常世の蹴りで痛い目にあった小田島。すると「あの……」と加世が現れた。
「手伝えることがあれば、何か……」
どうやらお礼とばかりにお手伝いに来たようだ。
「……ありがたい、そこの“口ばっかり”の“木偶の坊”よりはよほど頼りになる」
「誰が木偶の坊だ!」
「だって師匠の邪魔やらかしたじゃない」
薬売りの言葉に文句を言う小田島。しかし常世の言葉に「……ぐ」とぐうの音が出ない。
「それじゃあ師匠。やっぱりあの子たちですよね?」
「ああ。こいつを持ってくれ」
ガラ
勝手に開く引き出しに驚く加世。出てきたのは常世がやじろべえと言った物だ。
「それはなんだ!?」
「天秤も見たことがない?」
「師匠。斬新な見た目だから分からないんですよ。加世、指出して」
常世は加世に指示する。加世はおそるおそる指を出すと天秤と呼ばれた物は勝手に指先に止まる。するとくるっと加世に方向転換する天秤。そして「こんにちは」とばかりに斜めになった。
「加世さんのこと、気に入ったみたいだよ」
「見た目綺麗だけど中身は可愛い子でしょ?」
「うん!」
見た目といきなり動いたことに驚きはしたが確かにお辞儀したりと可愛いところがある。加世のお手伝いは常世と共に天秤を薬売りへ渡すことだ。ただし
「常世ちゃん助けて~」
「あらま」
天秤がどんどん加世の腕、肩、頭に乗っかっていくのだ
「加世人気者だねぇ」
笑う常世に加世は慌てて「う、嬉しいけど動けないの!」と言う。確かに嬉しいけど動けない。このままでは薬売りに渡せないので常世は両腕を出す。
「ほら皆。加世が困ってるからおいで」
すると天秤たちは常世の両腕、肩、頭に乗ってきた。
「た、助かった」
「一人ずつ行こうね」
常世が言うと天秤全部が「わかった」とばかりに斜めになった。流石常世。天秤たちの扱いをよく知っている。そうしている内に小田島が「悠長なことしているしてる場合じゃないだろ」と文句を言い始めた。
「ねえ常世ちゃん」
加世は不安げに常世に言う。確かに薬売りはいつまでたっても剣を抜かないからだ。
「加世。ちゃんと後で説明するから」
「……うん」
天秤を部屋の周りに並べた後、薬売り達は部屋に戻った。
「今から師匠が説明する。全員、しっかり聞き、師匠の問いには必ず答えるように。……でないと」
常世はトントンと簪を触れながら言う。問いに答えなければ痛い目に遭うぞと伝えている。その行動に部屋の外に居た薬売り達、ご隠居と伊國以外は青ざめた。
「それではどうぞ師匠」
常世に言われ、薬売りは皆に言った。
「人の因果と縁が巡って、モノノ怪を為す。その【真】と【理】を聞かせてもらいたい」
「なんだ、その真と理というのは。なぜ話さねばならぬ」
勝山が低い声でそう言う。
「【真】とは、事の有り様。【理】とは、心の有り様」
何かが有り、何者かが、何故にか、怒り恨んでいる。モノノ怪はそうしてできる。
「一つ。何故、この家には猫がいない?」
「鼠だらけの屋敷だから多少我慢して買うよね普通」
今回モノノ怪は化猫。つまりこの坂井家の誰かが猫に恨まれることをやったのだ。
「でも恨みって……だって、台所に入り込んでくるから、水かけたり追っ払ったりしたけれど……だからって、恨むとか祟るとかね、ないですよね!」
加世は食べ物を盗みに来る猫を追い払うために水をかけちゃったようだ。
「モノノ怪には、モノノ怪の理がある。それは、俺達の腑に落ちるものなのかどうか……逆恨みって言葉があるように、道理や辻褄なんぞ、必要ないのかもしれん」
「自分にとって何でもないことでも、誰かにとっては嫌なこと。水を掛けられるのが嫌な猫には十分恨みの対象になってしまうの」
「そんな……だって、もっとひどいことした人だっているのに!」
加世曰くさとが猫を買っていたそうだ。でもその猫は屋敷にいない。
「で、その猫は?」
「まさかやらかしたのはお前?」
薬売りと常世に言葉にさとは慌てて言う
「私は知りません! 猫がどうなったかなんて……弥平が全部やったんですから!」
「その金は誰の金ですか?」
しかし答えない
「別に、答えたくないなら……」
薬売りは常世を見る。常世はかんざしに触れる。それを見て青ざめたさとは「笹岡様です」と答えた。
笹岡は本当にバカなことをやらかす伊國派。常世は伊國を見る。それに気づいた伊國はニヤニヤ笑いながら言った。
「斬ったなぁ」
伊國は手に入れた刀の試し斬りするために猫たちを斬ったのだ。