デスゲームに花束を(改定)   作:らふ

5 / 13
第5話ストーカー

「取り敢えず、宿に行くか」

 

さっきの事は一先ず置いておくとして、整理しておきたい事柄が山ほどある。

 

晶彦さんの事や、小町の事とか、小町の事とか、小町の事とか。

 

殆ど小町だけど、この世界に閉じ込められた事を小町はどう思っていんだろう。

 

小町の事だから案外けろっとしているかもしれない。クリアして帰ってきても、「お、帰ったの?」くらいで。

 

………

 

んな訳ないよなぁ。多分今頃泣き喚いている事だろう。今朝あの話を振った時の反応からして分かる。

 

そもそも、ゲームに閉じ込められるなんて前代未聞だ。そんな話聞いた事ないし、それは小町だって同じだろう。

 

「小町には沢山迷惑かけてるよな」

 

呟いて、歩いていると目的の宿に無事着いた。後ろには当然ストーカーなどいるはずもなく、鈴虫か何かの虫の音が静かに響くだけ。

 

NPCに定例句で話しかけ、チェックインを終える。NPCとはいいものだ、相手の表情とかきにする事なく話すことができる。まぁ、話すぎると返事のないbotに延々と話しかけているような虚しさが後からくる。理論上同じような事だし。

 

指定された部屋に行き、部屋の広さと幅とか装飾とかを見て回り、以前と変わっていないのを確認し、部屋を出る。

 

「さて、風呂にでも…………」

 

 

「ここお風呂あるんだ」

 

「……………」

 

最近は眼の調子が悪いようだ。眼というか頭かな。兎も角、俺は既に夢を見ているようだ。多分永遠に冷めない。

 

「俺の願望とか羨望とか夢とか希望とか、そんな物は幼稚園の頃既にぽっきり折れていた筈なんだが」

 

「ん、なんのこと?」

 

「はは、馬鹿な妄想はもうやめてる筈だってことだよ」

 

「そうなんだ」

 

そう、本当にそう。馬鹿な妄想はやめた。だから女に優しくなんて言葉は俺には響かない。

 

「つまりな、ギャルゲのようにパンを加えた少女が俺にぶつかってきても、ごめんなさいの一言で終わらせてしまうんだよ。これが一種のスペクタクルだとしても、ぱっさり切ることが大事だと思うんだ」

 

「言ってる事は理解できなくはないわね。でも、こんな言葉もあるわ、『据え膳食わぬは男の恥』」

 

「ふーん。こんな言葉もある『疑わしきは潰せ』」

 

「あれ?そんな言葉あったかしら」

 

ぎしりと、音がして、目の前の少女を突き飛ばす。咄嗟に縄を空中で這わせ、少女の体へ巻きつかせる。

 

 

「さて、何故付きまとう?」

 

今の俺の目は相当血走っているだろう。詰まる所、今俺は捨てた。男の生き様、理性をぱっさりと捨てて、目の前の少女を縄で縛っている。

 

「へ、変態!私を無理に縛って、あんなことやこんなことをするつもりなのね!」

 

「は?何言ってんだこいつ。」

 

「私が動けないのをいいことに、あんなことやこんなことまでして」

 

「おーい」

 

「そして、最後には……」

 

きゃー、っと叫び声をあげて長い髪をばさばさと振りながらこちらへ詰め寄ってくる。

 

確かにこんなことをしているのを誰かに見られたら監獄に叩き込まれるのは当然、SAO内での事件になるだろう。SAO自体が事件なのに……

 

よく見ると、何故か見覚えのあるような気がしてくる。不思議だ。見てくれは美少女なのに今見るとストーカー妄想少女としか思えない。

 

座っている机を思いっきり叩き、黙らせる。やがて、意気消沈して、色々と諦める。順序を追うとか、真面目に話すとか。

 

「もういいや。てか、誰なんだよ。その縄解いてやるから名前聞かせろ。」

 

「縄で縛る意味あった?」

 

「気分だ。」

 

「女の子にそういうことしちゃダメだよ?」

 

素早く縄を解き、目の前の少女を自由にさせる。核に迫らぬ曖昧ないいように苛立ちが起こり、少女に迫る。

 

「そういうことって……なんだかふわっとしてるな。どういうことなんだ?」

 

言っている意味はなんとなく分からなくもないが、たまに何を言っているのかわからなくなる。そういうこと、ああいうこととか、さっきから何言ってんのこいつ?文章中の目的語が曖昧だとふわっとした内容しか頭に入らん。

 

「あ、あわわ。」

 

「誤魔化すな、な・ん・の・こ・と・だ?」

 

「き、……」

 

「き?………」

 

「き、き///」

 

気、木、鬼、期、機、器、奇………何でもいいからはやく言ってもらえませんかね。

 

き○をする。……………なんだか嫌な予感がする。これ以上は聞いてはいけないと思わせる嫌な予感。

 

「はぁ。もういいや。先にお前の名前だ」

 

途中で面倒になったので打ち切る。言わせるとまずい気がするし、俺は変態じゃないし。それに早く名前を聞いて追い出したい。この狸をはやく追い出さねば。

 

座っている机を正しながら、あの狸が答えるのを待つ。

 

「結城明日菜。覚えてない?」

 

「結城………結城………耳にした事はある気がするが、あった事はないだろ。てか、ネットリテラシー」

 

「ネットりてらしー?なにそれ。というか、一度会った事あるでしょう?」

 

はてな、と疑問符を頭に浮かべ、自分の髪を整えながら言ってくる。

 

会った事などない、はずだ。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。