コーン、コーン。
鈍い金の音が深雪の大地に響く。
「新しい年か…。」
時計の針は0時を指している。こたつでみかんの皮を剥いでいるといつの間にか新しい年を迎えていた。思えば一年あっという間であった。この半年間は特にだ。年が変わることを意識することは近年あまりなかったが今年はいつもより真新しく感じる。
フウトはイヌハラ・ユウキに完敗を喫してから自分に何が足りないのか考え続けていた。答えはまだ見つからない。迷路に迷い込んだみたいだ。
だが変わった事もある。それはヒナセ・シイナの事だ。不思議なことにフウトは彼女の「記憶の世界」に触れた。それからというもの彼女との距離感が前以上に分からなくなっているのも事実だ。
「生きるってのは酷なもんだよな。」
そう言ってフウトは机の片隅に穿けられた大バツをつけた設計図を横目にみかんの一粒を口へ放り込む。
──ピンポーン。
チャイムが鳴る。こんな夜更けに誰だろう。
「はーい。今出ます。」
「フウトさん、あけましておめでとうございます!!」
扉の向こう側には寒さから顔を赤くしたシイナの姿があった。左耳には青いイヤリングをしている。
「ああ、あけましておめでとう。今年もよろしくな。」
「そんなことよりお前、新年の挨拶をするためにわざわざ来たのか?」
「ええっと、ダメ…でした…?」
少し横目になるシイナ、やれやれと頭をかくフウト。
「とりあえず寒いから家の中に入れ。」
「……ありがとうございます!ではお邪魔します!」
嬉しそうに家に上がるシイナ。そして物珍しげに部屋の中を見わたす。
「そういえば家に上がるのは初めてだったか。」
「はい!あー、これ高校生の時のフウトさんですか!?今と違って可愛げがありますね!」
「悪かったな。今は可愛げがなくて。」
シイナが指差したのは高校生時代にユウキ、テルキ、タロウとアララギの部活の5人の写真である。みんな若者らしい笑顔だ。
「えっと、当時はチーム戦だったんですよね?」
「よく知っているな。その話したっけな。」
「あぁ、ええっと。その…。」
「……。そうかシイナも俺の記憶を見たんだったな。気にするな。」
「す、すみません。無神経で……。」
「謝る事はないさ。俺が話す手間も省けるしみんなの昔話も共有できるんだからさ。」
シイナも同様にフウトの記憶を断片的に辿っていたのである。故にお互いが伝えていない自分の情報を知っている事もありそれが原因で二人はやや慎重になっていた。
シイナは必死に話題を探そうとして辺りを見ると机の隅にある大バツが書かれた設計図を見つけた。よく見るとそれはイヌハラ・ユウキの扱う「ガンダムソフィエル」に酷似していた。バックパックには幻想的なカラーのウイングパーツを付ける案がバツ印の間から垣間見える。
「どうかしたか?シイナ?」
「い、いえ。その、そうだ!初詣いきません?」
「そうだな。せっかくだし行くか。」
「やった!」
上手く話を逸らしたシイナはホッとする。しかし先程の設計図はなんなんだろう。兄に勝つためにはあの機体を作り上げる事も厭わないという事なのだろうか。
『フウトさんにはジャスティスカイザーが1番合うと思うんだけどな…』
心の中でそう呟くが決して声には出さない。フウトにとってデリケートな話であるのは間違いないのだから。
「深夜に初詣なんて何年ぶりかな。」
「そんなに久しぶりなんです?」
「ああ、昔はそれこそ兄さんと二人でよく行ったもんだよ。」
「そしたら、必ず神社にテルキさんとタロウさんがいてさ、おみくじでどっちがいいのが出るかって張り合ってるんだよ。おかしいだろ?」
「ふふ、フウトにさんってほんとにみなさんのこと好きなんですね。」
「当たり前だろ。みんな俺にとってはトクベツな人ばかりさ。」
ずっと、ずっとそのままの関係でいられたらいいのにとシイナはふと思う。兄と闘う事なく、兄への要らぬ感情など持つ事なくただ仲の良い兄弟であれば二人はもっと幸せだったんじゃないかと都合の良い事ばかり思う。
そうこうしていると神社の境内にたどり着く。二人はお賽銭箱の方へと近づき5円玉を放り込む。
二礼二拍一礼。
二人は手を合わせて念じる。
『……。』
フウトは目を開き隣にいるシイナを見る。
『……………………………………。』
なにやら、強く念じているようだ。その姿を見てフウトは微笑む。
「……よし!」
「なにがよし!だよ。神様への御願いは終わったか?」
「バッチリです!」
「よし!それじゃあそろそろ行くか。」
その後二人はおみくじを引く。
フウトは「大凶」シイナは「吉」
「うおおおおおお!!まじかよ!!」
「うーん。私はまあまあかな。えっと……その……大変申し訳ないですが、大凶はドンマイです!」
頑張ってなんとか励ますシイナ。フウトはこういった願掛けに案外弱くそれなりに落ち込んでいた。
ピピッ。
ヘコんでいるフウトに一通のメールが届く。
件名 あけおめ〜
あけましておめでとう!アララギです!
さっそくだけど、今日の朝9時にバトルスペースにきてね〜。
以上!
「……先生も新年早々だな。」
「にしてもなんでしょうね?バトルスペースに来いって誰か来るのかな。」
「そうだな。とりあえず今日は帰ろう。」
「はい!今日は流石に送ってくれますよね?」
「……さ、行くぞ。」
フウトは頭をかきながらそっと送るという合図をしてそのままシイナを送っていった。新年早々人に振り回されるのは変わらないようだ。
***
翌日
フウトはアララギの言いつけ通りに学内のバトルスペースにいく。すると見覚えのある人影を見つける。
「フウト!あけましておめでとう!」
「サワラ!あけましておめでとう!久しぶりだな!」
「本当に久しぶり!頑張ってる事は兄さんから色々聞いてるよ!」
「まぁ、ユウキ兄さんには負けたけどな。それにサワラも国内リーグのタイトル獲得おめでとう!年末のバトルめちゃくちゃアツかったぜ!」
「おっと!ふうちゃんを負かしたお兄さんもいるよー!」
「え!?兄さんもいたのかよ!?というか酒臭いな…。」
顔を赤くしたユウキも当然のように顔を出す。部屋の片隅には顔を真っ青にしたテルキの姿もあった。しかしあまり突っ込まない方がいいだろう。
「ユウキさん、飲み過ぎじゃないですか?」
「いいんだよ!サワラくん!今日はめでたい日なんだからさ!!ほらほら!!」
これがアルハラってやつなのか。兄さんの酒癖の悪さは昔から本当に変わらない。
「そういや、アララギ先生はどこにいるんだ?」
「兄さんならお酒を買いに行くって。『今日は宴会だーーー!!』って。」
「全くいい歳した大人たちが。」
「でも、まあ、"いい歳した"大人だからこんな時くらいは騒ぎたいんだよな。」
「そうそう!ふうちゃんももう立派な大人なんだからさ楽しまなきゃ!!」
「そう言いながらさりげなく俺の股間触るのやめてくれよ、兄さん。」
「おっと、オトナになったのはココだけじゃなくて発言も大人になったね〜。お兄さん嬉しいな。」
完全に酔っている。親戚のめんどくさいおじさんと化しているぞ我が兄よ。
「フウト。新年最初のガンプラバトル、しないか?」
「え?俺でいいのか?」
国内トップのプロデューラーからのお誘い。こんなありがたい事は早々あるものではない。
だけど、今の俺の力はサワラに通じるのだろうか。
ユウキとの先の対戦で自信を失ったフウトはそう思う。
「なんだい?勝てる気がしなくて怖気づいたのかい?」
「悪いけど今は……。」
「それじゃあ叩き潰してあげるよ。」
「は?俺はやるなんて一言も。」
サワラは聴く耳を持たずに筐体の方へと向かう。
「行って来なよ。ふうちゃん。何か掴めるかもよ?」
ユウキに背中を押されフウトも半ば強制的に筐体の方へと向かう。
サワラに負けたあの日から自分の運命はさらに加速した。
何も知らないという事は意味のない自信へとつながる。馬鹿で無鉄砲と笑われても突き進んできた。あの頃と変わる事は出来たのだろうか。
『何か掴めるかもしれない。』
兄の囁きが脳内で何度も再生される。
Futot'sMobile Suit
Justice Kaiser Infinity
VS.
Sawara'sMobile Suit
Gundam Zeruel
「カイザー行くぞ!!」
「ガンダムゼルエル、行くよ!」
ステージ設定は宇宙。
「ゼルエル…?」
ディスプレイに見知らぬ機体データが表示される。年末のリーグ戦までは今まで通りにアストレアを使っていたはずなのに。
「……へぇ、ソフィエルシリーズを作りあげたか。やるねサワラくん。」
辺りの周辺索敵をして一旦身構えるカイザー、だが黒い閃光は突如、姿を表す。
「!?」
四方からビームライフルが発射される。フウトは面食らいながらもシールドをうまく使いながら防御するがその高速攻撃を対処しきれずダメージを受ける。
「なんつー速さだよ。アストレアなんて非にならねえ!」
呆然一方だ。ただひたすらに攻められる。反撃をしたいところだが早すぎて上手くターゲットが定まらない。ドラグーンを射出して対抗してみるがそれも上手く行かない。
「こんな一方的に…!!」
「フウト、強くなったのは君だけじゃない。君が強くなるなら俺はその何倍も強くなるのさ!」
ドラグーンを射出したタイミングを見計らい、ゼルエルは超スピードでカイザーへと接近する。
「来たッ!」
「いくら君でもこの速さを捉える事は出来ない!」
「何ッ!?」
カウンターの準備をしていたカイザーを無視して目にも止まらない蹴りが炸裂する。さらにカウンターに失敗した場合にドラグーンで追撃しようとしたフウトはその攻撃を自ら受けてしまう。力量の差は明らかだ。
「くそっ……。また負けるのか、俺は。」
あの日。負けたあの日から血の滲むような努力をして来た。できる事も知った事も経験した事もあの日とは比にならない。
──だけどあの日から1番変わった事ってなんなんだ。
カウンターのキレ?ブレードの扱い方?
確かにどれも精度を増した。誰にも負けないくらい磨いて来たつもりだ。
『──ふうちゃん。俺の勝ちだ』
いや負けた。何も通じなかった。
奢りがあったわけでもない。また、単純に力負けをした。そして今も持てる力の何も通じなく終わってしまうのか。いつまでこれを繰り返せばいい?越えられない壁をあといくつ超えればいい?
兄に負けた日、「負ける」という事の恐ろしさを再び体感した。ガンプラバトルがこんなにも怖いものだと思わなかった。プロになって負ける事を怖れていた時よりもだ。その感覚はサワラに負けた時とはあまりにも違っていた。その高すぎる壁に自分の無力さをただ突きつけられるあの感覚が、たまらなく苦しかった。
『──また、負けるのか。俺は。』
『そうさ、お前は負ける。何も恐れるな、今までもそうだったじゃないか?』
『負けて、負けて、負けて。その繰り返し。それがお前の人生なのさ。負け犬のようにホームレスになり定職にもつけず清掃員として暮らす日々。』
『それが、お前という人間なんだよ。イヌハラ・フウト。』
フウトに眠る負の感情が湧き出てくる。実際その通りだ。俺は弱い。あまりにも弱い。一人で何も成すことの出来ない半人前だ。何者でもない。何者にもなれやしない、亡骸だ。
なのに、譲れない想いが、捨てきれない感情がある。
全てが矛盾している。なのに。
壁を壊せなくて立ち上がれない弱い自分。
弱い自分。それは誰しもが持つ向き合いたく無い存在。
でもきっとそれが本当の自分。
一瞬、フウトの眼に光が灯った。
『……そうか。こんなにも簡単な事だったのか。』
「どうした?フウト!?こっちに来て腑抜けたのかい?もう終わりにするよ!!!」
ゼルエルの超高速コンボのフィニッシュがカイザー目掛けて繰り出される。
「──俺は、弱い。弱い。」
「おしまいだぁぁぁぁ!!!」
渾身の右ストレートが飛んでくる。その瞬間カイザーの眼光が光る。
「だからこそ、弱いからこそ、わかる事もあるッ!!!」
カイザーの左フックがゼルエルへとヒットする。強烈なクロスカウンターだ。
「そんな!捉えられた!?」
カイザーはここまでのお返しだと言わんばかりに距離を詰め寄り格闘攻撃のコンボを決めていく。ゼルエルも負けじと反撃し一旦距離を取る。
「何か掴んだみたいだね?」
「へへっ。サワラ、こっからは好きにさせねえよ。」
お互いにニヤリと笑い、一瞬で姿を消す。
黒い閃光と赤い皇帝は神速の如くバトルステージを駆け巡る。
「こいつをもってけ!ブゥゥゥメランッ!!」
「そんなもの!!」
ゼルエルは渾身のブーメランを目一杯のパワーで跳ね除ける。しかしそのオーバーな動きは隙を生む。カイザーはすかさずブレードでの追い討ちをかける。
「くっ!」
「やっとスカした面に一発入れてやったぜ!」
見事にブレードが縦向きにゼルエルのボディを切り裂いた。重い一撃である。しかしこのまま引き下がるほどサワラは甘くない。移動速度のギアをさらに上げる。
「さあ!天使の羽ばたきに皇帝はついてこれるかな!?」
「舐めんなよ!こちとら天使だろうが神だろうが喰らう"
ジャスティスカイザーもさらに出力を上げゼルエルを追う。しかしオーバーヒートを起こしてしまう。それを見逃さないゼルエルはビームライフルでバックパックの翼を撃ち抜く。
「ヒトが翼を持って天使に抗おうなんて馬鹿げているのさ!」
「くそっ!動かねえ!それなら!」
バックパックを切り離し本体だけで推進していく。しかしあまりにも推力が足りない。ゼルエルはビームライフルによる連射で仕留めようとする。右肩を掠めるがカイザーは気にせずぐんぐんと突き進む。
「それでこそフウトだ。君はそうでなきゃいけない。」
「でもこれで終わりだよ!!」
ゼルエルはライフルを投げ捨てビームサーベルを構え神速でカイザーを迎え撃つ。
「くそっ!これで終わりなのかッ!?」
ゼルエルは一気にカイザーの右腕と左脚を刈りとる。一方でカイザーの攻撃はゼルエルを捉える事は出来ず空を切る。
「流石のしぶとさだ!でも今度こそッ!!」
──負ける。また負ける。
頭の中に「負」の言葉が無数によぎる。
自分が弱者なら負けてもいい。いいのかもしれない。この先ずっと。
いや。そうじゃない。今、負けようとしているのは自分自身の「弱さ」そのものだ。
そうさ。俺はただひたすらに弱い。あまりにも貧弱だ。
強くなんてこれっぽっちもなれない。なれなかった。
昔から弱いままで泣き虫のまんまだ。
そんな弱い自分が大っ嫌いだ。この世で一番嫌いだった。
だけど、もう逃げない。自分自身の弱さから。
特別な何者にもなれない自分だったけど。
自分という存在になる事はできるはずだ。
だから、だから。
もう、絶対誰にも負けたくない。
「──本当の強さってのは、自分と向き合う力だッ!!」
「この攻撃にアジャストした!?」
──"God Advent"──
フウトとカイザーの目にもう一度魂の光が灯った。
同時にカイザーは徐々に黄金色へと色を変えてゆく。
「俺は兄さんじゃない!兄さんみたいに強くない!!兄さんにはなれない!!!だからこそ自分自身の弱さを認めるッ!」
「それでも、それでもまだ諦められない、捨てきれない大事なモノがある!!だから俺は抗い続けるッ!!もう自分自身に負けたくねェんだ!!」
カイザーはゼルエルの超スピードを完全に捉え連続で殴り蹴る。ゼルエルはその攻撃に全くついていけない。
「そんなまさか!カイザーに眠っていた力が…!?」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!やるぞカイザー!!」
カイザーはさらに黄金色を強く纏い始める。呼応するようにフウトの胸は高まっていく。まるで神の如くまばゆい光。皇帝は翼を得るだけでなく神にすらなろうとでもいうのだろうか。
ゼルエルは必死の抵抗でなんとか攻撃を振り切り大型ビームランチャーを即座に構え対象物へと発射する。しかし簡単に回避されブレードを構えたカイザーが接近してくる。
「くそっ!射線を読んでるとでもいうのか!!?」
ゼルエルは持てるビームライフルなどを一斉砲火するがカイザーは器用に避ける。掠めた攻撃も黄金色のオーラが弾いていく。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「フウト、お前は……!!」
「自分自身の『弱さ』を受け入れるッ!それが俺の、俺だけの強さだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
ゼロ距離まで詰め寄ったカイザーはブレードを腰の位置から鋭く振り切る。ゼルエルの上半身と下半身を真っ二つにした。
―battle end―
winner Futo
「ハァハァ…。やったのか…。」
「……。負け…か…。」
バトルフィールドのバーチャルビジョンが消えていきお互いに対面する。フウトはあまりにも必死で自分でも何が起こっているのかわからなかった。ただ目の前にはボロボロになったカイザーと真っ二つに両断されたゼルエル。
「フウト、君の勝ちだ。」
「………俺が、サワラに勝つなんて嘘だろ…?」
「馬鹿言えよ、最後は完全に力負けさ。それに元々俺よりフウトの方が強かったじゃないか。」
珍しくアララギの茶々が無いためか真面目な空気が辺りを漂い無言となる。サワラは先程のバトルでかつての好敵手であった『イヌハラ・フウト』と同じ、いやそれ以上を感じていた。
「……昔より、もっと鈍いはずの輝きなのにそれがとてつもなく眩しい………。」
「……やっと、帰って来たんだね。イヌハラ・フウトという男が。」
「え?」
「いや、でもこれが終わりじゃ無い。次は必ず、僕が勝つ!」
「ああ、もちろんだ!その時も負けない!」
二人は熱い握手を交わす。あの日、フリーファイトスペースで交わせなかった握手を大人になってもう一度交わす。
「ふうちゃん、完全に断ち切ったみたいだね。」
「本当の強さ、それは人それぞれ違うカタチで持っているもの。気づいていようがいまいが誰しもが持っている。」
「俺の強さは…………。」
ユウキは二人を見ながらぼそぼそと独り言を呟く。
「こりゃデカい影がまた追ってくるな、ユウキ。」
「テルキ、もう具合はいいのかい?」
「そりゃあんなモン見せられたらな。」
「一瞬、昔のふうちゃんが見えたくらいだぜ。それにカイザーだって。あれってやっぱり?」
「まさか、この土壇場であのシステムが蘇るとはね。」
「でも昔から何も変わらないよウチの弟はさ。」
「お前も変わらないな。ユウキ。」
2人はニッコリとした表情で白い天井を見上げる。
「──ふうちゃん、やっとシステムの扉を開いたか。」
買い出しに行っていたアララギはだったが彼らの闘いが気になりこっそりと見えないところから観戦していた。するとシイナがアララギの方に気付き近寄ってきた。
「先生、いまの光って………?」
「あれは、ジャスティスカイザーに眠る真の力『神モード』」
「原理で言えば機体内の核エンジンを爆発させて莫大なエネルギーに換えて闘う独自システム。出力やパワーが桁違いになる代わりに装甲は剥がれ落ち自身へのダメージも大きい。でも、それだけじゃない。」
「そしてアレは元々ふうちゃんの亡きお父様が作られたプログラムでね。どうやらお父様もガンプラバトルを……。主にシステムの研究をしていた事が後になって分かったんだ。それをさらに現代のガンプラバトル用に、主に運営から使用許可が降りるように僕がテコ入れをしたんだ。」
「へぇ、そんな経緯が。でもなぜ今まで起動しなかったんですか?今の話じゃ学生の頃は扱えてたんですよね?」
「うまく言えないけどあのシステムには意思がある。生きてるんだ。初期段階の頃からふうちゃんの感情に呼応するとシステムの感度が上がるようになっていた。具体手にはプラネットコーティングで動くガンプラに還元させるためのシステムがふうちゃんの手の動きや声、表情にも反応するようになってるんだ。」
「それと、その意思のあるシステムがかなり厄介でね。ふうちゃんの何がどういうトリガーなのか、はっきりしないけど使い手として認めてくれないとうまくシステムが起動しないようになってるんだ。」
「そんな高度なシステムを何十年も前から組まれていたお父様は一体……。それを分析する先生も先生ですが。」
「若くして亡くなられた事が本当に悔やまれるよ。」
システムを一度いじった事のあるアララギは淡々と続けながらもその貴重性を誰よりも理解し話していた。はじめにフウトが実家に帰省した際にシステムを発掘し組み込みを依頼された時は断ろうとすら思っていた。だが彼の目はただ真っ直ぐだった。
『──兄さんに勝ちたいんだ。兄さんだけじゃない、誰にも負けない、カイザーが皇帝と呼ばれるに相応しいくらい強くなりたいんだ。』
あの頃のフウトと今の彼の眼は確かに同じだ。たが全く同じという訳ではない。挫折も敗北も知り今がある。だとしたら、今回システムが起動した要因は過去とは違う別のトリガーだったのではないかとアララギは改めて考える。
強くありたいという願い
自分自身の弱さを認め抗い続ける事
「………まだまだ、不確定要素が多すぎるなあ。よくあれで審査が通ったもんだ。」
「そうだ、シイナにもああいうシステム作ってあげようか?ほらそのイヤリングと反応するやつとか。」
「なんかそれ、これの事少しイジってませんか?大事な物なんですよー!」
アララギは冗談、冗談と言いながらまだバトルシステムに残る気高い光の残光を見ていた。
***
その後アララギが高い酒と寿司を買ってきてその場にいたみんなで宴会を行った。フウトも久しぶりに子供のようにはしゃいだ。今日は元日だ。たまにはハメを外してもいいだろう。
「サワラくん、あの機体まだ未完成なんだよね?」
「流石ユウキさん。見抜かれてましたか。」
「次はちゃんと完成させてから俺のところに来なよ、ジャパン・チャンピオン。」
「望むところです、アメリカン・チャンピオン。」
「―…ウトさん。…フウトさーん!」
「うーん。俺は強くなる。もう負けないよ…自分自身に…。」
「ふうちゃん、珍しいなあ。夢でも見てるのかい?」
一月一日、イヌハラ・フウトはジャスティスカイザーを手に抱き抱え幸せそうに眠っていた。
(続く)
Instagramにて作中の機体やキャラクターのイラストなどを掲載しております。
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