

ちりん

 

「ひぃ!!」

 

天秤の鈴が鳴った。三人はある方向を見る。そこに居たのは虎猫を抱いたオシャレなモガな女性。女性は森谷を酷い人と言う。

 

「市…川…」

 

この女性が市川節子だ。チヨが今をときめくモガと言うのも納得する。

 

 

カンカンカンカン

 

踏切の音が聞こえてきた。地下のはずなのに窓の外は町になっている。

 

「これは…猫が見せているのか」

「これを見ていれば聞屋が隠している話がわかりますね」

 

 

森谷が居たところには大量の猫。その隣に猫を抱いた節子。

 

「【理】の景色。見せていただく」

 

 

ジリリリンジリリリンジリリリン

 

 

そこら中から電話が鳴る新聞社。そこに森谷と節子がいた。節子は市長の汚職のネタを掴んでいたが、森谷が言っていた通り彼は記事にしなかった。でも彼女も諦めない。市長を張り込みした結果、汚職問題の証拠を掴んだ。

 

(本当に凄い人。市長の汚職の証拠を掴むなんて)

 

「俺の思った通りだ」

 

森谷は節子に優しく言う。森谷は節子を見込んでいた。必ずやってくれると思ったからこそワザと厳しくしていた。そして森谷は特ダネとして記事の一面に載せると言った。チヨが働いているカフェーで森谷の言葉を聞いた節子は嬉しさのあまり涙を流し、誰にもバレないよう宿で記事を書くことになった。……だが

 

 

(裏切られていた)

 

市長と森谷は繋がっていた。なので森谷は証拠、書きかけの記事を奪い、あの陸橋で待ち合わせしていた。

 

『俺は!!あいつの身を案じて 忠告に行っただけだ!!』

「「そう急くな」」

 

退魔の剣で森谷の言葉を聞く薬売りと常世。過去はさらに進む。

 

 

あの陸橋で記事を燃やされてしまった。当然節子は怒り狂う。一発ぶん殴るために仕掛けたが男と女。力の差で倒されてしまった。でも節子はただでは起きない。他にもある証拠を宿に残していたからだ。

 

「別の所に持ち込んでやる!!」

 

当然、森谷は慌てる。市長の汚職、自分と市長との繋がり、部下が集めた証拠隠滅をしたことを世の中にバレてしまう。

 

「渡せ!!」

「絶対に渡さない!!」

 

その時の言葉をハルが聞いた。節子は必死に抵抗したが陸橋から線路に落とされた。陸橋下を覗き込む森谷を正男が目撃。その瞬間、木下が居眠り運転した列車によって死亡した。そして森谷が作った状況のせいで「市川節子は自殺」と門脇に言われた。

 

「市長の汚職、上司の裏切り、ちゃんと確認しなかったせいで死んだ。状況で自殺にされた。数回しか来なかったのに嘘を言われた。逃げる人影を見た。言い争う声が聞こえた。………こう思ってしまいますよねぇ師匠。」

「ああ。」

 

『許さない』

 

カチン

 

 

退魔の剣が鳴った。

 

 

「解き、放つ」

 

常世は黄金色の大量の札を放つ。その隙に入れ替わる薬売り。化猫は攻撃を仕掛けるが黄金色の札にそんなものは通じない。

 

チャキン

 

「滅!!!」

 

ザシュ!!!

 

『ギャアアアアアアアアア!!!』

 

斬られた化猫の断末魔が響き渡った。

 

 

後日

 

 

「師匠、師匠。節子さんと市長の話載っていますよ」

「ほう。流石に一面だな」

 

常世が持っている新聞。そこには節子と市長の話が大きく載っていた。

 

「『3か月前に自殺をした女性記者、市川節子さんだが現場近くの住人から言い争う声が聞こえたと証言を貰った。当時、牛乳配達をしていた少年も現場から去る人影を見たと証言をしたので警察が調べ直した所、直前に彼女が泊まっていた旅館に地下鉄福寿駅開通式典以来行方不明になっている市長・福田寿太郎氏の汚職の証拠が見つかった。さらに市川節子さんの上司で開通式典以来行方不明になっている森谷清氏が福田氏と繋がっていたことが判明。おそらく市川節子さんは森谷氏によって線路に落とされ、直後に通った電車に轢かれて死亡したと思われる』とあります」

「『また当時の電車を運転していた運転士・木下文平氏は居眠り運転、及び何かを轢いたと分かっていたのにも関わらず、何を轢いたかを確認せずにそのまま運転したことにより警察に逮捕された』…か。当然だな」

 

 

薬売りと常世は歩く。下駄をカランコロンと鳴らし、変わらぬ姿でこの世を歩き、薬を売るために。そして【モノノ怪】を斬るために。二人は人に問われたらこう答える。

 

「ただの薬売りですよ」

 

「ただの薬売りの弟子ですよ」

 

……と。

 

 

 

 

 

 

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