ガンダムビルドデューラーズ 清掃員外伝   作:地底辺人

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EX2. 「on the seventeenth birthday」

8月31日。

 

ウチヤマ・ユウに17度目の夏が来た。

 

彼は太陽が燦々と照る灼熱の季節である夏生まれなのだ。自身のパーソナルカラーは赤、愛機には「太陽」の名を冠している。これは無意識なのかどうなのかはわからないが彼がれっきとした生粋の夏生まれという事実に間違いはない。

 

17歳の誕生日といえどそんな事を気にする様子もなくユウは昨夜も遅くまでガンプラを続ける。さらなる高みを目指すため日々、日進月歩の如くあーでもない、こーでもないと作業を続ける。しかも今は夏休み。学生にとっては夜更かしが出来る絶好の時間なのだ。

 

夏の眩しい日差しがユウの部屋に差し込む。

 

「―んー。ねっむ。」

 

眠い目を擦りながら重い身体を徐々に起こす。時計の針を見るともう昼前を指していた。

 

「もう昼前か。せっかくの誕生日だし買い物にでも行きたいけど…。」

 

「―暑い!!」

 

8月の末といってもまだまだ暑い。夏という季節は多くの人が海やバーベキューと楽しげな想像をするが現実はただ気怠い季節である。

 

しかし、夏にはとっておきのアイテムがある。

それは…。

 

「アイスだ!!」

「こんな暑い日にはアイスに限るよな!!」

 

ユウは早速気怠さを取っ払うためにアイスを買いにコンビニへ行こうとする。

 

その時作業机に置いてあったアポロンガンダムエンデの眼光が鋭く光ったような気がした。

 

「お前もいくか。」

 

ユウはアタッシュケースにアポロンガンダムエンデを収納しコンビニへと向かった。アタッシュケースには太陽マークのキーホルダーがつけられておりキラリと光っている。

 

「いやー、美味いなあ。」

 

ユウはコンビニのアイスを美味しそうに食べる。コンビニ限定の超濃厚バニラアイス。限定商品ということもありいつもは少しお高めなので買わないが今日は誕生日という特権でプチ贅沢をした。チョコと抹茶で迷ったがやはりここは王道。バニラアイスが正義である。

 

そして食べ終えたアイスの棒には「アタリ」の3文字が記されていた。

 

「うおお!やったぜ!!神様ありがとう!!アイラブユー!!」

 

ユウは嬉しさの感情が爆発しよく分からないことを言っていた。しかしアタリが出たという事実が存在すればそんな事はどうでもいいのだ。

 

「よし、じゃあ早速さっきのコンビニで引き換えてもらおうかな。」

 

ユウは後ろを振り返り先程のコンビニへと向かう。

歩く、歩く、歩く。

 

「あれ?」

 

ユウはコンビニから5分も歩いていない位置にいたのだがどれだけ歩いても先程のコンビニに辿り着かない。

辿り着かないどころかどんどん知らない道に入っていく。

 

スッと脇から汗が一滴垂れる。

これはいわゆる神隠しというものなのだろうか。しかしあまりにも突然すぎる。

 

不安なユウはさらに急ぎ足となる。

 

何故だろう。何故こんなにも不安なのだろうか。さっきまでアイスのあたりが出て大はしゃぎしていたのに。

 

そんなユウの前にある看板が現れる。

 

「勇気高校この先1km」

 

「勇気高校…?」

「勇気高校ってあのガンプラバトルが強豪の?」

「いやいや、でも県外の高校なんだけどな。」

 

看板の情報がさらにユウの脳内を混乱させる。

 

「あー、しゃらくさい!とりあえず行ってみるか!!」

 

ユウは考えるのを諦めた。この状況なら誰だってそうなる。ヤケクソで勇気高校へと向かう。

5分ほど歩くと本当に勇気高校についた。外見は案外普通の公立高校といった感じである。ユウはせっかくなので噂の強豪ガンプラバトル部を見てやろうと思い部室を探し始める。ここは強豪なのでアタッシュケースを持った外部のデューラーが校内を歩いていても特に不思議がられる様子はない、と思っていたのだが案外ジロジロと見られる。ユウは目を泳がせながらウロウロする。

 

「うーん。強豪だし結構大規模な感じでやってるのかと思ったけどそうでもないなあ。」

 

当てが外れたユウ。困った顔をしていると親切な女子生徒が声をかけてきた。

 

「どうかしましたか?」

 

「あ、えっと。ガンプラバトル部ってどこか分かりますか?」

 

「あー、ガンプラバトル部なら理科準備室でいつもいますよ。」

「あの校舎の2階の端っこにです!」

 

そう校舎を指差し生徒は愛想良く立ち去った。

 

理科準備室…。少し腑に落ちないユウは言われるがままに足を運ぶ。

校舎の隅にある理科準備室。強豪はこんな小さなところで本当に切磋琢磨しているのかと疑問に思う。

そうこうしていると同い年くらいの男子生徒が教室の鍵を持ってやってきた。おそらく部員だろう。

自然と目が合う。

 

「こんなところに人が来るなんて珍しいな。入部希望者かと思ったけどその格好じゃあそうでもないみたいだしお客さん?」

 

「あ、ええ。まあそんなところです。」

 

「そっか、でも悪いんだけど今日は兄さんとテルキさんは試験の追試で来れないからまた今度でもいいですか?」

 

「えっと…。」

 

ユウは帰れと言われても帰り方が分からないんですとは言えず言葉に詰まる。それにこの生徒どこかで見覚えがあるような気もする。

 

「せっかく来ていただきましたしとりあえずお掛けにでもなって下さい。」

 

「すみません。ありがとうございます。」

 

生徒はユウの事情を察したのかどうかは分からないが気を利かせて教室へ入れてくれた。

 

「どうぞ。」

 

「おぉ…。」

 

第一印象は何というか古くさい。10年ほど前のような感じがする。そして小さな教室の奥にはガンプラバトル用の筐体が置かれている。しかしそれすらも古いシステムに見えてしまう。

 

「狭くてすみません。お好きなところに掛けてください。」

 

「じゃあここに。」

 

ユウはそう言って入り口近くの椅子に座る。生徒もまたその隣に座る。

 

「あ、そういえば自己紹介がまだでしたね。」

「俺の名前はイヌハラ・フウトです。この高校の2年生です。君の名前は?」

 

思わず「え」と言いそうになった。確かに見覚えがあると思ったがユウの知っているイヌハラ・フウトは自分よりも一回りも二回りも年上なのである。それが何故。頭の中がまたも混乱する。

 

「どうかしましたか?」

 

「い、いや。俺の名前はウチヤマ・ユウ。よろしく。」

 

「よろしくお願いします。ウチヤマさんもガンプラバトルやるんですか?」

 

「あ、ああ。」

 

「やっぱり!そのアタッシュケースから強い何かを感じます…。」

「そういえば何故今日はここに?」

 

「ここのガンプラバトル部の人とバトルしてみたくて…。」

 

下手な言い訳をするユウ。とにかくまだ頭は混乱している。

 

「なるほど、でもなかなか珍しいですよ。兄と対戦しにこんなところまで来るなんて。」

 

「俺って少し変わり者かもなあ。そういえば君のお兄さんの名前って、ええと…。」

 

わざとらしくボケるユウ。勝手に兄と戦うことにされているのでそれを逆手に取った。これで「イヌハラ・ユウキ」の名前が出たら大体の事が理解できる。理解できるがそうあって欲しくないと願う自分もいる。

 

「兄の名前は『イヌハラ・ユウキ』ですよ!肝心なところ忘れないでくださいよ!」

 

冗談やめてくださいよというふうに話すフウト。どうやらユウはアイスのアタリを引いたと思ってコンビニに戻ろうとしたらいつのまにやら約10年前に迷い込んだらしい。どうしたらこうなるのか本当によくわからない。無茶苦茶である。

 

兎にも角にもおそらく同い年のフウトを前にして現在との変わりようにユウも驚きを隠せない。まず髪がボサボサでなく髭もない、眼が死んでいない、そしてめちゃくちゃいい子であるという事。社会というものはここまで人を変えるのかと思うとユウはこの先が思いやられる。

 

「あ、あの…。そんなにジロジロみないでもらえますか…?」

 

「ご、ごめん!つい!知ってる人に似てたもんだから!」

 

「そ、そうなんですか。でもユウくんってやっぱり変な人ですね。」

 

ふふふと笑うフウト。今のフウトにはこんな笑い方出来ないだろうなとユウは貴重な一瞬を網膜に焼き付ける。

 

「そうだ、俺で良かったらガンプラバトル出来るよ?兄さんほどじゃないけどまあまあ腕は立つ方なんだ。」

 

これは願っても叶わない事だ。かつてその才能を全国に知らしめた全国区レベルのフウトのその実力をぜひこの目で確かめたい。

 

「もちろん!負けないぜ!」

 

「こっちこそ!道場破りに負けたら兄さん達に会わす顔がないよ!」

 

ニヤリと笑い2人は筐体の方へと向かう。

 

ユウはアタッシュケースから収納されたアポロンガンダムエンデを取り出す。対してフウトはホルダーから赤い"あの機体"を取り出した。

 

Futo'sMobile Suit

  Justice Kaiser

    VS.

Yu's Mobile Suit

  Gundam Apollon Ende

 

「アポロンガンダムエンデ、行くぞ!」

 

「ジャスティスカイザー、行きます!」

 

二つの赤い飛翔体が同時に飛び出す。

 

ユウがはじめてフウトと対戦したバトルフィールドである宇宙で太陽神と皇帝はまた交わるのであった。

 

「やっぱりジャスティスカイザーか…。」

 

ユウのアポロンガンダムエンデはいわゆる超近接仕様の機体。遠距離からの攻撃には弱いがその距離を詰める神速とバイタルエリアに入れば一撃で仕留めれるだけのパワーも備えている。

 

 

【挿絵表示】

 

 

一方でジャスティスカイザーはというと…。説明不要だろう、もう既にイヌハラ・フウト劇場ははじまっている。

 

「いきなりドラグーン!容赦がなさすぎる!」

 

「近接機体相手に自由を与えるほどお人好しじゃないよ!」

 

既に6基のドラグーンがエンデの周りを舞い射撃をしてくる。しかも同時のタイミングでなく微妙に各基のずらした攻撃が厄介だ。

被弾するアポロンであるがこの程度では簡単には落ちない。そして左腕にマウントされた太刀を引き抜く。

 

「反撃だぁ!」

 

アポロンはドラグーンに対し太刀を鋭く振るう。避けられたもののこれで簡単には撃たせない。

 

「太刀…!!本体もそうだけどなんてクオリティなんだ!!」

 

「君のガンプラもすごくいい。これからますます強くなりそうだッ!」

 

2人は口角をニヤリと上げバトルへとのめり込む。

 

一旦射撃を辞めたフウトであったがもう一度一斉射撃を行う。しかしアポロンは太刀を構え高速で機体を回転する事で完全にドラグーンのビームを弾き返した。

 

「へへっ。」

 

「うぅ、やるな!」

 

「今度はこっちの番だ!」

 

アポロンは太刀を一旦納刀し神の如く速さで皇帝へと近寄る。

 

「速いっ!!」

 

フウトはその速さに一瞬面くらう。その隙にユウは精神を集中させ太刀を構え抜刀する。

 

――閃光のような居合切り。

 

しかしそこに手応えはない。ジャスティスカイザーは動きを見切っていたのか既に攻撃を避わしており足蹴りのカウンターの体制に入っていた。

 

「そんなッ!!」

 

「悪いけど"眼"はいい方なんだ!」

 

ジャスティスカイザーのカウンターが炸裂。エンデの左足を痛めつける。

 

「くっ、まだまだぁ!」

 

まだこの距離がアポロンのバイタルエリアであることに変わりはない。怯まず続けて格闘攻撃を行う。

しかし立て続けに避けられ隙を突いてカウンターを入れてくる。

この反応の速さとカウンターの鋭さは完全に現代のフウトを超えている。洗練させた現代フウトに比べもっと野生的で直感的なほとばしる若き才能がユウの肌を震えさせる。

だが、若き才能な満ち溢れているのはフウトだけではない。

 

「へへっ、面白い…。」

 

アポロンは高さを取り座標的にカイザーの上へと位置をとった。

 

「何をする気なんだ…?」

 

「いくぞォ!!」

 

アポロンは突如無茶苦茶な軌道で高速飛行をはじめた。たかだかMSにこれほどまでの動きが可能なのだろうかとフウトは目を疑う。

超高速での撹乱が狙いだろうか、それなら目の前に現れた瞬間に反撃すれば良いとフウトは待つ。

 

「―誰が真正面に来るって?」

 

「!?」

 

カイザーの目の前に現れたアポロンは一瞬で姿を消した。

 

「どこだ!?」

 

「その"眼"で捉えてみなよ!!」

 

アポロンはさらにカイザーの周囲をぐるぐると高速で回り出す。フウトはやけになりながらドラグーンで牽制を入れるが圧倒的な速さにその動作は意味をなさない。

 

「アポロンの恐ろしさを教えてやるよ…!!」

 

ぐるぐると回っていたアポロンはついに太刀を抜きその高速軌道でカイザーを高速で何度も斬りつける。あまりのその速さにアポロン自身が分身しているようにも見える。まさに神速である。

 

「なんて、速さだ…!!このままじゃやられる!!」

 

カイザーにどんどんとダメージが蓄積される。しかも一撃一撃がとてつもなく重い。打開する点は無いのかとフウトはやられながら攻撃パターンを分析するが速すぎて脳が追いつかない。それ故に今はただ耐えることしか出来ない。

 

「フウト!これで終わりだァッ!」

 

ユウは高速攻撃のフィニッシュに豪快な面を繰り出した。フウトはそれを見逃さず白刃取りで受け止めた。

 

「何ッ!?」

 

「やっとつかまえた…!!」

 

アポロンは白刃取りから抜け出せず身動きがうまく取れない。その間をつきドラグーンでアポロンのスタビライザーを攻撃する。

 

「しまった!」

 

「心臓はもらったよ!」

 

アポロンガンダムエンデの腰後ろに取り付けられたスタビライザーは排熱機構という重大な役割を担っておりこれほどのパワーを連続的に出せるのもこのスタビライザーあってこそなのである。

 

白刃取りをしていたジャスティスカイザーであったが先程の連続攻撃のダメージからよろつき太刀から手を離してしまう。その手の指も既にボロボロであった。

これで五分と言いたいが機体スペックとパワーで言えば圧倒的にアポロンが上回っている。力押しの攻撃でも勝負は決するだろう。

スタビライザーも十分な力を発揮できずこの距離なら一気に決めるべきだと判断したユウは右手にぐっと力を込める。

 

「ここで一気にケリをつける…!!」

 

右手は黄金に輝き出しとてつもないエネルギーを蓄えはじめた。これはやばいと感じたフウトは急いで迎え撃つ準備をする。

 

「灼熱ゥゥゥッ…」

 

彼がそう叫んだ途端当たりが噴火しそうなくらいに響めき右手が今にも燃え上がりそうになっている。

 

「来たッ!」

 

フウトもまたこの大技に対応するためカイザーのオプション兵器である「カイザーブースター」を呼び寄せていた。ファトゥムをベースとしたその飛行体はカイザーに装備され相手の攻撃を迎え撃とうとしている。

 

何が来たってもう無駄だ。そう思いながらユウは腹の底から声を張り上げる。

 

「サンシャインフィンガァァァァァァッッッ!!」

 

太陽神の奥義。全てを終焉へと帰す神の手が皇帝に裁きを下す。

 

「スタンバイオッケー。間に合った。カイザーブースター全出力で射出!!!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

対してフウトも秘蔵の武器を射出しサンシャインフィンガーに真っ向から向かい合う。

 

「つらぬけええええ!!!」

 

「いっけえええええ!!!」

 

お互いに押し合っているものの優勢なのはやはりサンシャインフィンガーの方だ。灼熱の指が全てを飲み込み掌握していく。

 

「流石にパワーが違いすぎるか!しかし時間は稼いだ!」

 

「これでヒートエンドだッッ!!」

 

カイザーブースターをドロドロに溶かしその先に見えるジャスティスカイザーの頭を掴もうとしたところ急にアポロンの動きが止まる。

 

「しまった!スタビライザーをやられたせいか!」

 

今一歩のところでとどめを刺しきれなかった。そして大技にはリスクも伴う。サンシャインフィンガーを繰り出した右手は再起不能となった。

とはいえ引き下がるわけにはいかない。腕が使えないなら脚がある。アポロンは脚部のスラスターを上手く使いジャスティスカイザーに対して蹴り込む。それに対してジャスティスカイザーもまた蹴りで応戦する。

 

「脚癖は昔から悪くてね!」

 

「奇遇だね!俺も同じだよ!」

 

蹴りの次は頭突き、その次はボディーブロー。体の使えるもの全てを使う。

しかしなかなか決着はつかない。奥の奥の手を使うかとユウの頭を一瞬よぎる。

そうこうしているうちにジャスティスカイザーはドラグーン全基を自らに向けて射出しはじめた。

通常のビームというよりはエネルギーを注入しているようだった。

ググクッと耐えるように機体のエネルギーを中和するカイザー。

 

「なにがおこるっていうんだ…。」

 

ユウは一瞬皇帝の眼光に震え上がってしまったがこちらも何か手を打たないと敗北すると感じた。

 

「核エネルギーチャージ完了!ジャスティスカイザー『神』モード!!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

なんとジャスティスカイザーはその全身を黄金色で纏った。ほとばしるエネルギーに満ちたカイザーはアポロンを鋭く睨みつける。神に対する逆襲。皇帝は最後の手段を用いた。

 

カイザーは武器を放り投げアポロンへと格闘攻撃を行う。スペックで言えば近接攻撃はアポロンに分があるにもかかわらずカイザーの攻撃についていけない。

 

「そんな!アポロンが近接負けするなんて!」

 

「今のカイザーは『神』だ!今までの分お返しさせてもらうよ!!」

 

重く、鋭く、速い一撃が何度もアポロンを襲う。流石のタフガイも耐えきれそうに無い。

 

「このままではやられる…。だったら…!!」

 

「な、なんだこの光は…!!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

アポロンガンダムエンデは胸部を青色から橙色に煌めかせ自身の背中に"太陽"を作り出した。

 

「太陽なのか…?」

 

太陽の白い光がアポロンを包みよく見えない。よく見えないがそこにいるのは紛れもない「神」である。

 

―神になろうとした皇帝は太陽神アポロンを見上げる。

 

「すごい、すごいよ…!!もっと見せてくれ!!君の可能性を!!」

 

フウトの目は子供のように輝いていた。この感情は現代のフウトも感じたユウの可能性への期待、ワクワクと同じものだった。

 

「いくよ、フウト。俺の最後の技だ。」

 

再起不能となった右腕は太陽の輝きとともに動き出した。もはやそこに理論など必要ない、理論を超越した神そのものなのだから。

右腕と左腕で球体のエネルギーを作るアポロン。

対して自らの体内エネルギーを最大限まで蓄えるカイザー。

 

―これで決まる。

 

「ストナァァァァッッ!!」

 

「カイザァァァァッッ!!」

 

「サァァァンシャインッッ!!!」

 

「ノヴァァァァァッッ!!!」

 

二人の魂の叫びが轟く。

 

そして二つの超エネルギーがぶつかりあう。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「おぉぉぉぉぉぉぉっっ!!」

 

威力は全くの互角。これ以上ない派手さ。当たりを飛んでいたドラグーンが一基飲み込まれる。

 

その衝撃に白い光が差し込む。

 

「これって…。そっか。」

 

ユウは呟く。

 

「17歳のフウトさん。本当に楽しかった。最高の誕生日プレゼントでした。」

 

「―また…やりましょう…!!」

 

この強過ぎる衝撃がユウを元の時代へと帰そうとしていた。

それを直感的に察知したフウトは一言ユウにこう言った。

 

「君のガンプラ、凄くカッコ良かった!」

 

「―ユウくんまたバトルしよう!」

 

にっこりとした笑顔ではじめてユウと対戦した後に言った言葉と同じ言葉を言った。

ユウは頷きそのまま目を閉じた。

 

本当はもっとこの空間を楽しんでいたかった。

でもどうやらタイムリミットみたいだ。

 

―目を覚ますとユウはコンビニの前に立ち尽くしていた。

 

夢だったのだろうか。それにしてはあまりにもリアルだった。

 

フウトとはもう長い間会っていない。でもきっと今のまま生きていたらどこかで会える。そんな気がする。その時はまたガンプラバトルをしたい。ただただ単純な想いだ。でもそれがいい。

 

「あーあ、遠く離れてる人とガンプラバトルできるようになったりしないかなー。」

 

ユウはそう思いながらポケットに入れておいたアイスのあたり棒を取り出す。

 

「ん?」

 

「そっか。ありがとう。」

 

今日はウチヤマ・ユウの17歳の誕生日。

 

本日の主役はまだまだこれから大忙しだ。

 

―その晩のユウの机には一通の手紙とドラグーンのパーツが一基置かれていた。

 

これは一夏の不思議な思い出。




お世話になっておりますスーパープリンさま、改めてお誕生日おめでとうございます!!!

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