なんとも非道な行い。なので勝山は笹岡に「何故お止めせんのだ」と言う。確かに無関係な猫を斬るなんて非道な行い。家臣だったら止めるのが普通だ。しかし笹岡は「では犬を斬れと?」と言う。
「師匠鳴りませんね」
「ああ。虐殺ではなさそうだ」
勝山と笹岡の口喧嘩の中で常世は薬売りに言う。退魔の剣は形、真、理を示すと鳴る。しかし伊國による猫虐殺を聞いても退魔の剣は鳴らない。薬売りの言う通り、原因は猫虐殺ではなさそうだ。そうしている内に勝山と笹岡の口喧嘩が熱を上げていく。このままでは殴り合いになってしまう。すると
「やめんか」
今までずっと静かに座っていたご隠居が待ったをかけた。ご隠居は仲違いをやめてどうすればいいか考えてほしいのだ。
「坂井のことを考えて嫁ごうとしてくれた真央が、そこにいるのだ。無様な姿は見せたくはない。……わかってくれ」
屋敷で偉いご隠居の言葉と坂井のために嫁ごうとし、亡くなってしまった真央の存在によって勝山と笹岡は大人しくなった。
「今、何刻でしょう……」
何気なく問う加世。かなり時間が経っていると思うので真夜中だと思う。小田島もそう思ったのか「……子の上刻か下刻か」と呟く
「まさか、このまま夜が明けないなんてこと……」
「そんなこと、あるわけ無いでしょう!」
怒鳴るさと。しかし彼女はやはりというか怯えている。
ちりん
部屋の外から鈴の音が聞こえた。
「い、いかん! 誰かが訪ねてきたのかもしれん!」
「待て」
薬売りが待ったをかけた。部屋の外はモノノ怪の領分。誰かが来ることが出来ないのだ。
「と、常世ちゃん鈴の音が聞こえたってどういうことなの?」
「………あの天秤はモノノ怪との距離を測るって師匠が言ったでしょ。天秤の鈴が聞こえてきたならモノノ怪が近づいているという事」
その証拠に鈴の音が聞こえた方向の札に赤い目が浮かび上がった。緊張が走る部屋。札の様子からしてモノノ怪はご隠居がいる部屋へ向かって射る。それに沿って薬売りと常世は移動して警戒する。そうしている内に水江が目を覚まし、真央の亡骸を見て大泣きした。
ちりん
「「!」」
鈴の音が大きく聞こえた。つまり部屋にとても近いと言う意味。すると
「み、ず、え、さ、まぁぁ……」
「え!?」
その声を聞いて常世は真央を見る。真央の顔が違う女性に変わっていた
「ぎゃあああああ!!!たま、き殿! 珠生殿ぉおお!!」
恐怖のあまり悲鳴を上げる水江。周りはその名に驚く者。知らないのか疑問符を浮かべる者に分かれている。薬売りは見たが真央のままだった。
「どういうことだ常世」
「嫁さんの顔が違う女性になっていました!」
薬売りの問いに常世は素直に答える。
「なんでも、なんでも償いを……! 来ないでェエエ!!」
水江は知っているのか恐怖のあまり反対の方向へ逃げていく。このままでは結界を開けてしまう。捕まえようとしたが
がし
「何!?」
「師匠!?」
真央の亡骸が勝手に動き、薬売りの足を掴んだ。もうこうなったら仕方がない
「奥へ! 奥へ逃げろ!!」
「全員、こっちに逃げて!」
その指示に周りは行動する。加世も薬売りの薬箱を背負い、常世の薬箱を抱えて水江のこと心配していた小田島へ叫ぶ。なので小田島も逃げる決断をした。