今回は本編終了後のお話を書かせていただきました。
イヌハラ・フウトが第一四回GPD全国大会及び世界大会で優勝してから数ヶ月ほど経ちあたりは桜が咲き誇る春となっていた。フウトは世界大会後多くのプロリーグからオファーを貰っていたがその全てを断り元にいた北海道に残った。
「──ふう、今日もランニング終了っと。」
大会前からこなしている朝のランニングを今日も終えるフウト。そして後ろからは桜舞うたぬき山の道をいつものようにオリーブ色の髪を揺らしながら走ってくる影が追ってくる。
「──今日もフウトさんに勝てなかった……。」
「この一年半で随分速くなったじゃないか。ま、俺は常にその先をいくけどな。」
「むっ、言ってくれますね…。でも本当のことなので言い返せないのがムカつきますね……。」
シイナはぷくっとほっぺを膨らませる。フウトはそれを見てあははと笑う。いつものやりとりをしながら大学の方へと向かう。
「そういえば、今日ユウキさんが来られるんでしたっけ?」
「ああ、確かそのはずだったと思う。大会で会ったのが最後だから楽しみだな。元気でやってたのかな、兄さん。」
「あの人がニコニコしてないと逆に違和感があるような……。」
シイナは目を逸らしながらユウキの顔を思い浮かべてボソッと呟く。
「そういえばシイナは兄さんの事苦手だったっけな?」
「い、いえ。苦手というわけではないのですが…。なんというかその……。あの笑顔の裏側が怖いというか、なんというか。」
「まあ分からなくもないけど兄さんはいつもそんな感じだしシイナの事も気に入ってるみたいだからそんなに怖がることないぞ!」
「そ、そうですね! 今日はユウキさんに色々と稽古をつけてもらいます!」
「お、その勢いだ!」
フウトはニカっとシイナに笑ってみせそれを見てシイナは心強く感じる。シイナがユウキを苦手に思っているのはあの笑顔の裏をを知ってしまったような気がしたからだ。第一四回GPD全国大会準決勝、フウトとの決戦前にフウトの弱点を教えようかと誘って来たことがあった。あの行動の意図は未だに分からないがあの時のユウキはまさに天使の裏側、悪魔そのものだった。そして決勝で見せた修羅と呼ばれる衝撃的な力をシイナは見せつけられた。あの二面性に狂気すら感じた。だがそれは、自分にも言える事である。自分自身もまた自分のような誰かとなりフウトを助け共に闘ったような感触を感じた。同族嫌悪という言葉があるが本能的にユウキにはそう思っているのかもしれない。とはいえ人を嫌いになるような性質でないシイナはとってはほんの少し苦手である。というのが正しい感情だろう。
そんな事を思いながらフウトと会話して桜並木を歩く。
***
二人はその後バトルスペースへと顔を出した。するとそこには白衣を纏った男性と見覚えのある青髪の後ろ姿があった。
「兄さん! もう来てたのか!」
「お、ふうちゃん、久しぶりだね! それにしいちゃんも!」
「あ、えっと、お久しぶりです。」
ニコニコと笑いながら挨拶をするユウキ。シイナは少し目を背ける。
「珍しいねえシイナが人見知りなんて。もしかしてふうちゃんよりユウキくんの方がタイプだったり!?」
「もうからかわないでください!」
アララギがシイナをおちょくり肩の力を落とさせる。
「駄目だよ先生、恋する女の子をからかったら。しいちゃんはふうちゃん一筋なんだからさ。」
「先生は兄弟で取り合うドロドロなやつを傍観したいんだけどなあ。」
「先生、それ立場的にアウトな発言です。」
「もう。私のことなんだと思ってるんですか!」
和気藹々とジョークを交えながら話す四人。そこにはなんのしがらみもないそんな関係だ。フウトは口にはしないもののこんな風にまた兄と笑い合える日が来た事を心の底から喜んでいた。
「そういえば、兄さんは今まで何をしてたんだよ? 急に姿を消すしさ。」
「そうだね。あえて言うなら『旅』かな。」
「旅!?」
「そう。軽く世界一周してた。」
軽々しく笑いながら言うユウキ。流石スケールがデカい。自分には思いつきもしないことだ。
「で、ふうちゃんこそなんであっちの世界に戻らなかったの? そのために頑張ったんじゃないの。」
ユウキは核心を突くようにフウトに質問を投げかける。それもそのはずだ。ユウキは自ら王の椅子をフウトに譲ったようなものなのだから。そしてフウトはゆっくりと口を開ける。
「……世界大会で色んなデューラーと闘ってみて思ったんだ。『ガンプラバトルって本当に楽しいなって。』それにこんな大切な気持ちを思い出させてくれたGPDにもみんなにも恩返ししたいと思った。だからこそプロに戻って栄光を手にする事が最高の恩返しだと思ってたんだ……。」
「なるほど。じゃあ〝今〟は考えが変わったって事かな?」
ユウキは優しい眼差しでフウトに聞き返す。そしてフウトは続ける。
「俺はいつもガンプラに助けられてきたんだ。幼い頃に両親を失って先が真っ暗になった時兄さんがガンプラの楽しさを教えてくれたし、アララギ先生やみんなとは共に高め合う素晴らしさを教えてもらった。他にも数え切れないほどの事を教えてもらった……。」
「……でも、迷ってるんだね。どうするべきか。」
「さすが兄さん、見透かされてるなあ。」
「春の市場でスペインからオファーが来てるんでしょ?」
「そこまで知ってるとは…。敵わないな。」
ユウキはまあねと言う顔をして答える。
「ま、海外に行くとしいちゃんが寂しがるからねえ。どうしたもんだか。」
「べ、別にそんな事ないですよ!」
黙って二人の話を聞いていたシイナが声を上げる。だが事実フウトが遠くに行ってしまうのは寂しい。そんな自分を気遣っているフウトを縛ってしまっているのではないかと思うと耐えられない。
「ほらほら、そんな難しい話はもうやめー!」
「先生?」
「こういう時はガンプラバトル! でしょ? ふうちゃん!」
アララギが珍しく白衣を脱ぎホルダーから自身のガンプラを取り出す。
「お、その機体、久しぶりにやる気じゃないですか。先生。」
「何言ってんのユウキくん。君は俺とペアでふうしいコンビと闘うんだよ?」
「え、私もですか!?」
「さ、持ち場についたついた!」
アララギは三人を強引に巻き込みタッグバトルをはじめようとする。
「………さーて、どれくらい強くなったかな……俺の教え子達は…………。」
Futo’sMobile Suit
Justice Kaiser Infinity
and
Sina’sMobile Suit
Justice Snow white
VS.
Araragi’s Mobile Suit
Shiun
and
Yuki’Mobile Suit
Gudam Sophielδ
「カイザー出るぞ!」
「スノーホワイト行きます!」
「紫雲……出るッ……!!」
「ソフィエルデルタ行くよ!」
こうして四機は勢いよく飛び出した。バトルステージは障害物のない草原。小手先なしのお互いの実力が試されるステージだ。実力者揃いのこの面子にとっては好都合である。そしてモニターに映し出された相手の操る二機。「紫雲」と「ガンダムソフィエルデルタ」
「紫雲……。まさかあの伝説の機体とやれるなんてな……!!」
「──紫雲」アララギ・ユウリがプロ時代に扱っていた機体。アカツキをベースにデスティニーの翼やランスと大楯を装備し紫とシルバーを基調とした非常に完成度の高い機体。この機体とアララギはプロリーグ戦前人未到の無敗という伝説を作ったという経歴がある。この紫のカラーリングと絶対的な強さから「魔王」と呼ばれた程である。ちなみにこの記録は現役時のユウキと並ぶものだ。
「さーて、久しぶりに本気でやらせてもらおうかな!」
「フウトさん、斜め後ろです!」
「ッ!?」
早速アララギの紫雲がその巨大な槍を使って超スピードで突進してきた。フウトはその直線的な動きからギリギリのところで避けたが当たっていたらひとたまりもなかっただろうと冷や汗をかく。そして同時にその強さに興奮を覚える。
「やるね、ふうちゃん! でも今日の俺は『先生』じゃなくて一人の『デューラー』だからね!」
避けたカイザーにリーチの長いランスで追撃を行う。カイザーは体制を整え切れずシールドで防御するがその力強い突きを受け止め切れない。
「フウトさんッ! いま助けに……ッ!!」
スノーホワイトがとっさにフウトを助けようと装備しているビームライフルで牽制を入れようとする。だがその瞬間白き天使が白銀姫の前を通り過ぎる。
「君の相手は俺だよ。しいちゃん。」
「ッ!? なんて速さなの! それにそうやってまたからかうんですか!?」
「さあ、どうだろうね。」
ソフィエルデルタは中距離を保ちビームライフルで射撃しながらスノーホワイトを徐々にカイザーとの距離を離れさせていく。シイナは必死にそのスピードについていこうとするため味方機との距離を離されている事に気づかない。
「シイナ……!! あまり離れすぎるなッ!」
「おっと、ふうちゃんはこっちだよッ!」
「くっ……!!」
ユウキに釣り出されるシイナを気遣うがアララギ相手では自由にはやらせてくれない。それどころかこちらも呆然一方で味方の心配ばかりしている余裕は無いようだ。圧倒的な個の力が戦場を制圧していく。
「ふうちゃんはさ、これからどうしたい?」
攻撃ををしながらフウトへ問う。
「スペインのトップリーグでやる事はそれこそ業界に対する恩義にもなる、でもそれ以外の道もある。だから迷ってるんだろ?」
アララギは攻撃を続けながら問いかける。
「君の道はこれからどう続いていくんだい?」
「……俺の道は…………。」
***
「──しまった! いつの前にか釣り出されてる!」
「腕は随分と上がったみたいだけどまだまだ状況判断があまいよ!」
ソフィエルはバックパックに取り付けられた百式シリーズのバランサーをうまく稼働させながらビームサーベルでスノーホワイトへと近接攻撃を仕掛ける。スノーホワイトもそれに対しビームサーベルで対応。激しくぶつかり合う。
「──あの時、わたしを誘い出そうとしたのはどういう意味だったんですッ!?」
「ふうちゃんの弱点のことかい。それはッ!!」
ソフィエルが押し合いを制しスノーホワイトを跳ね除ける。
「我ながら性質が悪いとは思っていたけど試したかったのさ君たちの覚悟を!」
「…………ッ!?」
「人を好きになるというのは尊い事さ。でもね綺麗事だけじゃすまないこともある。時に互いを傷つけ合い嫌になることもある。優しさが仇になる時もある。傷つける事を怖がりぶつかる事を恐れてはいけない。」
「それでも君たちが選ぶ道を見たかった。ただそれだけさ。」
「まあ、俺はふうちゃんの親代わりみたいなところもあるからね! お節介なお義父さんでごめんよッ!!」
正直言ってあのやりとりがあるまでシイナはフウトと闘うことに多少の迷いがあった。だがユウキの言葉が自分をフウトとまっすぐに向き合わせた。確かにあの時自分がフウトを傷つけるのを怖がっていたら「弱点」とやらを突きぶつかり合うことも避けられたかもしれない。それにぶつかり合わなければ多分、あの時の自分と出逢えてなかった。それを全て見越しての行動。これがイヌハラ・ユウキの不器用な優しさなのだなとシイナは気づく。
「……やっぱり似てるんですね! フウトさんと……!!」
シイナは押し返されたが怯まずバックパックのブレードを取り出しソフィエルと激しく打ち合う。
「やるね! いい太刀筋だ!」
「わたし、ユウキさんとやれてる……!!」
ソフィエルの斬撃モーションを捉えたシイナはその隙をブレードで跳ね除けソフィエルに蹴りを入れ込む。
「おおっと! こりゃふうちゃん以上の才覚かもね。」
「やった! 一発入った!」
「いいね……! 強い子は好きだよ。でもあんまり俺に構ってるとふうちゃんがやばいんじゃない?」
「……しまった! フウトさんは…………?」
***
「はぁ…はぁ…。」
魔王は皇帝を見下ろす。既にカイザーは各部位を槍で突かれ穴も空きボロボロである。これが伝説のデューラーと機体。本気のユウキと同じくらいか、いやそれ以上か。
「先生はなんでプロをやめたんです……? あそこまで強ければやめることなんてなかったんじゃ。」
「そうだね。まあ一言で言えば虚しくなったのさ。」
アララギには自分を負かすような存在が周囲におらず淡々と勝利を積み重ねプロ同士の派閥やスポンサーの競合企業との争いに巻き込まれ純粋にガンプラバトルを楽しめなくなった。
それでもアララギは闘い続けた。傷つきながらも闘い続け勝って、勝って、勝ち続けた。いつか自分の姿が誰かの目に映り勇気や夢を持たせると信じて。現にその姿を幼き日のユウキとフウトの記憶には焼き付いている。
「でも今の俺は幸せ者だよ。」
「え?」
「だって、君たちみたいな素晴らしい教え子が沢山できた。虚しい心を君たちの成長や努力、苦悩を乗り越える姿が埋めてくれたのさ。」
「ふうちゃんだって、気づいてるはずさ。純粋な強さだけを求めた先にある虚しさやなんとも言えない哀しみをさ。」
フウトにはこの言葉の意味がよく理解できた。兄のこともそうだが自分もつい最近までは誰にも負けない強さを求め続けていた。だがそんな強さは所詮偽り。白昼夢のようにいずれは目を覚まさせられる。誰と闘っているのかすらわからなくなる時もある。
「さーて、俺からの助言は終わり! いつも言ってるよね?『勝つまで帰ってくるな。』ってさ。」
「勝つまで帰ってくるな。」この言葉はアララギのバックグラウンドを深く踏み入れれば矛盾しているように感じるかもしれない。だがアララギは誰よりも勝ちつづることすなわち負けることのできない世界の厳しさを誰よりも知っている。どんなに虚しくても、どんなに哀しくても勝ち続けなければ価値を見出されない世界もある。それは綺麗事ではすまない。現にフウトも負け続けた結果ホームレスにまで堕ちた。それが現実なのだ。
言葉とは裏腹だ。確かにこれは単にガンプラバトルの教えなのかもしれない。言ってしまえばそれまでだろう。でも、それでもやっぱり。
「──やっぱり先生はカッコいい人だよ。」
カイザーはブレードにもたれながらゆっくりと体を起こしはじめる。
「先生みたいに誰よりも優しくて強い、そんな人に俺もなれるかな?」
「なれるさ。だってふうちゃんは誰よりも色んな痛みを知ってるだろ?」
アララギはにっこりと答えた。自分の強さを自分だけにとどめずその強さを人に繋げ託していく存在。
フウトの少しモヤがかかった頭の中に少し光が見えた。
「へへ。じゃあ先生、行きますよ!」
「来いッ!」
カイザーはバックパックからブレードを二本取り出し紫雲へと立ち向かう。右、左、縦と鋭い斬撃が紫雲を徐々に押し込んでいく。この攻撃には流石のアララギも苦戦する。
「ふうちゃん、強くなったな…! でもまだまだ……!!」
紫雲は斬撃を上手く盾でアジャストさせ攻撃を防ぐ。その隙を鋭い突きでカイザーを襲う。
「そうくると思ってましたよ!」
カイザーは突きを読んでおりバーニアで後方へと下がり距離を作る。
「しまった…! この距離は……!!」
「強く…踏み込むッ……!!」
カイザーインフィニティはリアスカートに新しく取り付けられた日本刀を腰の位置に構え対象物に最高の力が伝わるようにステップを踏み込む刀を抜きしならせる。
「……そこだっ……!!」
「速いっ……!!」
カイザーの抜刀はシールドを見事に真っ二つにした。これには流石のアララギも苦笑いをこぼす。
「さて、まだまだここからだッ!!」
「こっちもギアを上げさせてもらうね……!!」
紫雲は背中に取り付けられたデスティニーの翼を大きく広げて光の翼を展開する。まさに魔王の翼。先ほどよりも何倍も大きく見える。紫雲はそのまま目視で捉えられないスピードで移動を始めランスでの高速攻撃をはじめた。カイザーもなんとか攻撃の寸前で上手く合わせて致命傷は避けているがまたも呆然一方になる。
「……くっ、このままじゃ……。」
「………フウトさんッ…………!!」
シイナの脳内にフウトに危機が迫っていると察知する。しかし目の前にはユウキが立ち塞がりなかなか前へ進めない。
「さあ、このままじゃふうちゃんはアララギ先生に負けちゃうよ?」
「そんな事はさせない……ッ!!」
スノーホワイトはバックパックのウイング部を全て展開させてそのカイザーの方へと向かわせる。
「流石に速いねッ! でもこのデルタのスピードを超えられるかな!?」
白き天使は白銀姫を逃さない。元々ソフィエルのスピードは尋常ではなかったがその速さはさらに洗練されている。
「このままじゃ……。」
その圧倒的な速さに絶望さえ感じ目を閉じるシイナ。だがこんなときイヌハラ・フウトならどうするだろう。そんな事をふと思った。
「──フウトさんなら……絶対諦めない…。わたしも……一緒に足掻くッ……足掻きたいッ!!」
スノーホワイトの全身のプリズムが虹色に反射する。同時にイヤリングが虹色に煌めく。
「prismatic effect発動ッ……!!」
「これの光はあの時の……!!」
スノーホワイトに眠るシステムが起動し虹色の機体はぐんぐんと推進していく。ユウキはその優しい光を徐々に後ろから見つめる。
「俺には無い君だけの強さと優しさ。その輝きを大事にするんだよ。」
「──とはいえ、まだ勝負はついてないからね!」
ユウキはそう呟き紫雲の方へと最短距離で急ぐ。
「ふうちゃん、こいつで終わりだッ!」
「…………ッッ…………!!」
「──フウトさん! これを!!」
颯爽と現れたシイナはそう言ってブレードを連結させた虹色に輝く大剣をカイザーの方へと投げる。
「……シイナか! 助かる……!!」
それを受け取ったカイザーは虹色のオーラでフィールドを作り紫雲の高速攻撃を防ぎ大剣で振り払う。
「ユウキくんが取り逃すなんて珍しいなあ。まあ、それほどシイナも成長したって事なのかな。」
「──また助けられたな。シイナ、ありがとう。」
「私もフウトさんと一緒に足掻きたいですから。」
ニコッとシイナはそう答えてみせた。
「そうだな…!! よしじゃあ力を貸してくれ! アレをやるッ……!!」
──Godーmode Advent
カイザーの機体が黄金色で身を纏いはじめる。奥の手、神モードだ。そこにスノーホワイトがカイザーのボロボロの右腕を共に持ち黄金の輝きを虹色の光で包み込みその光を増幅させる。
「──これはあの時と同じ……!! ならばッ……!!」
紫雲もまた光の翼をさらに強く煌めかせ槍の先端部分にエネルギーを一点集中させる。
「やるぞ、シイナッ!」
「はいッ……!!」
カイザーは虹色と黄金色が鮮やかに混じり合うオーラをグッと溜め込む。そしてそれを一気に解き放つ。
「カイザァァァァァァァァァァ!! ノヴァァァァァァァッッッッッ!!」
それとほぼ同時に槍の先端に紫のオーラを一点に纏わせたランスを手に紫雲が突貫する。
「こいつをもっていけぇぇぇぇぇぇぇ!!」
カイザーの莫大なエネルギーを爆発させた衝撃波を破る事は簡単では無い。だが紫雲は槍の先端にエネルギーを集中させることでそのパワーを無駄なく伝え徐々に衝撃波を破っていく。だがそのパワーは二機分。押し返したと思えばそのエネルギーはどんどんと大きくなり逆に押し返される。
「このままでは……呑まれる…………!!」
「──修羅ンザムッ……!!」
押し返される紫雲の元へ赤く機体を紅潮させた天使であり修羅が手助けに来る。
「お待たせしました。先生。」
「遅いよ~、ユウキくん。」
「じゃあ、見せようか。『最強』ってやつを。」
紫雲とソフィエルのツインアイが鋭く光る。ソフィエルの加勢もあってか赤と紫に纏われた機体達がどんどんとカイザーとスノーホワイトの衝撃波を突き破っていく。
「──まだまだまだぁっ!!」
カイザーとスノーホワイトのツインアイも光り出力を最大限にまで上げる。本来カイザー一機ならこの莫大なエネルギーに耐えきれず機体ごと溶けてしまうがスノーホワイトの虹色のフィールドがそれを中和しなんとかその負荷に耐えている。とはいえ機体の損傷箇所も多く徐々に装甲が剥がれていく。そしてそれに負けじと紫雲とソフィエルも出力を最大限まで引き上げる。
「俺たちなら……勝てる……ッ……!!」
「まだまだぁ!! 俺たちの力はこんなもんじゃ無い……!!」
押し合いになるが、最後カイザーが出力に耐えきれず膝をついてしまう。そこに紫雲は容赦なくランスを突き出しスノーホワイトもろとも貫いた。
「──本当に強くなったね。」
「俺の自慢の教え子達だ。」
battle end
winner Araragi and Yuki
「──やっぱり、二人とも最強で最高だよ……。」
フウトの目にはアララギとユウキ二人の姿が目に映った。
「いや~ひさびさに本気でやらせてもらったよ~!! 二人とも本当に強くなったねえ!」
アララギが機嫌よく言う。だがその顔は幸福に満ちた顔であった。それは見ればすぐに分かった。
「それで、ふうちゃん、何かつかめた?」
「──そうですね。俺は………………。」
***
「──ふうちゃん、元気でやるんだよ。」
「はい。」
バトルから数日後フウトは新たに新調したバイクと共に新たな門出に出ようとしていた。それを見送りにアララギとユウキ、シイナ、テルキとタロウが来ていた。
「ふうちゃんの道はまたこれからはじまるんだね。」
「──勝つまで帰って来ちゃだめだよ?」
「分かってますよ。」
アララギとフウトはニッコリとそう言いあう。それを見ているシイナが何か言いたげにしているが中々何も言わない。そんなシイナを見たフウトは一声かける。
「シイナ、本当にいいんだな?」
「はい。私はフウトさんが帰ってくるのを待ってます。」
シイナはフウトに付いて行きたかった。大学等の事情があって現実的に無理だったとしても彼が進む道をそばで支えたかった。ユウキに言われたようにぶつかり合う事や傷つけ傷つくことを恐れるな。でも今はその時じゃないと思った。いやそれが出来ないのは本当はまだ怖いのかもしれない。ここで泣いて縋れないのもまた可愛げのない女なのかもしれないなどと卑屈に思うシイナ。
「………。……シイナ、一緒に来てくれ。」
「…………え?」
「嫌かもしれないけど来て欲しい。けど君にそばにいて欲しいんだ。」
フウトは真剣な顔でそう言った。この急展開に一同は腰を抜かされる。アララギはニコニコしユウキは苦笑い、テルキとタロウはギャグ漫画のように目が飛び出している。
「え、それって……。」
「君の事が……、君の事が好きだから。それだけだ。」
少し照れ臭そうに言うフウト。そしてそれを聞いて顔と耳を真っ赤にしボロボロと泣き出すシイナ。
「い、嫌だったか……?」
「嫌なわけ無いですよ……! もう本当に間の悪い人です……!! フウトさんは……!!」
空気を読んだアララギはユウキ達を連れて一旦その場を離れる。
「……本当に仕方のない人です……。でも嬉しいです。私も……フウトさんの事……好きですから…………!!」
シイナは恥ずかしそうに目を見てはっきりとそう言った。
「ありがとう……。」
「でも、大学のこともありますしやっぱり付いては行けません。」
「……だけど、待ってますからね……! 帰ってくるのを……!! それから連絡もちゃんとしてくださいね……!!」
「……ああ。絶対迎えに来る。」
「私、フウトさんが帰ってきた時にはすっごくイイ女になってますから!!」
そう言ったシイナの顔はくしゃっとした笑顔だった。そしてフウトはただそんなシイナをゆっくりと抱きしめた。その時間は紛れもない二人の時間だった。雪の記憶と共に春の暖かい空気が彼らを包む。二人で今まで過ごしてきたことを噛み締めるように強く抱きしめ合い互いを確認し合う。
雪が舞ったあの日とは違い季節を重ねた今は桜の花弁がゆらゆらと舞う。
***
「──それじゃ行ってきます。」
「ふうちゃん、達者でな。」
「女の子を待たせてるんだ! 泣かしちゃダメだぞ!」
「怪我とかには気をつけるんだぞ。あとラーメンばっか食べたらダメだよ。」
「フウトさん、頑張って……!!」
各々から見送りの言葉をかけられたフウトは頷きバイクのグリップを握りそのまま出発する。
「世界中を旅しながらガンプラの楽しさを伝える……か。」
「それと同時に強さも求める。なんともふうちゃんらしいね。」
「──ほんとたくましくなったもんだ。それは君だけの道となりこれからも続く…。そしてその先に多くの道と交わる。」
イヌハラ・フウトの出した答えは結局プロになることではなかった。
自分を助けてくれたガンプラに恩を返すためその楽しさを伝えるために世界中を旅する。自分自身のために強さを求めるのも彼の
これがイヌハラ・フウトの答え。兄と同じでもアララギと同じでもない自分自身の進む道の答え。まだ未ぬ道の先を自分の足で歩いていく。
──出会い、繋がり、託す。
魔王は虚無感を抱えながらもその強さを他者に与え託した。
修羅は覚めない夢を見ながらその強さを唯一の望みと愛する者のために奮った。
そして皇帝もまた己の弱さと向き合いもがきながらもその強さをこの世界に還元しようとしている。
「さーて、どこにいこうかな。」
「──『人生は夢だらけ』だからさ。」
「よーし。まずはあの場所からだ……!!」
イヌハラ・フウトは桜舞うラベンダー畑の脇道をバイクで爽快に過ぎ去っていった。
Instagramにて作中の機体やキャラクターのイラストなどを掲載しております。
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