「お楽しみの所悪いが、ショータイムはまだ終わってないぜぇ?」
何故ここにPohが?いや、付け回していたのか。Pohは暗殺向きのスキルを取っているはずだ。隠密は俺も高いが、見破るスキルは高くない。そこの差だろう。
茂みの向こうから飛び出てきたPohは素早くナイフを弄びこちらに向ける。
「Poh……つけてたのか?」
Pohの動きが止まりフーデットケープの向こう側にある光った目はこちらを据えていた。
「HAHAHA!!ナイスジョーク!broのその狂いっぷりはさいっこうだぜぇ!」
物凄くうざい。はやく殺してしまいたい。だが、あの夜殺せなかったPohを今俺が殺す事が出来るのか。俺の頭の中で何百何千と殺したこいつは今もまだ息を止めることはない。
「うざい。はやく質問に答えろ」
「HA!お前のそういうとこ、嫌いだぜ。狂った時の目はさいっこうなのになぁ。」
「俺もお前の事は大っ嫌いだ。戸塚を殺した、お前の事は絶対に殺す」
こいつの事は俺の為にも、戸塚の為にも殺さなければ、気が済まない。
マユリは困惑したようにPohと俺とを見比べてくしゃみをした。
雰囲気にそぐわない、可愛げのあるくしゃみの仕方に一瞬間が抜けたが、警戒を解く事はなかった。
「HA!面白くないな。さっきのbroは面白かったのになァ?HAHAさっきのbroには"何が起きれば"なるのかァ?」
Pohは狂ったように、クククっと笑い、俺を睨みつけている。一瞬見えた目に憎悪のような、嫉妬のようなものを感じ、鳥肌が立つ。
気持ち悪い。だが、これは………
『死ね…』
三人目。
三人目。踏み込んでしまえば後の祭り、なんてことない作業のように殺せる。
今までなんでこんなクズを殺せなかったのだろうか。
殺しは快感として自己の欠陥を埋めるように満足感を与える………
「ぐっ…………ぁ……俺が」
記憶の一部。視界に映ったのは人を殺して嗤っている自分。
下卑た目を此方に向ける集団に俺は空っぽの瞳を向けて、次々と人を殺した。
一部だけで、強い衝撃……俺は一体何人の人を殺したのか……
怖い、自分の中に、別の自分がいるような感覚、気持ち悪い以上に、異常な感覚だ。
俺は……人を……殺した?
「その様子じゃ思い出したようだな。そんな早く思い出せるなら思い出せよォ。どうだった?人を殺した感覚は?」
「ぅ……うああぁあァア!あぁあああ」
人を……殺した。俺が、人を、殺したのだ。Pohに言われるまでもなく確かに俺は人を殺した。マユリに群がって犯そうとする彼らを躊躇いもなく殺した。
罪だ。軽い訳がない。殺したのだ。人を、この手で。
「Ha!HAHA!面白くなってきたなァ?bro?あとは…」
未だ俺は叫び声を上げている。それを見かねたマユリは俺を宥めるように背中をさする。
嘔吐物なんてものはなく、仮想空間で出るはずもない胃酸を吐いた。続いて吐く。何も出ないのに、吐き続ける。
「これで、フィナーレ。bro?早く起き上がれ」
周囲に鋭い斬撃音が響いた。鍬を思いっきり土に当てた時の音に似ていた。
ぼとっ、と続けて地面に小さな衝撃が落ちる。
涙なんて、俺の目から落ちる事はないと思っていた。小さい頃これからは何があっても泣かないと決めたあの頃から。だが……
マユリの腕が切り落とされた所をみてしまうと、胸が締め付けられた。
「Pohゥー!!!」
「HA!お前じゃ俺を殺せない。そうだろbro?」
「やめて!もう、誰も殺さないで、八幡」
ものすごく痛いはずなのにマユリは切れてしまった腕を抑えることもなく、涙を晴らした目で訴える。
彼女の意に反する行動に罪悪感を覚えながらも、目の前の憎悪の対象を排除する為に刀を振るう。
ソードスキルを発動し、相手を確実に殺すように追い込んでいく
「だめだ!こいつは!!こいつは!!!」
Pohの首元に刀の刃を当てた。当てたのに、力を入れれば今すぐにでも殺せるのに………
「何故だ……なぜ殺せないんだ!」
まただ。激しい頭痛。人型モンスターを倒そうとした時に起こす、発作。吐き気と共にやってきて、その場に蹲る。が、それに耐えながら立ち上がる。
ここで、殺さなければこいつはいつまでも人を殺し続ける。
法律がないこの世界でも。法律がある現実でも。
だから、俺が今ここで殺して、悲劇と惨劇を繰り返させない。これ以上犠牲者を出さず終わらせてやる。
「HA!残念だったな。Game Over。来世でまた再開しなァ?」
グサリと、生々しい音が、耳を掠めた。
一瞬だった、俺がソードスキルを連発したせいで硬直した時を狙って。その瞬間、最初から狙っていたのはマユリの命俺の事など眼中にないことに気づく。
マユリの唇が少し動いて、最後には笑った。可愛らしい丸っこい瞳は真っ直ぐとこちらを向いて優しく光っていた。
時間が止まったように、スローモーションで彼女の首が落ちていき、そのうちにポリゴンとなって消えていく。
時折赤く光る星々が俺を怪しく照らし、遠くにある月明かりが一瞬赤く濁ったように見えた。
悲しいと嘆いても、苦しさにのたうちまわっても、寂しさに媚びても、彼女は永久に戻ってこない。
俺はマユリに別れを告げることなく、最後の別れを迎えた。
12月、16日。午後8時。SAOからひとりの少女の命が潰えた。
その森林に暫く剣戟が響いたが、暫くすると静かになり、森林の中で一番大きな大樹の下には盛られた土と、赤いアネモネが添えられている。
それから、月日が経って第一層はクリアされその大樹には一人の少年しか辿りつけなくなり、森林に入るものは殆ど誰もいない。
第一層攻略で大きく貢献した人間は、その少年だった。殆ど一人でボスを攻略し、死亡者を一人で抑え、その責を一人で請け負った。
それでも、少年にも仲間ができた。以前は壁を隔てて人を避けていた彼にも、数人の仲間が。
第一層、名もなき森林奥。
少年はまたも花束を持ち寄って、そこに眠る少女に笑いかける。
彼以外の誰にも辿り着けなくて、入ることさえできない森の中。
不思議な風が吹いた。心地よく涼しい温度で彼の頰をなぞるように吹いた。
彼の瞳は虚ろなのに、綺麗に輝いている。奥にあるのが虚ろでも、埋められた偽物はいつしか本物になる。
彼と彼女の物語はまだ終わっていない。これからも続くのだ。偽物の物語なんかじゃない。本物の物語が、ずっと、ずっと、続いてく。
Fin?
短いかもしれませんが、一応第一章終了です。あまり面白くないかもしれませんし、SAOの内容と俺ガイルの内容が大幅に改変されていると感じられたかと思います。
それでも「見てやる」という方がいてくださることを信じて書き続けます。私は文才や情緒等が理解できないことがあるので変に感じた所があれば感想でお伝えください。
長々と変な話をしても仕方ないので、第2章の話をします。大幅に改変する部分はないのでいまプロットとしてある資料で作成するのですが、放って置いた小町ら現実世界での出来事や、うまく収まれば最終章へ繋がる第2ターニング、があるかな。複雑な話にしたくないので単純すぎておもんないと感じた方はバック推奨。
この作品では人がバンバン死んでいくバイオレンスな作品ではないので「早くも人死んだ!ヤベェよこいつ」みたいなコメントはよしてください。これから先人が死ぬことはありません。キリトが入るギルドの人達も死にません。
嫌に長ったらしく続けるつもりはないので完結までが短いです。ペースは1日3話書き綴り1日1話投稿。第2章が終わった時にまた報告します。
因みにマユリの過去は実際に起きた凄惨な事件を参考にしています。胸糞悪いので詳細は言いません一家四人殺人事件で調べればでるかな、たぶん。