「Hey bro 今日はやけに元気だな。いいねぇその狂ったような瞳。ゾクゾクするぜぇ〜」
渦巻く憎悪と恨み。俺はただ目の前にいるクズを潰す事を考えた。
殺す、殺す、殺す、殺す、絶対にお前だけは殺してやる。
即座に剣を出現させてPohに攻撃した。一振り、二振りと、剣に力と憎悪を込めるて振る。
Pohはバックステップで軽々と避けて、二振り目の剣はPohの持っている直剣で捌いた。
「broここは感動の再会じゃないのかぁ?ひどい歓迎だなぁ?日本人が聞いて呆れるぜ?」
「死ね!死ね!!!死ねぇ!!!!」
低級ソードスキルを連続で発動し、Pohの首を撥ねるために何度も何度も剣を振るう。
こいつだけは!こいつだけは絶対に殺してやる。
「はっ、あの時と変わらないなbro。」
振るった剣を彼の首へと近づけるたびにどんどん離れていく。ひとつ、ふたつと数える間も無く、Pohは剣をこちらに向けた。
「Ha!日本語ではこういうの、失笑を禁じ得ないっていうんだよなぁbro。」
ぱしゅと音がして、俺の右腕に激痛が走った。
物凄く痛い。だが、今はこいつを殺す事が先だ。
「馬鹿が。」
「うっ…………うああああああああああぁ……」
痛みが膨れ上がり意識が飛びそうな程叫んだ。Pohが勢いよく剣で俺を薙いで俺は後ろに吹き飛ぶ。
痛みの元を探るべく視線を腕の方に向けるとそこに俺の腕はなく、切れた腕がポリゴンとなって消えていく。
いつから出てたのか、赤黒いエフェクトが俺の視界を埋め尽くし、Pohを見えなくさせる。
邪魔だ。今すぐ殺さないといけない相手がそこにいるというのに、動けない。痛みで声も出ない。
殺したいのに、殺せない。
「はぁ、今殺してやってもいいんだが、それじゃあ面白くない。まだパーティにもなってないからなぁ。喜べ、立ち去ってやるよ。命拾いしたなリトルガール。」
「ま……まて、俺が……今から……ころすから……」
後ろで誰かが叫んでいるのが頭に響く。
うるさい。邪魔するな。俺が今…
立ち上がれない。足に思いっきり力を入れているのに、全体が痺れたように動けない。
「じゃあな、My Bro!!HAhaha!!」
くそ、逃げるな。
「逃げるなぁぁああ!!!」
赤黒い無数の表示を取り払うかの如く思いっきり叫ぶ。
数秒もせずPohは颯爽と去っていき、爆発した感情が胸を渦巻いて離れないのに、次第に理性を取り戻していく。
どうしようもないのに、恨んでも仕方がないのに、染み付いた感情を引き剥がすことができない。
俺は、耳元で先程まで話していた少女の叫び声を聞きながら目を閉じた。
Pohの事しか考えてなかったから気づかなかったけどあいつもいたんだったな。
「うぅ………とつか…」
総武高校にある俺のベストプレイス。その場所で俺はいつのまにか隣にいた戸塚と一緒に弁当を食べている。
『八幡。ご飯ついてるよ?』
『あ?何処だ?』
そうだ。この弁当は戸塚が用意してくれたもので、確か……
『とってあげる……………はい。取れた』
戸塚は俺の頰についていたご飯粒をとってぱくっと食べた。
『あ、ありがとな。』
『えへへ、それにしても八幡は幸せそうに食べるよね。』
戸塚はちょっと恥ずかしいそうに顔を背けて弁当を食べる。
『そりゃ、戸塚が作ってくれた弁当だからな。当然だ』
『ありがと、そう言ってもらえると僕も作った甲斐があるよ』
確かいつも少ししか食べていない俺を心配して、戸塚は弁当を作ってきてくれる様になったのだ。
一目見ればわかる様な純粋な好意がとても嬉しくて、学校での昼食が毎日楽しかった。戸塚と一緒の日々が楽しくて、あぁ、友達ってこういうのを言うんだって思って…
『なぁ、戸塚………』
いつも、ありがとう。と言おうとして、なんだか恥ずかしくて、言葉が出なかった。だから出たのは別の言葉。なんとかして感謝している事を知って欲しくて、俺なりに言葉を発する。
『戸塚がいてくれて良かったよ』
『ん?どうしたの、急に』
戸塚は首を傾げて、赤らめた顔をこちらに向け、不思議そうに見つめる。
『戸塚がいてくれて…なんだか……その……最近学校が楽しく思えてさ。雪ノ下達のお陰ってのもあるんだが、お前がいてくれたから………ああぁあ、もどかしい』
改めて言うのが恥ずかしくて、凄い緊張して、でも伝えなないと彼はどこに行ってしまいそうで、怖くて言葉を紡いだ。
『僕も八幡がいてくれて……その、うれしい……よ?』
あぁ、神よ、、、どうして戸塚を男に産んだのですか?
『はは………やっぱなんだか恥ずかしいわ。いや、そうじゃない。まだ俺はお前に伝えないといけない事があって……その…』
俺は重要な事を忘れている。今度戸塚に会ったら言おうと思ってだ事があるはすだ。
思い出せ、思い出せ比企ヶ谷八幡!
『あはは。八幡。心配しなくて大丈夫だよ』
『そうだ。俺は謝ろうと、今度会ったら謝ろうと思ってたんだ。俺が戸塚を
『どうしたの八幡。………もしかして、気づいちゃったの?あ……あぁ、終わっちゃう。まだ僕も言いたい事いっぱいあるのに、ど、どうしよう』
あれ、戸塚は今寝てるんじゃなかったっけ。あいつに…………あいつのせいで……
そう考えた途端にガラスの破片が飛び散るように、空や校舎が崩れていく。
『………しょうがないか』
な、なんだこれは。何かの映画だろうか。いや、映画の撮影だったら実際に校舎が崩れることなんて……
『そろそろ潮時だね。僕は大丈夫だから気にしないで。それと』
崩れ去る学校とテニスコートと空を脇目に食事を終えた戸塚が手を振って歩いていく。ちゃんと前向いて歩け、なんて言葉よりも、待ってくれと叫ぶ。でも、どれだけ心で願っても戸塚は待ってくれないし、俺は動けない。
『待ってくれ。もっと話そう。あと五分だけでいい。あと1分でもいい。まだお前と話したい事が、伝えたい事だっていっぱいあるんだ。お願い……お願いだから』
終いには男らしくなく、涙まで溢れそうになって、それでも戸塚に訴えかける。ここで引き止めないともう会えない気がして、叫べば驚いて止まってくれるだろうかなんて考えて。
『八幡、大好きだよ』
戸塚、と叫ぼうとして、周囲は暗転した。