「おい、小町?皿の破片を踏むと危ないから取り敢えず掃除するな」
「まっで。いなくなるなんてい、言わないで。。ぐだざい」
俺の手をとって本気で泣いている小町を見ると相当だったようで、頰が焼けたように赤くなっている。
小町の体を俺の方へ寄せる。俺も少し皿の破片を踏んでしまったがそんなことはこの際どうでもいい。小町。
その間に皿の破片を集めたり、生きている食器を洗面台に置いて行ったりする。
「ふっ、アニメに影響されたか?」
「ち、ちが、違う!!そのくらいのこと分かるでしょ!バカ、ボケナス、八幡!」
「……八幡は悪口じゃねぇし。」
「はぁ」とため息をついて、何を言おうとしていたか考える。するとそれはすぐ頭の先まで出かかっていたものであると気づき、言葉を続ける。
「まぁ、なんだ、あのことを気にしてんなら、ごめん。ちょっと不謹慎だったよな」
「ふん、お兄ちゃんなんてゴミいちゃんなんだから許すに決まってるじゃん。小町も皿割っちゃったし」
「ふっ、皿と俺の失言でおあいこな」
「ずず………そう言うとこほんとポイント高い」
ちょっとは落ち着いたようでさっき程は涙が出ていない。それでもまだ頰は赤らみ髪も少し乱れており、手で直してやる。
「お前は可愛いんだから、いつまでも泣いてると美人が台無しだぞ」
「………そうだよね。ありがとお兄ちゃん。」
髪のセットが終わったので、小町に風呂に入るように勧める。
「風呂入ってきな。後は俺がやっとくから」
「うん。さっきのは聞かなかったことにしとくねお兄ちゃん」
てへぺろと舌を出してにこっと笑う。
くそ、可愛い。それはともかく聞くんじゃなかったな。やはり、小町にはあの件が重く引きずっているらしい。これでまた俺に何かあったら………考えないようにしよう。それは最悪な展開だからな。
「悪かったな」
「ううん。ひとつだけ。お兄ちゃんが居なくなったら小町
死んじゃうかもしれないから」
と言い残し風呂場へと去っていく。
「は?いや、まさかな」
最後まで聞こえなかったが、小町の声は低く、とても重く、寂しそうに響いていた。
小町はなんて言ったのだろうか。後で聞いてみよう。
SAOを一区切り終えた後で。あ、そうだ、初SAO記念としてピザでも頼もうかな。……勿論自腹で。
片付けはあらかた完了。あいつ多分バスタオル持って行ってないよな。うん。いつもバスタオル忘れるから当たってるはずだ……
「小町ー、バスタオル置いとくからなー」
予想的中。バスタオルを持ってきていなかったので、置いておく。聞こえたかな」
「小町ー、バスタオ「お兄ちゃん一緒に入る?」……………置いとくからな」
うん。聞こえなかった。何を言ったのかも、何をしようとしたのかも。何も。
2時間も経ってないのにどっと疲れてしまった俺は部屋で先にSAOに入っておくことにした。
開始イベントは17時あたりだったから、11時くらいにサーバーが開く。んだと思う………
階段を登り、部屋の扉を開けて、自室へ入る。
ナーブギアを手に取り、思想に耽る……
文化祭、例の件、 修学旅行
色々あった、色々あったけど、今日くらい羽目を外して遊ぶとしますか。
と、思い至ったが、昨日の嘘告白の件でやはり雪ノ下と話しをつける必要があるかと考え、電話を掛ける。雪ノ下の電話番号は持っていない為先に由比ヶ浜に掛ける。
ぷるぷるぷるぷる、ぷるぷるぷるぷる
ワンコール、ツーコール、…………
五分程経っただろうか、由比ヶ浜は出ない。留守番電話へと切り替わり、咄嗟に何を言おうか考える。
やはり出ないか………
「由比ヶ浜、昨日の事で話したい。気分を害した事は…謝る。すまなかった。一言で終えてはいけないのは分かってるし、言いたい事は山程ある。じゃあ、また学校で」
留守番電話を終えて、ぷつっと線が切れる。
修学旅行で、海老名さんに嘘告白をして奉仕部へ来た依頼の解消をした。
然し雪ノ下達は葉山達との反応とは何か違った。皆が、とるはずだった行動とは、やはり違った。
『あなたのそのやり方嫌いだわ』
パチン!
その場に衝撃と鈍い音が響き、俺は叩かれたのだと気づく。その時点で思考は後悔と罪悪感で包まれた。
『上手く言い表せなくて、もどかしいのだけれど、あなたのそのやり方、嫌い』
俺は叩かれた頰を抑え、半ば涙目で雪ノ下の方を見る。
『比企ヶ谷君。貴方は………。いえ、なんでもないわ。由比ヶ浜さんの気持ちもちゃんと考えてあげなさい』
由比ヶ浜の気持ちとは何か……俺は考えるまでもなく、何かを取り違えたのだろう。
昨日はあまり寝ていない。寝れるわけもなく、考え続けた。俺がした行動の意味と結果を。
葉山達と海老名さん、戸部を除けば二人の依頼は解決した。告白の成功という成立しなければ成功しない戸部の依頼を除く二人の依頼は解決したのだ。
でも、俺の望む反応ではなかった。ある意味での軽蔑と疎外、消失感と理解できない欺瞞。俺は依頼解消に努めたはずだったのに……
本来ならば、ゲームしている暇などない。俺は雪ノ下達がとった行動の意味を考える必要がある。
けれど、考えても考えても理解できない。葉山達とは違った軽蔑の意味が、理解できない。
分からないむず痒さ、それを感じていると居ても立っても居られず、手にあるナーブギアを被り、逃げるように呟いた。
「リンク・スタート」