ご隠居と真央がいる部屋へ逃げた皆は狂っている水江を見る。彼女が結界を外した瞬間だった。
「……全部赤い」
加世の言う通り木も池も、空、さらに大量の猫たちが赤かった。
「……花嫁?」
常世が呟く。そんな猫だらけで赤い庭を白い花嫁衣装に身を包んだ女性が歩いていた。
「化物めぇえええ!!」
水江を救うために勝山は刀を抜く。薬売りは「やめろおお!!」と叫ぶが勝山と水江は何かに飲み込まれた。
「化猫め……!」
薬売りは勢いよく両手を交差させると、目の前の襖が勢いよく閉じる。そのまま彼は両手を前につき出して化猫を押さえる。
(まずい!)
このままでは薬売りも飲み込まれる。常世は廊下に置いている塩を持ってくるために違う襖から廊下へ出た。化猫は気づいていない。塩が詰まった壺を掴んだ常世は部屋に戻る。
「常世ちゃん!?」
壺を掴んで戻ってきた常世を見て加世は驚く。常世はそれを気にせず壺を振りかざした。
「師匠の邪魔するな!!」
ドプ
塩が効いたのか化猫は離れてくれた。
「何を、怒っている? お前の【理】は、なんだ!? お前の【真】はどこにある!?」
常世が作ってくれた隙をつき、結界の札を貼っていく。一室、一室、壁を作っていくが
(けど結界は時間の問題すぐに来る。)
さらに、伊顕が居ない。逃げ遅れてしまったようだ。
「あれは、誰だ? あれが“真の一部”、“理の形”だろう。奥方は、【珠生】殿と呼んだぞ 他の誰も、娘のことを知らないのか?」
「古参の奴。まさかその珠生さんにやらかした?それじゃあ殺されるのは当然だね。お前らの自業自得。助けてほしいなら師匠に真と理を話せ」
しかし誰も答えない。本当に珠生のことを知らない人も居るし、知っている人は化猫へ恐怖と助かった後の周りの目が恐ろしいからだ。
ずしんと部屋が揺れる。
「な、なんだ?」
「ひと部屋結界が破られた。ここまですぐ来る」
「ま、まだ抜けんのか!? 早く抜け!」
笹岡が命令するが
バキ
「グハ!!」
常世に蹴られた。
「さっきから師匠が真と理を言えって言っているでしょ?お前らが言わないから抜けないの。さっさと珠生さんのことを話せ。」
「常世の言う通りだ。最も刀を抜いたとしてもモノノ怪の力に勝てるとは思わないがな」
「な、なんだと!? 退魔の剣だと言ったではないか!」
「剣を操るのは、人間だ」
退魔の剣を抜いても薬売りの力量次第なのだ。そう言っている内に残りの結界が破れかける。
「結界が破れかけているよ。全員死ぬのはお前らのせいだね。私達と加世とおじさんが可哀想」
常世がそう言っても答えない。