デスゲームに花束を(改定)   作:らふ

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第6話純粋な殺意

「仮にお前と面識があったとしよう。で、それが何故つきまとう理由になるんだ?」

 

面識があるからといってつきまとう理由にはなり得ないだろう。もし、立場が逆だったとしても俺がこいつにつきまとうなんて事は絶対にない。この仮説は成立した場合俺が本物の変態になってしまうからな。「きゃー、比企ヶ谷くんきもーい」と身をよじらせ頰を赤らめ、恥じらいながら言うのではなく、「………キモ。通報するね」と一言で終えるのである。前者と後者では歴然とした差があるのが確かで、詰まる所男子の俺がストーカーなんぞしてしまうと当事者に末代まで祟られるだろう。それ以前に通報されてしまうが。

 

何が言いたいのかと言うと、「お前何してるのか分かってんのか?」である。

 

「ふん。感謝しなさい。私みたいな美少女につけまわされて」

 

…………まさかそう返されるとは思わなかった。最初の一言が謝罪でもなく説明でもなく感謝を求めるとは……

 

俺は呆れながら彼女をみる。初期装備品の防具と初期装備の武器。彼女のお嬢様然とした態度と容姿とが相まって謎の不協和がある。似合ってないな。

 

彼女は少し頰を赤らめてふくれっ面で俺の座っている方向とは別の方向に向いている。

 

「怒ってやがる……怒られる立場はどっちだよ。」

 

「勿論付け回した件については謝るわ。ごめんなさい。不快だったよね」

 

その言葉に俺は一息ついて緊張感が少し弱まった様に落ち着いた。

 

「最初からそう言え。不快か不快でないかといえば不快だがこの際それは気にしなくてもいい。だから、理由を言え」

 

ストーカーする側の理由なんてわかるはずもないのだが、話が進まないため再度聞いた。

 

彼女は

 

「うん。ごめんね。私が付け回してた理由は………」

 

彼女を見ていると、瞼裏にある、ある少女の姿と重なり、なんだか居た堪れない。

 

だから、俺が知らないある少女の反応をみると、「あ、あいつとこいつは違う」と気を取り直す。

 

雪ノ下は言い淀んだりしない。隠す事は完璧に隠すし、言いにくい事もはっきり言う。

 

だから、違うんだ。もう、夢を見るのはやめろ。彼女の姿と重ねるな。終わった事なんだから。

 

「言いにくいなら言わなくていい。それよりどうせ何も食わずに俺を追いかけてきたんだろ?簡単な料理してあるからこれでも食べろ」

 

俺は彼女によく焼けた肉を彼女に渡し、自分の分にかぶり付く。

 

「あ、ありがと」

 

「せめてもの慈悲だ。で、何故付け回してた?」

 

「聞かないって言わなかった?」

 

「冗談だ。別の話題にするか。」

 

俺は人と会話することが苦手で、特に女性とだともっと苦手で、かなりたどたどしい感じになる事が多い。

 

俺が考えている先にあるのは、妹である小町の姿しかなくて、話す相手なんて小町しかいなかった。

 

「俺はβ版の初期ロット千本に当選してたから流れでSAOを始めたんだが、お前はどんな成り行きでSAO内に居るんだ?」

 

「私は、兄がナーブギアとソフトを買ってたから頼み込んで……息抜きで始めたの」

 

「息抜きか。兄がいるんだな。」

 

実際成り行きはどうでもよかった。兄というワードが頭の中で通り抜け、言葉の先が別の方向へと向かう。

 

「うん。真面目な兄よ。偶に抜けてる所があって面白いけど」

 

「優しかったか?」

 

「ええ。私が落ち混んでいる時はいつも声かけてくれたり、励ましてくれたり、とても優しい兄だと思う」

 

「妹としてのお前としては、兄がSAO内に入っていたらどう思った?」

 

多分一番聞きたかった事だ。俺は今多分こいつじゃなくて、我が妹の方を見ている。

 

共通点なんかない。言葉の発し方、息遣い1つとっても全く違う。

 

だけど、小町の声が聞きたくて、今はこいつを通して、小町と話しているような、非科学的なことを考えていた。

 

絶対にありえない事なのに何故かそう考えていた。

 

「私だったら、悲しいし、辛いと思う。」

 

悲しい、辛い、苦しいなどは今俺が感じている感情と同じで、根元の感情はこいつと同じだろう。

 

「そしてね、期待する。兄が帰って来る未来と可能性を。」

 

彼女の言葉を受け取ると、思わず顔がにやけて声に出して笑った。

 

彼女は奇異な目でこちらを見つめるが、それより俺は小町の事でいっぱいだった。

 

少し経つと俺は疲れが取れたように感じて、小さな吐息をついた。

 

「そうか。変な事聞いて悪かったな。その言葉を聞けて兄としては満足だ」

 

「私はあなたのお兄ちゃんじゃない!」

 

慣れ親しんだような言葉を聞き、戯れるように「ごめん、ごめん」と返した。

 

「妹の為に頑張らないとな」

 

「………っ」

 

「どうした?」

 

「なんでもない」

 

一瞬最初会った時の、どこか寂しそうで、子供が欲しいものを諦める時のような悲しそうな表情を浮かべていた。

 

その表情を見て、既視感を感じた。強烈な、そして、結構きつめなもの。

 

………俺は間違っていない。もう俺の前に現れないでくれ。お願いだから、もう、嫌なんだよ。

 

「………いきなりこんな事を言われては不快だろうけど、今日はもう帰ってくれ。そして、一生俺の前には現れるな」

 

「え?八幡……くん?何いってるの?」

 

「こう言えばいいか?人をストーカーするような人間は信用できない。だからもう二度と俺の前に顔を出すな。目障りだ」

 

「な、何よそれ。さっきまで私たち…」

 

「だから、帰れ!!!」

 

「きゃっ……」

 

悲鳴は同時に聞こえた。

 

1つは目の前のアスナという少女。

 

もう一つは外から聞こえた。

 

俺達はもう一つの方の悲鳴が気になり、先程までの空気が別の緊迫に包まれる。

 

 

 

外に出ると、フーデットケープを被った何者かがふた回りも小さい少女の腕に剣を突き刺していた。

 

俺達の足音に気がついたのかフード男が振り返って、俺達の顔をみると、ニヤリと嫌な笑みを浮かべた。

 

「お前………誰だ?」

 

慎重に、恐る恐る聞く。下手に刺激しない方がいいのは確かだから。それと、どこかで会った事があるような、雰囲気。その雰囲気が俺を慎重にさせる。

 

「Pohといえば分かるか?比企ヶ谷八幡」

 

その言葉を聞いて、俺はPohだと告げられて、俺は叫んだ、なんて叫んだのかはわからない。だが、きっとこう叫んだ筈だ。

 

「Poh!!!!!!絶対殺してやる!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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