ただの薬売りの弟子ですよ   作:WATAHUWA

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医者を呼びに行ったはずの弥平の遺体。それを見てこの場に恐怖の悲鳴が響き渡る。どこから現れたのか。すると薬売りと常世があることに気づいた。

 

「「来る!」」

 

ばっ

 

「ああ!?」

 

一瞬で縛り付けていた縄を解いた二人。それを見た小田島は「貴様ぁあああ!!」と捕まえようとしたが

 

りん

 

ビシ

 

薬売りは伊國の傍に置いてあったはずの退魔の剣を持ち、常世は自分の髪に挿している簪で小田島を制する。

 

「邪魔立てするな」

「札まみれにするよ」

「へ?」

 

常世の札まみれという言葉。一体どういうことか。次の瞬間

 

 

バババババババババババババババババババ!!!

 

「ひいいいい!!……ええええぇぇぇぇぇ?Σ(・□・;)」

 

いきなり来た大量の札に怯える加世。

 

バババババババババババババババババババ!!!

 

それを気にせずどんどん部屋に貼っていく薬売りと常世。周りの人たちは大量に飛んでくる札に怯える。

 

「他に人がいるのは!もう一人は、どこにいる!」

「師匠師匠!向こう向こう!」

「奥の間にご隠居様と、真央様が!」

 

常世と加世の言葉を聞いて薬売りはご隠居が居る部屋を開け、大量の札を貼った。貼られた札全てに赤い目の模様が浮かび上がる。

 

「大丈夫だ、奴は入ってこれない」

「最初っからこうすれば良かったですね」

 

そう言っていると

 

 

ゴオオオオ!!!

 

いきなり揺れる部屋。一般人である加世たちは怯える。

 

「どういう仕掛けか知らないが、その絡繰り……暴いてくれる!」

 

せっかく札を貼った襖を開けてしまった小田島。

 

その瞬間

 

ドゴォ!!

 

「ごふ!?」

 

常世の飛び蹴りを喰らった。薬売りはその隙に襖を閉め、入ってこない様に札を貼る。

 

「……気配が去ったな」

「ほ」

 

薬売りの言葉を聞いて常世は胸を撫で下ろす。

 

「……なんだ、アレは姿、形はよくわからなかったが……」

 

小田島の様子からして一瞬見たようだ。

 

「言ったろ。モノノ怪だと」

「全くおじさん命知らずだね」

「お、おじ!?」

 

「結界の外に出れば奴の餌食だ。結界も、何時までもは保たん。このままでは早晩、このようになる」

 

真央と弥平の様に無惨な姿になってしまう。

 

「モノノ怪は絶対に斬らないといけない。」

「しかし、退魔の剣を抜くには条件がある。形と真と理を、剣に示さねば、抜けぬ」

 

常世と薬売りは皆に言い聞かせながら小田島に近づく

 

「まずは、形」

 

小田島に何かの毛がついていた。

 

「毛がついているモノノ怪。……それじゃあ形は」

「ああ。これは、【化猫】だ」

 

それを言った瞬間、退魔の剣がカチンと鳴った。

 

「後は二つ。モノノ怪の形を成すのは、人の因果と縁なの。」

「よって、皆々様の、真と理……」

 

「「お聞かせ願いたく候」」

 

ここに人ではない何かが居る。周りはやっとそれを理解してくれたのだが

 

「おい、酒がないぞ。誰か酒を持って来い」

 

伊國が非常事態にも関わらず酒を持ってこいとさとへ言った。ただし

 

「……加世、行っといで」

「え!?」

 

安堵していた加世の表情が凍りつく。

 

「早く、御酒だよ。場所はわかってるだろ」

 

嫌な仕事を加世に押し付けたのだ。

 

「頼まれたのはさとさんなのに……私ここから出たくありません!」

「加世。本当に行かなくていいよ。無視だよ無視」

 

加世に伊國とさとの言葉を無視することを助言する常世。すると薬売りが立ち上がる

 

「塩がいる。ついでに酒を取ってくればいいんだな」

「おー師匠かっこいい!加世もそう思わない?」

「え?う、うん////」

 

危険な状況なのに取ってきてくれる。確かにその行動はかっこよかった。

 

「まだお前を信用したわけではない!」

 

やはりというか小田島が待ったをかけた。

 

「おじさんいい人なのにねー」

「ホントよねー小田島様いい人なんだけど頭の固さはちょっとねー」

 

小田島は良い人なのだが固い石頭が残念と思う常世と加世。そうしている内に小田島も付いて行くことになった。

 

「あ、あの……私も、行きます!」

「え?いいの?」

 

加世の言葉に常世は聞く。

 

「だ、だって薬売りさん達が代わりに行ってくれるのに私は安全なトコにいるなんて」

 

つまり腹を括ったようだ。

 

「常世」

「はい師匠」

「小田島さんと加世さんと一緒に塩と酒を取りに行ってくる。帰ったら手伝ってくれ」

 

「分かりました。行ってらっしゃい」

 

こうして三人は塩と酒を取りに行くために部屋を出た。

 

 

「おいガキ」

「何酔っぱらい」

 

伊國の言葉に辛辣に応える常世。そのことに伊國は常世を睨む。

 

「本当のことじゃない。こんな非常事態に酒を飲み、更に部屋から出てはいけないのに酒を取りに行かせる。馬鹿な酔っぱらいしかできないよ。ご隠居が弟を選んだのがよーくわかるねぇ」

「なんだと!!」

 

伊國は常世に斬りかかろうとする。勝山が「伊國さま!お待ちを!!」と待ったをかけたが。

 

 

ガキン

 

「!?」

 

かんざしで刀を受け止めていた。

 

「かんざしって武器にもなるの。その眼突いて失明させようか?」

「……ちっ」

 

伊國は離れ、常世はいつもの様に簪を髪に挿した。

 

「それで聞きたいのは何?師匠?それとも退魔の剣?」

「ガキはあの剣を抜いた時を見た事があるのか」

「うん。何度も。形と真と理を示してね。」

 

そう言っていると

 

「御酒をお持ちしました」

 

加世が帰ってきた。

 

「お疲れ加世。師匠が居たから大丈夫だったでしょ?」

「うん。油で転んだだけで大丈夫だったよ」

 

(油……来てたんだ)

 

実は化猫は油を舐めるのを好む。行き違いでよかった。

 

「それじゃあ私は師匠のお手伝いに行ってくるね」

「行ってらっしゃい」

 

常世は入れ違いで部屋から出た。

 

「師匠お帰りなさい」

「ただいま。それじゃあ常世は塩を持ってくれ」

 

そう言って小田島が持つ塩が沢山詰まった壺を見る。

 

「あ。待て待て小娘!!俺でも重たいんだぞ!!お前だったら間違いなく落とす!!だからこのまま…」

 

このまま自分が持つと言おうとする小田島。ただし

 

ひょい

 

常世があっさりと持ち上げた。それを見て小田島はガ――――――ン!!とショックを受ける。実際、あまりの重さに膝をつきそうになったのに10歳前後の常世にあっさり持ち上げられたから無理もない。それを気にせず薬売りはザアアアアアアァァァと塩で線を引き、常世は涼しい顔で付いて行く。

 

「何を仕出かすかと思ったら」

 

ザアアアアアアァァァ

 

「コケ脅しのハッタリもいいところだな」

 

ザアアアアアアァァァ

 

「………ふん。何だこんなもん」

「ふん!」

 

ドゴ

 

「うぐ!?…な…泣き所(泣)」

 

塩の線を踏んづけようとした小田島。しかしその瞬間、常世のかかとで蹴られたのだ。しかも豪傑と名高い武蔵坊弁慶でも痛がる脛。なので小田島は涙目だ。

 

「師匠の邪魔するからだよ」

「俺の邪魔すると常世が怖いぜ」

「ぐうう(泣)」

 

確かに実際に蹴られた。

 

 

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